はじめに
1987(昭和62)年の精神保健法成立を1つの転換点として,日本の精神保健医療は患者の人権保障と社会復帰・社会参加の促進へ向け,ようやく本格的な歩みを開始しました.2002(平成14)年12月に発表された社会保障審議会障害者部会精神障害分会報告書では,今後10年のうちに「条件が整えば退院可能な約7万2,000人の患者」の退院を目指す方針が示されました.この目標を達成するためには,精神障害者の地域支援の充実を図ること,また地域支援のネットワークを構築することが欠かせません.
しかし現実には,精神障害者を支える地域資源は質・量ともにいまだ不十分であり,また地域支援のネットワークは十分に機能するまでには至っていません.日本の精神保健医療が極端な入院偏重主義の道を歩んできたことは,すでに多くの批判を浴びてきましたが,一方で,このような状況を少しでも打開しようと,これまでに多くの専門職・当事者・家族などが,個人的に鋭意努力を重ねてきたことも日本の精神保健医療の歴史における大きな特徴であると思われます.
したがって,精神障害者の社会参加の促進・ノーマライゼーションの達成のためには,今まさにさまざまな現場で試行錯誤されている実践知を掘り起こし共有する作業が求められています.こうした作業を通して,実践の質を高めていくとともに,互いの実践についての理解を深め,ひいては地域支援のネットワークを構築していくことが求められています.
本書は,精神保健医療の地域化へ向けた流れの中で,精神障害者の退院促進および社会参加の促進に貢献することをねらいとし,精神障害者の地域支援に必要な基本的知識と実践知をまとめ解説したものです.
全体は,第I部「精神障害者の地域支援のための基本的知識」,第II部「実践編:退院計画から地域支援まで」の2つの大きな部分から成っています.
第I部では,精神障害者の地域支援のために不可欠な知識として,まず,法制度の変遷と現行の精神保健福祉施策について解説しました.ここでは,現在注目されている「ケアマネジメント」や「ACT(包括型地域生活支援プログラム)」に関する内容も加えたほか,経済的な観点を補うものとして「精神保健医療の経済の仕組み」についても解説しました.さらに,さまざまな場で精神障害者の支援に当たる方々に役立つよう「精神障害の理解」「精神症状の観察のポイント」「対応のポイント」「薬物療法の知識と援助のポイント」「心理教育・SST」「家族への支援」など,精神障害者の支援に必要な知識と技術を押さえるよう努めました.
第II部「実践編」では,「退院計画から地域支援まで」という副題の示す通り,入院場面にはじまり,看護援助を軸として,地域支援の流れに沿って,外来,デイケア,訪問看護,保健所・市町村保健センター,地域生活支援センター,作業所・グループホームとつなぎ,それぞれの場における援助の特徴について述べるとともに,事例を加え,実際の援助を具体的にイメージできるよう心がけました.さまざまな場における援助が生き生きと伝わるよう,事例の記述は豊かなものとなっていますが,これらの事例は,プライバシーの保護のために匿名化に配慮して修正を加えたものであることをお断りしておきます.
さらに,今後地域支援ネットワークの中心に位置付けられ,ますますその重要性が高まるであろう当事者活動について,2名の当事者の方にその実際を紹介していただき,本書を締め括りました.
精神障害者の地域支援ネットワークを構築していくためには,さまざまな場にある実践者が互いの実践についてよく知り,風通しのよい協力関係を作れるようにすることが何よりも重要と思われます.第II部の各章はこのような考えに基づいて設けられました.また本書は,看護援助を中軸に構成されていますが,これは,障害を理解しつつ生活を支援する専門職としての看護のあり方が,精神障害者の退院と社会参加の促進のための大きな鍵を握っているとの認識に基づくものです.
このような趣旨でまとめられた本書が,病院または地域で精神障害者の支援にあたる看護師・保健師,および他の精神保健医療福祉の専門職や精神保健ボランティアの方々,また精神看護を学ぶ看護学生・大学院生などの方々に広く活用され,精神障害者の退院促進・社会参加,ひいてはノーマライゼーションの達成に役立つことを切に願っております.
