推薦の言葉
「看護に求められる放射線のすべてがわかる本書」は,宇宙から届く放射線や大地に含まれる放射線環境の中で暮らす人に言及しながら,医療の領域で放射線がどのように用いられ,どんな影響を人に及ぼすのかといった放射線に関する知識が,丁寧にわかりやすく解説された「放射線看護の教科書」です.
特筆すべきは,本書が放射線の専門家と看護専門職者によって執筆されており,看護理論で一般的な4つの概念である〔人,環境,健康,看護(目的・役割・機能)〕に関する放射線の知識が随所にちりばめられているという点です.臨床の場で問いかけられた患者さんやご家族からの放射線に関する疑問,あるいは地域で暮らすなかで沸き起こった自然放射線に関する疑問等,これらに本書は多くのヒントや回答を与えてくれることでしょう.「こんなに何度もCTやMRIを撮って大丈夫でしょうか?」という不安の声に,「大丈夫ですよ」と微笑むだけでは当事者の不安は軽減しません.「大丈夫」の一言で片付けないで,専門職として確かな看護を提供することができるように,本書で「放射線リテラシー(知識や能力を活用する力)」を身につけましょう.そして,本書で学んだ知識をチーム医療のなかで活かし,放射線に関する確かな看護実践につなげましょう.
2022年には日本看護協会の専門看護分野に「放射線看護」が特定され,同年12月には3名の放射線看護専門看護師が登場して活躍しています.放射線による人体への影響や心理社会的な特性をふまえての看護は,社会のニーズに応じて,今後も求められていく分野だと考えられているのです.
最後に,本書には各章に若干の重複が存在しています.この重複は,必ずしも第1章から読み進めなくても,読者が関心を寄せる章から読んでも内容が理解できるように配慮された必要な重複であり,まさにキーポイント部分となっています.したがって,医療者だけでなく,放射線治療を受けるご本人やご家族が,読みたい章を選んで読むという活用法もあわせもっているといえます.
年々増え続ける画像診断や放射線治療は侵襲性を伴う医療行為であり,その行為を受ける人・実践する人,双方の安全を守りながらQOL(生活の質)の維持・向上を目指すうえで,今読んでおきたい「看護に役立つ推しの1冊」です.
2023年7月
富山県立大学名誉教授・前看護学部長 竹内登美子
まえがき
このたび,医歯薬出版より「看護のための放射線学─放射線生物学・医科学から放射線看護まで─」を発刊できましたこと,大変うれしく存じます.
従来,医学部医学科での放射線教育は長く行ってきましたが,看護学科での放射線教育の経験は少なく,富山大学で学部および大学院教育で1コマを実施してきました.そのような折,2019年富山県立大学に看護学部が設置されることになり,その際,放射線教育も必須となり,当時の竹内登美子看護学部長から講義依頼がありました.医学教育でも放射線教育の基準をどうするかが全国レベルで話し合われていた時期でもあり,ここでの議論をもとに8回の講義を組み立てました.2年ほどの講義を経て講義内容をなんとか冊子にできないかと思ったとき,竹内先生から医歯薬出版を紹介いただき,本出版に道が開けた次第です.ご多忙のなか,執筆いただいた先生方および出版の労を取っていただいた医歯薬出版の浦谷様に心より感謝申し上げます.
東日本大震災に続く国民を震撼させた原子力発電所の事故以来,放射線の安全性について国民の関心は大いに高まりました.一方で,医療において放射線は診断上の必須の手段となり,また,がん治療においてもその利用が急速に増えております.実際,日本の年間の医療被ばく線量は自然からの被ばく線量を上回り,世界一であります.この医療の最前線にいて,患者さんに直接,また長く接する医療者である看護職の方々が放射線に関する知識を身につけることは,言うまでもなく重要なことです.患者さんから相談されたときに適切に受け答えできること,また,自身の身を守るためにも放射線を知り,放射線防護を理解しておくことはまさに時代の要求と思われます.
