やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2 版の序
 腎臓リハビリテーション(以下リハビリ)は,腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ,症状を調整し,生命予後を改善し,心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラムである.
 『腎臓リハビリテーション』は腎臓機能障害に対するリハビリ医学・医療に関する世界で初めての書籍として2012 年6 月に発行した.幸い多くの支持を得て,臨床現場や教育現場で利用され,増刷を重ねてきた.2017 年には中国語訳され「肾脏赎复」として北京の人民军医出版社から発刊された.
 慢性腎臓病(CKD)は,体内塩分貯留,尿毒症,透析などによる酸化ストレスや炎症などにより,サルコぺニア,フレイル,骨粗鬆症,心血管肥大,血管石灰化などを呈する「早期老化モデル」の代表の1 つとして,その予防,治療,管理は大きな関心をよんでいる.中でも,CKDといえばかつて安静にすることが治療の1 つだったが,最近では,透析患者も保存期CKD患者も「運動制限から運動療法へ」と運動に関する考え方がコペルニクス的転回をみせた.
 また,ここ数年,保存期CKD患者の運動療法による腎機能改善効果のエビデンスが示され,ACSM(2014,2017),KDIGO(2012),ESSA(2013)からCKDや末期腎不全患者への運動処方指針が出された.さらに日本腎臓リハビリテーション学会から,2016 年に「腎臓リハビリテーションの手引き」が,2018 年には「腎臓リハビリテーションガイドライン」が公開された.
 2016 年度の診療報酬改定では,糖尿病腎症の患者が重症化し透析導入となることを防ぐため,進行した糖尿病腎症の患者に対する質の高い運動指導を評価するために新たに腎不全期患者指導加算が設定され,続く2018 年度の改定ではeGFR(ml/分/1.73 m2)が30 未満から45 未満までに拡大された.日本腎臓リハビリテーション学会の存在やわが国の腎臓リハビリに対する診療報酬は世界初であり世界的に注目を集め,2017 年のNature Reviews in Nephrology誌でも紹介された.
 本書はこのような背景のもと,前版の優れた特長を生かしつつ,(1)腎臓病や透析医療の専門医やリハビリ科医のみならず,メディカルスタッフにも使いやすくする,(2)ガイドラインや診療報酬などの最新知見を盛り込む,(3)図表の多用や簡潔な表記を尽くす,(4)腎臓リハビリ医学・医療の基礎的内容も含む,の4 点を心がけて改訂したものである.
 本書は,この領域でトップランナーとしてご活躍されている日本腎臓リハビリテーション学会会員を中心に執筆した自信作である.本書は,腎臓リハビリ指導士試験,腎臓専門医試験などにも役立つ新たな必読書となるとともに,すでに腎臓リハビリを行っている方々の技術や考え方の再点検やブラッシュアップの役割も果たすと確信している.執筆者各位に深く感謝するとともに,企画・編集で何かと手を煩わせた医歯薬出版の綾野泰子氏にも感謝する.
 本書により,医師やメディカルスタッフが自信をもって良質な腎臓リハビリ医療を供給できるようになり,1 人でも多くの腎臓機能障害者やご家族の福音になれば,編者としてこれに勝る喜びはない.
 2018 年9 月
 上月正博


第1 版の序
 超高齢社会や動脈硬化性疾患患者数の増加を背景に内部障害者数が急増し,2006年にはわが国の身体障害者数全体の30%を突破した.内部障害者の中でも,腎臓機能障害者数は心臓機能障害者数に次いで2 番目に多い.腎臓機能障害者の代表格は透析患者であるが,2011 年のわが国の透析人口は30 万人を突破し,国民400 人に1 人の割合にまで高まった.わが国の透析医療の水準は世界一であり,42 年以上の生存例など長期延命に成功している.一方,新規導入透析患者の平均年齢は67.8 歳,透析患者全体の平均年齢は66.2 歳(2010 年)と年々高齢化しており,重複障害を有する場合が多い.また,透析患者の運動耐容能は心不全患者やCOPD患者と同程度まで低下しており,しかも運動習慣がない透析患者や運動耐容能の低い透析患者は生命予後が悪い.