2004年6月
編者 田中美恵子
1987(昭和62)年の精神保健法成立を1つの転換点として,日本の精神保健医療は患者の人権保障と社会復帰・社会参加の促進へ向け,ようやく本格的な歩みを開始しました.2002(平成14)年12月に発表された社会保障審議会障害者部会精神障害分会報告書では,今後10年のうちに「条件が整えば退院可能な約7万2,000人の患者」の退院を目指す方針が示されました.この目標を達成するためには,精神障害者の地域支援の充実を図ること,また地域支援のネットワークを構築することが欠かせません.
しかし現実には,精神障害者を支える地域資源は質・量ともにいまだ不十分であり,また地域支援のネットワークは十分に機能するまでには至っていません.日本の精神保健医療が極端な入院偏重主義の道を歩んできたことは,すでに多くの批判を浴びてきましたが,一方で,このような状況を少しでも打開しようと,これまでに多くの専門職・当事者・家族などが,個人的に鋭意努力を重ねてきたことも日本の精神保健医療の歴史における大きな特徴であると思われます.
したがって,精神障害者の社会参加の促進・ノーマライゼーションの達成のためには,今まさにさまざまな現場で試行錯誤されている実践知を掘り起こし共有する作業が求められています.こうした作業を通して,実践の質を高めていくとともに,互いの実践についての理解を深め,ひいては地域支援のネットワークを構築していくことが求められています.
本書は,精神保健医療の地域化へ向けた流れの中で,精神障害者の退院促進および社会参加の促進に貢献することをねらいとし,精神障害者の地域支援に必要な基本的知識と実践知をまとめ解説したものです.
全体は,第I部「精神障害者の地域支援のための基本的知識」,第II部「実践編:退院計画から地域支援まで」の2つの大きな部分から成っています.
第I部では,精神障害者の地域支援のために不可欠な知識として,まず,法制度の変遷と現行の精神保健福祉施策について解説しました.ここでは,現在注目されている「ケアマネジメント」や「ACT(包括型地域生活支援プログラム)」に関する内容も加えたほか,経済的な観点を補うものとして「精神保健医療の経済の仕組み」についても解説しました.さらに,さまざまな場で精神障害者の支援に当たる方々に役立つよう「精神障害の理解」「精神症状の観察のポイント」「対応のポイント」「薬物療法の知識と援助のポイント」「心理教育・SST」「家族への支援」など,精神障害者の支援に必要な知識と技術を押さえるよう努めました.
第II部「実践編」では,「退院計画から地域支援まで」という副題の示す通り,入院場面にはじまり,看護援助を軸として,地域支援の流れに沿って,外来,デイケア,訪問看護,保健所・市町村保健センター,地域生活支援センター,作業所・グループホームとつなぎ,それぞれの場における援助の特徴について述べるとともに,事例を加え,実際の援助を具体的にイメージできるよう心がけました.さまざまな場における援助が生き生きと伝わるよう,事例の記述は豊かなものとなっていますが,これらの事例は,プライバシーの保護のために匿名化に配慮して修正を加えたものであることをお断りしておきます.
さらに,今後地域支援ネットワークの中心に位置付けられ,ますますその重要性が高まるであろう当事者活動について,2名の当事者の方にその実際を紹介していただき,本書を締め括りました.
精神障害者の地域支援ネットワークを構築していくためには,さまざまな場にある実践者が互いの実践についてよく知り,風通しのよい協力関係を作れるようにすることが何よりも重要と思われます.第II部の各章はこのような考えに基づいて設けられました.また本書は,看護援助を中軸に構成されていますが,これは,障害を理解しつつ生活を支援する専門職としての看護のあり方が,精神障害者の退院と社会参加の促進のための大きな鍵を握っているとの認識に基づくものです.
このような趣旨でまとめられた本書が,病院または地域で精神障害者の支援にあたる看護師・保健師,および他の精神保健医療福祉の専門職や精神保健ボランティアの方々,また精神看護を学ぶ看護学生・大学院生などの方々に広く活用され,精神障害者の退院促進・社会参加,ひいてはノーマライゼーションの達成に役立つことを切に願っております.
