やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって
 腹部超音波検査の検査領域は胆嚢,肝臓,脾臓,膵臓,腎臓・膀胱などの臓器に加え,腹部血管,腹腔内,胸腔内など広範囲に及びます.そのため,習得しなければならない病変や所見などが多く,どこから手をつければいいかわからなくなることもあると思います.また超音波検査は,検査者の技量が検査精度に影響しやすい検査でもあり,初心者は戸惑うことがあるのではないでしょうか.特に指導者に恵まれない環境では,苦労することが多いと思います.
 本書では,超音波検査室の実際の指導風景を,先輩技師と後輩技師の対話形式で再現しました.描出のテクニックや診断につながる超音波像の描出方法,超音波所見の判読の仕方など,実際の検査で役立つ内容が盛り込まれています.症例を使ったリアルな解説と超音波画像の模式図を豊富に取り入れ,初心者でも理解しやすいように工夫しました.
 本書で取り上げたテーマは,超音波検査をともに勉強している仲間達との間で交わされた,いろいろな質問のなかから生まれました.本書は,そのような実際に超音波検査を行っている現場から出た疑問に答えたものです.ご協力いただいた高知医療センター,土佐市民病院,田野病院の超音波検査室の皆様に感謝します.
 本書が,日常検査の疑問点の解決や検査精度の向上,そして楽しく検査を行うことにつながれば幸いです.
 2020年6月
 土居忠文
 発刊にあたって
1章 はじめに
 1-1 どうして病変に気づけなかったんでしょうか?
 1-2 アーチファクトに騙されないようにするには?
2章 胆嚢・胆管
 2-1 胆嚢が描出できません
 2-2 胆嚢壁肥厚?脂肪層?
 2-3 胆嚢結石の可動性がわかりません
 2-4 総胆管描出のポイントは?
 2-5 胆嚢コレステロールポリープか胆嚢腺腫か
 2-6 胆泥と胆嚢腫瘍はどう鑑別したらいいですか?
 2-7 総胆管拡張の閉塞起点はどこ?
3章 肝臓
 3-1 肝臓エコーは見落としが不安です
 3-2 肝腫瘍の良悪性の鑑別ポイントは?
 3-3 胆管細胞癌を見落とさないようにするには?
 3-4 肝腫瘍と右副腎腫瘍はどう見分ける?
 3-5 肝臓の嚢胞性病変はどう鑑別しますか?
 3-6 肝腫瘍と限局性脂肪域の見分け方は?
 3-7 肝内のこのストロングエコーは何ですか?
 3-8 肝臓周辺の血管に気をつける?
4章 脾臓
 4-1 脾臓ですか?肝臓ですか?
 4-2 脾臓の病変……ではない!?
 4-3 脾臓の腫瘤性病変?
5章 膵臓
 5-1 膵臓の描出法を教えてください
 5-2 やっぱり膵臓がうまく描出できません
 5-3 これは膵臓ですか?
 5-4 膵臓と他臓器の鑑別ポイントは?
 5-5 膵腫瘤と紛らわしい病変はありますか?
 5-6 これって膵嚢胞?
6章 腎臓・膀胱
 6-1 腎臓が描出できません
 6-2 腎エコーのピットフォール?
 6-3 尿管や膀胱の病変には何がありますか?
 6-4 馬蹄腎って何ですか?
 6-5 腎エコーでカラードプラをどう使う?
7章 消化管
 7-1 臓器以外に腫瘤を認めたらどうすればいいですか?
 7-2 十二指腸の病変!?
 7-3 ターゲットサインと言えば?
 7-4 急性虫垂炎ですよね?
8章 その他
 8-1 腹部大動脈瘤の超音波像で注意すること?
 8-2 この下大静脈塞栓はどこから?
 8-3 副腎病変はどう描出したらいいですか?
 8-4 胸腔内の病変って?

 索引