やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版改訂の序
 現在,保育内容は大きく変化してきている.小児保健実習は,小児保健の講義とともに,保育の実践の場において,子どもたちの健やかな成長発達を促進し,健康を守るための重要な科目である.
 今回の第4版改訂にあたり,現在の保育状況を踏まえて,内容を再検討し,一部追加,改訂した.特に,体温の観察においては耳式検温法,電子体温計による検温法,そして身体発育の測定方法,養護技術においては抱きかた等について追加し,さらに予防接種法の改訂に伴い一部記述を改めた.また,創傷の処置においては擦過傷,切り傷,刺し傷等の内容を改訂した.
 小児保健実習の授業や保育現場においてお役に立てていただければ幸いである.
 2006年3月
 白野幸子

第1版の序
 近年,わが国の乳幼児の死亡率は著しく減少し,また日本人の平均寿命も大きく延びてきている.これらの根本をなすものは予防医学,保健学の進歩によるものであり,とくに乳幼児の予防医学,保健学の向上によるところが大きい.一方,乳幼児は年齢,月齢の小さいものほど未熟であり,これらの保育にあたっては,医学的知識をもとにした養護が必要である.
 家庭における保育はもちろんのこと,児童福祉施設,とくに乳幼児保育に携わる人びとには小児保健の知識は欠かすことのできないものであり,たんに日々の保育において,疾病や事故防止といっただけのものでなく,子供の心身の成長,発達をも左右するものであるから,保育と医学とは密接な関係があり,けっしてこれを切り離して考えることはできない.大学や短大の保育科,保母養成課程のなかで,小児保健学が重要な科目として扱われているのも意義が深い.
 本書,小児保健実習は,私が数年間短大,保母養成課程において小児保健(III)を担当して,いろいろな角度から学習し,検討してまとめた内容のもので,小児保健の理論に基づいた実技編であり,保母など保育者を志す学生用の実習テキストとして書きあげたものである.少々膨大になってしまい,規定の授業時間では学習しきれないと思われるが,そのぶんは授業時間外または保育の実践の現場で学習し,役立てていただきたいと思う.また,一般の若い人,母親などにも読んでいただいても理解でき,参考になるテキストとして書いたつもりである.
 1981年3月
 白野幸子
序章―小児保健(III)実習について
  1 小児保健(III)実習目的
  2 小児保健(III)実習目標
  3 小児保健(III)実習内容
第1章―小児の健康状態の観察
 1:身体状態の観察
 2:体温の観察
  1 正常体温とその変動
  2 体温測定方法
 3:脈拍の観察
  1 正常脈拍とその変動
  2 脈拍測定方法
 4:呼吸の観察
  1 正常呼吸とその変動
  2 呼吸測定方法
 5:便・尿・生歯の観察
 6:視力・聴力の観察
第2章―小児の身体発育の測定方法と評価
 1:小児の身体発育の測定方法
  1 体重測定法
  2 身長測定法
  3 座高測定法
  4 胸囲測定法
  5 頭囲測定法
 2:評価の方法
  1 乳幼児身体発育値と比較して評価する方法
  2 計測値による評価の方法
  3 標準発育増加量と比較して評価する方法
  4 指数による評価の方法
第3章―小児の精神,運動機能の発達,発育の観察とその評価
 1:新生児の生活時間
 2:精神,運動機能の発達と発育の観察
  1 新生児の諸反射運動
  2 精神,運動機能の発達と発育順序
 3:評価の方法
  1 検査法の種類
  2 検査結果の表しかた
  3 評価の方法
第4章―小児の養護
 1:保育環境
  1 寝室
  2 乳児室
  3 保育室
  4 医務室,保健室
  5 調理室,調乳室
  6 食堂
  7 トイレ
  8 浴室,沐浴室,シャワー室
  9 屋外遊戯場,玄関ホール
  10 観察室
  11 事務室,保育者控室,応接室,物品収納庫,塵芥処理場など
 2:養護技術
  1 乳児の抱きかた
  2 乳幼児の寝かせかた