2004年6月
編者 田中美恵子
精神障害者の地域支援ネットワークと看護援助 退院計画から地域支援まで もくじ
第I部 精神障害者の地域支援のための基本的知識
1 精神障害者の地域支援体制
1)精神保健医療福祉施策の動向(田中)
◆法制度改正の経緯
戦後精神医療の変遷 /「精神保健法」の成立と「障害者基本法」の成立 /「精神保健福祉法」の成立と一部改正
◆関連法規・施策の動向
[コラム] 精神保健福祉士 /保護者(精神保健福祉法第20条)
2)精神障害者の地域支援ネットワーク(田中)
◆精神保健福祉の行政組織
国,都道府県・指定都市の役割 /保健所・市町村の役割
◆精神保健福祉施策
医療に関わる諸制度・事業等 /地域福祉に関わる諸制度・事業等
◆その他の精神障害者地域支援
民間支援団体 /権利擁護の活動と団体
[コラム] 社会福祉法と社会福祉基礎構造改革 /障害者雇用促進法の改正
3)精神障害者のケアマネジメント
◆障害者ケアマネジメント(福間)
ケアマネジメントとは/日本における障害者ケアマネジメント/他の制度との関連
◆ACT(包括型地域生活支援プログラム)(坂下)
ACTとは/ACTの特徴 /ACTによって提供されるサービス /日本への導入にあたって
4)精神保健医療の経済の仕組み(粕田)
◆国民皆保険制度と医療法・健康保険法
国民皆保険制度 /第4次医療法改正・健康保険法改正
◆診療報酬制度と精神医療・看護
医療保険制度と診療報酬 /診療報酬の形式 /診療報酬点数表の構造 /出来高払い/特定入院料(包括払い)
◆入院料と看護
看護料から入院基本料への移行 /入院料の実際
◆精神医療における経済と看護
精神科専門療法 /精神科医療費 /当院の例でみた精神看護と経済
2 精神障害者の支援に必要な知識と技術
1)精神障害の理解:疾患の概観と臨床的特徴(黒澤・堀川)
◆統合失調症
概説 /疫学 /成因 /症状 /病型 /診断 /治療 /経過と予後
◆気分障害(躁うつ病)
概説 /疫学 /成因 /主要な症状 /経過 /予後 /治療
◆人格障害:主に境界性人格障害について
概説 /類型 /境界性人格障害
2)精神症状の観察のポイント(堀川・黒澤)
◆精神症状の見方
◆統合失調症
観察と対応の基礎になる重要な知識 /観察のポイント
◆うつ病
抑うつ状態を見逃さない /重症度を評価する:精神科受診の必要性 /自殺の危険に注意する
◆境界性人格障害
境界性人格障害の可能性を考える
3)対応のポイント―統合失調症―(堀川・黒澤)
◆関わり方の基本
不安と焦りを和らげる /過剰な介入を避ける
◆個別問題への対応
精神科を受診するまで /どうしても受診を拒否する時 /患者が服薬を嫌がる時 /幻覚妄想への対応/暴力への対応/陰性症状が目立つ場合/高感情表出家族の問題
4)薬物療法の知識と援助のポイント(江波戸)
◆精神科薬物療法の知識
抗精神病薬 /抗不安薬 /抗うつ薬 /抗躁薬 /睡眠薬 /抗てんかん薬 /抗酒薬
◆援助のポイント
薬の種類・タイプと症状観察 /副作用への援助 /服薬の回数・方法の調整 /服薬教育 /薬の切り替え時の援助
5)心理教育・SST
◆心理教育(濱田)
心理教育とは /心理教育における基本概念 /心理教育の構造 /統合失調症を中心とした心理教育の実際
◆SST(福間)
SSTとは /生活技能の構成要素 /SSTの基礎理論 /SSTの診療報酬上の位置づけ /SSTの手法 /SST実施後の評価
[コラム] 親子関係にみられる学習理論/SSTを病棟で実施していく上でのポイント
6)家族への支援(濱田)
精神障害者の家族の状況 /家族会 /家族教室・家族心理教育 /援助対象としての家族 /家族への看護援助(事例) /家族への看護援助のポイント
[コラム] 成年後見制度/家族療法/地域のエキスパートナースのYさんに聞きました!
