第1版の序
平成12(2000)年4月から臨床検査技師に関する教育が新しいカリキュラムのもとに行われるようになりました.医動物学も寄生虫検査学というより明確な設定科目に名称を変更して,正確で迅速な検査技術の修得を目指すことになりました.今回の改正は検査技術の修得ばかりではなく,学問としての検査学の構築も視野に入れたものになりました.
一方,医動物学の分野にもクリプトスポリジウムなどのいくつかの新しい病原体の出現によって,それに則した検査法を社会から要求されるようになりました.また,最近の寄生虫病は,日本人のライフスタイルの変化に応じて従来のものとは一変してきております.それらの寄生虫病の変化に応じた新しい検査法の修得が要求されるようになったのは至極当然なことと思います.
このように寄生虫病の様相が大きく変化する時期にあって,従来の教科書の内容を今日の日本における状況に合わせる必要が出て参りました.
改訂して新しく誕生した「臨床検査学講座 医動物学」は新知見を十分取り入れると同時に,従来の内容から取捨選択して,内容を充実したものとなりました.
臨床検査学が大学学部でも教育されるような時期にあって,教育の方法やその内容等に関して改めるべき点が指摘されています.教育の「大綱化」によって,各学校での弾力的な教育法の運用が任される時期になってきました.
今回の改訂版は,教育の現場にいる著者と実地の検査業務にあたっている人たちの双方の合議の結果として生まれてきたものであることを追記しておきたいと思います.
なお,本書の作成にあたり,東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学教室の篠永哲博士,赤尾信明博士,月舘説子博士より貴重な写真をお借りいたしました.ここに厚く感謝の意を表します.
最後に,本書が学生の教科書として,また臨床検査における手引書として,引き続き愛用されることを望んでおります.数多くの方々からのご指摘,ご叱正を得て,本書がさらによりよいテキストとして育ってくれれば幸いです.
2001年春
藤田紘一郎
第2版の序
感染症は,私たちの生活環境の変化に応じてその様相を常に変化させております.それに対応して国は法律まで変えざるをえなくなり,2008年には新しくいわゆる「感染症法」が施行されるようになりました.医動物学の分野においてもそれと同じような変化が起こっています.
日本人の急激なライフスタイルの変化により,医動物学関連の病気で増加するものがある一方,減少するものも出てまいりました.
本書は1997年に『新訂臨床検査講座/医動物学』として発刊以来,多数の読者を得てきました.そして,『臨床検査技師国家試験出題基準』と照合し,新しい知見を追加しながら毎年版を重ねてまいりました.
2001年には臨床検査技師に関する教育が新しいカリキュラムのもとに行われるようになり,それを機に本シリーズが「臨床検査学講座」となるに及んで,本書も第1回目の全面改訂を行いました.そして,それから今日まですでに9年経過しております.
最近の日本の状態をみると,確かに昔からあった回虫などの寄生虫病は減っています.それとともに医学関連の研究者の間には医動物学に対する関心が低下していることは否定できません.
しかしながら,現実には新しい病原体も出現していますし,国際化時代を迎え,発展途上国からさまざまな病原体が日本国内に侵入してきています.地球規模でみれば,医動物学の重要性はますます増えるばかりです.
私は本年,本書を全面改訂することを決意しました.
医動物学の分野で現在最も活躍している平山謙二・長崎大学教授に新たに執筆者として加わっていただき,本書を臨床検査における学生の教科書として最高のものにしたいと考えたからです.
臨床検査学が大学医学部でも教育されるようになってからすでに四半世紀の時が経過しました.今,教育の方法やその内容などに関して改めるべき点も指摘されています.今回の改訂は,感染症の様相が大きく変化する時期にあって,『臨床検査学講座/医動物学』の内容を今日の日本の状況に合わせ,新知見を十分取り入れると同時に,従来の内容から取捨選択して,ページ数を増やすことなく充実させるよう配慮いたしました.
数多くの方がたからのご指摘,ご叱正を得て,本書がさらによい教科書として育ってくれれば,筆者にとってこんなにうれしいことはありません.
2010年8月
藤田紘一郎
平成12(2000)年4月から臨床検査技師に関する教育が新しいカリキュラムのもとに行われるようになりました.医動物学も寄生虫検査学というより明確な設定科目に名称を変更して,正確で迅速な検査技術の修得を目指すことになりました.今回の改正は検査技術の修得ばかりではなく,学問としての検査学の構築も視野に入れたものになりました.
一方,医動物学の分野にもクリプトスポリジウムなどのいくつかの新しい病原体の出現によって,それに則した検査法を社会から要求されるようになりました.また,最近の寄生虫病は,日本人のライフスタイルの変化に応じて従来のものとは一変してきております.それらの寄生虫病の変化に応じた新しい検査法の修得が要求されるようになったのは至極当然なことと思います.
