やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 看護専門職は,看護の専門的知識と技術を活用して,対象者に最適な個別的で創造的な看護ケアの実践を目指します.そのヒューマニスティックな行為には,科学性や論理性が求められることは言うまでもありません.期待する看護の結果が論理性をもって予測でき,学問に支えられた自信ある行動がとれれば,どんなにかいいでしょう.しかし,科学性や論理性という側面では,臨床看護研究の困難さも影響してか,特定の看護ケアの根拠が示されるケースは決して十分ではありません.
 これまで,看護学に関連する医学的知識や看護研究による実証,さらには経験に基づく知識などを基盤として,看護教育では看護技術の原理が教えられてきました.また,現状では,学んだ基本をどのように応用すればよいかについては,実習体験からの学びや卒後教育に委ねられている部分が大きいと言えます.基本だけを覚えてきた学生にとっては,臨床の場で,柔軟に考え,技術を変容させて応用することができず,戸惑うこともあります.
 そこでこの本では,基本技術の応用や発展のさせ方に重点をおき,臨床への適応の助けとなること,今後の臨床看護実践と看護研究の発展に役立つことを目指した内容にしました.この本をもとに“学び““試し”そして“調べる“という学習が,EBNの実践に必要な,根拠を“探し出すこと”や“つくり出すこと“そして“使うこと”という態度の習得にもつながるのではないかという期待もあります.
 この本の章立ては,「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会報告 看護基本技術」の項目を考慮して決定しました.各章の内容は,(1)看護援助の必要性,それを判断するためのミニマムデータとアセスメントの概念図,(2)基本技術/一般的な技術(安全・安楽・動作経済の面で効果的な方法,臨床における禁忌事項)とは何か,(3)応用技術(基本技術のままでは何が不足なのか,守っているポイントと応用しているポイント,実証報告はあるがさらに追加検証が必要なケースの検証方法,経験知の場合どのような観点で検証するとよいか)とは,どのようなものかを取り上げています.
 「学ぶ・試す・調べる 看護ケアの根拠と技術」という本書のタイトルは,根拠がわかることで技術の応用力・発展力が身につき,「臨床では個別的で創造的なケアをすることができる」「看護技術は発展する」という考え方に根ざしています.そのため,本書についても,理論と実践を注意深く見つめ,さらなる検討を重ね,発展させていきたいと思います.
 2005年7月
 編者ら
1 環境調整(玉木ミヨ子・藤島和子)
 病床環境の調整
  1.24時間臥床している患者の場合,病床の清掃をしながら寝床内の換気をする(ベッドの上下または左右の片側ずつ,リネン類を1枚づつ剥いで,ハンドクリーナー,粘着ロールテープなどでリネン類の塵埃,皮膚の落屑を除去しながら寝床内の温度,湿度を調節する)
  2.枕の内部の温度,湿度を調節する(枕カバーをはずし,枕を軽くたたいて内部の空気を入れ換える)
  3.ベッドの高さやベッド柵,および点滴ラインやドレーンの位置を調整する
  4.ベッド周囲の物品を整え快適にする
2 感染予防の技術(青木涼子)
 1.手洗い
  1.アルコールを基剤とする速乾性擦式手指消毒剤を用いて,手指の消毒をする
  2.手洗い後は手をよく乾繰させる
 2.防護用品の使用:手袋
  1.手袋の外側に触れずに装着し,ケア後は手袋の外側に触れずに外す
  2.手袋の装着前後には手洗いをする
  3.採血は,手袋を装着して行う
 3.防護用品の使用:ガウン
  1.ガウンテクニックを正しく行って,ガウンを着用する