本書の特徴として,前半第1章〜第4章は放射線の基礎科学と生物学,いわゆる放射線のサイエンスに関する内容であるのに対し,後半第5章〜第8章は応用編で,各章が医学関係者と看護関係者の分担執筆となっております.本書の内容が看護の臨床にどう活かせるかに注力し,同じ章のテーマについて,看護学の専門家からも執筆いただきました.このような試みは世界的にもユニークなものと思われます.
本書の内容が将来の看護師を目指す学生諸氏およびすでに臨床現場で活躍されている看護職の方にとって,放射線に関する理解が深まる一助になれば望外の喜びです.
2023年7月
近藤 隆
「看護に求められる放射線のすべてがわかる本書」は,宇宙から届く放射線や大地に含まれる放射線環境の中で暮らす人に言及しながら,医療の領域で放射線がどのように用いられ,どんな影響を人に及ぼすのかといった放射線に関する知識が,丁寧にわかりやすく解説された「放射線看護の教科書」です.
特筆すべきは,本書が放射線の専門家と看護専門職者によって執筆されており,看護理論で一般的な4つの概念である〔人,環境,健康,看護(目的・役割・機能)〕に関する放射線の知識が随所にちりばめられているという点です.臨床の場で問いかけられた患者さんやご家族からの放射線に関する疑問,あるいは地域で暮らすなかで沸き起こった自然放射線に関する疑問等,これらに本書は多くのヒントや回答を与えてくれることでしょう.「こんなに何度もCTやMRIを撮って大丈夫でしょうか?」という不安の声に,「大丈夫ですよ」と微笑むだけでは当事者の不安は軽減しません.「大丈夫」の一言で片付けないで,専門職として確かな看護を提供することができるように,本書で「放射線リテラシー(知識や能力を活用する力)」を身につけましょう.そして,本書で学んだ知識をチーム医療のなかで活かし,放射線に関する確かな看護実践につなげましょう.
2022年には日本看護協会の専門看護分野に「放射線看護」が特定され,同年12月には3名の放射線看護専門看護師が登場して活躍しています.放射線による人体への影響や心理社会的な特性をふまえての看護は,社会のニーズに応じて,今後も求められていく分野だと考えられているのです.
最後に,本書には各章に若干の重複が存在しています.この重複は,必ずしも第1章から読み進めなくても,読者が関心を寄せる章から読んでも内容が理解できるように配慮された必要な重複であり,まさにキーポイント部分となっています.したがって,医療者だけでなく,放射線治療を受けるご本人やご家族が,読みたい章を選んで読むという活用法もあわせもっているといえます.
年々増え続ける画像診断や放射線治療は侵襲性を伴う医療行為であり,その行為を受ける人・実践する人,双方の安全を守りながらQOL(生活の質)の維持・向上を目指すうえで,今読んでおきたい「看護に役立つ推しの1冊」です.
2023年7月
富山県立大学名誉教授・前看護学部長 竹内登美子
まえがき
このたび,医歯薬出版より「看護のための放射線学─放射線生物学・医科学から放射線看護まで─」を発刊できましたこと,大変うれしく存じます.
従来,医学部医学科での放射線教育は長く行ってきましたが,看護学科での放射線教育の経験は少なく,富山大学で学部および大学院教育で1コマを実施してきました.そのような折,2019年富山県立大学に看護学部が設置されることになり,その際,放射線教育も必須となり,当時の竹内登美子看護学部長から講義依頼がありました.医学教育でも放射線教育の基準をどうするかが全国レベルで話し合われていた時期でもあり,ここでの議論をもとに8回の講義を組み立てました.2年ほどの講義を経て講義内容をなんとか冊子にできないかと思ったとき,竹内先生から医歯薬出版を紹介いただき,本出版に道が開けた次第です.ご多忙のなか,執筆いただいた先生方および出版の労を取っていただいた医歯薬出版の浦谷様に心より感謝申し上げます.
