やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 われわれが運動器疾患を扱う場合,まず求められますのは,運動器の基礎知識を学ぶことであります.たとえば,視診,触診,評価テストは言うに及ばず,治療の処方をするに至っては,四肢・体幹の機能解剖学の理解が不可欠となります.しかし,十分に理解していますかと問われると,必ずしもそうではないところも多々あるのが普通ではないでしょうか.そのため,不安ばかりが先行して納得のいかない治療に甘んじているおそれがあります.
 本書は,運動器疾患を扱う臨床家,さらにその道に進まれる学生さんを対象に,骨・関節の学習を容易にするための入門書として執筆したものであります.
 巷の講演で,多くの学生さん,臨床の先生からいただく質問には,
 1.最近になって機能解剖の重要性が分かってきたが,今さら学ぶ機会がない,
 2.どのようにすれば,難しくみえる機能解剖を自力でマスターすることができるのか,
 などがあります.
 この点を解消するためには,第一に,骨・関節に限定した基礎知識を知ることが重要であり,それには,できれば写真を通して,骨・関節に関する解剖と機能を学ぶことが理解しやすいと考えられます.その目的を達成するために著したのが本書です.あくまでも,機能解剖学を学ぶ前段階としての「骨・関節の機能的観察法」ということになります.
 写真を楽しみながら,気楽に,知識の整理,学習を進めてください.
 最後に,本書の写真,およびCG作成にご協力いただいた丸山顕嘉君,写真撮影にご協力いただいた前田和孝君,梅田聖浩君,さらに,モデルとして快くご協力いただいた上野麻実さん,鈴木耕平君にこの場を借りてお礼を言いたいと思います.
 また,限られた期間内での発行に多大なるご尽力をいただきました医歯薬出版の竹内大氏に心より感謝申し上げます.
 明治国際医療大学保健医療学部
 竹内義享
I.総論
 1.肢位
 2.運動の面と軸
 3.運動の方向
  1)基本的な運動方向 2)注意の必要な動き
 4.筋収縮の種類
  1)等張性収縮 2)等尺性収縮 3)等運動性収縮
 5.筋の働き
  1)動筋 2)拮抗筋 3)固定筋(安定筋) 4)共同筋
 6.1関節筋と2関節筋
  1)1 関節筋 2)2関節筋
 7.筋の形状
 8.立位姿勢のバランスとランドマーク
 9.重心の位置
 10.関節の分類
  1)可動関節(滑膜性関節) 2)線維性連結 3)軟骨性連結
 11.滑膜性関節
 12.滑液
  1)滑液とは 2)滑液の特徴 3)滑液の役割
 13.靭帯の働き
 14.テコの応用
II.肩関節
 1.広義の肩関節
 2.肩関節を構築する骨
  1)鎖骨 2)肩甲骨 3)上腕骨
 3.肩関節の関節包,滑液包,靭帯
  1)関節包 2)滑液包 3)靭帯
 4.肩関節(広義)の構成
  1)関節上腕関節(または肩甲上腕関節) 2)胸鎖関節 3)肩鎖関節 4)第2肩関節 5)肩甲胸郭関節
 5.肩関節の動き
  1)肩関節の運動 2)肩甲骨面 3)ゼロポジション 4)肩甲上腕リズム 5)臼蓋上腕リズム
 6.肩関節の筋肉
  1)関節上腕関節にかかわる筋肉 2)肩甲胸郭関節にかかわる筋肉
III.肘関節
 1.肘関節の解剖学的特徴
 2.肘関節を構築する骨
  1)上腕骨(遠位端) 2)橈骨(近位端) 3)尺骨(近位端)
 3.生理的外反肘
 4.肘関節の関節包,靭帯
  1)関節包 2)靭帯 3)線維骨性輪の役割
 5.前腕の回旋による橈骨頭の運動
  1)前腕の動きと橈骨頭 2)前腕の動きと近位橈尺関節
 6.ヒューター三角,ヒューター線
 7.骨間膜
  1)正しい回内―回外の計測 2)橈骨と尺骨の重なり 3)骨化核(骨端核)の発生
 8.肘関節の神経,筋肉
  1)筋皮神経と筋肉 2)橈骨神経と筋肉 3)正中神経と筋肉 4)尺骨神経と筋肉
IV.手関節
 1.手関節・手部を構築する骨
  1)近位手根列を構成する骨 2)遠位手根列を構成する骨 3)中手骨 4)指骨
 2.手関節・手部の構成
  1)橈骨手根関節 2)手根中央関節 3)手根間関節 4)手根中手関節(CM関節) 5)中手指節関節(MP関節) 6)指節間関節(IP関節)
 3.手関節・手部の靭帯
  1)手関節の靭帯 2)母指 CM関節の靭帯 3)MP関節の靭帯 4)IP関節の靭帯
 4.手関節の筋肉
  1)手関節の運動 2)外在筋 3)内在筋
V.股関節
 1.股関節を構築する骨
  1)大腿骨 2)寛骨
 2.股関節の関節包,靭帯,滑液包
  1)関節包と靭帯 2)滑液包 3)大腿骨頭と寛骨臼の位置 4)アライメント
 3.股関節の動き
  1)屈曲―伸展 2)内旋―外旋 3)内転―外転 4)2関節筋の重要性
 4.股関節の筋肉
  1)屈曲に作用する筋 2)伸展に作用する筋 3)外転に作用する筋 4)内転に作用する筋 5)外旋に作用する筋
VI.膝関節
 1.膝関節の構造
 2.膝関節を構築する骨
  1)大腿骨(遠位端) 2)膝蓋骨 3)脛骨(近位端) 4)腓骨(近位端) 5)アライメント
 3.膝関節の靭帯
  1)側副靭帯 2)前・後十字靭帯
 4.半月
 5.内側,外側の支持機構
  1)内側の静的・動的スタビライザー 2)外側の静的・動的スタビライザー
 6.膝関節の動き
  1)脛骨大腿関節 2)膝蓋大腿関節 3)膝蓋骨の役割
 7.膝関節の筋肉
  1)屈曲に作用する筋 2)伸展に作用する筋 3)下腿の内旋に作用する筋 4)下腿の外旋に作用する筋 5)骨梁
VII.足関節
 1.足関節の解剖学的特徴
 2.足関節・足部を構築する骨
  1)脛骨 2)腓骨 3)距骨 4)踵骨 5)舟状骨 6)楔状骨 7)立方骨 8)中足骨 9)指節骨
 3.足関節・足部の構成
  1)近位脛腓関節 2)遠位脛腓関節 3)距腿関節 4)距踵関節(距骨下関節) 5)横足根関節(ショパール関節) 6)足根中足関節(リスフラン関節) 7)中足骨間関節 8)中足指節関節(MTP関節) 9)指節間関節
 4.足関節・足部の靭帯
  1)内側側副靭帯 2)外側側副靭帯 3)距踵靭帯 4)骨間距踵靭帯 5)バネ靭帯(底側踵舟靭帯) 6)二分靭帯 7)足底靭帯 8)足背の靭帯 9)中足指節関節の側副靭帯
 5.足のアーチ
  1)内側縦アーチ 2)外側縱アーチ 3)足底腱膜
 6.足関節の筋肉
  1)外在筋 2)内在筋

 文献
 索引