 4.防護用品の使用:マスク・ゴーグル
  1.着用時,目・口・鼻を十分に覆う
3 活動の援助技術(北代直美)
 1.廃用症候群の予防
  1.急性期における早期離床は,発症後24〜48時間経過をみて,医学的管理のもとに座位を開始する
  2.はじめはギャッチベッドでの座位から始める.ギャッチの角度や実施時間を徐々に増やしていく.角度:30〜15°ずつ.時間:10分ずつ
  3.両下肢をベッドから下ろした端座位,車椅子や椅子への移乗へと段階的にすすめる
  4.昼間は,できるだけ起床を勧める
  5.運動は少数頻回に行い,継続する
  6.食事や排泄を速やかに自然体に近づける
  7.コミュニケーション技術を駆使し,精神活動に働きかける
  8.日常生活動作時,患者が自分でできることは自分で行ってもらう
 2.関節可動域(ROM:range of motion)訓練
  1.健側の上肢から始め,麻痺側の上下肢を行う
  2.ゆっくりと十分に伸ばす
  3.拘縮がおこりやすい肩関節,股関節,膝関節,足関節を優先して行う
  4.痛みや筋の緊張が高い場合は,実施前に関節周囲を温める
 3.起き上がり・立ち上がり・移乗の介助
  1.起き上がり・立ち上がり・移乗の介助法
  2.立ち上がりは,上半身を前方に傾斜させることで重心を前方にする
  3.移乗する前には端坐位をとり,少し浅く座った状態から移乗する
  4.移乗する車椅子の位置は,ベッドとの角度45°以内に置く
  5.立ち上がって体を回旋させる際に,患者の下肢をナースの両膝で挟むようにする
 4.歩行介助
  1.介助者は転倒防止のため,患者の側方もしくはやや後方に位置する(片麻痺の場合は麻痺側につく)
  2.患者の状態と杖の種類により,個々の歩き方にそって行う
 5.移送(ストレッチャー)
  1.ストレッチャーへの移動は,患者の状況に応じた移乗方法(1人で抱える,2人で抱える,3人以上で抱える)を選択する
  2.移送時の介助は原則として2人で行う
  3.不安を軽減し,不安感,不快感,恐怖感,めまいなどを感じさせないようにする
   3-1.進行方向に向かって患者の足を先にする
   3-2.坂道の場合,頭部を足部より高く保持する
   3-3.段差時はストレッチャーを一度止め,ゆっくり進むなど振動を最小限にする
   3-4.角を曲がるときは,ゆっくり大きく円を描いて曲がる
 6.体位変換
  1.正しい姿勢を保持(ポジショニング)しながら,体位を変える
  2.仰臥位・側臥位の正しいポジショニングを行う
  3.仰臥位から側臥位への体位変換
  4.ボディメカニクスからみた体位変換を活用する
  5.キネステティクの概念による体位変換を活用する
4 食行動の援助技術(関口恵子)
 1.食事介助
  1.食事摂取時の体位は,なるべく座位にする
  2.頸部を軽度前屈する
  3.嚥下障害患者の口腔ケアは,基礎的訓練の一部として食事の前後に行い,経口摂取へつなげていく
 2.経腸栄養法を行っている患者の介助
  1.経腸栄養剤の注入速度を適切に調整する
   1-1.注入開始時は,速度20〜30ml/時,濃度を1kcal/mlを原則とする.持続投与(24時間)の場合は,フードポンプを使用する.腸瘻の場合の速度は,上限100ml/時である
   1-2.下痢や悪心,嘔吐などの消化器症状などがなく,間欠的に注入可能な場合は,経腸栄養剤の注入速度の原則は200ml/時
  2.経腸栄養剤は,注入時の温度を37〜38℃にする(準備時は常温でもかまわないが,湯煎や加温器などを使い注入の温度が37〜38℃になるようにする)
  3.経腸栄養剤注入前にチューブが胃に挿入されていることを必ず確認する
  4.経鼻経管栄養法のカテーテルは,テープで鼻翼に固定する
