やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序 歳寒三友 ―経穴・耳穴・頭鍼ー
 松竹梅は「歳寒三友」と言われる.風雪や厳しい寒さを凌ぎ,希望となる緑を保つ松竹と,厳冬の中で凛々として花を開き,いち早く春を告げる梅は,古来より愛されている.松竹梅のように十四経脈経穴,耳穴,頭鍼も,古今東西,悠久な歳月の流れを問わず旺盛な生命力を保っている.それゆえに,上梓した《経穴臨床解剖マップ》,《耳穴臨床解剖マップ》に本書《頭鍼臨床解剖マップ》を加える姉妹3書は,歳寒三友を直喩し現代や未来の鍼灸医療の発展に寄与したい.
 頭鍼療法は,1950年末に始まり,方氏頭鍼,湯氏頭鍼,朱氏頭鍼,焦氏頭鍼,林氏頭鍼,劉氏頭鍼および山元氏新頭鍼などの諸説があるが,頭皮上にみる大脳皮質の機能局在は解剖生理の理論と共通している.臨床では,脳疾患をはじめ,鎮静,鎮痛および運動や感覚障害の改善に用いている.1983年に中国鍼灸学会は「頭皮鍼刺激部位国際標準化」を提案し,1984年6月に東京で開催されているWHO/WPRO(WHO西太平洋地域事務局)会議で,「頭皮鍼穴名称国際標準」として同意が得られ,1989年11月にWHOが主催する「鍼灸経穴部位国際標準化」の会議で頒布された.
 本書は,臨床頭鍼に焦点をあて,WHO/WPRO国際頭皮鍼穴名称およびその頭鍼に関する解剖生理をイラストで示している.臨床編では,できるかぎり今までの頭鍼臨床を集大成し,その処方をまとめている.
 歳寒三友,著者と読者との絆をつなぐのは,編集者の心労によるものである.この十数年の間に≪経穴マップ≫(第1版)をはじめ数多くの出版に尽力して頂いた医歯薬出版竹内 大氏が新春一月に円満に退職される.本書が竹内氏にとって最後の仕事となることに感慨無量である.衷心より「お疲れ様・ありがとう」と表したい.
 2015年立春
 王 暁明
 豊洲にて
 序 歳寒三友 経穴・耳穴・頭鍼
 本書の使い方
第1章 頭鍼の概説
 1.頭鍼とは
 2.頭鍼の沿革と流派
 3.頭鍼の古典説
 4.頭鍼の現代説
第2章 頭鍼の基礎
 1.頭蓋骨(前面)
 2.頭蓋骨(側面)
 3.頭蓋骨(頭頂面)
 4.頭蓋骨(後面)
 5.大脳半球の葉(外側面)
 6.ブロードマンの領野(外側面)
 7.大脳皮質の体性感覚野
 8.中心後回(一次体性感覚野)への人体配分
 9.大脳皮質の運動野
 10.中心前回(一次運動野)への人体配分
 11.頭部の動脈
 12.頭部の静脈
 13.頭部の神経知覚域
 14.頭部の横断面
 15.脳機能野の体表区画
第3章 頭鍼の部位
 1.額区
 2.側頭区
 3.頭頂区
 4.後頭区
第4章 頭鍼の刺法
 1.鍼具と刺入法
 2.手技
 3.鍼法
 4.電気パルス(電鍼法)
 5.皮内鍼
 6.刺絡(瀉血)
 7.禁忌・不良反応・過誤
第5章 頭鍼の臨床
 1.精神疾患の頭鍼療法
  (1)精神疾患
   1.認知症 2.統合失調症 3.パニック障害
   4.強迫性障害(強迫神経症) 5.心的外傷後ストレス障害
   6.摂食障害 7.身体化障害・疼痛性障害・心気症
   8.睡眠障害 9.心身症 10.薬物依存
   11.アルコール依存症・ニコチン依存症 12.心臓神経症
   13.性機能障害(勃起障害) 14.チック障害 15.てんかん
 2.神経・筋疾患の頭鍼療法
  (2)神経・筋疾患
   1.一過性脳虚血発作(TIA) 2.脳卒中 3.頭部外傷後遺症
