やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集 脳卒中のリハビリテーション栄養
 企画主旨
 編集委員 永野彩乃
 脳卒中は日本人の死亡原因の第4位であり,高齢者人口の増加が進行するなか,脳卒中の患者数も増加の一途をたどると考えられている.厚生労働省研究班によると,脳卒中の患者数は2020年頃に最大となり,287万人に達すると予想されている.
 脳卒中は麻痺などさまざまな後遺症を伴うため,発症後長期にわたるリハビリテーション(以下リハ)を必要とし,寝たきりなど要介護の原因の約3割を占める疾患である.脳卒中のリハは,後遺症の軽減を目的として広く行われ,近年は超急性期からのリハが重要視されるようになってきた.一方で脳卒中患者では糖尿病や脂質異常症,肥満などの代謝性リスク因子に加え,高齢化に伴い,発症前から栄養状態の低下やサルコペニアのリスクをもっている場合も多い.また,麻痺などにより活動性が低下しやすく,摂食嚥下障害により食事摂取量が低下しやすいなど,入院中に栄養状態悪化やサルコペニアを伴いやすい.脳卒中患者における栄養状態とリハビリテーションアウトカムの関連も注目されており,急性期からのリハ栄養の重要性がよりクローズアップされている.
 脳卒中のリハでは,多岐にわたる後遺症に対し,多様な専門職が協働して取り組むことが求められる.各専門職がそれぞれの強みを発揮し,そのつながりを強固にすることで,さらなるアウトカムの向上を目指すことができる.また,脳卒中の発症と再発を予防するための市民への啓発と街づくりもこれからの高齢化を支える重要な視点である.さらに,摂食嚥下障害により経口摂取が困難な場合の栄養投与方法など,倫理的問題と意思決定支援に対しても向き合っていく必要がある.
 本特集では,脳卒中とサルコペニア,栄養についての概論から始まり,各専門職の立場からリハ栄養の実践について,さらにはリハ栄養に基づく街づくりと脳卒中の摂食嚥下障害に対する倫理的視点について,各領域のエキスパートの先生方に執筆をお願いした.職種やセッティングを問わず,幅広く脳卒中の診療,リハ,ケアの知識を獲得できる内容であり,読者が脳卒中患者のADL・QOLを最大限に高めるための臨床実践に役立てていただければ幸いである.
特集 脳卒中のリハビリテーション栄養
 企画主旨
 1.脳卒中と低栄養,過栄養,サルコペニア(高畠英昭)
 2.それぞれの専門性から考える
  (1)医師:脳卒中急性期のリハ栄養は「悪くしない」が大目標(社本 博)
  (2)管理栄養士:脳卒中リハ栄養サポートの実践─回復期リハ病棟を中心に─(西山 愛)
  (3)看護師:看護師だからできる脳卒中のリハビリテーション栄養〜看護師の役割と強みを活かす〜(吉田朱見)
  (4)理学療法士:理学療法士による脳卒中に対するリハ栄養の実践(備瀬隆広 吉村芳弘)
  (5)作業療法士:「食べる」ことから「したい作業」を支援する(齋藤嘉子)
  (6)言語聴覚士:食を通じてのリハビリテーション─脳卒中の嚥下リハビリテーションと栄養管理における言語聴覚士の役割(大渡崇世)
  (7)薬剤師:脳卒中リハにおける薬剤師の役割とリハ薬剤の視点(牧 宏樹)
  (8)歯科医師:誤嚥性肺炎予防と摂食嚥下障害への歯科的対応(藤本篤士)
  (9)歯科衛生士:脳卒中と口腔機能障害との関連からみる歯科衛生士の役割(白石 愛 吉村芳弘)
 3.退院後の継続支援―リハビリテーション栄養と街づくり
  病院から地域へリハ栄養をつなげることの重要性や地域との連携,継続支援(酒向正春)
 4.脳卒中の摂食嚥下障害と臨床倫理(藤島一郎)

連載
【災害支援とリハビリテーション栄養(4)】
 リハビリテーション専門職が行う災害支援(小島 香)

【リハ栄養あるある(4)】
 太っているからって“痩せる”だけではダメなんです!〜骨格筋量にもフォーカスあてられていますか?〜(神田由佳)

リハビリテーション栄養 論文紹介(4)
 (井上達朗)

原著 Presence of a rehabilitation nutrition team,evaluation of sarcopenic dysphagia and nutritional goal setting:A cross-sectional survey
 (Yoji Kokura,Hidetaka Wakabayashi et al)

原著 Validity of predictive equations for resting energy expenditure in sarcopenic older adults in long-term care
 (Anna Yamanouchi,Yoshihiro Yoshimura et al)

原著 脳卒中回復期高齢者に対するBCAA強化栄養補助食品の日常生活動作の改善効果に関する準ランダム化介入研究
 (藤井 鈴 吉村芳弘・他)

症例報告 著しい体重減少と身体機能低下を契機に診断された膵頭十二指腸切除8年後の膵性糖尿病に対するリハビリテーション栄養:症例報告
 (永岡せい子 吉村芳弘)

原著 Relationship of the registered dietitian ward assignment to activities of daily living and swallowing function recovery of patients in rehabilitation wards
 (Ai Nishiyama,Hidetaka Wakabayashi et al)

第9回日本リハビリテーション栄養学会学術集会 抄録集

 日本リハビリテーション栄養学会 入会のすすめ
 日本リハビリテーション栄養学会誌投稿規定
 次号予告