  5.経腸栄養剤の注入が終了したら,白湯または番茶でチューブ内を洗い流し,残渣のないことを確認する
  6.持続投与の場合は,8時間ごとに容器を交換する.また,経腸栄養の投与に使用する容器は3日ごと,胃チューブは1回〜2週を目安に交換する
  7.流動食注入時は座位または30°から45°の半座位にする.注入終了後,30分から1時間は頭部を挙上した状態で安静にする
5 排泄援助技術(登喜和江)
 1.便器・尿器での排泄援助
  1.便器・尿器は体格,性差に応じて適したものを選択する
  2.排泄時の体位は上半身を挙上する
  3.排泄時の室内環境を調整する
 2.オムツ交換
  1.性差や排泄の状況に応じて適切なオムツを選択する
  2.排泄後は速やかに交換する
  3.自ら排泄を訴えることができない患者の場合は,排泄パターンを把握し計画的に行う
  4.機能性尿失禁の患者の場合は,排尿パターンを把握し事前に排尿誘導を行う
 3.排便促進のための援助
  1.水分・食物によるコントロール:十分な水分摂取と,食物繊維を含む食事内容とする
  2.腹部マッサージを行う:上行結腸から横行結腸,下行結腸に向かって,両手指で腹壁に3〜5kgの圧(腹壁が3cmへこむ程度)を加える
  3.腹部,腰背部への温罨法:腹部,または腰背部(第4,第5腰椎を中心に)温罨法する
  4.温水洗浄便座(ウォシュレット)による肛門刺激で排便を誘発する
 4.摘便
  1.挿入する示指全体に十分に潤滑剤をつける
  2.摘便時の体位は,側臥位または仰臥位とする
  3.痔疾患のある患者には慎重に行う
 5.浣腸
  1.注入時の体位は側臥位とする
  2.カテーテル挿入の長さは成人では6cm程度とする
  3.注入液の温度は,直腸温よりやや高めの40〜41℃程度とする
  4.注入液は40〜60mlを15秒程度かけて注入する
 6.排尿促進のための援助
  1.脊髄神経の皮膚感覚支配領域(S1〜S4)を刺激する
  2.微温湯を外陰部にかけ刺激する
  3.流水音による刺激を行う
 7.導尿
  (1)一時的導尿
   1.尿道の長さを考慮して,カテーテルの清潔部位を確保する
   2.消毒液や潤滑剤の適用範囲を確認する
   3.挿入の長さの確認とともに,抵抗がある場合は無理に挿入しない
  (2)持続的導尿
   1.膀胱留置カテーテル挿入時には無菌操作を徹底して行う
   2.閉鎖式尿回路システムの使用により感染を防止する
   3.膀胱訓練は実施しない
6 清潔・衣生活援助技術(岡田淳子)
 1.入浴介助
  1.脱衣室と浴室の室温は26〜28℃に温めておく
  2.湯の温度は37〜38℃の微温浴にする
  3.心尖部以下の入浴か仰臥位に近い体位で入浴する
  4.入浴後は乾繰防止のためにスキンケアを行う
 2.全身(石けん)清拭
  1.室温は23℃以上に設定する
  2.全身清拭に要する時間を考慮して,清拭終了までウォッシュクロスの表面温度が維持できるように湯を準備する
  3.皮膚からの気化熱が奪われないように行う
   3-1.清拭直後すぐに乾布タオルで水分を拭き取る
   3-2.バスタオルや綿毛布を用いて,体側に挟み込んで隙間を作らないよう被覆する
   3-3.バスタオルや綿毛布を掛けたりはずしたりするときは静かに行う 
  4.洗浄剤は患者の皮膚の状態に応じ,刺激の弱いものを選択する
  5.石けん分はすすぎ用タオルで十分に拭き取る
  6.循環促進を期待する場合は熱布清拭を併用する
 3.部分浴
  (1)足浴
   1.38±2℃の範囲のお湯で患者の好みの温度に調節する
   2.浸水時間は10分程度がよい
   3.不眠がある場合,眠前に実施する
  (2)手浴
   1.1日に1回は行う
   2.38±2℃の湯にゆっくり沈め温める