第II部 実践編:退院計画から地域支援まで
1 初回・短期入院からの退院支援
1)初回・短期入院からの退院計画(江波戸・田中)
◆初回入院と短期入院を繰り返す場合の退院支援の違い
初回入院からの退院支援 /短期入院を繰り返す場合の退院支援
◆初回・短期入院からの退院支援のポイント
情報収集 /入院に対する不安への援助 /急性期症状と薬物療法への援助 /身体管理と信頼関係の構築 /セルフケアの援助 /家族の不安への援助と情報提供 /服薬教育 /症状コントロール /退院前の心理的なサポート /支援の連続性とネットワークづくり
[コラム] 外部と連携を取ること /セルフケア援助と生活歴 /地域生活の実感 /看護師が希望をもつこと
2)援助の実際(江波戸)
事例1 患者・母親双方の不安の軽減を焦点とした初回入院患者への退院支援
事例2 服薬中断の背景にある家族関係の調整と自宅での生活に合わせた援助
[コラム] “百聞は一見に如かず”―訪問することでわかる家庭の様子 /病棟に入院中の患者さんと一緒に,「退院前の訪問」ってできるの?
2 長期入院からの退院支援
1)長期入院からの退院計画(田中)
◆病棟単位での退院促進のための管理的な取り組み
◆長期入院からの退院支援のポイント
退院への働きかけと退院計画 /退院支援のポイント
事例1 患者のペースに合わせた退院支援で26年間の入院生活から退院に至った事例
事例2 症状コントロールを通した支援とサポート体制の構築により退院へと至った事例
事例3 隠された意思を言語化するケアをきっかけに退院に結びついた事例
[コラム] 患者同士のモデルの存在
3 外来看護
1)安心して外来受診ができるための援助
◆受診から帰宅までの流れ(森本)
受け付け /待ち時間 /診察後 /処置 /会計
◆外来における環境の調整(三砂)
危険物などの管理に注意する /静かな環境を提供する /目の届かない場所の観察を行う
◆外来での対応のポイント(佐藤)
情報把握の方法 /症状悪化のサインを早期にキャッチすること /患者が看護師やスタッフに話した内容による把握 /多量服薬や自傷行為をし,電話をしてきた患者への対応
[コラム] つらい待ち時間の工夫 /担当医師で運命が変わりますか?
2)病棟および他職種・他部門との連携
◆病棟との連携による継続看護(森本)
外来通院していた患者が入院する場合 /入院していた患者が退院により外来通院する場合
◆他職種との連携(宮本)
3)精神科外来における看護相談の役割と機能(佐藤)
◆外来窓口相談・電話相談
初診相談 /再来患者の相談
◆家族からの相談
病気の自覚がなく受診が困難な場合 /アルコール・薬物依存症・暴力・買物依存・万引きなどの状態に困っている場合 /家族の患者への対応方法
◆転院・入院の相談
[コラム] 看護師のカウンセリングではだめですか?