東日本大震災に続く国民を震撼させた原子力発電所の事故以来,放射線の安全性について国民の関心は大いに高まりました.一方で,医療において放射線は診断上の必須の手段となり,また,がん治療においてもその利用が急速に増えております.実際,日本の年間の医療被ばく線量は自然からの被ばく線量を上回り,世界一であります.この医療の最前線にいて,患者さんに直接,また長く接する医療者である看護職の方々が放射線に関する知識を身につけることは,言うまでもなく重要なことです.患者さんから相談されたときに適切に受け答えできること,また,自身の身を守るためにも放射線を知り,放射線防護を理解しておくことはまさに時代の要求と思われます.
本書の特徴として,前半第1章〜第4章は放射線の基礎科学と生物学,いわゆる放射線のサイエンスに関する内容であるのに対し,後半第5章〜第8章は応用編で,各章が医学関係者と看護関係者の分担執筆となっております.本書の内容が看護の臨床にどう活かせるかに注力し,同じ章のテーマについて,看護学の専門家からも執筆いただきました.このような試みは世界的にもユニークなものと思われます.
本書の内容が将来の看護師を目指す学生諸氏およびすでに臨床現場で活躍されている看護職の方にとって,放射線に関する理解が深まる一助になれば望外の喜びです.
2023年7月
近藤 隆
推薦の言葉
まえがき
第1章 放射線概論:看護への活用指針
(近藤 隆)
1 放射線の歴史
Column 放射線は見えるか?
2 医療放射線の利用における看護職の役割
3 身の回りの放射線
Column バナナ等価線量
4 放射線の作用
Column フリーラジカルと活性酸素種
5 放射線の影響と線量限度
6 放射線の線量・線量率
7 医療の現場でなにが必要か
第2章 放射線の基礎
(吉田浩二)
1 放射能
2 放射性物質(放射性核種)
3 放射線の種類と性質
Column 放射能と放射線と放射性物質の違い
4 放射線の測定
5 半減期
Column 物理学的半減期と生物学的半減期の例
6 放射線に関する単位
7 放射線防護量
第3章 放射線の生物影響
(宮川 清)
1 放射線による細胞の生死
1)細胞死によるベネフィットとリスク
2)ネクローシスとアポトーシス
2 放射線による細胞死の標的
1)細胞の構造
2)DNAを介した影響とその他の影響
3 細胞死の測定
1)細胞生存率による測定
2)細胞死の種類と測定
4 DNA損傷と修復
1)塩基の損傷とDNA鎖の損傷
2)DNA修復
3)DNA損傷応答と細胞機能への影響
[1]DNA損傷の感知と情報伝達
[2]DNA損傷応答の具体例
[3]塩基損傷の修復
[4]DNA鎖切断の修復
Column がんゲノム医療
5 放射線照射細胞の回復過程
6 放射線照射方法の放射線感受性への影響
Column 放射線に適応できる?
7 放射線の線質の違いによる効果への影響
1)線エネルギー付与(LET)
2)生物学的効果比(RBE)
3)LETとRBEの関係
8 細胞周期の放射線感受性への影響
1)細胞周期とは
2)DNA損傷とチェックポイント
9 酸素環境の放射線感受性への影響
Column 照射部位の周囲にも放射線の影響がみられる?
