序
平成21年4月から,WHO/WPROによって決定された標準経穴部位が導入されることとなった.世界標準の誕生は,史上4度目の快挙とされているが,経穴は単に国家試験の暗記科目で,ひたすら取穴法を覚えなければならないとてもつまらない科目ではなく,何らかの異常があるとき,身体のあちこちに独特の反応が出現し,そして,顕著な反応のある穴に鍼や灸の治療を施すことによって,愁訴の軽減や疾病の治癒を導くことができるとてもユニークで興味深い内容を包括している.また,皮内鍼をわずか0.5mm程度皮内に刺鍼する(まったくの無痛)といった極めて軽微な刺激であっても,動作時痛のドラマティックな軽減が刺鍼直後に見られることも茶飯事である.そのためには,経穴についてより親しむことが臨床への応用を可能にするものと考える.
特に経穴の治効作用は,(1)局所的な治療効果(疼痛部位局所の圧痛点への刺激は局所症状を軽減する可能性がある),(2)経絡的な治療効果(愁訴と関連する末梢の経絡上の反応穴への刺激によって,遠隔的に治療効果を発揮することができる),(3)穴性的な治療効果(穴性・穴位効能に基づいて治療することによって,単穴刺激で全身的に及ぶ広範な治療効果を導くことができる),(4)その他,経験的な効果などがある.中医学では,「穴学」として種々のテキストが発刊されているが,日本ではあまりこの種のテキストは発刊されていないのが現状である.
そこで,本書の特徴は,まず,(1)新旧経穴位置の違いや取穴法についてまとめるとともに,(2)中医学的な経穴の臨床応用の資料としての穴性を取り上げた.たとえば,風邪などの外感病には「解表」,「去風」の穴,重だるさや,梅雨時の倦怠感には「利湿」,「去痰」,「健脾」などの作用の記された穴が有用である.また,(3)臨床のヒントとして,どのような疾患や愁訴に用いられてきたのか,さらに,筆者の実際の臨床経験に照らして,単穴で大きな効果を示したり,組み合わせて有効であったものを詳しく取り上げた.取り上げた内容はそれほど多いものではないが,ぜひ追試頂き,ご批判,ご叱正頂ければ幸いである.その他,$経穴と深く関連する解剖の特徴や経穴のデルマトームについても一部取り上げた.
なお,経穴部位が異なる経穴があるが,両方の取穴法ですべて検証あるいは確認したわけではなく,新・旧経穴部位によって,治療効果そのものに差が生じる可能性は否定できないことをお断りしておきたい.
一方,経穴の反応は気・血・津液の3つの要素によって縦・横・深さの三次元的に種々の反応が出現する.気の異常は表層,血の異常は深層,津液の異常(湿痰)はその中間に出現することが多いようである.したがって,経穴部位の反応形態自体が気・血・津液の状態を反映しているとも言えよう.
本書は,「経絡経穴学(経絡経穴学II)」の講義のために3年前から準備していたものであるが,WHOの標準経穴部位の発刊にともなって全面的に再度内容を吟味して発刊するものである.
全体を通じて,独断のそしりを免れない可能性があるが,日本の伝統鍼灸において,経穴や経絡はなくてはならぬ重要な位置を占めているにもかかわらず,十分な成果や研究書が出されていないのが悲しい現実である.本書が,経穴の面白さ,経絡現象を体感するきっかけの書となれば,望外の幸せである.
2009年5月吉日
篠原昭二
平成21年4月から,WHO/WPROによって決定された標準経穴部位が導入されることとなった.世界標準の誕生は,史上4度目の快挙とされているが,経穴は単に国家試験の暗記科目で,ひたすら取穴法を覚えなければならないとてもつまらない科目ではなく,何らかの異常があるとき,身体のあちこちに独特の反応が出現し,そして,顕著な反応のある穴に鍼や灸の治療を施すことによって,愁訴の軽減や疾病の治癒を導くことができるとてもユニークで興味深い内容を包括している.また,皮内鍼をわずか0.5mm程度皮内に刺鍼する(まったくの無痛)といった極めて軽微な刺激であっても,動作時痛のドラマティックな軽減が刺鍼直後に見られることも茶飯事である.そのためには,経穴についてより親しむことが臨床への応用を可能にするものと考える.