 腎臓リハビリテーション(以下リハビリ)は,腎臓機能障害者に対して,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを包括的に,かつ長期にわたり行う新たな内部障害リハビリである.リハビリの主要な構成要素である運動療法は,MIA(低栄養・炎症・動脈硬化複合)症候群改善,運動耐容能改善,生命予後改善,QOL改善などをもたらすことから,透析患者に関するさまざまなガイドラインでも積極的に運動することが推奨されるようになってきた.最近では,透析に入る前の腎不全患者においても,適度な運動が腎機能には悪影響を及ぼさずに運動耐容能やQOLの向上,糖・脂質代謝の改善などのメリットをもたらすことや,低蛋白食摂取下でも運動が蛋白異化を防止することから,腎機能障害患者の活動を過度に制限すべきではないことが指摘されている.すなわち,運動が非透析腎機能障害者の有する問題に対する治療の選択肢の一つとしても期待を集めており,腎臓リハビリの対象者がさらに増加する可能性が高い.
 しかし,腎臓リハビリに対する理解は医療者および患者の双方でいまだ十分でない.そこで,腎臓リハビリの一層の普及ならびに発展を目的として,医療関係者や研究者の職種を超えた学術団体である「日本腎臓リハビリテーション学会」が2011 年に設立された.
 本書は,このような背景のもと,この領域でトップランナーとして活躍されている日本腎臓リハビリテーション学会会員を中心に,腎臓機能障害の最新知識と腎臓リハビリの具体的進め方を執筆いただいた.また,脳卒中,心疾患,運動器疾患など重複障害を有する腎臓機能障害患者に対するリハビリの実際も執筆いただいた.
 本書の企画,編集には医歯薬出版株式会社の綾野泰子さんの手を煩わせた.
 本書は,わが国のみならず世界で初めての腎臓リハビリに関する成書である.本書が,質,量ともに優れた腎臓リハビリの普及と発展に貢献する一助となれば,編著者としてこれに勝る喜びはない.
 2012年5月
 上月正博
第I章 腎臓リハビリテーション総論
 (上月正博)
  1 腎臓機能障害の定義
   腎臓機能障害とは /慢性腎臓病(CKD)の定義 /身体障害者福祉法の腎臓機能障害の定義 /内部障害とは /内部障害の統計 /腎臓機能障害の統計 /腎臓機能障害の症状や社会問題
  2 腎臓リハビリテーションの定義とエビデンス
   慢性腎臓病(CKD)と透析療法の現況 /透析患者の生命予後 /透析患者の特徴と障害 /透析患者の社会復帰・就労・雇用 /透析患者と介護保険 /腎臓リハビリテーションの定義 /腎臓リハビリテーションのエビデンス
  3 リハビリテーション医学・医療とは
   リハビリテーション医学・医療の成り立ちと発展 /リハビリテーションの理念 /リハビリテーションの4 つの側面 /包括的リハビリテーション /リハビリテーションはそもそも包括的に行われるべきものか? /障害と国際障害分類 /リハビリテーションの実施 /リハビリテーションのチームアプローチ /コンコーダンス・リハビリテーション
  4 リハビリテーション従事者に望むこと
   世界一の超高齢社会で働くことの心構えをもつ /腎臓機能障害患者の運動耐容能の低下は看過できない /リハビリテーションは必須の医療という自覚をもつ /超高齢社会におけるリハビリテーションの注意点を心得る /リハビリテーションは“adding life to years and years to life”という自覚をもつ
第II章 腎臓病をめぐる基礎知識
 1.腎臓の機能・構造
  1 腎臓の構造(伊藤貞嘉)
   腎臓の位置と解剖 /血管系 /尿細管 /腎臓の複雑な構造の意義 /傍糸球体装置
  2 腎機能調節(伊藤貞嘉)
   糸球体濾過 /自動調節 /接合尿細管・糸球体フィードバック /圧利尿