第4章 放射線の人体・健康への影響
(奥 永・青木隆敏)
1 放射線の人体への影響
1)発症時期による分類
2)急性放射線症候群
2 代表的臓器の放射線障害
1)水晶体への影響
2)造血系への影響
3)皮膚への影響
4)消化管への影響
5)中枢神経系への影響
6)生殖器への影響と不妊
3 妊婦と胎児への影響
Column 妊娠した放射線従事者の管理
4 放射線による遺伝的影響
5 放射線による発がん
Column 低線量被ばくと発がん
第5章A 放射線の防護─知識編
(小嶋光明)
1 放射線被ばくの種類
1)外部被ばくの原因
2)内部被ばくの経路
2 部分被ばくと全身被ばく
3 身体的影響と遺伝的影響
4 確定的影響と確率的影響
1)確定的影響
2)確率的影響
3)放射線発がん
[1]遺伝子変異とがん細胞
Column がん遺伝子とがん抑制遺伝子
[2]放射線被ばくによるがんのリスク
Column 相対リスクと過剰相対リスク
[3]相対リスクによる評価
4)放射線被ばくによる遺伝的影響
5 放射線被ばくの防護
1)医療被ばく,職業被ばく,公衆被ばくに対する線量限度
[1]医療被ばく
[2]職業被ばく
[3]公衆被ばく
2)放射線被ばくの防護
6 放射線防護の手段
1)外部被ばくに対する防護
[1]距離
[2]遮蔽
[3]時間
2)内部被ばくに対する防護
7 環境からの被ばく
8 医療からの被ばく状況
第5章B 放射線の防護─看護職の役割
(松成裕子)
1 看護職における放射線防護に必要な知識
1)放射線防護の基本的な考え方
2)放射線防護の三原則
[1]正当化
[2]防護の最適化
[3]線量限度の適用
3)放射線による人の被ばく状況
4)放射線の健康影響について
Column LNTモデルを採用
5)放射線の健康リスクのアセスメント
6)被ばく線量と健康リスクの関係
Column リスクとは
7)放射線の健康リスクアセスメントからリスクコミュニケーションへ
2 看護職における放射線防護について
1)外部被ばく
[1]外部被ばくの低減三原則
2)内部被ばく
3)看護職の職業被ばく
[1]職業被ばく
[2]職業被ばくに関連する法令
[3]被ばく量の管理
[4]放射線業務従事者
[5]放射線業務従事者が守るべきこと
3 看護職における放射線防護の方法について
4 放射線防護における看護職の役割
1)放射線安全管理の確認
2)患者の放射線防護
[1]医療被ばく時の援助
[2]患者への説明責任
3)職業被ばく
4)放射線リスクコミュニケーション
Column 放射線リスクコミュニケーションと放射線看護専門看護師
第6章A 放射線の医学利用(診断・核医学)─知識編
(鹿戸将史)
1 X線の発生と性質
2 X線を用いた診断
3 超音波診断,MRI診断との相違
1)超音波検査
2)MRI(magnetic resonance imaging)検査
3)各検査の違い
4 CT(computed tomography)
1)CTとは
2)造影CT
5 透視,IVR
1)X線透視
2)IVR(interventional radiology)
6 核医学検査
1)放射性医薬品
2)SPECT(single photon emission computed tomography)
3)PET(positron emission tomogaphy)
第6章B 放射線の医学利用(診断・核医学)─看護職の役割
(佐藤良信)
1 放射線検査に関する患者の理解度の確認
2 放射線検査を受ける患者の個々の背景をふまえた精神的ケア
3 核医学検査における看護職の役割
1)核医学検査に関する一般的な注意事項
2)患者周囲の人びとの被ばく線量低減(放射線防護)
3)患者の尿などの取り扱い(汚染拡大防止)
4)授乳中の女性が核医学検査を受ける場合の留意点
5)職業被ばくの低減(放射線防護)
[1]距離の確保
[2]時間の短縮
[3]遮蔽物の活用
Column 核医学検査のために放射性医薬品を投与された患者のおむつなどの取り扱い
4 造影剤による副作用
1)急性副作用
[1]重症度分類
[2]発生頻度
2)遅発性副作用
3)造影剤副作用の危険因子
[1]副作用発生の危険因子とアレルギー歴
[2]腎障害患者への対応
[3]ビグアナイド系糖尿病薬内服中の患者への対応
4)造影剤を用いた検査を受ける患者への説明と同意(IC)
5)副作用発生に備えた医療体制の確立
5 IVRにおける看護職の役割
1)IVR術前オリエンテーション
2)IVR室での患者の不安軽減
6 患者急変時の対応
第7章A 放射線の医学利用(治療・内用療法)─知識編
(齋藤淳一)
1 がんの特徴と治療の方法
Column がん治療のキーワードは集学的治療
2 放射線が細胞や臓器に与える影響
3 放射線治療の方法と種類
1)外部照射
[1]強度変調放射線治療(Intensity modulated radiation therapy:IMRT)
[2]定位放射線治療(stereotactic radiation therapy:SRT)
2)小線源治療
3)内用療法
Column IMRTは重労働?