   3.爪と指間は丁寧に洗う
 4.陰部洗浄
  1.毎日,外尿道口を洗浄する
  2.洗浄には十分な微温湯を使用する
 5.寝衣交換
  1.脱ぐときは健側→患側,着るときは患側→健側で行う
  2.下着は寝衣と重ねて準備し,一度に交換する
  3.全身清拭を実施するときに同時に行う
 6.洗髪
  1.最低3日に1度の割合で実施することが望ましい
  2.洗髪は短い時間(10分程度)で実施する
  3.シャンプーを泡立て,指腹でマッサージするように洗う
  4.実施中は苦痛を伴わない体位の工夫をする
   4-1.洗髪台でリクライニングの椅子を使用し,半座位で行う
   4-2.洗髪台で椅子に座り,前屈姿勢で行う
   4-3.ベッド上で洗髪車を使用して行う
   4-4.ケリーパッドを使用する
7 口腔ケア(戸田由美子)
 1.口腔ケアの実施の目安は,各食後および就寝前
 2.食事摂取が不可能(意識障害・気管内挿管・口腔疾患など)な場合には1日4回以上実施することが望ましい
 3.口腔ケアは起座位またはファーラー位・セミファーラー位で行う
 4.口腔清掃は,洗口法とブラッシング法あるいは清拭法を組み合わせると効果的である
 5.義歯は毎食後取り外してブラッシングおよび義歯洗浄剤により歯垢を除去する
 6.適宜保湿ケアを行い,口腔内乾燥を防ぐ
8 睡眠の援助
 1.入眠の援助(田中貴代子)
  1.規則正しい生活をする
  2.環境を調整する
   2-1.光環境を調整する
   2-2.快適温度・湿度にする
   2-3.騒音を除去する
  3.寝具の調整をする
  4.就寝の儀式を援助する
   4-1.イブニングケアを行う
   4-2.入浴を行う
  5.リラクセーションを目的とした援助を行う
 2.リラクセーション:アロマセラピー(纐纈葉月)
  1.睡眠パターンを整えるのに効果のある精油を選択し,吸入・マッサージ・入浴(足浴)の方法を用いて体内に吸収させる
 3.リラクセーション:指圧
  1.全身にある不眠の効果のあるツボを呼吸に合わせて,ちょうどよいと思える程度の弱い力で指圧する
 4.リラクセーション:マッサージ
  1.足底部や足指を揉捏法や軽擦法などで,片足5分程度を目安にマッサージする
9 安楽確保の技術 罨法
 1.氷枕の貼用(臼井恵美)
  1.氷枕の氷は〜入れ,コップ1〜2杯の水を入れる
  2.氷枕内の空気を抜く
  3.表面に付着した水滴は拭き取る/カバーをかける
 2.電気毛布の使用(蒲生澄美子)
  1.電気毛布は頭,頸部を除く全身の保温効果がある
 3.ゴム製湯たんぽ(高原素子)
  1.間接的に貼用する場合,湯の温度は50〜60℃にする
  2.厚手のカバーを用いる
10 与薬の技術(重松豊美・川西千恵美)
 与薬に関する基本的知識
  1.さまざまな与薬の方法
  2.薬物の投与・吸収・全身への作用経路
  3.薬物の代謝・排泄経路
  4.与薬に関わる法律
  5.薬物の保管と取り扱い
  6.処方せん
  7.与薬における看護師の役割:正しい患者に,正しい経路で,正しい時間に,正しい薬を,正しい量投与する
 1.経口・外用薬の与薬方法
  1.内服薬は,水またはぬるま湯で与薬する
  2.内服薬はできるだけそのままの剤形で与薬する
  3.皮膚に用いられる外用薬は清潔な皮膚に塗る(貼る)
  4.坐薬を直腸内に挿入する時は肛門より3cm以上奥に挿入する
 2.皮下・皮内・筋肉内注射の方法
  (1)注射の準備
   1.アルコールベースの速乾性手指消毒剤を用いて手洗いを行う
   2.処方せんを確認し,注射方法・薬液の量・薬液の質・穿刺部位に適した注射器,注射針を準備する
   3.注射器に必要量の薬液を無菌的に吸い上げる
