第3版 はじめに
2007年に刊行した本書も16年が経過し,この間精神看護学を学ぶ学生の方々,臨床や地域で精神看護の実践に携わる方々など,多くの方にご活用いただくことができました.
振り返れば,本書が発刊された2007年は,わが国が国連の「障害者権利条約」に署名した記念すべき年にあたり,2014年2月の条約発効に至るまでには,障害者基本法の改正(2011年),障害者虐待防止法の制定(2011年),障害者総合支援法の制定(2012年),障害者差別解消法の制定(2013年)など多くの法整備が行われました.
さらにこれらの動きと歩を同じくするように,DSM(精神障害/疾患の診断・統計マニュアル)も,2013年に米国精神医学会より第5版が刊行され,また昨年(2022年)には,その本文改訂版であるDSM-5-TRが刊行され,本書もそれに準拠しました.
本書第2版が2017年に刊行された後にも,精神保健医療を巡る状況の変化は著しく,同年厚生労働省から示された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の理念を基軸に,精神保健医療施策は地域化へ向けて大きく舵取りをしています.
本書はこのような時代の変化を見据えて,「リカバリー/ストレングス」「ピアサポート/ピアカウンセリング」「地域移行/地域定着支援」など,新たな項目を加え全面的に見直しを行ったものです.
しかしながら,精神看護の実践に必要とされる知識を厳選し,ポイントを絞ったコンパクトな内容で,実践の場で使いやすい「ポケットマニュアル」にしようとする趣旨は変わりありません.
本書がこれまで同様,多くの皆様に活用され,精神看護の実践の質の向上に役立ち,ひいては精神障害者の方々の権利擁護とリカバリーに貢献できることを執筆者一同切に願うものです.
2023年8月 編者ら
はじめに
昨今の精神保健医療福祉を巡る状況の変化は,これまでになくめまぐるしいものとなっています.2005年の障害者自立支援法の成立を1つの転換点として,日本の精神保健医療福祉は,障害の種別を越えたサービスのもと,地域中心のケアへと大きく動きだしました.こうしたなか一方で,病床削減と精神病床の機能分化が推し進められ,入院医療の役割もまた問われることとなっています.
他方,うつ病や自殺の増加,パーソナリティ障害や高齢精神障害の増加,子どもの精神保健問題の顕在化など,国民の精神保健問題も多様化・複雑化してきています.
こうした状況を受けて,精神看護の実践にもこれまで以上に多様な知識や技術が求められるようになってきています.
本書は,このような昨今の精神保健医療福祉の動向を押さえつつ,精神看護の実践に必要と思われる知識項目を厳選し,それぞれの項目についてポイントを絞ったコンパクトな内容でまとめたものです.「ポケットマニュアル」という名が示すとおり,ポケットに入れて携帯し,必要な知識を確認しながら実習を進めることができるよう,実習の補助を意図した本です.
本書は,看護師国家試験の出題基準も考慮して内容が構成されていますが,単に国家試験の出題基準に準拠することを越えて,精神看護ケアにかかわる新しい概念も押さえるようにしました.さらに,精神看護においても心身の両側面から看護ができるよう,特に心身のかかわりに力を入れて内容を構成しました.
このような趣旨でつくられた本書が,看護学生,新人看護師,実習指導者,看護教員などの皆様のお役に立つことを,執筆者一同心より願っております.
なお,本書をまとめるにあたっては,医歯薬出版編集部担当者の皆様に,いつもながらきめ細やかなご助力をいただきました.この場をお借りして厚くお礼申し上げます.
2007年2月 編者ら
2007年に刊行した本書も16年が経過し,この間精神看護学を学ぶ学生の方々,臨床や地域で精神看護の実践に携わる方々など,多くの方にご活用いただくことができました.
振り返れば,本書が発刊された2007年は,わが国が国連の「障害者権利条約」に署名した記念すべき年にあたり,2014年2月の条約発効に至るまでには,障害者基本法の改正(2011年),障害者虐待防止法の制定(2011年),障害者総合支援法の制定(2012年),障害者差別解消法の制定(2013年)など多くの法整備が行われました.
さらにこれらの動きと歩を同じくするように,DSM(精神障害/疾患の診断・統計マニュアル)も,2013年に米国精神医学会より第5版が刊行され,また昨年(2022年)には,その本文改訂版であるDSM-5-TRが刊行され,本書もそれに準拠しました.
本書第2版が2017年に刊行された後にも,精神保健医療を巡る状況の変化は著しく,同年厚生労働省から示された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の理念を基軸に,精神保健医療施策は地域化へ向けて大きく舵取りをしています.
本書はこのような時代の変化を見据えて,「リカバリー/ストレングス」「ピアサポート/ピアカウンセリング」「地域移行/地域定着支援」など,新たな項目を加え全面的に見直しを行ったものです.