4 放射線治療の対象疾患
1)中枢神経系のがん
2)頭頸部がん
3)肺がん
4)消化器がん
5)乳がん
6)泌尿器がん
7)婦人科がん
8)血液のがん
9)その他,対症療法,良性疾患など
5 放射線治療による有害事象
Column 放射線は低カロリー?
6 温熱療法
7 粒子線治療
第7章B 放射線の医学利用(治療・内用療法)─看護職の役割
(野戸結花)
1 放射線治療と看護
1)放射線治療の特徴
2)看護師の役割
Column 緩和照射とは?
[1]治療計画の完遂と照射位置の再現性の確保
[2]有害事象の予防・低減
Column 放射線治療の休止・中断と治療効果
[3]心理・社会的支援
2 放射線治療を受ける患者の理解と看護
1)放射線治療の経過と看護
[1]主治医による治療適応の判断と治療方針の決定
[2]放射線治療科医師による診察と説明
[3]放射線治療計画の立案
[4]治療の実施と実施期間中の経過観察
[5]治療終了後の経過観察
2)特殊な放射線治療(小線源治療)と看護
[1]密封小線源治療
[2]非密封小線源治療(内用療法)
3 放射線治療による有害事象と看護
1)急性期の有害事象
2)晩期の有害事象
3)おもな有害事象と看護
[1]放射線皮膚炎
[2]口腔・咽頭粘膜炎
[3]唾液分泌低下
[4]放射線膀胱炎
[5]放射線肺臓炎と放射線肺線維症
[6]照射による発がん(二次がん)
4 放射線治療におけるチーム医療と看護の役割
第8章A 原子力災害,被ばく医療,医療被ばく─知識編
(柏倉幾郎・辻口貴清)
1 放射線事故/原子力災害とは
Column ダーティー・ボム(dirty bomb)
Column 「被ばく」と「汚染」の違い
2 過去の原子力災害・放射線事故事例
1)海外の事例
[1]ロスアラモス研究所事故(1945,1946年,米国)
[2]ハンフォード事故(1974年,米国)
Column CaDTPA,ZnDTPA
[3]チョルノービリ原子力発電所事故(1986年,旧ソ連)
[4]ゴイアニア事故(1987年,ブラジル)
2)国内の事例
[1]東海村JCO臨界事故(1999年)
[2]福島第一原子力発電所事故(2011年)
[3]大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染事故(2017年)
Column 預託実効線量
3 被ばく医療,原子力災害医療
1)被ばく医療,原子力災害医療とは
2)日本における被ばく医療・原子力災害医療体制の変遷
3)日本の現在の被ばく医療体制
[1]原子力災害拠点病院
[2]原子力災害医療協力機関
[3](基幹)高度被ばく医療支援センターと原子力災害医療・総合支援センター
4)被ばく/汚染傷病者に対する初期診療
Column 「線量評価」とは?