  3 腎内分泌とその機能
   レニン・アンジオテンシン系,カリクレイン・キニン系,ナトリウム利尿ペプチド系,プロスタノイド,エンドセリン,一酸化窒素,アドレノメデュリン 廣瀬卓男・森 建文
   インスリン,グルカゴン,副甲状腺ホルモン,カルシトニン,ビタミンD3(伊藤 修)
   カテコールアミン/アセチルコリン,バソプレシン,アルドステロン/コルチゾール,エリスロポエチン(戸恒和人)
   カルボニルストレス(佐藤恵美子・森 建文・伊藤貞嘉)
  4 腎臓における物質輸送の分子機構(鈴木健弘・阿部高明)
   腎臓の物質輸送の役割 /有機溶質の輸送
  5 再生医学と腎臓(寺田典生)
   腎臓分野の再生医学 /iPS細胞を用いた腎の再生 /胎生臓器ニッチ法による腎臓再生 /異種移植の可能性 /工学技術的側面からの腎再生医療 /今後の展望
 2.腎臓機能障害の症状・症候と検査(宮崎真理子)
  1 尿量・排尿の異常
   尿量の異常 /下部尿路症状(LUTS) /下部尿路症状(LUTS)の治療
  2 浮腫と脱水
   ナトリウム・カリウム調節系 /浮腫 /脱水
  3 電解質異常
   血清ナトリウムの異常 /カリウムの異常 /カルシウムの異常 /リン代謝 /マグネシウム代謝
  4 酸塩基平衡
 3.腎臓機能障害の検査
  1 尿検査(島田美智子)
   尿の取り扱い /尿スクリーニング検査 /尿蛋白定量 /微量アルブミン尿 /尿沈渣 /尿細管障害マーカー /急性腎障害(acute kidney injury;AKI)の早期診断
  2 血液検査(今井圓裕)
   血清クレアチニン(SCr) /血液尿素窒素(BUN) /尿酸(UA) /クレアチニンクリアランス(Ccr) /血清クレアチニン(SCr)値の逆数プロット /血液尿素窒素/クレアチニン(BUN/Cr)比 /イヌリンクリアランス(Cin) /腎血漿流量(RPF) /Cockcroft-Gaultの式 /日本人のGFR推算式
  3 尿細管機能検査(熊谷天哲)
   近位尿細管機能検査 /遠位尿細管・集合管検査
  4 画像診断(川住祐介・石橋忠司)
   超音波検査 /CT検査 /MRI検査 /経静脈腎盂造影 /血管造影
  5 核医学検査(川住祐介・石橋忠司)
   腎動態シンチグラフィおよびレノグラフィ /腎静態シンチグラフィ
  6 腎生検(佐藤 博)
   腎生検の適応 /腎生検の禁忌 /腎生検の合併症 /腎生検の読み方
 4.腎臓と全身的障害の関係
  1 腎臓と血管(伊藤貞嘉)
   慢性腎臓病(CKD)と心血管疾患 /なぜアルブミン尿が心血管疾患(CVD)と関連するのか? /慢性腎臓病(CKD)の各要素と心血管疾患リスク /進化からみた腎臓と血管
  2 腎臓と心臓(上月正博)
   心腎症候群(CRS) /CRSの分類 /CRSの発症進展機序 /CRSと運動耐容能の関係
  3 腎臓と肺(海老原覚)
   腎疾患と肺疾患 /尿毒症性肺 /肺炎と急性腎障害(AKI) /肺腎症候群(PRS) /グッドパスチャー症候群(抗GBM抗体病)
  4 肝臓と腎臓(渡辺 毅)
   肝臓と腎臓の生理的機能連関 /肝疾患と腎疾患の病態における臓器間インターアクション /肥満・メタボリックシンドロームによる多臓器(脳心腎肝)連関
  5 腎臓と血液(佐々木環・内田篤志・柏原直樹)
   腎臓の血液循環 /腎臓とエリスロポエチン(EPO) /腎血流と酸素消費量 /腎臓と貧血 /腎臓と出血傾向 /腎臓と血液疾患
  6 腎臓と骨・関節(秋澤忠男・松浦弓恵)
   慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常症 /骨・ミネラル代謝異常の臨床所見 /骨・ミネラル代謝異常の予防と治療 /透析アミロイド症と骨・関節障害