しかしながら,精神看護の実践に必要とされる知識を厳選し,ポイントを絞ったコンパクトな内容で,実践の場で使いやすい「ポケットマニュアル」にしようとする趣旨は変わりありません.
本書がこれまで同様,多くの皆様に活用され,精神看護の実践の質の向上に役立ち,ひいては精神障害者の方々の権利擁護とリカバリーに貢献できることを執筆者一同切に願うものです.
2023年8月 編者ら
はじめに
昨今の精神保健医療福祉を巡る状況の変化は,これまでになくめまぐるしいものとなっています.2005年の障害者自立支援法の成立を1つの転換点として,日本の精神保健医療福祉は,障害の種別を越えたサービスのもと,地域中心のケアへと大きく動きだしました.こうしたなか一方で,病床削減と精神病床の機能分化が推し進められ,入院医療の役割もまた問われることとなっています.
他方,うつ病や自殺の増加,パーソナリティ障害や高齢精神障害の増加,子どもの精神保健問題の顕在化など,国民の精神保健問題も多様化・複雑化してきています.
こうした状況を受けて,精神看護の実践にもこれまで以上に多様な知識や技術が求められるようになってきています.
本書は,このような昨今の精神保健医療福祉の動向を押さえつつ,精神看護の実践に必要と思われる知識項目を厳選し,それぞれの項目についてポイントを絞ったコンパクトな内容でまとめたものです.「ポケットマニュアル」という名が示すとおり,ポケットに入れて携帯し,必要な知識を確認しながら実習を進めることができるよう,実習の補助を意図した本です.
本書は,看護師国家試験の出題基準も考慮して内容が構成されていますが,単に国家試験の出題基準に準拠することを越えて,精神看護ケアにかかわる新しい概念も押さえるようにしました.さらに,精神看護においても心身の両側面から看護ができるよう,特に心身のかかわりに力を入れて内容を構成しました.
このような趣旨でつくられた本書が,看護学生,新人看護師,実習指導者,看護教員などの皆様のお役に立つことを,執筆者一同心より願っております.
なお,本書をまとめるにあたっては,医歯薬出版編集部担当者の皆様に,いつもながらきめ細やかなご助力をいただきました.この場をお借りして厚くお礼申し上げます.
2007年2月 編者ら
1 精神看護学とは
1.精神看護学とは(田中美惠子)
2.精神看護における倫理(田中美惠子)
3.精神看護に必要な知識と技術(田中美惠子)
4.精神看護活動の場(田中美惠子)
2 精神看護の実際
1.精神看護実践の構造とプロセス(田中美惠子)
2.精神看護実践の機能と働きかけの技法(田中美惠子)
3.関係の形成(田中美惠子)
4.精神状態の観察(田中美惠子)
1-意識
2-知能
3-記憶
4-見当識
5-知覚
6-思考
7-感情・気分
8-意志・欲動・行動
9-自我意識
5.精神状態とセルフケア(田中美惠子)
3 精神疾患と看護
1.統合失調症(急性期・慢性期)(濱田由紀)
2.抑うつ症群(小山達也)
3.双極症(小山達也)
4.パニック症(嵐 弘美)
5.強迫症(田嶋佐知子)
6.心的外傷(心的外傷後ストレス症:PTSD)(嵐 弘美)
7.身体症状症・病気不安症(嵐 弘美)
8.物質関連症群-1(薬物依存)(濱田由紀)
9.物質関連症群-2(アルコール使用症)(横山惠子)
10.摂食症群(神経性やせ症/神経性過食症)(小林みゆき)
11.パーソナリティ症群(ボーダーラインパーソナリティ症を中心に)(小林みゆき)
12.自閉スペクトラム症(小山達也)
13.注意欠如・多動症(小山達也)
14.認知症(松丸直美)
15.てんかん(山内典子)
4 精神状態別の看護
1.せん妄(嵐 弘美)
2.不安状態(濱田由紀)
3.興奮状態(濱田由紀)
4.幻覚・妄想状態(濱田由紀)
5.無為・自閉状態(濱田由紀)
6.抑うつ状態(小山達也)
7.躁状態(小山達也)
8.拒否・拒絶(畠山卓也)
9.攻撃的行動・暴力(石川博康)
10.希死念慮・自殺企図(田嶋佐知子)
11.離脱症状(横山惠子)
12.心気症状(嵐 弘美)
13.精神科救急時の看護(田嶋佐知子)
5 生活と看護
1.生活支援(濱田由紀)
1-食事・水分摂取の援助
2-排泄の援助
3-清潔の援助
4-活動と休息の援助
5-睡眠の援助
6-人付き合いの援助