4 放射線医療と医療被ばく
1)放射線医療
2)医療被ばくの現状
3)医療従事者の職業被ばく
第8章B 原子力災害,被ばく医療,医療被ばく─看護職の役割
(冨澤登志子・小山内暢・清水真由美)
1 原子力災害と医療体制
2 原子力災害時の医療対応
1)傷病者来院前の準備
2)傷病者来院後
Column 医療従事者の放射線防護
[1]創傷部の除染
[2]健常皮膚の除染
3)災害時の放射線計測(汚染検査)
[1]GMサーベイメータの設定項目
[2]GMサーベイメータの特性
[3]汚染検査の流れ
Column 汚染検査・医療処置時の医療スタッフの2次被ばく線量
3 福島第一原子力発電所での事故による住民の影響と健康支援
1)東日本大震災による避難生活
2)原発事故後の放射線に対する不安と差別・偏見
3)避難指示解除区域の故郷における生活
索引
まえがき
第1章 放射線概論:看護への活用指針
(近藤 隆)
1 放射線の歴史
Column 放射線は見えるか?
2 医療放射線の利用における看護職の役割
3 身の回りの放射線
Column バナナ等価線量
4 放射線の作用
Column フリーラジカルと活性酸素種
5 放射線の影響と線量限度
6 放射線の線量・線量率
7 医療の現場でなにが必要か
第2章 放射線の基礎
(吉田浩二)
1 放射能
2 放射性物質(放射性核種)
3 放射線の種類と性質
Column 放射能と放射線と放射性物質の違い
4 放射線の測定
5 半減期
Column 物理学的半減期と生物学的半減期の例
6 放射線に関する単位
7 放射線防護量
第3章 放射線の生物影響
(宮川 清)
1 放射線による細胞の生死
1)細胞死によるベネフィットとリスク
2)ネクローシスとアポトーシス
2 放射線による細胞死の標的
1)細胞の構造
2)DNAを介した影響とその他の影響
3 細胞死の測定
1)細胞生存率による測定
2)細胞死の種類と測定
4 DNA損傷と修復
1)塩基の損傷とDNA鎖の損傷
2)DNA修復
3)DNA損傷応答と細胞機能への影響
[1]DNA損傷の感知と情報伝達
[2]DNA損傷応答の具体例
[3]塩基損傷の修復
[4]DNA鎖切断の修復
Column がんゲノム医療
5 放射線照射細胞の回復過程
6 放射線照射方法の放射線感受性への影響
Column 放射線に適応できる?
7 放射線の線質の違いによる効果への影響
1)線エネルギー付与(LET)
2)生物学的効果比(RBE)
3)LETとRBEの関係
8 細胞周期の放射線感受性への影響
1)細胞周期とは
2)DNA損傷とチェックポイント
9 酸素環境の放射線感受性への影響
Column 照射部位の周囲にも放射線の影響がみられる?
第4章 放射線の人体・健康への影響
(奥 永・青木隆敏)
1 放射線の人体への影響
1)発症時期による分類
2)急性放射線症候群
2 代表的臓器の放射線障害
1)水晶体への影響
2)造血系への影響
3)皮膚への影響
4)消化管への影響
5)中枢神経系への影響
6)生殖器への影響と不妊
3 妊婦と胎児への影響
Column 妊娠した放射線従事者の管理
4 放射線による遺伝的影響
5 放射線による発がん
Column 低線量被ばくと発がん
第5章A 放射線の防護─知識編
(小嶋光明)
1 放射線被ばくの種類
1)外部被ばくの原因
2)内部被ばくの経路
2 部分被ばくと全身被ばく
3 身体的影響と遺伝的影響
4 確定的影響と確率的影響
1)確定的影響
2)確率的影響
3)放射線発がん
[1]遺伝子変異とがん細胞
Column がん遺伝子とがん抑制遺伝子
[2]放射線被ばくによるがんのリスク
Column 相対リスクと過剰相対リスク
[3]相対リスクによる評価
4)放射線被ばくによる遺伝的影響
5 放射線被ばくの防護
1)医療被ばく,職業被ばく,公衆被ばくに対する線量限度
[1]医療被ばく
[2]職業被ばく
[3]公衆被ばく
