序
物理学は,理科系の基礎領域にある学問体系として多くの分野で重要な意味をもっているが,臨床検査技師教育においてもその重要性は変わりない.物理学は単に科学技術の基本としての役割をもつばかりでなく,生命現象にかかわるさまざまな現象や法則の裏づけとしても理解しておくべき内容がたくさんある.
しかし一方で,高等教育における物理離れ現象は避けがたく,臨床検査技師を目指す学生の中にも,高等学校で物理学をしっかりと勉強しなかったものが多く見受けられるようになってきた.入学試験などでも物理学は必須科目からはずされていることが多く,このことも,物理を苦手とする学生の急増を許してきた原因ともなっている.
本書はすでに「物理学」として版を重ねてきた前版をもとに,内容を検討し,教科の大綱化や国家試験の出題基準の改定などをふまえ,今回,新たに「臨床検査学講座 物理学」を上程することとなった.前版では北村清吉先生を中心に体系化された教科書がまとめられている.本書では基本的にその考え方を継承しつつ,記述すべき内容をできるだけ絞って,臨床検査に関係する物理学の領域をより簡潔かつ明確に示すことに留意した.したがって,前版を流用させて頂いた箇所もある.また,前版にあった物理実験の項目については,各学校がすでに所有している機器を有効に活用できるよう大幅な改定を避けた.もちろん,教育の目的が変更されたわけではなく,趣旨は「臨床検査領域における物理学を中心に講義する」ことにある.本書では関連する事項をできるだけていねいに解説し,覚えるだけでなくしっかりと理解できるように努めた.
物理学は学ぶべき内容が多く,本書に取り上げた項目だけでも,それぞれについて正確に理解することは簡単ではない.著者らの意図に反して,読者にとって必ずしも簡単な教科書とはなっていないかもしれない.国家試験の科目にない物理学はそれほど重要な科目にみえないかもしれない.しかし,臨床検査に利用される機器の原理を理解したり,生命現象を科学的に理解するうえで,基本となる物理学は臨床検査を支える重要な科目ということができる.
本書を通じて,さまざまな物理現象についての理解を深め,この知識を基本として臨床検査の各領域での勉強に役立ててほしい.また,ご指導にあたられる先生方には物理学を苦手にする学生をこれ以上増やすことのないよう,教科書の内容の不備や不十分な点を補っていただければ幸いである.
2005年 早春
執筆者を代表して
嶋津 秀昭
物理学は,理科系の基礎領域にある学問体系として多くの分野で重要な意味をもっているが,臨床検査技師教育においてもその重要性は変わりない.物理学は単に科学技術の基本としての役割をもつばかりでなく,生命現象にかかわるさまざまな現象や法則の裏づけとしても理解しておくべき内容がたくさんある.
しかし一方で,高等教育における物理離れ現象は避けがたく,臨床検査技師を目指す学生の中にも,高等学校で物理学をしっかりと勉強しなかったものが多く見受けられるようになってきた.入学試験などでも物理学は必須科目からはずされていることが多く,このことも,物理を苦手とする学生の急増を許してきた原因ともなっている.
本書はすでに「物理学」として版を重ねてきた前版をもとに,内容を検討し,教科の大綱化や国家試験の出題基準の改定などをふまえ,今回,新たに「臨床検査学講座 物理学」を上程することとなった.前版では北村清吉先生を中心に体系化された教科書がまとめられている.本書では基本的にその考え方を継承しつつ,記述すべき内容をできるだけ絞って,臨床検査に関係する物理学の領域をより簡潔かつ明確に示すことに留意した.したがって,前版を流用させて頂いた箇所もある.また,前版にあった物理実験の項目については,各学校がすでに所有している機器を有効に活用できるよう大幅な改定を避けた.もちろん,教育の目的が変更されたわけではなく,趣旨は「臨床検査領域における物理学を中心に講義する」ことにある.本書では関連する事項をできるだけていねいに解説し,覚えるだけでなくしっかりと理解できるように努めた.
物理学は学ぶべき内容が多く,本書に取り上げた項目だけでも,それぞれについて正確に理解することは簡単ではない.著者らの意図に反して,読者にとって必ずしも簡単な教科書とはなっていないかもしれない.国家試験の科目にない物理学はそれほど重要な科目にみえないかもしれない.しかし,臨床検査に利用される機器の原理を理解したり,生命現象を科学的に理解するうえで,基本となる物理学は臨床検査を支える重要な科目ということができる.
本書を通じて,さまざまな物理現象についての理解を深め,この知識を基本として臨床検査の各領域での勉強に役立ててほしい.また,ご指導にあたられる先生方には物理学を苦手にする学生をこれ以上増やすことのないよう,教科書の内容の不備や不十分な点を補っていただければ幸いである.