特に経穴の治効作用は,(1)局所的な治療効果(疼痛部位局所の圧痛点への刺激は局所症状を軽減する可能性がある),(2)経絡的な治療効果(愁訴と関連する末梢の経絡上の反応穴への刺激によって,遠隔的に治療効果を発揮することができる),(3)穴性的な治療効果(穴性・穴位効能に基づいて治療することによって,単穴刺激で全身的に及ぶ広範な治療効果を導くことができる),(4)その他,経験的な効果などがある.中医学では,「穴学」として種々のテキストが発刊されているが,日本ではあまりこの種のテキストは発刊されていないのが現状である.
そこで,本書の特徴は,まず,(1)新旧経穴位置の違いや取穴法についてまとめるとともに,(2)中医学的な経穴の臨床応用の資料としての穴性を取り上げた.たとえば,風邪などの外感病には「解表」,「去風」の穴,重だるさや,梅雨時の倦怠感には「利湿」,「去痰」,「健脾」などの作用の記された穴が有用である.また,(3)臨床のヒントとして,どのような疾患や愁訴に用いられてきたのか,さらに,筆者の実際の臨床経験に照らして,単穴で大きな効果を示したり,組み合わせて有効であったものを詳しく取り上げた.取り上げた内容はそれほど多いものではないが,ぜひ追試頂き,ご批判,ご叱正頂ければ幸いである.その他,$経穴と深く関連する解剖の特徴や経穴のデルマトームについても一部取り上げた.
なお,経穴部位が異なる経穴があるが,両方の取穴法ですべて検証あるいは確認したわけではなく,新・旧経穴部位によって,治療効果そのものに差が生じる可能性は否定できないことをお断りしておきたい.
一方,経穴の反応は気・血・津液の3つの要素によって縦・横・深さの三次元的に種々の反応が出現する.気の異常は表層,血の異常は深層,津液の異常(湿痰)はその中間に出現することが多いようである.したがって,経穴部位の反応形態自体が気・血・津液の状態を反映しているとも言えよう.
本書は,「経絡経穴学(経絡経穴学II)」の講義のために3年前から準備していたものであるが,WHOの標準経穴部位の発刊にともなって全面的に再度内容を吟味して発刊するものである.
全体を通じて,独断のそしりを免れない可能性があるが,日本の伝統鍼灸において,経穴や経絡はなくてはならぬ重要な位置を占めているにもかかわらず,十分な成果や研究書が出されていないのが悲しい現実である.本書が,経穴の面白さ,経絡現象を体感するきっかけの書となれば,望外の幸せである.
2009年5月吉日
篠原昭二
序
凡例
序章
1.経絡 2.十二経脈(霊枢経脈篇第10) 3.奇経八脈 4.十二経別(霊枢経別篇第11) 5.十二経筋(霊枢経筋篇第13) 6.六経皮部(十二皮部) 7.絡脈
1.督脈(GV)
2.任脈(CV)
3.手太陰肺経(LU)
4.手陽明大腸経(LI)
5.足陽明胃経(ST)
6.足太陰脾経(SP)
7.手少陰心経(HT)
8.手太陽小腸経(SI)
9.足太陽膀胱経(BL)
10.足少陰腎経(KI)
11.手厥陰心包経(PC)
12.手少陽三焦経(TE)
13.足少陽胆経(GB)
14.足厥陰肝経(LR)
参考文献
索引(一般索引 経穴索引)
凡例
序章
1.経絡 2.十二経脈(霊枢経脈篇第10) 3.奇経八脈 4.十二経別(霊枢経別篇第11) 5.十二経筋(霊枢経筋篇第13) 6.六経皮部(十二皮部) 7.絡脈
1.督脈(GV)
2.任脈(CV)
3.手太陰肺経(LU)
4.手陽明大腸経(LI)
5.足陽明胃経(ST)
6.足太陰脾経(SP)
7.手少陰心経(HT)
8.手太陽小腸経(SI)
9.足太陽膀胱経(BL)
10.足少陰腎経(KI)
11.手厥陰心包経(PC)
12.手少陽三焦経(TE)
13.足少陽胆経(GB)
14.足厥陰肝経(LR)
参考文献
索引(一般索引 経穴索引)