2)放射線被ばくの防護
6 放射線防護の手段
1)外部被ばくに対する防護
[1]距離
[2]遮蔽
[3]時間
2)内部被ばくに対する防護
7 環境からの被ばく
8 医療からの被ばく状況
第5章B 放射線の防護─看護職の役割
(松成裕子)
1 看護職における放射線防護に必要な知識
1)放射線防護の基本的な考え方
2)放射線防護の三原則
[1]正当化
[2]防護の最適化
[3]線量限度の適用
3)放射線による人の被ばく状況
4)放射線の健康影響について
Column LNTモデルを採用
5)放射線の健康リスクのアセスメント
6)被ばく線量と健康リスクの関係
Column リスクとは
7)放射線の健康リスクアセスメントからリスクコミュニケーションへ
2 看護職における放射線防護について
1)外部被ばく
[1]外部被ばくの低減三原則
2)内部被ばく
3)看護職の職業被ばく
[1]職業被ばく
[2]職業被ばくに関連する法令
[3]被ばく量の管理
[4]放射線業務従事者
[5]放射線業務従事者が守るべきこと
3 看護職における放射線防護の方法について
4 放射線防護における看護職の役割
1)放射線安全管理の確認
2)患者の放射線防護
[1]医療被ばく時の援助
[2]患者への説明責任
3)職業被ばく
4)放射線リスクコミュニケーション
Column 放射線リスクコミュニケーションと放射線看護専門看護師
第6章A 放射線の医学利用(診断・核医学)─知識編
(鹿戸将史)
1 X線の発生と性質
2 X線を用いた診断
3 超音波診断,MRI診断との相違
1)超音波検査
2)MRI(magnetic resonance imaging)検査
3)各検査の違い
4 CT(computed tomography)
1)CTとは
2)造影CT
5 透視,IVR
1)X線透視
2)IVR(interventional radiology)
6 核医学検査
1)放射性医薬品
2)SPECT(single photon emission computed tomography)
3)PET(positron emission tomogaphy)
第6章B 放射線の医学利用(診断・核医学)─看護職の役割
(佐藤良信)
1 放射線検査に関する患者の理解度の確認
2 放射線検査を受ける患者の個々の背景をふまえた精神的ケア
3 核医学検査における看護職の役割
1)核医学検査に関する一般的な注意事項
2)患者周囲の人びとの被ばく線量低減(放射線防護)
3)患者の尿などの取り扱い(汚染拡大防止)
4)授乳中の女性が核医学検査を受ける場合の留意点
5)職業被ばくの低減(放射線防護)
[1]距離の確保
[2]時間の短縮
[3]遮蔽物の活用
Column 核医学検査のために放射性医薬品を投与された患者のおむつなどの取り扱い
4 造影剤による副作用
1)急性副作用
[1]重症度分類
[2]発生頻度
2)遅発性副作用
3)造影剤副作用の危険因子
[1]副作用発生の危険因子とアレルギー歴
[2]腎障害患者への対応
[3]ビグアナイド系糖尿病薬内服中の患者への対応
4)造影剤を用いた検査を受ける患者への説明と同意(IC)
5)副作用発生に備えた医療体制の確立
5 IVRにおける看護職の役割
1)IVR術前オリエンテーション
2)IVR室での患者の不安軽減
6 患者急変時の対応
第7章A 放射線の医学利用(治療・内用療法)─知識編
(齋藤淳一)
1 がんの特徴と治療の方法
Column がん治療のキーワードは集学的治療
2 放射線が細胞や臓器に与える影響
3 放射線治療の方法と種類
1)外部照射
[1]強度変調放射線治療(Intensity modulated radiation therapy:IMRT)
[2]定位放射線治療(stereotactic radiation therapy:SRT)
2)小線源治療
3)内用療法
Column IMRTは重労働?