  7 腎臓と脳・神経(永山 寛)
   中枢神経疾患 /末梢神経障害
  8 腎臓と膠原病(三宅勝久)
   全身性エリテマトーデス(SLE) /シェーグレン症候群 /強皮症 /ANCA関連血管炎,多発血管炎性肉芽腫症(GPA),顕微鏡的多発血管炎(MPA) /関節リウマチ /IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病) /IgG4 関連疾患
  9 腎臓と脂質異常(斉藤喬雄)
   腎疾患と脂質異常症 /原発性脂質代謝異常症 /続発性脂質代謝異常症 /腎疾患における脂質異常症の治療
 5.おもな腎臓病
  1 ネフローゼ症候群(斉藤喬雄)
   症状・原因 /診断基準・定義 /治療・予後 /運動の可否
  2 糖尿病腎症(原田 卓)
   疫学 /原因 /診断と病期分類 /治療
  3 IgA腎症(川村哲也)
   定義・概念 /疫学 /発症ならびに進展機序 /診断 /予後判定基準 /治療
  4 腎硬化症(市川 匡・木村玄次郎)
   疾患概念 /病因 /診断 /治療 /予後 /運動制限
  5 小児腎臓病(根東義明)
   糸球体疾患 /尿細管・腎間質を障害する疾患 /全身性疾患に伴って発症する腎障害 /尿路系を障害する疾患 /そのほかの腎泌尿器系の障害 /健診と小児腎疾患の生活指導 /小児の慢性腎臓病(CKD)と診療ガイドライン
 6.慢性腎臓病(CKD)
  1 慢性腎臓病(CKD)の考え方(岩津好隆・草野英二)
   CKDの重要性 /CKDの診断とステージ分類 /CKDの進行機序
  2 慢性腎臓病(CKD)の病態と成因(岩津好隆・草野英二)
   病因 /病態 /臨床経過 /治療
  3 慢性腎臓病(CKD)と各種疾患の関連(甲斐平康・山縣邦弘)
   CKDの早期徴候と進展 /CKDと高血圧 /CKDと心血管疾患(CVD) /CKDと脂質異常症 /CKDとメタボリックシンドローム /CKDと貧血 /CKDと骨・ミネラル代謝異常 /CKDとサルコペニア・フレイル
 7.血液透析
  1 尿毒症物質(秋葉 隆)
   慢性腎不全の病態 /尿毒症物質 /透析療法導入時期 /透析療法の種類と選択
  2 血液透析(HD)(秋葉 隆)
   概念 /透析法の選択基準 /管理目標 /合併症
  3 その他の血液浄化療法(福本裕美・中西 健)
   血液浄化療法の種類と特徴 /在宅透析療法
  4 ドライウエイト(DW)の設定法(永井孝憲)
   ドライウエイトの概念 /ドライウエイトと心胸郭比 /溢水の病態および臨床症状 /ドライウエイトの設定 /ドライウエイト設定のための指標 /過剰体液の管理と治療方針
 8.腎移植(天田憲利)
   腎移植の目的 /腎移植の現況 /ドナーの適応 /レシピエントの選択 /腎移植成績 /腎移植後の管理
第III章 腎臓リハビリテーションの基本と評価
  1 腎臓リハビリテーション診察の手順(上月正博)
  2 ADLの評価(鈴木文歌)
   ADLの概念 /ADL障害と腎不全 /基本的ADL評価法─BI,FIM /手段的ADL評価法─老研式活動能力指標
  3 高次脳機能・QOL・不安・うつの評価(小川佳子)
   高次脳機能の評価─HDS-R,MMSE /QOLの評価─SF-36,KDQOL TM,KDQOL TM-SF /不安の評価─MAS,STAI /うつの評価─SRQ-D
  4 骨格筋(河村孝幸)
   骨格筋と内部障害 /骨格筋の構造と収縮 /筋収縮のためのエネルギー供給 /筋線維 /運動による筋線維の変化
  5 廃用症候群(長坂 誠)
   腎不全患者と廃用 /一般骨格系 /心血管系 /代謝系・内分泌系 /腎・泌尿器 /皮膚 /中枢神経系(精神心理面) /加齢と老化
