やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 「机の上の検査室」の構想は4年前,秋田のある開業医からの「検査データを見たら病気が頭に浮かぶ検査伝票が作れないか」という手紙から始まった.
 直ぐに頭に浮かんだのは1981年Lundbergが提唱したBrain to Brainであった.これは,医師が患者の問題点(主訴・症状)を聞き,この問題点を解決する為の検査を頭(Brain)に浮かべオーダーし,返却された検査データを再び頭(Brain)に入れて問題点を解決するという考え方である.
 そこで,米国の代表的な臨床検査の教科書から検体検査に関係ある疾患を拾い出したところ約1,500あった.一方,AACC(アメリカ臨床化学学会)が認めている検体検査は約2,000項目あり,疾患と検体検査の組み合わせは300万通りになる.しかし,患者の問題点は主訴・症状であり疾患ではないので,日常臨床で遭遇する主訴・症状を70としてこの300万通りと組み合わせると,医師が診断に至るまでの選択肢は天文学的な数字となる.
 この膨大な情報を一枚の伝票にまとめるのは不可能と考え,医師は臨床検査に関しては一切頭に入れておかなくても良い方法として「机の上の検査室」にたどり着いた.
 「机の上の検査室」とは診療室で診療に必要な全ての臨床検査情報にアクセス出来る環境を作ることである.
 そこで,主訴・症状(68),疾患(1,500),臨床検査(2,000)の情報の塊を作り,マトリックス状に全ての情報にアクセス出来る環境をWEBで提供するシステムを構築した.
 パソコンでは,主訴・症状,疾患,検査項目,疾患と検査値の変動,検査項目解説,基準値などが,どの組み合わせでもアクセス出来る.
 本書,「検査診断マトリックス」は,その膨大な情報の一部をポケット版にしたもので,診療中に確認しておきたい疾患や検査などが短時間でチェックできるようにまとめてある.
 米国では幾つかの医科大学が学生に高機能情報端末を持たせ,医師は「書籍と暗記は不必要」で「必要な診療情報を見つける能力」と「その情報を解釈する能力」があれば良いという教育を始めたと聞く.
 この「検査診断マトリックス」と「机の上の検査室」が診察室のパソコンから全ての医療情報に簡単にアクセスできる環境の一部となれば幸いである.
 2012年2月29日
 只野 壽太郎
 序文
 主訴・症状からアプローチする「最初にチェックする疾患」
1 息切れ
2 意識障害
3 運動失調
4 嚥下障害
5 黄疸
6 悪心/嘔吐
7 喀血
8 下腹部/骨盤痛
9 かゆみ
10 肝腫大
11 関節痛
12 記憶障害
13 胸水
14 胸痛
15 筋力低下
16 痙攣発作
17 血尿
18 下痢
19 原因不明熱
20 言語障害/構音障害
21 誤飲/誤嚥
22 高血圧
23 甲状腺腫大/甲状腺結節
24 紅斑
25 呼吸困難
26 混迷/昏睡
27 錯乱
28 嗄声
29 色素沈着/脱失
30 四肢のシビレ
31 失神
32 出血傾向/紫斑
33 消化管出血
34 食欲不振
35 ショック
36 視力障害
37 頭痛
38 咳/痰
39 全身倦怠感
40 体重減少
41 体重増加
42 多尿
43 チアノーゼ
44 動悸
45 難聴
46 認知障害
47 排尿障害
48 発熱
49 鼻出血
50 鼻漏/鼻閉
51 頻尿
52 頻脈
53 不安
54 腹水
55 腹痛
56 腹痛(慢性・反復性)
57 浮腫
58 不正出血
59 不眠
60 便秘
61 乏尿/無尿
62 発疹
63 胸焼け
64 めまい
65 腰痛
66 抑うつ状態
67 リンパ節腫脹
68 レイノー現象

 予期しない検査値を見たら
 略語集
 検査パネル
 参考文献