やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 ・郷愁
 子どもたちが,1日の約3分の1もの時間を過ごす学校とは,どういうところなのでしょうか.私は学校医として,またPTA役員や保護者として学校へ行くうちに,学校の子どもたちと子どもの頃の自分の姿が重なって見えてくるようになりました.辛かった想い出もありますが,楽しかったことのほうが多く,学校には,まるでピーターパンたちが住むネバーランドのような,不思議で心地よい郷愁を覚えます.
 ・誠意と思いやり
 広辞苑で「学校」を引くと,「一定の教育目的の下に,一定の場所において,組織的計画的に教師が児童・生徒・学生に教育を施す施設」とあります.子どもたちに欠かせない知・徳・体の教育の場であることは間違いありません.また子どもたちにとっての学校は「わが城」だと思います.ですから大人が学校へ行く場合,子どもたちから歓迎(信頼)されることが最低条件となります.しかし,今日の学校現場でのさまざまな事件や事故を見る限りでは,親の世代を含めて人間関係の危機を感じます.いまや心身の健康づくりや人間関係づくりの教育を,子どもたちの城(学校)で行わなければならない時代なのではないでしょうか.そのためには大人同士が志を持って連携協力し,特に健康の鍵を握る学校医は可能な限り関与すべきだと思います.誠意と思いやりを持って先生方と協働し,大好きな子どもたちを見守り育成していきたいものです(図1,2).
 ・理想をめざして
 学校の主役は子どもたちです.したがって子どもたちの笑顔は,学校教育・学校経営のバロメーターだと思います(図3).私は,学校とは「次世代を担う子どもたちの心身の健全育成の庭」であると同時に,「理想をめざす地域のモデル地区」であると思います.
 ・きっと飛べる
 本書の執筆者は小児科医,内科医,泌尿器科医,精神科医,行政の医師など職種が多彩で,直接的に間接的に学校や園に関わり,学校・家庭・地域とお互い支えあいながら子どもたちと向きあっています.私たち編集委員一同は,本書が学校や園における実践集であると同時に,広い視野を持って学校保健や子どもたちの教育に取り組むための実用書となるように,企画・編集に努めました.少しでもお役に立てましたら幸いです.
 みなさんも子どもたちに妖精の粉(信頼)を振りかけてもらい,学校に飛んで行ってみませんか.
 2006年9月吉日
 編集委員長 岩田祥吾
はじめに(岩田祥吾)
I 健康相談
 ・月に1度の健康相談――せんせい,あのね(岩田祥吾)
II 健康教育
 ・命の大切さを伝える――いのちをたいせつに(谷村 聡)
 ・早起き 早寝 朝ごはん――体と脳と心を育むために何より大切なこと(神山 潤)
 ・食育(1)――子どもを取り巻く食生活の変化とその影響(宮地佐和子)
 ・食育(2)――「子どもの体と心の育ち」と「食」〜和食のすすめ(蜂谷明子)
 ・性教育(1)――事例性を加味した性・エイズ教育 学校医に求められている役割(岩室紳也)
 ・性教育(2)――受精のしくみからみた思春期の体と心(宮地佐和子)
 ・子どもとメディア(1)――「子どもの体と心の育ち」と「メディア」(蜂谷明子)
 ・子どもとメディア(2)――まず,自ら子どもとメディアのことを考えよう!(松田 隆)
 ・喫煙防止(防煙)教育:小学生――最初の1本を吸わせない 子どもは親の禁煙サポーター(野田 隆)
 ・喫煙防止(防煙)教育:中学生――「最初の1本」に手を出させないために(加治正行)
 ・薬物乱用防止――小学校における薬物乱用防止教室(川上一恵)
 ・救命救急処置――学校医からも伝えたい救命処置の大切さ(高田 修)
III 学校保健委員会
 ・学校保健委員会(1)――参加者の活動で決まる学校保健委員会の真価(原 朋邦)
 ・学校保健委員会(2)――学校保健委員会を活性化する(川上一恵)
 ・学校保健委員会(3)――いきいきいちょうっ子10の約束 親子で健康的な毎日をめざして(岡空輝夫)
 ・「学校保健委員会」と「学校保健会」の違い――学校保健は子どもが主役!(岩田祥吾)
IV 健康診断
 ・就学時健康診断事後措置――就学時健診は予防接種を勧める最後の機会 縦割り行政を超えた対応を(松永貞一)
 ・健康診断の意義――健康診断の意義を高めましょう!(田草雄一)
 ・五者会議――麻しん予防接種率を上げるための那覇市五者会議 県行政(保健所)の立場でできること(上原真理子)
 ・成長曲線を使用した体格指導――成長を見守る 成長曲線や肥満度判定曲線を利用して,成長障害を早期発見し生活習慣を見直そう(伊藤善也)
V さまざまな取り組み
 ・学校保健会の活性化――事務局とのスクラムが大切です(岡空輝夫)
 ・養護教諭とのコミュニケーション――初めの一歩(町田 孝)
 ・養護教諭との勉強会――養護教諭はキーパーソン(谷村 聡)
 ・教職員とのコミュニケーション――学校医とともに語りあいましょう(川村和久)
 ・スクールカウンセラーとの協働――学校で希望をひろげる(有井悦子)
 ・教育委員会と学校,学校医との連携――教育委員会を知るベし! 利用すべし!(峯 真人)
 ・不登校との関わり――朝起きると不定愁訴を訴える子ども(石谷暢男)
 ・医療的ケア――すべての子どもに教育の機会を(高田 修)
 ・学校医のパトロール――学校医は地域内を散歩し,子どもたちと話をしよう!(三条雅英)
 ・絵本の読み聞かせ――子どもとつながろう(内海裕美)
コラム
 中学生の罵声(岩田祥吾)
 うらばなし―あきらめなかった夢(谷村 聡)
 食事バランスガイド(岩田祥吾)
 禁煙授業―保護者がJT職員だったとき(高田 修)
 思いやる心,それはCPR(三浦義孝)
 ひとこと追加―受ける? 受けない? 予防接種(松永貞一)
 拍手が起こる健康診断(岩田祥吾)
 県教育委員から学校医へひとこと(杉山和子)
 違法性の阻却(高田 修)
 健康診断でも読み聞かせ(高田 修)

 ・参考ホームページ・参考図書
 ・この本を編集した学校医たち
 ・あとがき(谷村 聡)
 ・さくいん