2005年 早春
執筆者を代表して
嶋津 秀昭
第1章 単位とディメンジョン
I.単位
II.基本単位
1-長さの単位[メートル:m]
2-質量の単位[キログラム:kg]
3-時間の単位[秒:s]
4-電流の単位[アンペア:A]
5-熱力学温度の単位[ケルビン:K]
6-物質量の単位[モル:mol]
7-光度の単位[カンデラ:cd]
8-平面角[ラジアン:rad]および立体角[ステラジアン:sr]
III.組み立て単位
IV.無次元量の単位
V.接頭語
VI.ディメンジョン
第2章 力のつりあい
I.力の三要素
1-力の単位
2-力の要素
II.力の種類
1-重力
2-バネの力
3-摩擦力,抵抗力
4-作用・反作用
III.力のつりあい
1-力の合成
2-力のつりあい
3-力のモーメント
4-重心
第3章 力と運動
I.速さと速度
II.位置,速度,加速度
III.運動の法則
1-ニュートンの法則
2-質量と重量
[1]質量とは
[2]重量とは
IV.放物運動
1-放物運動における速度と加速度
V.円運動
1-円運動の速度と加速度
2-角速度
3-慣性力と遠心力
VI.振動
第4章 エネルギーと仕事
I.力学エネルギーと仕事
1-エネルギーとは
2-エネルギーと仕事
II.エネルギーの形
1-位置エネルギー
2-運動エネルギー
III.仕事と仕事率
第5章 変形する物体の力学
I.応力とひずみ
1-力と応力
2-応力とひずみ
3-材料における応力とひずみ
II.弾性率
1-フックの法則
2-ヤング率
3-せん断弾性率
4-体積弾性率
III.粘性と弾性
1-弾性要素と粘性要素の変形
第6章 流体の力学
I.圧力
1-圧力の単位
2-気体の圧力
3-ボイルの法則
4-シャルルの法則
5-大気の圧力
6-ドルトンの法則
II.圧力の3つの形
III.パスカルの原理
IV.流れの考え方
1-流体とは
2-粘性
3-理想流体
V.流体運動
1-流線
2-連続の式
3-乱流と層流
4-レイノルズ数
VI.管の中の流れ
第7章 熱
I.熱現象
1-熱とは
2-温度
II.相の変化
1-蒸発と液化
2-融解と凝固
III.熱膨張
IV.熱の移動
1-熱伝導
V.熱と仕事
VI.熱力学の法則
1-熱力学の第1法則
2-熱力学の第2法則
第8章 音波と超音波
I.はじめに
II.音波の性質
1-音波の伝搬
2-音の重ね合わせ
3-音波の反射
4-音波の屈折と回折
III.超音波の性質
1-超音波の減衰
2-超音波の直進性
3-キャビテーション
IV.超音波診断装置
第9章 光と放射線
I.光
1-電磁波の原理と光
[1]明るさ
[2]照度
[3]光度
[4]輝度
2-光の性質
[1]反射と屈折
[2]スペクトルと分解能
[3]光の干渉と回折
3-光の色
[1]光の波長と色
4-物体の色
[1]光の吸収
[2]透過光による物体の色
[3]紫外線と赤外線
5-レーザー光
[1]レーザー光の種類と特徴
[2]レーザーメス
6-レンズ
[1]レンズの働き
[2]レンズの収差
[3]顕微鏡…77
7-光ファイバー
[1]光ファイバーの原理と構造
[2]光ファイバーによる画像の伝達
8-パルスオキシメータ
[1]概説
第10章 原子と放射線
I.原子と光
1-原子の構造
2-電子軌道と電子配置
3-光量子
4-粒子のエネルギー表示
5-波としての電子(物質波)
II.放射線の種類と利用
1-放射線の種類
2-放射線の透過性
3-放射能
4-放射線の応用
III.原子力
第11章 電気
I.導体と絶縁体
II.静電気
1-静電誘導
2-電荷と電界
3-電位
4-導体と静電界
5-静電容量
6-コンデンサに蓄えられたエネルギー
7-コンデンサの接続と静電容量
[1]直列接続
[2]並列接続
III.電流と磁界
1-電流と抵抗とオームの法則
2-抵抗接続
3-電力とジュール熱
4-電流と磁界
5-電流がうける力
6-磁界と磁性体
7-ヒステリシス曲線
IV.電磁誘導
1-ファラデーの法則とレンツの法則
2-自己誘導
3-相互誘導
4-変圧器
V.電気回路
1-直流回路
2-キルヒホッフの法則
3-ブリッジ回路
4-テスター回路
5-交流回路
[1]抵抗だけの交流回路
[2]コイルだけの交流回路
[3]コンデンサだけの交流回路
[4]R,L,Cの直列接続に対する交流回路
