やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の発行にあたって
 2000年3月に日本検査血液学会が設立されて,9年目に入ります.初代の渡辺清明理事長の下,日本検査血液学会は「検査血液学の向上」を活動目標に掲げ,血液疾患診断法の研究,血液検査の標準化,新たな検査法や検査診断システムの開発などとともに,認定血液検査技師制度の推進を課題としてきました.そして学会内の認定血液検査技師制度協議会での検討に基づき,2003年2月に第1回,11月に第2回の認定血液検査技師の認定試験が行われました.
 本書「スタンダード検査血液学(第1版)」は,認定血液検査技師を目指す臨床検査技師の方々のテキストとして2003年に発行されました.血液学の基礎知識,専門知識,検査方法,検査結果の判定法,検査業務など,認定血液検査技師が知っておくべき知識と検査技術について記載された教科書として好評で,臨床検査技師教育の場でもサブテキストとして用いられております.
 認定血液検査技師試験は2007年で第6回を数え,資格取得者はすでに474名に上っています.さらに,骨髄検査に特化した高度の技術を身につけた骨髄認定技師制度(仮称)の立ち上げも検討されており,また将来的には臨床検査技師の指導や臨床検査に関する研究に自ら携われる高度の知識と技術を身につけた一段上の高度認定技師制度なども検討しなければならないかもしれません.
 本書の発刊から5年が経過した現在,急速な医学医療の進展に対応できる改訂が必要となってきました.特に,分子生物学の進歩により,診断や病態解析などの分野への分子生物学的手法の導入や,分子標的療法の導入,進歩などは目をみはるものがあります.それを反映して,本書第2版では,von Willebrand病の病態解析,ADAMTS13測定による血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診断などの新しい項目の追加に加えて,日本検査血液学会の講習会などで用いた血球をCDに画像化して添付するなど,形態学の面でも充実を図りました.
 日本検査血液学会に参加する皆様方が,本書を日常の検査を行っていくうえでの指標として,認定血液検査技師を取得する際の道標として,そして新人技師ならびに学生指導のテキストとしておおいに利用していただくことを期待しています.
 最後になりましたが,本書の編集にご尽力いただいた認定血液検査技師制度審議会カリキュラム委員会の先生方,ならびにご執筆いただいた諸先生方に,日本検査血液学会会員を代表して心から御礼申し上げます.
 2008年3月
 日本検査血液学会 理事長
 松野一彦
 第2版の発行にあたって
 執筆者一覧
 カラー口絵
 本書で使用している主な略語
第I章 血液検査の基礎知識
 1 認定血液検査技師制度
  A.認定制度(奈良信雄)
   1.認定技師制度の施行
   2.受験申請資格
   3.試験概要
   4.試験出題範囲と出題形式
   5.更新制度
  B.カリキュラムと認定試験(三村邦裕)
 2 血液医学総論
  A.血液医学の歴史(奈良信雄)
 3 血液検査の基礎知識
  A.血液の成分(奈良信雄)
   1.有形成分
   2.無形成分
  B.血液の性状・物性(巽 典之)
   1.血液量
   2.比重
   3.粘度
  C.血液の機能(二宮治彦)
   1.血液の生化学
   2.物質の運搬
   3.造血の調節
   4.生体防御
  D.血球の生成と崩壊(小山高敏)
   1.造血因子
   2.胎生期造血
   3.造血器官
   4.髄外造血
   5.鉄代謝
第II章 血液検査に必要な専門的知識
 1 血球
  A.赤血球(服部幸夫・山城安啓)
   1.産生と崩壊
   2.形態と機能
   3.赤血球膜の構造・機能
   4.ヘモグロビンの構造・機能
   5.エネルギー代謝
   6.赤血球数の基準範囲
  B.白血球(松野一彦)
   1.産生と崩壊
   2.形態と機能
   3.成熟に伴う形態変化
   4.白血球数の基準範囲
  C.血小板(渡辺清明)
   1.産生と崩壊
   2.代謝
   3.形態と機能
   4.血小板の膜糖蛋白
   5.血小板数の基準値
  D.血液細胞抗原検査(中原一彦)
   1.フローサイトメトリー
 2 止血機構
  A.血管(伊藤隆史・丸山征郎)
   1.血管内皮細胞の抗血栓性
   2.内皮下組織の向血栓性
   3.内皮下組織と血小板との相互作用
  B.血小板(尾崎由基男)
   1.粘着
   2.凝集
   3.放出
  C.止血(福武勝幸)
   1.血小板因子
   2.凝固因子
   3.一次止血,二次止血
 3 凝固・線溶系
  A.血液凝固と制御機構(鈴木宏治)
   1.凝固機序
   2.凝固制御系
   3.凝固因子,凝固制御因子の構造と機能,産生動態
  B.線溶と制御機構(坂田洋一)
   1.線維素溶解反応
   2.線溶因子の産生
   3.線溶因子の構造と機能
   4.線溶制御機構
  C.VWFとADAMTS13(八木秀男)