2.家族支援(横山惠子)
6 身体症状と看護
1.精神科身体合併症(福岡弥生)
2.身体疾患早期発見のための観察ポイント(福岡弥生)
3.フィジカルアセスメント(嵐 弘美)
4.検査データの基礎知識(嵐 弘美)
5.精神科でよくみられる身体疾患(福岡弥生)
6.精神科救急で気をつけたい身体疾患(福岡弥生)
7.うつ病でみられる身体症状(小山達也)
8.身体疾患と精神症状(小山達也)
9.身体疾患治療薬の精神状態への影響(嵐 弘美)
10.向精神薬治療と身体疾患(嵐 弘美)
11.妊娠と向精神薬治療(嵐 弘美)
12.水中毒(田中美惠子)
13.感染予防(嵐 弘美)
7 治療と看護
1.身体的検査(山内典子)
2.心理テスト(田中美惠子)
3.薬物療法(辻脇邦彦)
4.電気けいれん療法(畠山卓也)
5.精神療法(田中美惠子)
6.集団精神療法(小林みゆき)
7.認知行動療法(異儀田はづき)
8.作業療法(濱田由紀)
9.心理教育(福間幸夫)
10.SST(福間幸夫)
11.デイケア(濱田由紀)
12.チーム医療・チームアプローチ(濱田由紀)
13.行動制限(畠山卓也)
14.リスクマネジメント(小山達也)
15.訪問看護(宮城純子)
16.ケアマネジメント(福間幸夫)
17.リカバリー・ストレングスモデル(濱田由紀・田中美惠子)
18.アウトリーチ・ACT(田中美惠子)
19.司法精神看護(宮城純子)
20.コンサルテーション(田中美惠子)
21.リエゾン精神看護(田中美惠子)
22.専門看護師・認定看護師(田中美惠子)
8 法制度と社会資源
1.障害者基本法(田中美惠子)
2.障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)(田中美惠子)
3.障害者虐待防止法(濱田由紀)
4.障害者差別解消法(濱田由紀)
5.精神保健福祉法(濱田由紀)
6.精神保健福祉法に基づく入院制度・移送制度(濱田由紀)
7.障害者総合支援法(濱田由紀)
8.障害者総合支援法に基づくサービス(濱田由紀)
9.地域移行・地域定着支援(田中美惠子)
10.障害者手帳制度(濱田由紀)
11.心神喪失者等医療観察法(石川博康)
12.障害者雇用促進法と就労支援(田中美惠子)
13.自殺対策基本法(小山達也)
14.発達障害者支援法(小山達也)
15.医療保険制度(濱田由紀)
16.介護保険制度(松丸直美)
17.生活保護制度(小山達也)
18.障害年金制度(濱田由紀)
19.成年後見制度(田中美惠子)
20.精神障害者家族会(横山惠子)
21.セルフヘルプグループ(田中美惠子)
22.ピアサポート・ピアカウンセリング(濱田由紀)
23.AA・断酒会(横山惠子)
24.アルコール健康障害対策基本法(田中美惠子)
25.精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(田中美惠子)
文献
付録
処遇の基準(田中美惠子)
主な向精神薬一覧(辻脇邦彦)
抗精神病薬の等価換算表(辻脇邦彦)
抗精神病薬の副作用-1(障害部位別)(辻脇邦彦)
抗精神病薬の副作用-2(遮断受容体別)(辻脇邦彦)
抗精神病薬の副作用-3(悪性症候群へと進展する各段階と起こりうる状態)(辻脇邦彦)
基準検査値一覧(嵐 弘美)
1.精神看護学とは(田中美惠子)
2.精神看護における倫理(田中美惠子)
3.精神看護に必要な知識と技術(田中美惠子)
4.精神看護活動の場(田中美惠子)
2 精神看護の実際
1.精神看護実践の構造とプロセス(田中美惠子)
2.精神看護実践の機能と働きかけの技法(田中美惠子)
3.関係の形成(田中美惠子)
4.精神状態の観察(田中美惠子)
1-意識
2-知能
3-記憶
4-見当識
5-知覚
6-思考
7-感情・気分
8-意志・欲動・行動
9-自我意識
5.精神状態とセルフケア(田中美惠子)
3 精神疾患と看護
1.統合失調症(急性期・慢性期)(濱田由紀)
2.抑うつ症群(小山達也)
3.双極症(小山達也)
4.パニック症(嵐 弘美)
5.強迫症(田嶋佐知子)
6.心的外傷(心的外傷後ストレス症:PTSD)(嵐 弘美)
7.身体症状症・病気不安症(嵐 弘美)
8.物質関連症群-1(薬物依存)(濱田由紀)
9.物質関連症群-2(アルコール使用症)(横山惠子)
