やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦の序
 アスリートの傷害予防に関する著書は,すでに多数出版されています.しかし,それらの内容は男性あるいは女性アスリートの心身の特性をしっかりと捉えての内容となっていないものが大部分であります.男性・女性の性差は,心身(身体)機能に厳然として存在していることからも,一般的な記述では女性アスリートの傷害予防としては不十分であります.これらの状況を踏まえて,今回『女性アスリートのための傷害予防トレーニング』が出版されることは,女性スポーツ医学に関わる身としては,非常に嬉しく,企画・編集を担当された諸兄に大いなる賛辞を贈りたいと思います.
 本書は3 部構成となっております.その特徴・意義を記させて頂きます.
 第I部「女性アスリートのからだと心」は,女性アスリートに関わる基本事項について,それぞれの分野でのオピニオンリーダーの方々により,分かりやすく解説されています.女性アスリートに関わる諸問題を理解する上でも非常に役に立つと思われます.
 第II部「傷害予防のための部位別トレーニングの実際」は,頭頸部,体幹,上肢,下肢に分け,それらの部位の傷害の特徴,特に女性アスリートの特徴を簡明に解説しています.さらに,傷害予防のためのトレーニング法の基本について,図・写真を多用して分かりやすく記述されており,すぐにでも実施できるように配慮がなされています.
 第III部「種目別の傷害予防トレーニングとその実際」は,20 種目にも及ぶ競技種目について,それぞれの競技に直接関わっておられるアスレティックトレーナーの方々により,現場に即した記載がなされております.各種目において,競技特性を簡明に解説した後に,身体特性および傷害の特徴が最初に示されています.次いで,それら傷害予防のためのトレーニングの実際について,エビデンスに基づいて,写真を多用して解説されています.まさに,競技特性を考慮した傷害予防のトレーニングとして,すぐにでも応用できるものと思われます.
 本書は女性アスリートのサポート・トレーニングに直接関わるアスレティックトレーナーばかりでなく,その他の職種の方々(理学療法士,柔道整復師,はり師,きゅう師など)が女性アスリートのケア・サポートを行う場合にも大いに役立つものと思われます.さらに,スポーツ医学を志す若い医師においても,女性アスリートの傷害の特性・特徴,さらにその予防のためのトレーニングのあり方を知るための基礎的なテキストとして非常に有用と思われます.
 本書は,女性アスリートの傷害予防に関わる種々の職種の方々に大いに有用であり,バイブル的存在になるものと思われます.
 平成25 年9 月
 筑波大学 名誉教授 目崎 登

序文
 近年,国内外の大会において女性アスリートが活躍し,好成績を収めています.一方で,多くのアスリートが傷害を負い,その克服に力を注いでいる現実があります.しかし,アスレティックリハビリテーションやトレーニングに関する類書は多々あるものの,女性アスリート特有の傷害に対しての治療や傷害予防トレーニングに関する著書はほとんどないと言っても過言ではありません.女性アスリートは,身体組成や心などの面から男性アスリートと同一に考えられない一面を持っているだけでなく,男性より多く発生する傷害などもあるため,それらを知ったうえでアプローチをしていくことが求められます.継続したトレーニングが競技成績を向上させるため,予防できる傷害を少しでも増やしていくことが,アスリートの幸せにつながっていくでしょう.
 本書では,女性アスリートを傷害から守ることを目的に,傷害予防トレーニングに焦点をあて,3 部構成としています.
 第I部では女性スポーツに携わってきた研究者が女性スポーツにおけるからだと心について図を用いて解説し,第II部では,女性アスリートの部位別トレーニング方法をこれまでトレーニングの第一戦で指導してきたアスレティックトレーナー(AT,ATC)の方々が,カラー写真を用いて解説しています.第III部では,女性スポーツの各種目に携わっているアスレティックトレーナーが,種目別の傷害発生率や男性と異なる傷害を挙げ,さらに発生頻度が高い傷害,特筆すべき傷害の予防トレーニングについて臨床で勤務しているセラピストの方々にも参考にして頂けるように,多くのカラー写真を用いてわかりやすく記述しています.
 ご執筆頂いた方々は,各専門の研究者や種目に精通している方々であり,普段みることのない種目のアスリートを指導する際にもとても参考になる内容となっています.また,各疾患に対する傷害予防トレーニングの方法は,経験に裏づけされ,とても工夫されており,種目に関係なく大いに参考になることでしょう.カラー写真を用いたことでより理解を深めてくれると確信しております.是非ご熟読ください.
 本書が女性アスリートの傷害予防につながり,一人でも多くのアスリート,読者の方々の幸せにつながってくれることがわれわれ筆者の願いです.
 最後に,出版にあたり企画の段階からご意見を賜りました女性スポーツ医学第一人者の目崎 登先生に厚く御礼申し上げます.また,医歯薬出版株式会社の竹内 大氏には本書の完成までに多くの助言とご指導を賜りました.ここに深謝の意を表します.
 平成25 年9 月
 小林直行,泉 重樹,成田崇矢
 推薦の序
 序文