4 放射線治療の対象疾患
1)中枢神経系のがん
2)頭頸部がん
3)肺がん
4)消化器がん
5)乳がん
6)泌尿器がん
7)婦人科がん
8)血液のがん
9)その他,対症療法,良性疾患など
5 放射線治療による有害事象
Column 放射線は低カロリー?
6 温熱療法
7 粒子線治療
第7章B 放射線の医学利用(治療・内用療法)─看護職の役割
(野戸結花)
1 放射線治療と看護
1)放射線治療の特徴
2)看護師の役割
Column 緩和照射とは?
[1]治療計画の完遂と照射位置の再現性の確保
[2]有害事象の予防・低減
Column 放射線治療の休止・中断と治療効果
[3]心理・社会的支援
2 放射線治療を受ける患者の理解と看護
1)放射線治療の経過と看護
[1]主治医による治療適応の判断と治療方針の決定
[2]放射線治療科医師による診察と説明
[3]放射線治療計画の立案
[4]治療の実施と実施期間中の経過観察
[5]治療終了後の経過観察
2)特殊な放射線治療(小線源治療)と看護
[1]密封小線源治療
[2]非密封小線源治療(内用療法)
3 放射線治療による有害事象と看護
1)急性期の有害事象
2)晩期の有害事象
3)おもな有害事象と看護
[1]放射線皮膚炎
[2]口腔・咽頭粘膜炎
[3]唾液分泌低下
[4]放射線膀胱炎
[5]放射線肺臓炎と放射線肺線維症
[6]照射による発がん(二次がん)
4 放射線治療におけるチーム医療と看護の役割
第8章A 原子力災害,被ばく医療,医療被ばく─知識編
(柏倉幾郎・辻口貴清)
1 放射線事故/原子力災害とは
Column ダーティー・ボム(dirty bomb)
Column 「被ばく」と「汚染」の違い
2 過去の原子力災害・放射線事故事例
1)海外の事例
[1]ロスアラモス研究所事故(1945,1946年,米国)
[2]ハンフォード事故(1974年,米国)
Column CaDTPA,ZnDTPA
[3]チョルノービリ原子力発電所事故(1986年,旧ソ連)
[4]ゴイアニア事故(1987年,ブラジル)
2)国内の事例
[1]東海村JCO臨界事故(1999年)
[2]福島第一原子力発電所事故(2011年)
[3]大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染事故(2017年)
Column 預託実効線量
3 被ばく医療,原子力災害医療
1)被ばく医療,原子力災害医療とは
2)日本における被ばく医療・原子力災害医療体制の変遷
3)日本の現在の被ばく医療体制
[1]原子力災害拠点病院
[2]原子力災害医療協力機関
[3](基幹)高度被ばく医療支援センターと原子力災害医療・総合支援センター
4)被ばく/汚染傷病者に対する初期診療
Column 「線量評価」とは?
4 放射線医療と医療被ばく
1)放射線医療
2)医療被ばくの現状
3)医療従事者の職業被ばく
第8章B 原子力災害,被ばく医療,医療被ばく─看護職の役割
(冨澤登志子・小山内暢・清水真由美)
1 原子力災害と医療体制
2 原子力災害時の医療対応
1)傷病者来院前の準備
2)傷病者来院後
Column 医療従事者の放射線防護
[1]創傷部の除染
[2]健常皮膚の除染
3)災害時の放射線計測(汚染検査)
[1]GMサーベイメータの設定項目
[2]GMサーベイメータの特性
[3]汚染検査の流れ
Column 汚染検査・医療処置時の医療スタッフの2次被ばく線量
3 福島第一原子力発電所での事故による住民の影響と健康支援
1)東日本大震災による避難生活
2)原発事故後の放射線に対する不安と差別・偏見
3)避難指示解除区域の故郷における生活
索引