  6 サルコペニア(加藤明彦)
   どうして慢性腎臓病(CKD)患者でサルコペニアが起きるのか? /サルコペニアの評価法 /CKD患者におけるサルコペニアの頻度 /CKD患者におけるサルコペニアの臨床的な意義 /サルコペニアとフレイルの関連
  7 運動耐容能(上月正博)
   最大酸素摂取量(VO2 max) /廃用(脱調節)および身体トレーニング(持久性訓練)による循環系の変化 /運動負荷試験とその注意点,ならびに運動処方
  8 慢性腎臓病(CKD)における心肺運動負荷試験結果の特徴(齊藤正和・伊東春樹)
   慢性腎臓病(CKD)患者の心肺運動負荷試験結果 /血液透析患者の心肺運動負荷試験結果
  9 運動耐容能と生命予後(上月正博)
第IV章 腎臓リハビリテーションの実際
 1.運動療法
  1 保存期慢性腎臓病(CKD)の運動療法(伊藤 修)
   保存期CKDの運動療法 /CKD患者の運動療法のガイドライン
  2 透析患者の運動療法(上月正博)
   運動療法のガイドライン・指針 /運動療法の効果 /運動療法の実際 /日常生活指導と栄養指導 /腎臓リハビリテーションの留意点 /【症例提示】腎臓リハビリテーションでADLの著明な改善をみた症例─自験例における効果
  3 腎移植患者の運動療法(上月正博・伊藤大亮)
   移植前 /移植後 /腎移植後のリハビリテーションのポイント
  4 慢性腎臓病(CKD)患者に対する地域での運動療法─運動習慣の普及と定着(安藤康宏)
   健康習慣としての運動・身体活動 /日常生活における運動・身体活動量の指標 /慢性腎臓病(CKD)患者の運動療法としての運動習慣 /運動習慣の普及・定着
 補 運動療法の腎保護作用─腎不全動物モデルでの最新成果(上月正博)
   長期間の運動による腎機能変化 /トレッドミルを用いての長期間の運動による腎不全モデルラットでの成績
 2.食事療法
  1 保存期慢性腎臓病(CKD)患者の食事療法(北島幸枝)
   慢性腎臓病(CKD)の食事療法 /糖尿病腎症の食事療法 /栄養アセスメント /食事療法の実際 /透析導入前の栄養管理と栄養指導
  2 透析患者の食事療法(瀬戸由美)
   透析患者における食事療法の重要性 /栄養評価法 /透析患者の食事摂取基準 /エネルギー産生栄養素の摂取 /食塩・水分摂取 /カリウム(K)の摂取 /リン(P)の摂取 /食物繊維の摂取 /腹膜透析(PD)患者の食事 /治療用特殊食品 /嗜好食品 /外食・旅行時の食品
 3.薬物療法(木村 健)
  1 保存期慢性腎臓病(CKD)患者の薬物療法
   保存期慢性腎臓病(CKD)で使われる薬剤 /症状に対応する薬剤の選択
  2 透析患者の薬物療法
   薬剤投与の注意点 /使用される薬剤
  3 腎移植患者の薬物療法
   免疫抑制薬
 4.教育・日常生活指導
  1 保存期慢性腎臓病(CKD)患者の教育・日常生活指導(原田孝司)
   血圧管理 /生活習慣病の改善 /慢性腎臓病(CKD)に侵襲を与える要因 /慢性腎臓病(CKD)患者の在宅運動 /妊娠・出産
  2 通院透析患者の教育・日常生活指導(原田孝司)
   血圧管理 /ドライウエイト(DW) /感染症の管理 /内シャントおよび腹膜カテーテルの自己管理 /そのほかの生活指導 /透析患者の在宅運動 /妊娠管理
  3 在宅持続携行式腹膜透析(CAPD)患者の教育・日常生活指導(林 義満・中山昌明)
   腹膜透析の現状と患者への教育・指導 /腹膜透析液のバッグ交換 /日常の観察項目 /早急に受診すべき病態 /日常生活における注意点
 5.腎不全患者の精神・心理的問題とその対応(中元秀友)
  1 透析導入期の精神・心理的諸問題
