やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集 リハビリテーション薬剤臨床推論
企画主旨
 編集委員 小瀬英司
 現代社会における高齢化の進行や慢性疾患の増加に伴い,フレイルやサルコペニアの増加が深刻な課題となっており,健康寿命の延伸を図るためにリハビリテーション医療の重要性がこれまで以上に高まっている.高齢者や多疾患併存状態(マルチモビディティ)に対する医療では,身体機能の回復や維持を目指すリハビリテーションと,複数の薬剤治療が同時に行われるケースが一般的であり,これらが互いに影響し合うことで,治療の複雑性が増していく.また高齢者では,肝腎機能の低下による薬物代謝の変化やポリファーマシーによる薬物間相互作用のリスクの増加によって,薬物有害事象の発現リスクがより一層高くなるため,慎重な薬剤管理が求められる.このような状況下では,薬物治療の効果や薬物有害事象がリハビリテーションの進行に影響を与える可能性があり,リハビリテーションの効果を最大化するためには,リハビリテーション薬剤の観点から患者の状態を総合的に判断するための臨床推論が求められる.またリハビリテーションの過程では,患者の身体機能や状態が常に変化することがある.これは,リハビリテーションによって患者の筋力や機能が回復する一方で,新たな合併症や薬物有害事象が発生する可能性があるためである.たとえば,筋力が回復したことで活動量が増加し,関節に過度の負担がかかったり,降圧薬の使用により起立性低血圧が生じ,リハビリテーションが中止となったり,リハビリテーション中にふらつきや転倒のリスクが増加することもある.このような動的な変化に対処するためには,継続的かつ柔軟な臨床推論を行う必要がある.
 本書は,リハビリテーション薬剤の視点から,さまざまなケーススタディを通じて臨床推論のプロセスを深く掘り下げ,実践的に学べるように構成されている.各分野のエキスパートの先生方が,具体的な症例をもとに診断の考え方や治療選択の根拠を詳しく解説し,薬剤の適正使用や患者の健康状態を考慮した包括的なアプローチについて示していただいた.本書が,医療従事者が日々の臨床現場で直面する複雑な状況や多様な課題に対して効果的に対処し,患者の治療アウトカムを最大化するための実践的かつ重要なリソースとなることを期待している.
特集 リハビリテーション薬剤臨床推論
 企画主旨
 臨床推論とは(小瀬英司)
 食欲不振が影響した症例:腸管蠕動運動抑制薬(東 敬一朗)
 食欲不振が影響した症例:味覚障害(篠永 浩)
 摂食嚥下障害が影響した症例(藤原久登)
 覚醒不良が影響した症例(山元孝俊)
 認知機能低下が影響した症例(中道真理子)
 ふらつきが影響した症例(遠藤秀竜)
 便秘が影響した症例(武藤浩司)
 せん妄が影響した症例(田中絵里子)
 排尿障害が影響した症例(松本彩加)

連載
新連載【ススメ!リハビリテーション栄養指導士(1)】
 今こそ,リハビリテーション栄養指導士に!(藤原 大)

リハビリテーション栄養論文紹介(15)
 (前川健一郎)

原著 Malnutrition and 1-Year All-Cause Mortality in Older Residents at an Integrated Facility for Medical and Long-Term Care
 (Yoji Kokura)

サーベイランス報告 第9回サーベイランス「GLIM基準,リハ・栄養・口腔の三位一体の取り組み,リハ栄養指導士の現状」の結果報告
 (小蔵要司 社本 博・他)

第14回日本リハビリテーション栄養学会学術集会 抄録集

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
 日本リハビリテーション栄養学会誌投稿規定
 次号予告