  3 寝具のつくりかた
  4 背負いかた(おんぶ)・抱っこ
  5 育児用品の使いかた
  6 食事の与えかた
  7 排泄のさせかた
  8 衣服の着せかた,脱がせかた
  9 身体の清潔
  10 居室の衛生
  11 日光浴と外気浴
  12 乾布摩擦,冷水摩擦
  13 乳児体操
  14 外出,旅行,海水浴・プール
  15 運動,遊びと玩具
  16 あやしかた,ほめかた,しかりかた
第5章―事故防止と安全教育
 1:事故防止
 2:安全教育
第6章―疾病予防
 1:小児の疾病予防に対する対策
 2:感染症の予防
 3:予防接種
 4:幼稚園,保育所に感染症が発生した場合の措置
第7章―小児の看護
 1:一般看護
  1 罨法
  2 薬の与えかた
  3 浣腸
  4 採尿,採便,便器,尿器の使いかた
  5 消毒
  6 安静・休養室
  7 病床,病衣
 2:症状に対する看護
  1 啼泣
  2 脱水
  3 チアノーゼ
  4 食欲不振
  5 便秘
  6 頭痛
  7 鼻閉
 3:疾病の看護
  1 感冒
  2 肺炎
  3 気管支喘息
  4 乳児下痢症
  5 周期性嘔吐症
  6 腸重積症
  7 そけいヘルニア
  8 食中毒
  9 蟯虫症
  10 乗り物酔い
  11 日射病・熱射病
  12 熱疲労・熱痙攣
  13 光化学スモッグ
  14 齲蝕症
  15 百日咳
  16 麻疹
  17 風疹
  18 水痘
  19 流行性耳下腺炎
  20 手足口病
  21 伝染性紅斑
  22 蕁麻疹
  23 アトピー性皮膚炎
  24 伝染性膿痂疹
  25 先天性心疾患
  26 てんかん
  27 熱性痙攣
  28 脳性麻痺
  29 肥満児
  30 糖尿病
  31 急性糸球体腎炎
  32 ネフローゼ症候群
  33 精神遅滞
  34 小児自閉症
  35 先天性股関節脱臼
  36 先天性筋性斜頸
  37 口唇裂・口蓋裂
  38 急性・慢性中耳炎
  39 急性・慢性副鼻腔炎
  40 急性結膜炎
  41 登園・登校拒否
  42 病児の遊びとしつけ
第8章―応急処置
 1:応急処置の意義
 2:危険な徴候
  1 チアノーゼ
  2 瞳孔の対光反応
  3 脈拍
  4 呼吸
 3:基本となる処置
  1 患児の体位
  2 基本の処置
第9章―急病の処置
  1 痙攣
  2 呼吸困難
  3 嘔吐
  4 下痢
  5 腹痛
  6 発熱
  7 咳嗽
  8 ガス中毒
  9 発疹
  10 耳の異物
  11 眼の異物,鼻の異物
  12 転落
  13 鼻出血
  14 歯痛
  15 虫さされ
  16 創傷
  17 咬傷・ひっかき傷
  18 止血法
  19 火傷,熱傷
  20 骨折
  21 捻挫
  22 脱臼
  23 肉ばなれ
  24 脳貧血,起立性調節障害
  25 ショック
  26 溺水
第10章―包帯の使いかた
 1:包帯の目的ならびに種類
 2:主な包帯の使いかた
  1 巻軸帯
  2 スピード包帯
  3 三角巾
第11章―心肺蘇生法
 1:気道の確保
 2:人工呼吸法
  1 口対口(鼻)人工呼吸法
  2 乳児の人工呼吸法
 3:心臓マッサージ法
  1 乳児,年少児
  2 年長児,成人
  3 その他の心臓マッサージ法
第12章―患児を運ぶ方法
  1 担架による運搬法
  2 担架によらない運搬法
第13章―集団保育における健康管理
 1:乳幼児健康管理の意義
 2:日常の健康管理
  1 健康観察
  2 家庭との連絡
 3:疾病管理と疾病予防
 4:健康診査
  1 健康診査内容
  2 入所時,入園時健康診査
  3 定期健康診査
  4 月例健康診査
  5 臨時健康診査
  6 職員の健康診査
 5:健康教育
 6:環境衛生

 付録:保健室常備薬と救急用具
  1 消毒薬
  2 外用薬
  3 内用薬
  4 衛生器具
  5 包帯材料
  6 その他
 資料
  健康診査票  乳児健康管理票  幼児健康診断(査)票
 索引