4)外来における個別ケア―継続看護とプライマリナースによる援助
◆外来において継続看護を行う基準(宮本)
プライマリナースをつける場合 /外来看護師全員で統一的な関わりをする場合 /受診状況を継続的に観察する場合
◆外来での短期プライマリナースの必要性と役割(佐藤)
入院予約した患者 /退院に調整が必要な患者 /外来の待ち時間に症状悪化をきたしやすい患者 /待ち時間に他患に迷惑行為を起こしやすい患者 /高齢者など規則的な服薬・通院が難しい患者
5)援助の実際(佐藤・宮本・森本)
事例1 外来で自傷行為を繰り返すAさんへの継続援助
事例2 病識がなく怠薬がちだったBさんへの援助
事例3 体感幻覚へのこだわりから,無為・自閉の生活を送っていたCさんへの援助
4 デイケア(堀内)
1)デイケアとは
◆わが国のデイケアのあゆみ
◆デイケアにおける支援の特徴
支援の目標 /支援の対象 /支援の方法 /支援の期間 /スタッフ
2)デイケアの実際
◆病院の概要
◆当院デイケアにおける支援の特徴
支援の目標 /利用者 /支援の方法 /期間 /スタッフ
◆今後の課題
5 訪問看護
1)訪問看護における援助の特徴(田中)
◆精神訪問看護の目的と焦点
◆精神障害の特徴と訪問看護における援助
疾患のコントロール /生活能力の維持・向上へ向けた援助 /社会生活の維持・社会参加の促進への支援 /「体験としての障害」への援助―精神障害者との関係づくり
[コラム] 社会保険診療制度における訪問看護―保険医療機関からの訪問看護 /訪問看護制度による訪問看護―訪問看護ステーションからの訪問看護
2)援助の実際(岩切・田中)
[事例1] 陽性症状をもち続けるAさんへの10余年にわたる地域生活の支援
[事例2] 金銭管理の問題と不安による身体症状をもつBさんへの支援
[事例3] 内科入院を繰り返しながら地域生活を送るCさんへの支援
6 保健所・市町村保健センター(柏木)
1)保健所・市町村保健センターの精神障害者への生活支援
◆保健師が担った精神保健福祉活動の経緯
◆精神保健福祉相談における保健師の役割
未治療・治療中断者の精神保健福祉相談の現状 /未治療・治療中断者への相談訪問活動 /精神保健福祉相談の窓口の広がり
2)援助の実際
[事例1] 長期間ひきこもりを続けるAさんと家族への関わり
[事例2] 緊急入院をきっかけとした在宅生活支援と家族への介入
[事例3] 高齢の精神障害者への緊急介入と家族支援
7 精神障害者地域生活支援センター(伊藤)
1)地域生活支援センターの概要と現状
◆わが国の地域生活支援センターのあゆみ
地域生活支援センターのはじまり /地域生活支援センターの運営 /東京都における地域生活支援センターの状況 /東京都小平市における地域生活支援の取り組み /「地域生活支援センターあさやけ」の開設
◆「センターあさやけ」の現在の活動
「センターあさやけ」への新規相談 /「センターあさやけ」の利用と登録 /日常生活支援 /電話相談・面接相談 /交流 /地域連携
[コラム] 金銭管理 /消費生活センターへの同行 /相談の一例 /交流の一例
2)新たな地域連携への取り組みと今後の課題
◆ケアマネジメントとホームヘルプ事業
[事例1] 精神障害者ケアマネジメントを行っての生活支援
[事例2] 地域生活支援センターにおけるホームヘルプ事業の取り組み
◆地域生活支援センターの役割と今後の課題
活動内容と役割 /今後の課題
8 看護者による地域支援(濱田・臼井・大城・森)
1)精神障害者小規模作業所での活動の実際
◆精神障害者小規模作業所
◆作業所での援助の実際:「ひあしんす城北」の場合
作業所利用開始までの手続き /作業所の1日の流れ /作業所における援助のポイント
2)グループホームの活動の実際
◆グループホーム(正式名称:精神障害者地域生活援助事業)
◆グループホームでの援助の実際:ドリームSの場合
グループホーム利用開始までの手続き /グループホームにおける援助のポイント
3)援助の実際
[事例1] 病気から自分を取り戻すことに付き添った事例(作業所利用者)
[事例2] もともともっていた“大工仕事”という人生の地図を取り戻した事例(作業所利用者)
[事例3] “母親を安心させたい”といってグループホームを利用した事例(グループホーム利用者)
9 セルフヘルプグループと当事者活動
