やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

『臨地実習ノート』改訂にあたって
 今般,臨地実習ノートの改訂を行い,発刊する運びとなりました.臨地実習は2000年の指定規則改正によって7 単位(315 時間)以上行うことが義務付けられました.指定規則のため指定学校はその単位数を遵守しなければなりませんが,科目承認制の大学においてはその縛りはありません.しかし,臨床検査技師教育において臨地実習は重要な科目であり,学生の間に患者様自身や検体に直接触れる機会はこのときをおいてないため,大学においても近年では十分な期間を設けるようになってきました.このことは,医療技術者として社会の第一歩を踏み出すためには臨地実習が重要であり,そして不可欠なことを表しているものと思います.
 臨床検査技師養成所指導要領の臨地実習の教育目標は『臨床検査技師としての基本的な実践技術及び施設における検査部門の運営に関する知識を習得し,被験者との適切な対応を学ぶ.また,医療チームの一員としての責任と自覚を養う』とあります.具体的には,臨床検査の基本的な実践技術を習得すること,そして臨床検査情報の意義,精度管理,検査研究の重要さの認識,疾病解析へのアプローチを身につけること,さらに医療のなかでの臨床検査技師の役割と責任を知り,医療人としての自覚をもつことであります.とくにこの情意は学内で習得することがむずかしく,臨地実習に頼らなければならない部分であり,臨地実習の中心といえましょう.このようなことから,臨地実習は日頃学内では経験できないさまざまなことを学ぶ絶好の機会となり,実習を終えた学生は,誰もが大きく成長することとなります.
 国民に質の高い医療を提供するためには,医療従事者の資質向上が不可欠であります.医療の進歩に伴う臨床検査技術の高度化,チーム医療の推進の観点から,医療現場における臨床検査技師の役割は増大し,活躍の場も多様化しております.臨床検査技師の資質向上が,安全で安心な検査の実施につながり,それが正確かつ精密な検査結果の提供に直接結びつくことと思います.
 今回の改訂にあたり,『臨地実習の前に』では新たな著者により内容を刷新しました.病院と医療について,また臨床検査技師の役割などもまとめてありますので,ぜひ一読してください.さらに,臨地実習の心得について,誰もが身につけておかねばならないことや実習を行うにあたっての注意事項が書かれてありますのでよく読み十分な理解をお願いします.『実習編』でははじめに使い方が記されております.効率的にそして有効に使うためにはどのように記したらよいかが書かれておりますので参考としてください.「実習記録」のページは多くのことが記載できるよう,また記録として残しておけるよう,記載欄を広げました.そしてこの『臨地実習ノート』を臨地実習の記録としてだけでなく国家試験の対策や就職の準備にも活用できるよう,有効に利用いただければ幸いです.
 なお,本ノートを実際に使用した後の感想やご意見を編集部宛ご連絡いただければと思います.今後,よりよいものにするための参考とさせていただきます.
 平成26年12月
 著者代表 三村邦裕