はじめに
本書はGIS(地理情報システム)を専門としない一人の元行政保健師が,行政保健師時代と現在の研究者としてGISを利活用してきた経験をもとに執筆したものである.
著者自身は大学に所属する研究者であり,かつて行政現場で働く保健師として地域住民の健康課題と向き合ってきた.だからこそ本書は「これからGISを保健師活動に活用したい」と考えている方々にとって,親しみやすく実践的な入門書となるよう構成されている.
GISや地理学の専門的な知識についてはあえて最小限にとどめた.これは,読者がGISの専門家ではなくあくまで日々の保健師業務の中で地域を見つめ活動する保健師であることを想定しているからである.そのためGISや地理の専門家から見れば「ずいぶんと簡略化されている」と思われるかもしれないが本書が重視しているのは,「GISは楽しい」「保健師活動にGISを使うのは面白い」と感じていただけることである.
近年,自治体においては様々な情報システムが導入されては消え,また更新されているが,初めて新しい仕組みに触れたときの「うまく動かない」「操作が難しい」「動作が遅い」といったストレスは,再度使用することへのハードルとなる.本書ではこうした“最初の壁”をできるだけ低くし,読者がGISに対して前向きに取り組めるよう配慮された構成となっている.著者はこれまでG-CHAMというウェブページを通じてQGISを活用したGIS地域診断の普及啓発に取り組んできたが,本書ではその内容をより体系的に整理し誰でもGISを用いた地域診断を始められるようサポートしている.
2025年度の大学入学共通テストにおいて初めて「GIS」に関する出題が行われた.これにより,数年後にはGISを一度は学習した新卒保健師が誕生するという時代が目前に迫っている.つまり,これまでGISに触れたことがない現役の保健師や保健師学生も,時代の変化に適応し行政保健の分野においてもGISを戦略的に活用していく必要がある.
著者自身も学生時代には模造紙や付箋を用いた手法で地域診断を経験した.本書はその有効性を否定するものでは決してなく,むしろこれまでの保健師活動による積み重ねがあったからこそ,GISによる地域診断の可能性が広がってきたと言える.
パソコン操作に苦手意識を持っている方にこそ本書を手にとっていただきたい.実際にQGISを操作しG-CHAMデータパックを使って地域を眺めてみれば,保健師としての直観や経験が新たな視点で補強されるという発見があるはずである.行政保健師の職場全体でGIS活用を進める上でも本書がその第一歩となれば幸いである.
あらためて述べるが,本書ではGISや地理学に関する専門的記述は極力省いている.そのかわりに,著者自身が行政現場で培ってきた実践的な知見と,GISを地域診断や研究に活用してきた経験のすべてをこの一冊に込めた.
読者が日々直面する実務に即しできるだけわかりやすく,かつ行政保健師に寄り添うかたちで書き上げている.GISが保健師活動の根拠を可視化し,地域に根ざした実践を科学的に支えるツールであるということをぜひ本書を通じて実感していただきたい.本書が行政保健師の根拠に基づく実践の推進に貢献し,ひいては地域住民の健康の保持増進につながることを著者として心より願っている.GISのことをまったく知らない方でも恐れずに読み進めていただき,保健師活動との“マリアージュ”としてのGISの可能性を一歩ずつ楽しみながら体感していただければ幸いである.
この本を通じて「GISって楽しい」「GISを使いたい」と感じてくださる行政保健師が一人でも多く現れることを,著者は心から願っている.
2025年8月 著者
本書はGIS(地理情報システム)を専門としない一人の元行政保健師が,行政保健師時代と現在の研究者としてGISを利活用してきた経験をもとに執筆したものである.
著者自身は大学に所属する研究者であり,かつて行政現場で働く保健師として地域住民の健康課題と向き合ってきた.だからこそ本書は「これからGISを保健師活動に活用したい」と考えている方々にとって,親しみやすく実践的な入門書となるよう構成されている.
GISや地理学の専門的な知識についてはあえて最小限にとどめた.これは,読者がGISの専門家ではなくあくまで日々の保健師業務の中で地域を見つめ活動する保健師であることを想定しているからである.そのためGISや地理の専門家から見れば「ずいぶんと簡略化されている」と思われるかもしれないが本書が重視しているのは,「GISは楽しい」「保健師活動にGISを使うのは面白い」と感じていただけることである.
近年,自治体においては様々な情報システムが導入されては消え,また更新されているが,初めて新しい仕組みに触れたときの「うまく動かない」「操作が難しい」「動作が遅い」といったストレスは,再度使用することへのハードルとなる.本書ではこうした“最初の壁”をできるだけ低くし,読者がGISに対して前向きに取り組めるよう配慮された構成となっている.著者はこれまでG-CHAMというウェブページを通じてQGISを活用したGIS地域診断の普及啓発に取り組んできたが,本書ではその内容をより体系的に整理し誰でもGISを用いた地域診断を始められるようサポートしている.