VI.電磁波
1-電磁波とは
2-電磁波の区分
VII.電子回路
1-受動素子
2-能動素子
3-複合素子
4-ダイオードとトランジスタ
[1]ダイオード
[2]トランジスタ
[3]電界効果トランジスタ
[4]集積回路
5-フィルタ回路と周波数特性
[1]フィルタ回路
[2]周波数特性
[3]時定数
6-増幅器
7-差動増幅器
[1]平衡型増幅器の考え方
[2]負帰還回路を伴う差動増幅器
[3]帰還増幅器の概念
8-演算増幅器
VIII.情報通信の基礎
1-発振回路
2-変調方式
IX.生体信号検出用各種トランスデューサ
1-生体電気現象
2-生体の物理・化学現象
第12章 実習
I.実習に関する一般的な注意
1-物理実験
2-器械の取り扱い
3-記録と報告
4-測定の精度
5-有効数字
6-数値計算
7-図の書き方
II.長さの測定
〔実験1〕ノギスを用いて物体の長さ,直径,厚さを測定する
〔実験2〕スクリゥマイクロメータを用いて物体の長さ,直径,厚さを測定する
III.天秤による質量の測定
1-過重量曲線
IV.液体の粘性度
V.金属の線膨張
〔実験1〕熱伝導の比較
〔実験2〕熱伝導の比較
〔実験3〕金属線膨張の比較
VI.温度計の補正
〔実験1〕氷点の検査
〔実験2〕沸点の検査
〔実験3〕任意温度における標準温度計と被検温度計の読みの比較
VII.相対湿度の測定
〔実験1〕乾湿球温度計を用いて室内の相対湿度を測る
〔実験2〕露点湿度計を用いて室内の相対湿度を測る
VIII.レンズの焦点(付・万能光学実験装置による観察)
〔実験1〕凸レンズの焦点距離
〔実験2〕薄い凹レンズの焦点距離
〔実験3〕光学実験器を用いてプリズム,レンズの性質を調べる
IX.整流回路
〔実験1〕半導体整流器を使用する回路
X.半導体
1-バリスタ
2-サーミスタ
3-トランジスタ
4-トランジスタを用いて任意の増幅回路をつくる
XI.分光光度計の観察と性能試験
〔実験1〕波長精度
〔実験2〕メータの読み校正
〔実験3〕キュベットのマッチング
〔実験4〕総合感度
〔実験5〕可視スペクトルの観察
〔実験6〕Cr(NO3)3溶液の吸収スペクトル
索引
I.単位
II.基本単位
1-長さの単位[メートル:m]
2-質量の単位[キログラム:kg]
3-時間の単位[秒:s]
4-電流の単位[アンペア:A]
5-熱力学温度の単位[ケルビン:K]
6-物質量の単位[モル:mol]
7-光度の単位[カンデラ:cd]
8-平面角[ラジアン:rad]および立体角[ステラジアン:sr]
III.組み立て単位
IV.無次元量の単位
V.接頭語
VI.ディメンジョン
第2章 力のつりあい
I.力の三要素
1-力の単位
2-力の要素
II.力の種類
1-重力
2-バネの力
3-摩擦力,抵抗力
4-作用・反作用
III.力のつりあい
1-力の合成
2-力のつりあい
3-力のモーメント
4-重心
第3章 力と運動
I.速さと速度
II.位置,速度,加速度
III.運動の法則
1-ニュートンの法則
2-質量と重量
[1]質量とは
[2]重量とは
IV.放物運動
1-放物運動における速度と加速度
V.円運動
1-円運動の速度と加速度
2-角速度
3-慣性力と遠心力
VI.振動
第4章 エネルギーと仕事
I.力学エネルギーと仕事
1-エネルギーとは
2-エネルギーと仕事
II.エネルギーの形
1-位置エネルギー
2-運動エネルギー
III.仕事と仕事率
第5章 変形する物体の力学
I.応力とひずみ
1-力と応力
2-応力とひずみ
3-材料における応力とひずみ
II.弾性率
1-フックの法則
2-ヤング率
3-せん断弾性率
4-体積弾性率
III.粘性と弾性
1-弾性要素と粘性要素の変形
第6章 流体の力学
I.圧力
1-圧力の単位
2-気体の圧力
3-ボイルの法則
4-シャルルの法則
5-大気の圧力
6-ドルトンの法則
II.圧力の3つの形
III.パスカルの原理
IV.流れの考え方
1-流体とは
2-粘性
3-理想流体
V.流体運動
1-流線
2-連続の式
3-乱流と層流
4-レイノルズ数
VI.管の中の流れ
第7章 熱
I.熱現象
1-熱とは
2-温度
II.相の変化
1-蒸発と液化
2-融解と凝固
III.熱膨張
IV.熱の移動
1-熱伝導
V.熱と仕事