10.摂食症群(神経性やせ症/神経性過食症)(小林みゆき)
11.パーソナリティ症群(ボーダーラインパーソナリティ症を中心に)(小林みゆき)
12.自閉スペクトラム症(小山達也)
13.注意欠如・多動症(小山達也)
14.認知症(松丸直美)
15.てんかん(山内典子)
4 精神状態別の看護
1.せん妄(嵐 弘美)
2.不安状態(濱田由紀)
3.興奮状態(濱田由紀)
4.幻覚・妄想状態(濱田由紀)
5.無為・自閉状態(濱田由紀)
6.抑うつ状態(小山達也)
7.躁状態(小山達也)
8.拒否・拒絶(畠山卓也)
9.攻撃的行動・暴力(石川博康)
10.希死念慮・自殺企図(田嶋佐知子)
11.離脱症状(横山惠子)
12.心気症状(嵐 弘美)
13.精神科救急時の看護(田嶋佐知子)
5 生活と看護
1.生活支援(濱田由紀)
1-食事・水分摂取の援助
2-排泄の援助
3-清潔の援助
4-活動と休息の援助
5-睡眠の援助
6-人付き合いの援助
2.家族支援(横山惠子)
6 身体症状と看護
1.精神科身体合併症(福岡弥生)
2.身体疾患早期発見のための観察ポイント(福岡弥生)
3.フィジカルアセスメント(嵐 弘美)
4.検査データの基礎知識(嵐 弘美)
5.精神科でよくみられる身体疾患(福岡弥生)
6.精神科救急で気をつけたい身体疾患(福岡弥生)
7.うつ病でみられる身体症状(小山達也)
8.身体疾患と精神症状(小山達也)
9.身体疾患治療薬の精神状態への影響(嵐 弘美)
10.向精神薬治療と身体疾患(嵐 弘美)
11.妊娠と向精神薬治療(嵐 弘美)
12.水中毒(田中美惠子)
13.感染予防(嵐 弘美)
7 治療と看護
1.身体的検査(山内典子)
2.心理テスト(田中美惠子)
3.薬物療法(辻脇邦彦)
4.電気けいれん療法(畠山卓也)
5.精神療法(田中美惠子)
6.集団精神療法(小林みゆき)
7.認知行動療法(異儀田はづき)
8.作業療法(濱田由紀)
9.心理教育(福間幸夫)
10.SST(福間幸夫)
11.デイケア(濱田由紀)
12.チーム医療・チームアプローチ(濱田由紀)
13.行動制限(畠山卓也)
14.リスクマネジメント(小山達也)
15.訪問看護(宮城純子)
16.ケアマネジメント(福間幸夫)
17.リカバリー・ストレングスモデル(濱田由紀・田中美惠子)
18.アウトリーチ・ACT(田中美惠子)
19.司法精神看護(宮城純子)
20.コンサルテーション(田中美惠子)
21.リエゾン精神看護(田中美惠子)
22.専門看護師・認定看護師(田中美惠子)
8 法制度と社会資源
1.障害者基本法(田中美惠子)
2.障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)(田中美惠子)
3.障害者虐待防止法(濱田由紀)
4.障害者差別解消法(濱田由紀)
5.精神保健福祉法(濱田由紀)
6.精神保健福祉法に基づく入院制度・移送制度(濱田由紀)
7.障害者総合支援法(濱田由紀)
8.障害者総合支援法に基づくサービス(濱田由紀)
9.地域移行・地域定着支援(田中美惠子)
10.障害者手帳制度(濱田由紀)
11.心神喪失者等医療観察法(石川博康)
12.障害者雇用促進法と就労支援(田中美惠子)
13.自殺対策基本法(小山達也)
14.発達障害者支援法(小山達也)
15.医療保険制度(濱田由紀)
16.介護保険制度(松丸直美)
17.生活保護制度(小山達也)
18.障害年金制度(濱田由紀)
19.成年後見制度(田中美惠子)
20.精神障害者家族会(横山惠子)
21.セルフヘルプグループ(田中美惠子)
22.ピアサポート・ピアカウンセリング(濱田由紀)
23.AA・断酒会(横山惠子)
24.アルコール健康障害対策基本法(田中美惠子)
25.精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(田中美惠子)
文献
付録
処遇の基準(田中美惠子)
主な向精神薬一覧(辻脇邦彦)
抗精神病薬の等価換算表(辻脇邦彦)
抗精神病薬の副作用-1(障害部位別)(辻脇邦彦)
抗精神病薬の副作用-2(遮断受容体別)(辻脇邦彦)
抗精神病薬の副作用-3(悪性症候群へと進展する各段階と起こりうる状態)(辻脇邦彦)
基準検査値一覧(嵐 弘美)