やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 わが国の訪問看護の歴史に新たなページを加えた訪問看護ステーションは1992年の創設以来,在宅医療・介護サービスの担い手としてこの間めざましく発展してきました.
 また一方では少子高齢化の進展や医療経済の課題を受けて入院医療は大きな改革が進められており,入院期間の短縮化や高度医療の影響を受けた在宅での医療ニーズもますます増加している状況にあります.これら医療保険や介護保険実施の変化を受けて,訪問看護には安全で質の高い看護ケアの提供をはじめ,地域でのケアマネジメントや多職種との連携,そして療養者と家族の満足度を高める役割が課せられてきています.
 今回,このような訪問看護師に求められる実践能力の多様化に応じるため本書をまとめました.本書は,10年余にわたって訪問看護の現場で広く活用されてきた『ポケッタブル訪問看護マニュアル』の特徴を受け継ぎながらも,その利点を一層発展させたまったく新しい一冊です.訪問看護師の皆様のお手元で,手軽に,知識を再確認しながら,日頃の業務に役立つよう工夫しています.本書が現場の皆様に活用され,お役に立つことができれば執筆者一同,望外の喜びです.
 編者を代表して
 山崎摩耶
 プラクティカルナーシング 訪問看護 もくじ

1 訪問看護とは(1紅林 2〜5山崎)
  1.訪問看護の定義と対象
  2.訪問看護を必要とする社会的要因
  3.病院から在宅へ-いま求められる訪問看護
  4.訪問看護の内容
  5.訪問看護の提供主体とそれぞれの特徴

2 訪問看護の実際(6〜7紅林 8〜9小林 10酒井 11松田)
  6.期待される訪問看護師像
  7.訪問看護の流れと留意点
  8.訪問看護のプロセス
  9.訪問看護記録と報告
  10.感染防止と消毒
  11.リスクマネジメント

3 症状の観察とケアのポイント(12〜17古屋 18〜26松本)
  12.基本的状態の観察
  13.血圧の異常
  14.脱水
  15.発熱
  16.咳・喀痰
  17.尿閉・便秘・下痢
  18.尿失禁のケア
  19.めまい
  20.頭痛
  21.不眠
  22.抑うつ・うつ病への援助
  23.視力障害
  24.聴力障害
  25.関節の痛み
  26.転倒と骨折

4 生活のケア(27中田 28〜37栗栖)
  27.家族支援
  28.生活環境のケア
  29.食事・栄養
  30.摂食・嚥下障害のケア
  31.口腔ケア
  32.清潔
  33.排泄
  34.睡眠と薬
  35.服薬管理
  36.リハビリテーション
  37.基本的なリハビリテーション(機能訓練)

5 日常遭遇する主な疾患とその医療的管理とケア(38〜46,49〜50,52横田 47中田 48,53二見 51山本 54 朝妻 55〜58長濱 59〜63山本 64〜66酒井)
 ◆おもな疾患
  38.脳卒中
  39.虚血性心疾患
  40.不整脈
  41.糖尿病
  42.腎不全
  43.前立腺肥大症
  44.尿路感染症
  45.貧血
  46.関節リウマチ
  47.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  48.癌(疼痛管理と緩和ケア)
  49.神経難病
  50.熱傷
  51.皮膚疾患(疥癬・真菌など)
  52.痴呆症
  53.ターミナルケア
 ◆医療的管理とケア
  54.CAPD
  55.吸入・吸引
  56.気管カニューレ
  57.在宅人工呼吸療法(Home Mechanical Ventilation: HMV)
  58.在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy: HOT)
  59.経管栄養(経鼻的)
  60.胃瘻
  61.点滴注射
  62.在宅中心静脈栄養法(Home Parenteral Nutrition)
  63.人工肛門・人工膀胱
  64.間歇自己導尿
  65.膀胱留置カテーテル
  66.褥瘡の予防と処置

6 制度(松田)
  67.介護保険制度とは
  68.申請からサービス利用まで
  69.ケアマネジャーの役割とケアプランの例
  70.居宅サービスの種類と単価
  71.施設入所サービス
  72.介護保険以外の在宅支援サービス
  73.障害者自立支援法
  74.訪問看護に関する報酬と自己負担
  75.障害児の訪問看護
  76.難病患者等居宅生活支援事業
  77.特定疾患医療給付制度
  78.他職種・他機関との連携
  79.看護師自身を守るために

 検査値・基準値
 文献
 カバーデザイン:M's
 本文デザイン・イラスト:新藤良子