   1.VWF
   2.ADAMTS13
第III章 検体の採取と保存
 1 採血法と保存法
  A.採血法(東 克巳)
   1.毛細血管採血法
   2.静脈血採血法
   3.抗凝固剤の種類と使い方
   4.検体処理
  B.検体管理(東 克巳)
   1.保存法
  C.事故の防止対策(今村文章)
   1.感染予防
   2.検体管理
第IV章 血液検査法
 1 血球に関する検査
  A.血球計数法
   1.用手法における血球計数
    a.赤血球数(川田 勉)
    b.白血球数
    c.血小板数
    d.ヘモグロビン濃度
    e.ヘマトクリット値
    f.赤血球指数
    g.網赤血球数(池本敏行)
    h.好酸球数
    i.好塩基球数
   2.自動血球測定法
    a.目的と方法(西村敏治)
    b.赤血球系
    c.白血球系
    d.血小板系
    e.網赤血球系(清水長子)
  B.赤血球沈降速度(近藤 弘)
  C.溶血の検査
    a.赤血球抵抗試験(原田佳代子)
    b.PNHに関する検査
    c.赤血球酵素活性(井手口裕)
    d.異常ヘモグロビンに関する検査
    e.赤血球寿命(松尾収二)
    f.血清ハプトグロビン濃度
  D.鉄代謝(松尾収二)
    a.血清鉄と鉄結合能
    b.フェロカイネティクス
 2 形態に関する検査
  A.末梢血液標本の作製法(櫻井典子)
   1.薄層塗抹標本
   2.厚層塗抹(濃塗)標本
  B.骨髄標本の作製法
   1.薄層塗抹標本(ウエッジ標本)(大畑雅彦)
   2.圧挫伸展標本
   3.組織切片標本(坂場幸治・鈴木洋司・玉井誠一)
   4.骨髄生検
   5.捺印標本
  C.リンパ節標本の作製法(下 正宗)
   1.捺印標本
  D.染色法
   1.普通染色(久保田浩)
   2.特殊染色
    a.ペルオキシダーゼ染色(三浦玲子)
    b.アルカリホスファターゼ染色
    c.エステラーゼ染色(野中恵美)
    d.PAS染色
    e.鉄染色(鶴田一人・上平 憲)
    f.脂肪染色(ズダン黒B染色)
    g.βグルクロニダーゼ染色(兜森 修)
    h.ハインツ小体染色
    i.酸ホスファターゼ染色
    j.免疫組織化学染色(麻生裕康)
  E.末梢血液像の観察
   1.観察・判定法(本間 優)
   2.血球自動分類(増田詩織)
   3.LE細胞検査(増田詩織)
  F.骨髄像の観察(土屋達行)
   1.観察・判定法
   2.FAB分類
   3.WHO分類
  G.リンパ節標本の観察(下 正宗)
  H.白血球機能検査
   1.顆粒球機能検査(東 克巳)
   2.リンパ球幼若化試験(近藤 弘)
 3 止血検査
  A.止血機能検査装置(渡部俊幸)
   1.血液凝固・線溶検査装置
   2.血小板機能検査装置
  B.凝固・線溶の検査
   1.凝固の検査
    a.出血時間(丸茂美幸)
    b.毛細血管抵抗試験
    c.プロトロンビン時間(PT)(高宮 脩)
    d.活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
    e.トロンビン時間
    f.フィブリノゲン量
    g.複合凝固因子の検査(小宮山豊)
    h.凝固因子活性定量
   2.線溶の検査(末久悦次)
    a.プラスミノゲン
    b.FDP
  C.凝固・線溶阻止物質の検査
   1.凝固阻止物質の検査
    a.アンチトロンビン(西岡淳二)
    b.プロテインC
    c.プロテインS
    d.ヘパリン(飯島憲司)
    e.ヘパリンコファクターII
    f.抗第VIII因子抗体(田中一郎)
    g.ループスアンチコアグラント(家子正裕)
   2.線溶阻止物質の検査
    a.プラスミンインヒビター(PI)(島津千里)
    b.プラスミノゲンアクチベータ・インヒビター(PAI)
  D.凝固・線溶系の分子マーカー
   1.凝固系分子マーカー(川合陽子)
    a.可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)
    b.トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)
    c.プロトロンビンフラグメント1+2(PF1+2)
    d.フィブリノペプタイドA(FPA)
   2.線溶系分子マーカー
    a.FDPおよびDダイマー(新井盛大)
    b.PIC
    c.PAI-1
    d.組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)(香川和彦)
    e.ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(u-PA)
    f.組織プラスミノゲンアクチベータ・プラスミノゲンアクチベータインヒビター1(t-PA・PAI-1)複合体