    3-1.アンプルの頸部をアルコール綿で拭く
    3-2.アルコール綿でアンプルの頸部を覆ってカットする
    3-3.アンプルのカット面に,注射針が触れないようにする
    3-4.注射器の内筒に触れないように薬液を吸う
   4.注射器の中の空気を抜く
  (2)注射の実施
   1.患者の体位や姿勢を整え,安全な注射部位を選択する
   2.注射部位を「拭き残し」がないように確実に消毒する
   3.注射部位の皮膚消毒にはディスポーザブルの単包パックのアルコール綿を用いる
   4.選択した部位に薬液を確実に注入できるように針を刺入する
   5.注射時の痛みを軽減させる方法を活用する
  (3)注射実施後
   1.筋肉内注射,皮下注射の終了後は,ほとんどの場合マッサージを行う
   2.効果と副作用を観察する
   3.使用した針は,針刺し事故を防ぐために,リキャップはせず廃棄ボックスに捨てる
 3.静脈内注射
  1.アルコールベースの速乾性手指消毒剤を用いて手洗いを行い,手袋(清潔な未滅菌手袋)を装着する
  2.駆血帯もアルコール綿で消毒する,もしくはディスポーザブルのものを使用する
  3.駆血帯を締め,血管の走行,太さ,弾力性を確かめて穿刺部位を選択する
  4.静脈注射の際の穿刺時にも,筋肉内注射,皮下注射と同様に「痛みやしびれがないか」を患者に確認し,訴えがある時はすぐに針を抜く
 4.点滴静脈内注射・中心静脈カテーテルの管理
  (1)血管内留置カテーテルの挿入
   1.組織損傷を起こす可能性のある薬剤に注意する
   2.カテーテルの挿入に伴う合併症を防ぐ
    2-1.血管内留置カテーテルに関連する血流感染(以下,CRBSI)を防止するためには,穿刺部位の消毒にグルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテン(R),マスキン(R),ヒビテンアルコール(R)など)を用いた方がポビドンヨード(イソジン(R)など)を用いるよりも効果的である
    2-2.中心静脈カテーテル挿入時は,マキシマムバリアプリコーションを行う(CDC,カテゴリーIA)
    2-3.中心静脈カテーテルの挿入部位は鎖骨下静脈を選択する(CDC,カテゴリーIA)
    2-4.中心静脈カテーテルの挿入はIV専門チームが行う
    2-5.末梢静脈カテーテルに関連する静脈炎・感染の防止に関する事項
   3.患者の活動性を妨げないことを考慮し,確実に固定をする
  (2)血管内留置カテーテルの管理
   1.輸液ラインはクローズドシステムを使用する
   2.輸液ラインは曜日を決めて週2回交換する
   3.末梢静脈カテーテルのキープには生食ロックを行う
   4.カテーテル留置に伴う合併症を防ぐ
    4-1.末梢静脈カテーテルは,漏れる,詰まる,発赤などがなければ96時間を目安に交換する
    4-2.静脈炎(ほてり,圧痛,紅斑,触診可能な索状静脈など)の症状があれば,カテーテルを抜去する
    4-3.中心静脈カテーテルの刺入部は,透明フィルムで覆う.透明フィルムは7〜10日ごとに交換する
    4-4.中心静脈カテーテルを定期的に交換する必要はない
 5.輸血
  1.輸血の際に必要な確認を確実に行う
  2.血液製剤の融解あるいは加温時の手順を守り,取り扱いに注意する
11 創傷管理技術
 1.ドレッシング(内藤志穂)
  1.創傷の治癒形態や種類,部位などを観察する
  2.一次縫合創は,縫合閉鎖後48時間まではドレッシング材で創を保護する
 2.褥瘡のケア(片山恵)
  1.褥瘡の深達度,創面の色調,感染の有無などを観察する
  2.適度な湿潤環境を保つ
  3.生理食塩水,水道水などを用いて十分な洗浄を行う