このように寄生虫病の様相が大きく変化する時期にあって,従来の教科書の内容を今日の日本における状況に合わせる必要が出て参りました.
改訂して新しく誕生した「臨床検査学講座 医動物学」は新知見を十分取り入れると同時に,従来の内容から取捨選択して,内容を充実したものとなりました.
臨床検査学が大学学部でも教育されるような時期にあって,教育の方法やその内容等に関して改めるべき点が指摘されています.教育の「大綱化」によって,各学校での弾力的な教育法の運用が任される時期になってきました.
今回の改訂版は,教育の現場にいる著者と実地の検査業務にあたっている人たちの双方の合議の結果として生まれてきたものであることを追記しておきたいと思います.
なお,本書の作成にあたり,東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学教室の篠永哲博士,赤尾信明博士,月舘説子博士より貴重な写真をお借りいたしました.ここに厚く感謝の意を表します.
最後に,本書が学生の教科書として,また臨床検査における手引書として,引き続き愛用されることを望んでおります.数多くの方々からのご指摘,ご叱正を得て,本書がさらによりよいテキストとして育ってくれれば幸いです.
2001年春
藤田紘一郎
第2版の序
感染症は,私たちの生活環境の変化に応じてその様相を常に変化させております.それに対応して国は法律まで変えざるをえなくなり,2008年には新しくいわゆる「感染症法」が施行されるようになりました.医動物学の分野においてもそれと同じような変化が起こっています.
日本人の急激なライフスタイルの変化により,医動物学関連の病気で増加するものがある一方,減少するものも出てまいりました.
本書は1997年に『新訂臨床検査講座/医動物学』として発刊以来,多数の読者を得てきました.そして,『臨床検査技師国家試験出題基準』と照合し,新しい知見を追加しながら毎年版を重ねてまいりました.
2001年には臨床検査技師に関する教育が新しいカリキュラムのもとに行われるようになり,それを機に本シリーズが「臨床検査学講座」となるに及んで,本書も第1回目の全面改訂を行いました.そして,それから今日まですでに9年経過しております.
最近の日本の状態をみると,確かに昔からあった回虫などの寄生虫病は減っています.それとともに医学関連の研究者の間には医動物学に対する関心が低下していることは否定できません.
しかしながら,現実には新しい病原体も出現していますし,国際化時代を迎え,発展途上国からさまざまな病原体が日本国内に侵入してきています.地球規模でみれば,医動物学の重要性はますます増えるばかりです.
私は本年,本書を全面改訂することを決意しました.
医動物学の分野で現在最も活躍している平山謙二・長崎大学教授に新たに執筆者として加わっていただき,本書を臨床検査における学生の教科書として最高のものにしたいと考えたからです.
臨床検査学が大学医学部でも教育されるようになってからすでに四半世紀の時が経過しました.今,教育の方法やその内容などに関して改めるべき点も指摘されています.今回の改訂は,感染症の様相が大きく変化する時期にあって,『臨床検査学講座/医動物学』の内容を今日の日本の状況に合わせ,新知見を十分取り入れると同時に,従来の内容から取捨選択して,ページ数を増やすことなく充実させるよう配慮いたしました.
数多くの方がたからのご指摘,ご叱正を得て,本書がさらによい教科書として育ってくれれば,筆者にとってこんなにうれしいことはありません.