2025年度の大学入学共通テストにおいて初めて「GIS」に関する出題が行われた.これにより,数年後にはGISを一度は学習した新卒保健師が誕生するという時代が目前に迫っている.つまり,これまでGISに触れたことがない現役の保健師や保健師学生も,時代の変化に適応し行政保健の分野においてもGISを戦略的に活用していく必要がある.
著者自身も学生時代には模造紙や付箋を用いた手法で地域診断を経験した.本書はその有効性を否定するものでは決してなく,むしろこれまでの保健師活動による積み重ねがあったからこそ,GISによる地域診断の可能性が広がってきたと言える.
パソコン操作に苦手意識を持っている方にこそ本書を手にとっていただきたい.実際にQGISを操作しG-CHAMデータパックを使って地域を眺めてみれば,保健師としての直観や経験が新たな視点で補強されるという発見があるはずである.行政保健師の職場全体でGIS活用を進める上でも本書がその第一歩となれば幸いである.
あらためて述べるが,本書ではGISや地理学に関する専門的記述は極力省いている.そのかわりに,著者自身が行政現場で培ってきた実践的な知見と,GISを地域診断や研究に活用してきた経験のすべてをこの一冊に込めた.
読者が日々直面する実務に即しできるだけわかりやすく,かつ行政保健師に寄り添うかたちで書き上げている.GISが保健師活動の根拠を可視化し,地域に根ざした実践を科学的に支えるツールであるということをぜひ本書を通じて実感していただきたい.本書が行政保健師の根拠に基づく実践の推進に貢献し,ひいては地域住民の健康の保持増進につながることを著者として心より願っている.GISのことをまったく知らない方でも恐れずに読み進めていただき,保健師活動との“マリアージュ”としてのGISの可能性を一歩ずつ楽しみながら体感していただければ幸いである.
この本を通じて「GISって楽しい」「GISを使いたい」と感じてくださる行政保健師が一人でも多く現れることを,著者は心から願っている.
2025年8月 著者
はじめに
Chapter (1) 「保健師×QGIS」活用可能性は無限大
1)QGISでこんなことできます (1)地域診断
2)QGISでこんなことできます (2)分野ごとの例(母子,成人,高齢者,精神,感染症など)
3)QGISでこんなことできます (3)教育での活用
Chapter (2) WebGISを使ってみよう
1)能登半島地震保健師活動支援WebGISを操作する
Chapter (3) WebGISを使ってみよう
1)QGISのダウンロード
2)QGISに背景地図を設定
3)G-CHAMデータパックをダウンロード
4)G-CHAMデータパックを解凍
5)QGISの基本操作とG-CHAMデータパックの活用方法
Chapter (4) GISってなにそれ美味しいの?
1)GISの概要
2)オープンソース
Chapter (5) 保健師の職場に導入されているGIS
1)自治体のGISを知る
Chapter (6) オープンデータってなにそれ美味しいの?
1)オープンデータとは何か
2)データを共有すると保健師にもメリット盛りだくさん
Chapter (7) GISで地域診断をやってみよう
1)包括的(教育)でも目的型(現場)でもどっちもOK
2)コミュニティ・アズ・パートーナーモデルってなんだっけ?
3)網羅的なGIS地域診断としてシステムごとに取り組もう
4)DX-GIS地区踏査
5)健康課題の抽出と事業化
6)養成機関で行う場合のスケジュール
Chapter (8) おわりに
1)全ての保健師がGISを利活用できる未来を目指して
2)QGIS解説サイトの紹介
Chapter (1) 「保健師×QGIS」活用可能性は無限大
1)QGISでこんなことできます (1)地域診断
2)QGISでこんなことできます (2)分野ごとの例(母子,成人,高齢者,精神,感染症など)
3)QGISでこんなことできます (3)教育での活用
Chapter (2) WebGISを使ってみよう
1)能登半島地震保健師活動支援WebGISを操作する
Chapter (3) WebGISを使ってみよう
1)QGISのダウンロード
2)QGISに背景地図を設定
3)G-CHAMデータパックをダウンロード
4)G-CHAMデータパックを解凍
5)QGISの基本操作とG-CHAMデータパックの活用方法
Chapter (4) GISってなにそれ美味しいの?
1)GISの概要
2)オープンソース
Chapter (5) 保健師の職場に導入されているGIS
1)自治体のGISを知る
Chapter (6) オープンデータってなにそれ美味しいの?
1)オープンデータとは何か
2)データを共有すると保健師にもメリット盛りだくさん
Chapter (7) GISで地域診断をやってみよう
1)包括的(教育)でも目的型(現場)でもどっちもOK
2)コミュニティ・アズ・パートーナーモデルってなんだっけ?
3)網羅的なGIS地域診断としてシステムごとに取り組もう
4)DX-GIS地区踏査
5)健康課題の抽出と事業化
6)養成機関で行う場合のスケジュール
Chapter (8) おわりに
1)全ての保健師がGISを利活用できる未来を目指して
2)QGIS解説サイトの紹介