  4.シャワーや入浴は積極的に行う
12 症状・生体機能管理技術(片山恵・川西千恵美)
 1.体温測定
  1.対象者に合った測定方法,部位を選択する
  2.電子体温計は,測定値として予測値か実測値を用いるかの判断をする
   (1)腋窩での測定
    1.測定前にあらかじめ腋窩を閉じておく
    2.体温計を腋窩の最深部に挿入する
    3.腋窩の汗は基本的に除去しなくてもよい
    4.測定中は体位を保持する
    5.片麻痺の場合は,麻痺がない側(健側)で測定する
   (2)口腔での測定
    1.一定の外部環境下で測定を行う
    2.測定前の飲食は避ける
    3.挿入部位は舌下.実測温は4分以上測定する
   (3)直腸での検温
    1.体温計を挿入する長さは成人で5〜6cm
    2.測定時間は3分以上(実測温)
   (4)鼓膜での測定
    1.外耳道をまっすぐにして,体温計を正確な位置に挿入する
 2.呼吸測定と診査
  1.測定前に活動していた場合は,しばらく安静にする(目安,5〜10分)
  2.呼吸の測定体位はファーラー位か座位が望ましい
  3.呼吸の深さ,リズム,呼吸音,努力性呼吸の有無を観察する
 3.脈拍測定と診査
  1.脈拍の変動要因を極力取り除いてから測定する
  2.脈拍の触知は3指(示指,中指,薬指)の指腹部分を平行にそろえて血管の走行に沿って軽く押さえる
  3.基本的には1分間測定を行う.整脈の場合は30秒間の測定でよい
  4.不整脈が触知された場合は,脈拍の欠損をとらえ,心拍数を聴取する
 4.血圧測定
  1.血圧測定の前に使用機器の状態を確認する
  2.測定環境を整えるため,22〜24℃に気温を保つ
  3.活動,入浴,食事,喫煙など対象者の状況をみて,安静時の血圧が測定できるかどうかを見極める
  4.聴診器は,膜面,ベル面どちらを用いてもよい
  5.カフを巻く測定部位を心臓の高さと同じにする
  6.カフは上腕周の40%くらいの幅のものを使用する.ゴム嚢は上腕囲の80%(乳幼児は100%)覆うものを選択する
  7.カフを巻く時は,下端が肘窩より2cmくらい上にくるようにし,ゆとりをもって巻く
  8.加圧は速やかに,減圧は心拍もしくは1秒毎に2〜3mmHgずつ行う
  9.コロトコフ音は第5点で拡張期血圧を測定する
13 呼吸を整える技術
 1.酸素吸入(松下恭子)
  1.適切な酸素吸入の方法を選択する.それぞれの特徴や注意点を理解しておく
  2.酸素吸入の際は加湿を行う
  3.中央配管式アウトレットでは,酸素用に接続する
  4.酸素使用時は5m以内で火気は使用しない
  5.ボンベは直射日光を受けない場所に置く
  6.酸素ボンベは専用のスタンドに立てて保管する
 2.気道内加湿法(松下恭子)
  1.治療目的に適した器具を選択する
  2.体位は座位または半座位(ファーラー位)とする
  3.食事の直前や食後は避ける
  4.一度セットした薬液は使い切るか,廃棄する
  5.患者間で使い回しをせずその都度消毒する
  6.マウスピースのくわえ方や呼吸は目的に合わせた指導をする
  7.呼気の終わりには3〜4秒息を止める
  8.吸入液は嚥下させない
  9.吸入後効果的な咳嗽をさせる
 3.気管内吸引(國重絵美・川西千恵美)
  1.気管内吸引は聴診により痰の位置を確認し,他の指標からも必要と判断した場合のみ行う
  2.低酸素血症が予測される場合,実施前後に酸素を投与するなどの予防を行う
  3.吸引カテーテルは,カテーテルの外径が気管内チューブの内径の半分以下で,多孔式のものを選択する
  4.吸引カテーテルの挿入は気管内挿管チューブの先端から数cmまでで十分である
  5.気管内吸引は無菌操作で行う