   4.ハンチントン病 5.パーキンソン病 6.自律神経障害
   7.痙性対麻痺 8.筋萎縮性側索硬化症
   9.アテトーシス・ジストニー・片側バリズム 10.ミオクローヌス
   11.メージュ症候群 12.多発ニューロパチー
   13.ギラン・バレー症候群 14.特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)
   15.周期性四肢麻痺 16.重症筋無力症
   17.視床痛(中枢性疼痛) 18.頭痛
   19.三叉神経痛・舌咽神経痛・後頭神経痛
   20.肋間神経痛・坐骨神経痛 21.めまい 22.メニエール病
   23.乗り物酔い(動揺病) 24.本態性振戦
 3.環境・職業因子による疾患の頭鍼療法
  (3)環境・職業因子による疾患
   1.急性放射線障害 2.高山病 3.振動障害
   4.VDT作業による障害 5.職場不適応症
 4.整形外科疾患の頭鍼療法
  (4)整形外科疾患
   1.腰痛症 2.腰椎椎間板ヘルニア
   3.腰椎変形性脊椎症・脊柱管狭窄症 4.膝関節の症候
   5.下腿の症候 6.足関節の症候
   7.頸椎症性脊髄症・頸部神経根症 8.頸椎捻挫
   9.五十肩・腱板断裂(損傷) 10.胸郭出口症候群
   11.頸肩腕症候群・肩こり 12.肘関節の疾患
   13.手関節の症候
 5.泌尿器系疾患の頭鍼療法
  (5)泌尿器系疾患
   1.腎・尿管結石 2.膀胱炎 3.神経因性膀胱
   4.前立腺炎症候群 5.排尿障害 6.腎透析のケア
 6.産婦人科疾患の頭鍼療法
  (6)産婦人科疾患
   1.月経前症候群 2.月経異常・月経困難症
   3.帯下・外陰そう痒・外陰痛 4.乳房痛
   5.妊娠悪阻・妊娠腰痛・坐骨神経痛 6.更年期障害
 7.皮膚疾患の頭鍼療法
  (7)皮膚疾患
   1.アトピー性皮膚炎 2.接触皮膚炎 3.皮膚そう痒症
   4.じん麻疹 5.虫さされ・ストロフルスによる痒疹
   6.薬疹 7.単純疱疹・帯状疱疹
   8.多汗症・汗疱(異汗性湿疹)・汗疹(あせも)
   9.ベーチェット病 10.脱毛症
 8.眼科・耳鼻咽喉科疾患の頭鍼療法
  (8)眼科・耳鼻咽喉科疾患
   1.眼精疲労 2.ドライアイ 3.眼瞼下垂
   4.その他の眼症候 5.咽喉症候 6.耳鳴・難聴
   7.花粉症・アレルギー性鼻炎
 9.小児疾患の頭鍼療法
  (9)小児疾患
   1.小児てんかん 2.小児の重症筋無力症
   3.小児の注意欠如・多動性障害 4.脳性麻痺・小児麻痺
   5.言葉の遅れ 6.夜驚症 7.夜尿症
 10.内科疾患の頭鍼療法
  (10)内科疾患
   1.倦怠感 2.冷え性(症)・ほてり,のぼせ
   3.高血圧・低血圧 4.食欲不振・肥満・やせ
   5.かぜ症候群・咳嗽・痰・喘息 6.動悸・息切れ・胸痛
   7.いびき 8.胸焼け・げっぷ・悪心,嘔吐
   9.胃痛・胃不快感 10.腹痛 11.下痢・便秘
   12.糖尿病 13.バセドウ病 14.痛風
   15.関節リウマチ(RA) 16.全身性エリテマトーデス(SLE)
 11.緩和医療の頭鍼療法
  (11)緩和医療
   1.がん
第6章 諸氏の頭鍼療法
 1.焦氏頭鍼
 2.朱氏頭鍼
 3.方氏頭鍼
 4.湯氏頭鍼
 5.林氏頭鍼
 6.劉氏頭鍼
 7.山元氏頭鍼

 補足.頭鍼療法と,経頭蓋磁気刺激,反復経頭蓋磁気刺激
 付.主要参考図書
 索引