1)セルフヘルプグループの概説(田中)
◆セルフヘルプグループの特徴と機能
セルフヘルプグループの援助機能 /セルフヘルプグループの社会的機能―セルフヘルプ運動・当事者活動
◆セルフヘルプグループの歴史的発展
アメリカ合衆国におけるセルフヘルプグループの発展 /日本におけるセルフヘルプグループの発展 /日本におけるセルフヘルプ運動―「全国精神障害者家族会連合会」の結成― /当事者によるセルフヘルプ運動―「全国精神障害者団体連合会」の結成
2)当事者活動の実際
◆全精連およびポプリの活動を通して(有村)
◆東京ドロップインセンターの当事者活動の経験から(沢田)
第I部 精神障害者の地域支援のための基本的知識
1 精神障害者の地域支援体制
1)精神保健医療福祉施策の動向(田中)
◆法制度改正の経緯
戦後精神医療の変遷 /「精神保健法」の成立と「障害者基本法」の成立 /「精神保健福祉法」の成立と一部改正
◆関連法規・施策の動向
[コラム] 精神保健福祉士 /保護者(精神保健福祉法第20条)
2)精神障害者の地域支援ネットワーク(田中)
◆精神保健福祉の行政組織
国,都道府県・指定都市の役割 /保健所・市町村の役割
◆精神保健福祉施策
医療に関わる諸制度・事業等 /地域福祉に関わる諸制度・事業等
◆その他の精神障害者地域支援
民間支援団体 /権利擁護の活動と団体
[コラム] 社会福祉法と社会福祉基礎構造改革 /障害者雇用促進法の改正
3)精神障害者のケアマネジメント
◆障害者ケアマネジメント(福間)
ケアマネジメントとは/日本における障害者ケアマネジメント/他の制度との関連
◆ACT(包括型地域生活支援プログラム)(坂下)
ACTとは/ACTの特徴 /ACTによって提供されるサービス /日本への導入にあたって
4)精神保健医療の経済の仕組み(粕田)
◆国民皆保険制度と医療法・健康保険法
国民皆保険制度 /第4次医療法改正・健康保険法改正
◆診療報酬制度と精神医療・看護
医療保険制度と診療報酬 /診療報酬の形式 /診療報酬点数表の構造 /出来高払い/特定入院料(包括払い)
◆入院料と看護
看護料から入院基本料への移行 /入院料の実際
◆精神医療における経済と看護
精神科専門療法 /精神科医療費 /当院の例でみた精神看護と経済
2 精神障害者の支援に必要な知識と技術
1)精神障害の理解:疾患の概観と臨床的特徴(黒澤・堀川)
◆統合失調症
概説 /疫学 /成因 /症状 /病型 /診断 /治療 /経過と予後
◆気分障害(躁うつ病)
概説 /疫学 /成因 /主要な症状 /経過 /予後 /治療
◆人格障害:主に境界性人格障害について
概説 /類型 /境界性人格障害
2)精神症状の観察のポイント(堀川・黒澤)
◆精神症状の見方
◆統合失調症
観察と対応の基礎になる重要な知識 /観察のポイント
◆うつ病
抑うつ状態を見逃さない /重症度を評価する:精神科受診の必要性 /自殺の危険に注意する
◆境界性人格障害
境界性人格障害の可能性を考える
3)対応のポイント―統合失調症―(堀川・黒澤)
◆関わり方の基本
不安と焦りを和らげる /過剰な介入を避ける
◆個別問題への対応
精神科を受診するまで /どうしても受診を拒否する時 /患者が服薬を嫌がる時 /幻覚妄想への対応/暴力への対応/陰性症状が目立つ場合/高感情表出家族の問題
4)薬物療法の知識と援助のポイント(江波戸)
◆精神科薬物療法の知識
抗精神病薬 /抗不安薬 /抗うつ薬 /抗躁薬 /睡眠薬 /抗てんかん薬 /抗酒薬
◆援助のポイント
薬の種類・タイプと症状観察 /副作用への援助 /服薬の回数・方法の調整 /服薬教育 /薬の切り替え時の援助
5)心理教育・SST
◆心理教育(濱田)
心理教育とは /心理教育における基本概念 /心理教育の構造 /統合失調症を中心とした心理教育の実際
◆SST(福間)
SSTとは /生活技能の構成要素 /SSTの基礎理論 /SSTの診療報酬上の位置づけ /SSTの手法 /SST実施後の評価
[コラム] 親子関係にみられる学習理論/SSTを病棟で実施していく上でのポイント
6)家族への支援(濱田)
精神障害者の家族の状況 /家族会 /家族教室・家族心理教育 /援助対象としての家族 /家族への看護援助(事例) /家族への看護援助のポイント
[コラム] 成年後見制度/家族療法/地域のエキスパートナースのYさんに聞きました!