   透析への導入に伴う透析患者のストレス /透析導入に伴う患者の心理的変化─死の受容との比較 /透析導入に伴う患者の心理的変化 /透析の「拒否」とその対応 /コミュニケーションスキルの重要性 /透析の「受容」と「適応」 /チーム医療と腎不全教室 /療法選択外来と「shared decision making(SDM)」
  2 維持透析患者の精神・心理的諸問題
   長期(維持)透析患者の心理的変化
  3 終末期患者の現状と精神・心理的諸問題
   透析患者における終末期医療 /理想の高齢者医療とは /わが国と米国における終末期医療の考え方の違い /わが国における透析患者の終末期医療の現状と医療スタッフの思い /慢性疾患である透析医療における終末期医療の現状と問題点 /これからの超高齢社会に向けて
 6.看護ケア
  1 生活者を支える看護の視点(内田明子)
   慢性腎臓病の看護 /セルフケア支援 /セルフケア確立に向けた課題 /主観的な思いを支えるケア /【症例提示】
  2 妊娠・出産時の看護(星井英里)
   透析患者の妊娠 /妊娠・出産の条件 /妊娠中の透析管理 /出産時の援助 /出産後の援助 /腹膜透析(PD)患者の妊娠 /腎移植患者の妊娠
 7.透析中の症状と対策(武居光雄)
   不均衡症候群 /高血圧 /低血圧 /胸痛 /不整脈 /皮膚のかゆみ・皮膚異常 /意識障害 /筋肉の痙攣・こむらがえり /呼吸困難 /吐血・下血 /悪心・嘔吐 /腹痛 /血管痛 /レストレスレッグ症候群(むずむず脚) /脱血不良 /回路・ダイアライザの凝血 /針が抜けることによる出血 /災害時─地震・停電・火災
 8.透析合併症と対策
  1 呼吸・循環器系合併症(大江佑治・佐藤壽伸)
   透析患者における心不全 /虚血性心疾患 /心膜炎 /肺水腫 /初回透析症候群 /閉塞性動脈硬化症(ASO) /結核症 /インフルエンザ感染症
  2 血液・消化器系合併症(佐藤浩司・佐藤壽伸)
   貧血 /ヘパリン起因性血小板減少症(HIT) /鉄沈着症 /ウイルス性肝炎 /肝硬変・肝細胞がん /多嚢胞化萎縮腎 /尿路感染症 /腎がん /消化管出血 /悪性腫瘍(肝・腎を除く)
  3 骨・関節合併症(宮坂康宣・佐藤壽伸)
   二次性副甲状腺機能亢進症 /透析アミロイドーシス /アルミニウム蓄積症
  4 脳神経合併症(水野真一・佐藤壽伸)
   脳血管障害 /透析脳症 /視力障害 /末梢神経障害 /自律神経障害
  5 糖代謝系合併症(古川暁子・佐藤壽伸)
   栄養障害 /高血糖・低血糖
  6 脂質代謝系合併症(三ツ木加代・庄司哲雄)
   成因 /病態 /診断基準 /対策・治療
  7 腹膜合併症(橋和也・佐藤壽伸)
   持続携行式腹膜透析(CAPD)のカテーテルトラブル /腹膜透析腹膜炎 /腹膜透析出口部感染症・皮下トンネル感染症 /腹膜機能低下 /被嚢性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis;EPS)
第V章 合併症に対するリハビリテーションのポイント
  1 心不全合併例へのリハビリテーション(平松義博)
   心不全合併例への運動療法の有効性と心腎連関 /心臓リハビリテーションの効果 /心臓リハビリテーションプログラム /運動処方 /抵抗運動(レジスタンストレーニング;RT) /運動の注意点 /薬物療法 /日常生活指導 /心不全患者への運動療法が腎機能へ及ぼす影響 /【症例提示】 /今後への展望
  2 狭心症合併例の心臓バイパス術後のリハビリテーション(池田こずえ・丸子扶美枝)
   リハビリテーションのポイント /【症例提示】
  3 呼吸不全のある人へのリハビリテーション(土屋善慎)