  6.設定吸引圧は,成人の場合80〜150mmHg程度とする
  7.吸引は10〜15秒以内で行う
  8.滅菌手袋を用いてカテーテルをつまみ,こよりを作るような操作を行うことで気管内チューブ内のカテーテルが回転する
  9.気管内洗浄は一般的には行うべきでない
14 救命救急処置技術(大石杉乃)
 1.意識レベル把握
  1.患者を軽く叩くか揺すって,大きな声で呼びかけ,意識があるか否かを確認する
  2.救命の連鎖(Chain of Survival)を確立する
 2.心肺蘇生法
  1.患者の呼吸を評価する
  2.甲状軟骨と胸鎖乳突筋の間の溝に手指を当て,頸動脈を触知する
  3.気道確保をする
   3-1.頭部後屈と顎先挙上法を行う
   3-2.頸椎障害の疑いがある患者には,頭部後屈をしない下顎挙上法を行う
   3-3.口腔内に異物が認められたら除去する
  4.人工呼吸を行う
   4-1.バッグマスクの準備があり,施行者が2名いるときにバッグマスク法による人工呼吸を行う
   4-2.口対口人工呼吸法,口対鼻人工呼吸法など,適切な方法を選択する
   4-3.口から呼気を吹き込むときには鼻を,鼻から吹き込むときには口を閉じる
   4-4.呼気は2秒以上かけて吹き込み,1回の吹き込み量(換気量)は約10ml/kgとする
  5.閉鎖的心マッサージ(胸骨圧迫心臓マッサージ)を行う
   5-1.患者を硬い表面に水平に臥床させる
   5-2.胸骨下半分のところに,施行者の手を置き,もう一方の手をその上に平行になるように重ねる.手根部の長軸が胸骨の長軸と一致するように手を置く.圧迫解除時もこの位置から手を離さない
   5-3.胸骨への加圧は垂直にし,施行者は肘を伸ばし,上半身の体重を利用して圧迫する
   5-4.成人の胸骨圧迫心臓マッサージの速度は,1分間に100回である
   5-5.胸骨の圧迫時間と圧迫解除時間を同じにする
   5-6.施行者1名,2名の場合ともに,胸骨圧迫心臓マッサージ15回を続けた後2回の人工呼吸を行う
   5-7.胸骨を3.5〜5cm押し下げるように圧迫する
  6.一次救命処置を2名以上で実施している場合には,心肺蘇生の再評価を行う
  7.心室細動の場合,速やかに除細動をする
   7-1.患者の胸壁が水に濡れている場合には,拭いて乾燥させる
   7-2.経皮的貼付薬剤を除去し,その部分をきれいに拭く
   7-3.植込み式ペースメーカーを装着しているかを確認する
  8.心室細動,無脈性心室頻脈の場合,不整脈の停止が確認できるまで,段階的に通電エネルギーを増加させて3回繰り返す(手動式単相性除細動器の場合)
 3.止血法
  1.出血の種類,生命の危険がないかを確認する
  2.一時的止血を行う
   2-1.直接圧迫法を行う
   2-2.間接圧迫止血法を行う
  3.静脈確保をする
  4.速やかに根治的止血処置に移行する
15 死後の処置(大石杉乃)
 1.死後の処置は家族との最後の別れが済んだ後,死後硬直が出現する前に行う
 2.遺体の状態が不自然な場合には現状を保存する
 3.吐物や排泄物を除去する
  3-1.胃の内容物を除去するため,死者を側臥位にし胃を高くした姿勢で胃部を圧迫する
  3-2.便を除去するため,大腸の走行にそって圧迫する
  3-3.尿を除去するため,恥骨に向かって膀胱を圧迫する
 4.顔→上肢→胸・腹部→下肢の順に清拭する.シャワーで洗浄することもある
 5.口腔内に綿を詰め,口や目を閉じさせ,必要時,化粧,髭そりをする
 6.身体の腔部に脱脂綿→青梅綿(弾綿)→脱脂綿の順に綿を詰める
 7.死者の衣服,着衣の方法,手の組み方は家族との話し合いのうえ,実施する
 8.看護師はガウン,マスク,ゴム手袋(必要時ゴーグル)を着用する