2010年8月
藤田紘一郎
第2版の序
第1版の序
カラー図版
第I章──医動物学総論
1-医動物学
2-学名
3-寄生と共生
4-感染経路
5-宿主・寄生虫相互関係
6-寄生虫の生殖,発育
7-寄生虫感染の免疫反応
第II章──線形動物
1.線形動物総論
1-形態
2-生活史
2.線虫類各論
I.回虫類
1-回虫
2-アニサキス類
3-その他の回虫類
II.蟯虫
III.鉤虫類
1-ズビニ鉤虫
2-アメリカ鉤虫
3-その他の鉤虫類
IV.東洋毛様線虫
V.広東住血線虫
VI.毛頭虫類
1-鞭虫
2-フィリピン毛細虫
VII.旋毛虫
VIII.糞線虫
IX.顎口虫類
1-有棘顎口虫
2-剛棘顎口虫
3-日本顎口虫
4-ドロレス顎口虫
5-その他の旋尾線虫科
X.糸状虫類
1-バンクロフト糸状虫
2-マレー糸状虫
3-回旋糸状虫
4-ロア糸状虫
5-イヌ糸状虫
6-その他の糸状虫
XI.メジナ虫
第III章──扁形動物
1.吸虫類総論
1-形態
2-生活史
2.吸虫類各論
I.住血吸虫類
1-日本住血吸虫
2-マンソン住血吸虫
3-ビルハルツ住血吸虫
II.肝蛭,巨大肝蛭
III.浅田棘口吸虫
IV.肝吸虫類
1-肝吸虫
2-タイ肝吸虫
V.異形吸虫類
1-横川吸虫
2-有害異形吸虫
VI.肺吸虫類
1-ウエステルマン肺吸虫
2-宮崎肺吸虫
3.条虫類総論
1-形態
2-生活史
4.条虫類各論
I.擬葉目類条虫
1-日本海裂頭条虫
2-大複殖門条虫
3-マンソン裂頭条虫
II.円葉目類条虫
1-無鉤条虫
2-有鉤条虫(有鉤嚢虫)
3-小形条虫
4-縮小条虫
5-多包条虫
6-単包条虫
7-その他の条虫類
第IV章──原生動物
1.寄生原虫学総論
1-形態
2-生理
3-分類
4-種類
2.原虫類各論
A.腸管内寄生原虫類
I.腸管内寄生アメーバ類
1-赤痢アメーバ
2-大腸アメーバ
3-小形アメーバ
4-ヨードアメーバ
II.腸管内寄生鞭毛虫類
1-ランブル鞭毛虫
2-その他の腸管内寄生鞭毛虫類
III.腸管内寄生胞子虫類
1-戦争イソスポーラ
2-小形クリプトスポリジウム
3-サイクロスポーラ
IV.その他
1-ヒトブラストシスチス
B.泌尿器寄生原虫類
I.腟トリコモナス
C.血液・組織寄生原虫類
I.血液・組織寄生アメーバ類
1-眼に寄生するアメーバ(アカントアメーバ)
2-髄膜脳炎を起こすアメーバ
II.血液・組織寄生鞭毛虫類
1-トリパノソーマ類
[1]ガンビアトリパノソーマ [2]ローデシアトリパノソーマ [3]クルーズトリパノソーマ
2-リーシュマニア類
[1]ドノバンリーシュマニア [2]熱帯リーシュマニア [3]ブラジルリーシュマニア
III.血液・組織寄生胞子虫類
1-マラリア
[1]三日熱マラリア原虫 [2]熱帯熱マラリア原虫 [3]四日熱マラリア原虫 [4]卵形マラリア原虫
2-トキソプラズマ
第V章──衛生動物学
I.ダニ類
[1]イエダニ [2]ヤマトマダニ [3]シュルツェマダニ [4]キチマダニ [5]タカサゴキララマダニ [6]Dermacentor andersoni [7]ツツガムシ(恙虫) [8]ニキビダニ [9]ヒゼンダニ [10]室内塵ダニおよびダニアレルギー
II.昆虫類
1-蚊類
2-ハエ類
3-サシチョウバエ
4-ブユ類
5-アブ類
6-ノミ類
7-シラミ類
第VI章──寄生虫学検査法
I.検査材料の採取,保存
II.顕微鏡での観察
III.虫卵鑑別の要点
IV.糞便内虫卵の検出法
1-遠心沈殿法
[1]ホルマリン・エーテル法(MGL法) [2]AMSIII法
2-浮遊集卵法
3-虫卵孵化培養法
[1]濾紙培養法 [2]寒天平板培養法
V.肛囲検査法
VI.幼虫検出法
VII.成虫体の検査
VIII.血液内ミクロフィラリア検査法
IX.消化管寄生原虫検査法
1-栄養型検出法
[1]生鮮標本作製 [2]永久標本作製
2-嚢子(シスト)検出法
3-クリプトスポリジウム検査法
[1]Kinyoun抗酸染色法 [2]蔗糖液遠心浮遊法
X.マラリア検査法
[1]血液塗抹標本ギムザ染色法 [2]アクリジンオレンジ染色法 [3]免疫学的検査法など
IX.トキソプラズマ検査法
[1]塗抹標本検査法 [2]マウス接種による虫体の分離 [3]色素試験
XII.免疫学的検査法
XIII.生物学的免疫反応
XIV.寄生虫検査結果の評価
[1]糞便検査 [2]免疫学的検査