   慢性腎臓病(CKD)と呼吸器疾患 /呼吸リハビリテーションと効果 /呼吸リハビリテーションプログラム /患者状態の評価 /運動療法 /運動処方 /運動負荷試験および自覚症状からの運動強度の決定と注意点 /酸素療法および薬物療法 /栄養指導および生活指導 /【症例提示】
  4 脳卒中片麻痺合併例へのリハビリテーション(猪飼哲夫)
   慢性腎臓病(CKD)・透析患者と脳卒中との関係 /CKD・透析患者における脳卒中の急性期治療 /CKD・透析患者における脳卒中リハビリテーション /【症例提示】
  5 高次脳機能障害合併例へのリハビリテーション(上出杏里・安保雅博)
   高次脳機能障害とは /診断─画像診断,神経心理学的検査 /リハビリテーションの基本 /慢性腎不全患者の意欲低下と易疲労性 /【症例提示】
  6 摂食嚥下障害合併例へのリハビリテーション(杉山育子・藤島一郎)
   摂食嚥下障害の原因 /腎機能障害患者と摂食嚥下障害 /摂食嚥下障害のアセスメント /摂食嚥下訓練 /【症例提示】
  7 腎不全に伴う末梢神経障害例へのリハビリテーション(蜂須賀研二・和田 太)
   尿毒症性ニューロパチー(UN) /リハビリテーション /【症例提示】ソケットに工夫を要した大腿切断症例
  8 大腿骨近位部骨折合併例へのリハビリテーション(栢森良二)
   原因と誘因 /リハビリテーションの意義とアセスメント /リハビリテーションの内容と注意点
  9 下肢切断合併例へのリハビリテーション(武居光雄)
   切断に対するリハビリテーション /下肢切断患者のADL・QOL向上のために /【症例提示】
  10 皮膚障害合併例へのリハビリテーション(瀧 史香・小松康宏)
   慢性腎臓病(CKD)患者に多く認める皮膚疾患の疫学と病態 /CKD患者の皮膚疾患のアセスメント・治療・予防 /CKD患者で皮膚疾患患者のリハビリテーション上の注意点
  11 外来維持血液透析患者における長期在宅運動療法(海老原至・山縣邦弘)
   透析患者における運動能力の現状 /透析患者における運動療法の意義 /透析患者における運動療法の適応と禁忌 /透析患者における運動療法の方法・頻度 /透析患者が抱える社会的背景 /具体的な在宅運動療法 /維持透析患者に対する運動療法の課題 /【症例提示】
第VI章 腎臓リハビリテーションの運営
 (上月正博)
   診療報酬制度の概要 /腎不全期患者指導加算 /自転車エルゴメータの透析ベッドへの設置 /各種関連学会

 column
  透析Q&A(上月正博)
   透析を始めるとどのような身体障害者の認定を受けるのですか?/透析の費用はどれくらいかかりますか?
  透析と入浴Q&A(秋葉 隆)
   血液透析をした日は入浴していいのですか?/腹膜透析でも入浴は可能ですか?
  透析Q&A(永井孝憲)
   血液透析は1 日何時間くらい行うと効果的なのでしょうか?/透析する前に水を飲んだり,サウナに行って減量してもよいのでしょうか?
  食品交換表とは(北島幸枝)
   食品交換表の利点/糖尿病腎症の食品交換表/腎臓病食品交換表
  食品の選択にあたって(北島幸枝)
  透析時の食事療法Q&A(瀬戸由美)
   血液透析(HD)と腹膜透析(PD)では食事内容が違うのですか?/蛋白質制限で体力は落ちないのですか?/塩分制限されたときでも,食事をおいしく食べる方法は?/食品のナトリウム(Na)表示にだまされるな!/カリウム(K)が多く含まれている食品は?/リン(P)が多く含まれている食品は?
  高齢透析患者の看護のポイント(内田明子)
   透析患者の高齢化の現状/高齢透析患者の特性/高齢透析患者の看護のポイント
  小児透析患者の看護のポイント(内田明子)
   小児透析患者の現状/小児透析患者の特性/小児透析患者の看護のポイント

 略語集
 ふろく
 索引