第II部 実践編:退院計画から地域支援まで
1 初回・短期入院からの退院支援
1)初回・短期入院からの退院計画(江波戸・田中)
◆初回入院と短期入院を繰り返す場合の退院支援の違い
初回入院からの退院支援 /短期入院を繰り返す場合の退院支援
◆初回・短期入院からの退院支援のポイント
情報収集 /入院に対する不安への援助 /急性期症状と薬物療法への援助 /身体管理と信頼関係の構築 /セルフケアの援助 /家族の不安への援助と情報提供 /服薬教育 /症状コントロール /退院前の心理的なサポート /支援の連続性とネットワークづくり
[コラム] 外部と連携を取ること /セルフケア援助と生活歴 /地域生活の実感 /看護師が希望をもつこと
2)援助の実際(江波戸)
事例1 患者・母親双方の不安の軽減を焦点とした初回入院患者への退院支援
事例2 服薬中断の背景にある家族関係の調整と自宅での生活に合わせた援助
[コラム] “百聞は一見に如かず”―訪問することでわかる家庭の様子 /病棟に入院中の患者さんと一緒に,「退院前の訪問」ってできるの?
2 長期入院からの退院支援
1)長期入院からの退院計画(田中)
◆病棟単位での退院促進のための管理的な取り組み
◆長期入院からの退院支援のポイント
退院への働きかけと退院計画 /退院支援のポイント
事例1 患者のペースに合わせた退院支援で26年間の入院生活から退院に至った事例
事例2 症状コントロールを通した支援とサポート体制の構築により退院へと至った事例
事例3 隠された意思を言語化するケアをきっかけに退院に結びついた事例
[コラム] 患者同士のモデルの存在
3 外来看護
1)安心して外来受診ができるための援助
◆受診から帰宅までの流れ(森本)
受け付け /待ち時間 /診察後 /処置 /会計
◆外来における環境の調整(三砂)
危険物などの管理に注意する /静かな環境を提供する /目の届かない場所の観察を行う
◆外来での対応のポイント(佐藤)
情報把握の方法 /症状悪化のサインを早期にキャッチすること /患者が看護師やスタッフに話した内容による把握 /多量服薬や自傷行為をし,電話をしてきた患者への対応
[コラム] つらい待ち時間の工夫 /担当医師で運命が変わりますか?
2)病棟および他職種・他部門との連携
◆病棟との連携による継続看護(森本)
外来通院していた患者が入院する場合 /入院していた患者が退院により外来通院する場合
◆他職種との連携(宮本)
3)精神科外来における看護相談の役割と機能(佐藤)
◆外来窓口相談・電話相談
初診相談 /再来患者の相談
◆家族からの相談
病気の自覚がなく受診が困難な場合 /アルコール・薬物依存症・暴力・買物依存・万引きなどの状態に困っている場合 /家族の患者への対応方法
◆転院・入院の相談
[コラム] 看護師のカウンセリングではだめですか?