索引
第1版の序
カラー図版
第I章──医動物学総論
1-医動物学
2-学名
3-寄生と共生
4-感染経路
5-宿主・寄生虫相互関係
6-寄生虫の生殖,発育
7-寄生虫感染の免疫反応
第II章──線形動物
1.線形動物総論
1-形態
2-生活史
2.線虫類各論
I.回虫類
1-回虫
2-アニサキス類
3-その他の回虫類
II.蟯虫
III.鉤虫類
1-ズビニ鉤虫
2-アメリカ鉤虫
3-その他の鉤虫類
IV.東洋毛様線虫
V.広東住血線虫
VI.毛頭虫類
1-鞭虫
2-フィリピン毛細虫
VII.旋毛虫
VIII.糞線虫
IX.顎口虫類
1-有棘顎口虫
2-剛棘顎口虫
3-日本顎口虫
4-ドロレス顎口虫
5-その他の旋尾線虫科
X.糸状虫類
1-バンクロフト糸状虫
2-マレー糸状虫
3-回旋糸状虫
4-ロア糸状虫
5-イヌ糸状虫
6-その他の糸状虫
XI.メジナ虫
第III章──扁形動物
1.吸虫類総論
1-形態
2-生活史
2.吸虫類各論
I.住血吸虫類
1-日本住血吸虫
2-マンソン住血吸虫
3-ビルハルツ住血吸虫
II.肝蛭,巨大肝蛭
III.浅田棘口吸虫
IV.肝吸虫類
1-肝吸虫
2-タイ肝吸虫
V.異形吸虫類
1-横川吸虫
2-有害異形吸虫
VI.肺吸虫類
1-ウエステルマン肺吸虫
2-宮崎肺吸虫
3.条虫類総論
1-形態
2-生活史
4.条虫類各論
I.擬葉目類条虫
1-日本海裂頭条虫
2-大複殖門条虫
3-マンソン裂頭条虫
II.円葉目類条虫
1-無鉤条虫
2-有鉤条虫(有鉤嚢虫)
3-小形条虫
4-縮小条虫
5-多包条虫
6-単包条虫
7-その他の条虫類
第IV章──原生動物
1.寄生原虫学総論
1-形態
2-生理
3-分類
4-種類
2.原虫類各論
A.腸管内寄生原虫類
I.腸管内寄生アメーバ類
1-赤痢アメーバ
2-大腸アメーバ
3-小形アメーバ
4-ヨードアメーバ
II.腸管内寄生鞭毛虫類
1-ランブル鞭毛虫
2-その他の腸管内寄生鞭毛虫類
III.腸管内寄生胞子虫類
1-戦争イソスポーラ
2-小形クリプトスポリジウム
3-サイクロスポーラ
IV.その他
1-ヒトブラストシスチス
B.泌尿器寄生原虫類
I.腟トリコモナス
C.血液・組織寄生原虫類
I.血液・組織寄生アメーバ類
1-眼に寄生するアメーバ(アカントアメーバ)
2-髄膜脳炎を起こすアメーバ
II.血液・組織寄生鞭毛虫類
1-トリパノソーマ類
[1]ガンビアトリパノソーマ [2]ローデシアトリパノソーマ [3]クルーズトリパノソーマ
2-リーシュマニア類
[1]ドノバンリーシュマニア [2]熱帯リーシュマニア [3]ブラジルリーシュマニア
III.血液・組織寄生胞子虫類
1-マラリア
[1]三日熱マラリア原虫 [2]熱帯熱マラリア原虫 [3]四日熱マラリア原虫 [4]卵形マラリア原虫
2-トキソプラズマ
第V章──衛生動物学
I.ダニ類
[1]イエダニ [2]ヤマトマダニ [3]シュルツェマダニ [4]キチマダニ [5]タカサゴキララマダニ [6]Dermacentor andersoni [7]ツツガムシ(恙虫) [8]ニキビダニ [9]ヒゼンダニ [10]室内塵ダニおよびダニアレルギー
II.昆虫類
1-蚊類
2-ハエ類
3-サシチョウバエ
4-ブユ類
5-アブ類
6-ノミ類
7-シラミ類
第VI章──寄生虫学検査法
I.検査材料の採取,保存
II.顕微鏡での観察
III.虫卵鑑別の要点
IV.糞便内虫卵の検出法
1-遠心沈殿法
[1]ホルマリン・エーテル法(MGL法) [2]AMSIII法
2-浮遊集卵法
3-虫卵孵化培養法
[1]濾紙培養法 [2]寒天平板培養法
V.肛囲検査法
VI.幼虫検出法
VII.成虫体の検査
VIII.血液内ミクロフィラリア検査法
IX.消化管寄生原虫検査法
1-栄養型検出法
[1]生鮮標本作製 [2]永久標本作製
2-嚢子(シスト)検出法
3-クリプトスポリジウム検査法
[1]Kinyoun抗酸染色法 [2]蔗糖液遠心浮遊法
X.マラリア検査法
[1]血液塗抹標本ギムザ染色法 [2]アクリジンオレンジ染色法 [3]免疫学的検査法など
IX.トキソプラズマ検査法
[1]塗抹標本検査法 [2]マウス接種による虫体の分離 [3]色素試験
XII.免疫学的検査法
XIII.生物学的免疫反応
XIV.寄生虫検査結果の評価
[1]糞便検査 [2]免疫学的検査
索引