VI.熱力学の法則
1-熱力学の第1法則
2-熱力学の第2法則
第8章 音波と超音波
I.はじめに
II.音波の性質
1-音波の伝搬
2-音の重ね合わせ
3-音波の反射
4-音波の屈折と回折
III.超音波の性質
1-超音波の減衰
2-超音波の直進性
3-キャビテーション
IV.超音波診断装置
第9章 光と放射線
I.光
1-電磁波の原理と光
[1]明るさ
[2]照度
[3]光度
[4]輝度
2-光の性質
[1]反射と屈折
[2]スペクトルと分解能
[3]光の干渉と回折
3-光の色
[1]光の波長と色
4-物体の色
[1]光の吸収
[2]透過光による物体の色
[3]紫外線と赤外線
5-レーザー光
[1]レーザー光の種類と特徴
[2]レーザーメス
6-レンズ
[1]レンズの働き
[2]レンズの収差
[3]顕微鏡…77
7-光ファイバー
[1]光ファイバーの原理と構造
[2]光ファイバーによる画像の伝達
8-パルスオキシメータ
[1]概説
第10章 原子と放射線
I.原子と光
1-原子の構造
2-電子軌道と電子配置
3-光量子
4-粒子のエネルギー表示
5-波としての電子(物質波)
II.放射線の種類と利用
1-放射線の種類
2-放射線の透過性
3-放射能
4-放射線の応用
III.原子力
第11章 電気
I.導体と絶縁体
II.静電気
1-静電誘導
2-電荷と電界
3-電位
4-導体と静電界
5-静電容量
6-コンデンサに蓄えられたエネルギー
7-コンデンサの接続と静電容量
[1]直列接続
[2]並列接続
III.電流と磁界
1-電流と抵抗とオームの法則
2-抵抗接続
3-電力とジュール熱
4-電流と磁界
5-電流がうける力
6-磁界と磁性体
7-ヒステリシス曲線
IV.電磁誘導
1-ファラデーの法則とレンツの法則
2-自己誘導
3-相互誘導
4-変圧器
V.電気回路
1-直流回路
2-キルヒホッフの法則
3-ブリッジ回路
4-テスター回路
5-交流回路
[1]抵抗だけの交流回路
[2]コイルだけの交流回路
[3]コンデンサだけの交流回路
[4]R,L,Cの直列接続に対する交流回路
VI.電磁波
1-電磁波とは
2-電磁波の区分
VII.電子回路
1-受動素子
2-能動素子
3-複合素子
4-ダイオードとトランジスタ
[1]ダイオード
[2]トランジスタ
[3]電界効果トランジスタ
[4]集積回路
5-フィルタ回路と周波数特性
[1]フィルタ回路
[2]周波数特性
[3]時定数
6-増幅器
7-差動増幅器
[1]平衡型増幅器の考え方
[2]負帰還回路を伴う差動増幅器
[3]帰還増幅器の概念
8-演算増幅器
VIII.情報通信の基礎
1-発振回路
2-変調方式
IX.生体信号検出用各種トランスデューサ
1-生体電気現象
2-生体の物理・化学現象
第12章 実習
I.実習に関する一般的な注意
1-物理実験
2-器械の取り扱い
3-記録と報告
4-測定の精度
5-有効数字
6-数値計算
7-図の書き方
II.長さの測定
〔実験1〕ノギスを用いて物体の長さ,直径,厚さを測定する
〔実験2〕スクリゥマイクロメータを用いて物体の長さ,直径,厚さを測定する
III.天秤による質量の測定
1-過重量曲線
IV.液体の粘性度
V.金属の線膨張
〔実験1〕熱伝導の比較
〔実験2〕熱伝導の比較
〔実験3〕金属線膨張の比較
VI.温度計の補正
〔実験1〕氷点の検査
〔実験2〕沸点の検査
〔実験3〕任意温度における標準温度計と被検温度計の読みの比較
VII.相対湿度の測定
〔実験1〕乾湿球温度計を用いて室内の相対湿度を測る
〔実験2〕露点湿度計を用いて室内の相対湿度を測る
VIII.レンズの焦点(付・万能光学実験装置による観察)
〔実験1〕凸レンズの焦点距離
〔実験2〕薄い凹レンズの焦点距離
〔実験3〕光学実験器を用いてプリズム,レンズの性質を調べる
IX.整流回路
〔実験1〕半導体整流器を使用する回路
X.半導体
1-バリスタ
2-サーミスタ
3-トランジスタ
4-トランジスタを用いて任意の増幅回路をつくる
XI.分光光度計の観察と性能試験
〔実験1〕波長精度
〔実験2〕メータの読み校正
〔実験3〕キュベットのマッチング
〔実験4〕総合感度
〔実験5〕可視スペクトルの観察
〔実験6〕Cr(NO3)3溶液の吸収スペクトル
索引