4)外来における個別ケア―継続看護とプライマリナースによる援助
◆外来において継続看護を行う基準(宮本)
プライマリナースをつける場合 /外来看護師全員で統一的な関わりをする場合 /受診状況を継続的に観察する場合
◆外来での短期プライマリナースの必要性と役割(佐藤)
入院予約した患者 /退院に調整が必要な患者 /外来の待ち時間に症状悪化をきたしやすい患者 /待ち時間に他患に迷惑行為を起こしやすい患者 /高齢者など規則的な服薬・通院が難しい患者
5)援助の実際(佐藤・宮本・森本)
事例1 外来で自傷行為を繰り返すAさんへの継続援助
事例2 病識がなく怠薬がちだったBさんへの援助
事例3 体感幻覚へのこだわりから,無為・自閉の生活を送っていたCさんへの援助
4 デイケア(堀内)
1)デイケアとは
◆わが国のデイケアのあゆみ
◆デイケアにおける支援の特徴
支援の目標 /支援の対象 /支援の方法 /支援の期間 /スタッフ
2)デイケアの実際
◆病院の概要
◆当院デイケアにおける支援の特徴
支援の目標 /利用者 /支援の方法 /期間 /スタッフ
◆今後の課題
5 訪問看護
1)訪問看護における援助の特徴(田中)
◆精神訪問看護の目的と焦点
◆精神障害の特徴と訪問看護における援助
疾患のコントロール /生活能力の維持・向上へ向けた援助 /社会生活の維持・社会参加の促進への支援 /「体験としての障害」への援助―精神障害者との関係づくり
[コラム] 社会保険診療制度における訪問看護―保険医療機関からの訪問看護 /訪問看護制度による訪問看護―訪問看護ステーションからの訪問看護
2)援助の実際(岩切・田中)
[事例1] 陽性症状をもち続けるAさんへの10余年にわたる地域生活の支援
[事例2] 金銭管理の問題と不安による身体症状をもつBさんへの支援
[事例3] 内科入院を繰り返しながら地域生活を送るCさんへの支援
6 保健所・市町村保健センター(柏木)
1)保健所・市町村保健センターの精神障害者への生活支援
◆保健師が担った精神保健福祉活動の経緯
◆精神保健福祉相談における保健師の役割
未治療・治療中断者の精神保健福祉相談の現状 /未治療・治療中断者への相談訪問活動 /精神保健福祉相談の窓口の広がり
2)援助の実際
[事例1] 長期間ひきこもりを続けるAさんと家族への関わり
[事例2] 緊急入院をきっかけとした在宅生活支援と家族への介入
[事例3] 高齢の精神障害者への緊急介入と家族支援
7 精神障害者地域生活支援センター(伊藤)
1)地域生活支援センターの概要と現状
◆わが国の地域生活支援センターのあゆみ
地域生活支援センターのはじまり /地域生活支援センターの運営 /東京都における地域生活支援センターの状況 /東京都小平市における地域生活支援の取り組み /「地域生活支援センターあさやけ」の開設
◆「センターあさやけ」の現在の活動
「センターあさやけ」への新規相談 /「センターあさやけ」の利用と登録 /日常生活支援 /電話相談・面接相談 /交流 /地域連携
[コラム] 金銭管理 /消費生活センターへの同行 /相談の一例 /交流の一例
2)新たな地域連携への取り組みと今後の課題
◆ケアマネジメントとホームヘルプ事業
[事例1] 精神障害者ケアマネジメントを行っての生活支援
[事例2] 地域生活支援センターにおけるホームヘルプ事業の取り組み
◆地域生活支援センターの役割と今後の課題
活動内容と役割 /今後の課題
8 看護者による地域支援(濱田・臼井・大城・森)
1)精神障害者小規模作業所での活動の実際
◆精神障害者小規模作業所
◆作業所での援助の実際:「ひあしんす城北」の場合
作業所利用開始までの手続き /作業所の1日の流れ /作業所における援助のポイント
2)グループホームの活動の実際
◆グループホーム(正式名称:精神障害者地域生活援助事業)
◆グループホームでの援助の実際:ドリームSの場合
グループホーム利用開始までの手続き /グループホームにおける援助のポイント
3)援助の実際
[事例1] 病気から自分を取り戻すことに付き添った事例(作業所利用者)
[事例2] もともともっていた“大工仕事”という人生の地図を取り戻した事例(作業所利用者)
[事例3] “母親を安心させたい”といってグループホームを利用した事例(グループホーム利用者)
9 セルフヘルプグループと当事者活動
1)セルフヘルプグループの概説(田中)
◆セルフヘルプグループの特徴と機能
セルフヘルプグループの援助機能 /セルフヘルプグループの社会的機能―セルフヘルプ運動・当事者活動
◆セルフヘルプグループの歴史的発展
アメリカ合衆国におけるセルフヘルプグループの発展 /日本におけるセルフヘルプグループの発展 /日本におけるセルフヘルプ運動―「全国精神障害者家族会連合会」の結成― /当事者によるセルフヘルプ運動―「全国精神障害者団体連合会」の結成
2)当事者活動の実際
◆全精連およびポプリの活動を通して(有村)
◆東京ドロップインセンターの当事者活動の経験から(沢田)