    g.フィブリノペプチドBβ15-42(FPBβ15-42)
  E.血小板に関する検査
   1.血小板機能検査(矢冨 裕)
    a.血小板粘着能
    b.血小板凝集能
    c.血餅収縮能
    d.血小板第3因子能
    e.血小板放出能
 4 フローサイトメトリー(細胞表面マーカー)(米山彰子)
  A.CD分類
  B.リンパ球サブセット検査
  C.造血幹細胞同定
 5 遺伝子・染色体検査
  A.染色体検査
   1.染色体の構造と機能(園山政行)
   2.細胞培養法
   3.標本作製法
   4.分染法
    a.Q分染法
    b.G分染法
    c.R分染法
    d.NOR分染法
    e.C分染法
    f.高精度染色体分染法
   5.核型分析
   6.蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)(日高恵以子)
  B.遺伝子検査(舩渡忠男)
   1.赤血球系
   2.白血球系
   3.血小板,血液凝固線溶系
第V章 結果の評価
 1 血液検査結果の評価
  A.赤血球系疾患
    a.貧血(宮地勇人)
    b.赤血球形態異常
    c.赤血球崩壊異常
    d.ヘモグロビン異常症(宮ア彩子)
    e.赤血球増加症(田窪孝行)
  B.白血球系疾患
    a.白血球増加症(竹村 譲)
    b.白血球減少症
    c.白血病
    d.造血器悪性腫瘍のimmunophenotyping(米山彰子)
    e.悪性リンパ腫(上平 憲)
    f.白血球形態異常
    g.M蛋白血症(村上純子)
    h.多発性骨髄腫
    i.リンパ球の異常(悪性腫瘍を除く)
  C.造血臓器の疾患
    a.骨髄増殖性疾患(米山彰子)
    b.骨髄異形成症候群(MDS)
    c.再生不良性貧血(笹田昌孝)
    d.脾機能亢進症
  D.血小板の異常(村田 満)
    a.血小板減少症
    b.血小板増加症
    c.血小板機能異常症
  E.凝固・線溶因子の異常(小山高敏)
    a.先天性凝固障害
    b.後天性凝固障害
  F.von Willebrand病(毛利 博)
    a.先天性
    b.後天性
  G.血管の異常(新谷憲治)
   1.血管の機能
   2.血管の異常に基づく出血傾向
   3.血管内外の圧変化による紫斑
   4.血管の脆弱性に伴う紫斑
   5.感染に伴うもの
   6.Henoch-Scho¨nlein紫斑病
   7.DNA自己感作性紫斑病と自己赤血球感作性紫斑病
   8.血管の形成異常
  H.染色体異常(東田修二)
    a.染色体異常症候群
    b.造血器腫瘍の染色体異常
 2 臨床医への報告と対応(北村 聖)
   1.パニック値
   2.オンラインによる報告
   3.報告書による報告
   4.画像の報告
   5.臨床医とのコミュニケーション
第VI章 血液検査業務
 1 業務管理
  A.管理の概念と原則(桑島 実)
   1.管理の定義
   2.管理サイクルと臨床検査のサイクル
   3.管理組織
   4.人事管理
   5.最近の管理手法
   6.臨床検査室の国際規格:ISO 15189
  B.チーム医療の概念(桑島 実)
  C.血液部門内業務管理
   1.伝票,台帳,予算,コンピュータシステム管理(山田輝雄)
   2.検体の保存管理
   3.安全管理
   4.試薬管理(湯浅宗一)
   5.危機管理
   6.情報管理
   7.内部精度管理
   8.外部精度管理
 2 コンサルテーション(西岡淳二)
   1.血液検査におけるコンサルテーション業務
   2.血液検査におけるコンサルテーションの実際
 3 教育とトレーニング
  A.対応・説明のための話術・手技の向上(三村邦裕)
  B.部内スタッフ(西岡淳二)
   1.血液検査教育の理論と実際
   2.業務トレーニング
   3.研究活動(学会発表,プロジェクトの推進,学術論文の読解)
  C.部外関係(医師,看護師,薬剤師,学生など)(三村邦裕)
   1.臨地実習生
   2.教育の目的・目標
   3.教育の方略
   4.教育の評価
第VII章 その他の血液検査
 1 造血幹細胞移植・臓器移植の血液検査(梶原道子)
  A.HLAの検査
   1.HLAとは
   2.どのような場合にHLA検査を行うか
   3.HLA検査の方法
  B.臓器移植
  C.造血細胞移植
  D.造血細胞の評価法
  E.造血細胞移植前後に行われる検査
 2 輸血検査(梶原道子)
  A.血液型検査
   1.ABO血液型検査
   2.Rh0(D)血液型検査
   3.血液型検査に用いる検体
   4.検査法
  B.不規則抗体検査
  C.交差適合試験
  D.主な輸血用血液製剤
  E.輸血療法
  F.輸血副作用
  G.輸血事故防止対策
 認定血液検査技師制度の形態検査の実技試験について
 索引