第I部 女性アスリートのからだと心
 1.女性アスリートの医学
  1.月経周期の調節機構 2.競技スポーツと月経現象
  3.運動性無月経の問題点と治療 4.女性アスリートの三主徴
  5.性別検査と「高アンドロゲン女性競技者」
 2.女性アスリートのホルモン動態
  1.アスリートのコンディションとホルモン環境
  2.運動・トレーニングとホルモン応答 3.運動性無月経とストレスホルモン
 3.女性アスリートのコンディション評価
  1.女性アスリートと月経異常 2.月経周期および月経状態の把握
  3.コンディション評価指標と月経周期および月経状態
 4.月経周期とパフォーマンス
  1.月経周期によるホルモンの変化と身体の変化 2.月経周期とパフォーマンス
  3.パフォーマンスに影響する複合的要因
 5.女性アスリートの心理的特徴
  1.性役割 2.競技引退などの捉え方 3.ストレス対処
  4.指導者との関係性 5.食行動問題 6.ボディ・イメージ
 6.女性アスリートに対する整形外科的評価
  1.傷害発生に関与する内的因子 2.性差が関与する因子と評価方法
 7.女性アスリートと栄養
  1.女性アスリートのエネルギーバランス 2.減量時の栄養障害の予防
第II部 傷害予防のための部位別トレーニングの実際
 1.頭頸部の傷害予防
  1.頭頸部傷害の特徴 2.トレーニングの実際
 2.体幹の傷害予防
  1.体幹部の特徴 2.女性アスリートの特徴 3.トレーニングの実際
 3.上肢の傷害予防
  1.上肢の傷害の特徴と女性アスリートの特徴 2.トレーニングの実際
 4.下肢の傷害予防
  1.下肢の傷害発生の特徴 2.トレーニングの実際
第III部 種目別の傷害予防トレーニングとその実際
 1.チアリーディング
  1.チアリーダーの身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 2.新体操
  1.新体操選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 3.体操競技
  1.女子体操選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 4.ラクロス
  1.女子ラクロス選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 5.ソフトボール
  1.女子ソフトボール選手の身体特性と傷害の特徴
  2.傷害予防のためのトレーニング
 6.女子サッカー
  1.女子サッカー選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 7.バスケットボール
  1.女子バスケットボール選手の傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 8.バレーボール
  1.女子バレーボール選手の傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 9.ハンドボール
  1.女子ハンドボール選手の身体特性と傷害の特徴
  2.傷害予防のためのトレーニング
 10.女子ラグビー
  1.女子ラグビー選手の身体特性と傷害の特徴
  2.傷害予防のためのトレーニング
 11.卓 球
  1.女子卓球選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 12.テニス
  1.女子テニス選手の傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 13.競 泳
  1.女子競泳選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 14.飛込み
  1.女子飛込み選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 15.シンクロナイズドスイミング
  1.シンクロ選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 16.陸上競技(短距離)
  1.女子短距離選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 17.陸上競技(長距離)
  1.女子長距離選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 18.スピードスケート
  1.女子スピードスケート選手の身体特性と傷害の特徴
  2.傷害予防のためのトレーニング
 19.スキー
  1.女子スキー選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング
 20.柔 道
  1.女子柔道選手の身体特性と傷害の特徴 2.傷害予防のためのトレーニング

 索引