やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 1996年に発行されたJOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION(CR)別冊『リハビリテーションにおける評価』,さらに,2000年に改訂されたCR別冊『リハビリテーションにおける評価 Ver.2』は,幸い臨床現場や教育現場で広く利用され,多くの支持を得て増刷を重ねてきた.本書はその最新改訂版を装いも新たに書籍として発行したものである.
 Ver.2が刊行されてから16年が経過した.この間のリハ医学・医療とそれをとりまく社会は大きく変容した.わが国は世界にも類をみない超高齢社会となり,多疾患患者が激増し,障害が複雑化・重複化した.リハのニーズが大きく拡大するとともに,リハの取り組み方にも変革を迫られるようになってきた.
 リハにおけるエビデンスの構築のために,リハプログラムの効果検証が厳密に求められるようになり,精度,再現性,感度の高い評価法が必要になってきた.さらに,関節可動域測定や日常生活動作評価法だけでなく,より広範な領域での疾患や障害に有用な評価法が必要になり,多くの評価法の開発と標準化が進んだ.Barthel index(BI)やFunctional Independence Measure(FIM)を金貨玉条としていた時代からは隔世の感がある.毎年新たな評価法が登場する一方で,使われなくなったものも生じてきた.まさに評価法の選別・淘汰の時代に入ったわけであり,前版の内容や用語にもやや古さがみられるようになってきた.
 このような背景のもと,内容を見直し,前版の優れた特長を生かしつつ,新しいリハ評価に関する知見を取り入れて全面改訂を行った.改訂の基本方針は,(1)リハ医のみならず,リハスタッフにも使いやすい書籍にする,(2)実用性の高い一般化された評価法の特徴を比較しながら紹介する,(3)臨床で遭遇することの多い障害,疾患の評価法の実際に力点を置く,(4)図表の多用や簡潔な表記を尽くし一目で理解できるようにする,(5)リハ評価の基礎的内容も含み,学生が教科書としても卒後の臨床書としても使える書籍にする,の5点とした.
 編者らの意図に快く賛同してくださった各分野で実績豊富な執筆者各位に深く感謝するとともに,企画・編集で何かと手を煩わせた医歯薬出版株式会社の関係諸氏にも感謝する.
 本書は企画から2年の歳月をかけてまとめあげた自信作である.読者対象はリハ科医師やリハにかかわる他科医師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床心理士,義肢装具士,薬剤師,看護師,保健師,臨床工学技士,ケアマネージャー,社会福祉士,介護福祉士,その他多くのリハ関連職であり,臨床現場や養成校でのリハ評価における座右の書,国家試験や専門医試験にも役立つ必読書となるものと確信している.
 本書が,職種を超えた共通言語としての評価法の理解を深めて,質・量ともに優れたリハの普及に貢献することを期待する.
 2016年4月
 編者を代表して 上月正博
I章 基本・症状編
1.リハビリテーションにおける評価とは
 (江藤文夫)
2.意識障害
 (古口徳雄)
3.運動障害
 (菊地尚久)
4.関節可動域測定・徒手筋力検査
 (浅野由美)
5.フィットネス
 (上月正博)
6.感覚障害
 (鴨下 博)
7.知能
 (石原哲郎 森 悦朗)
8.成長・発達
 (栗原まな)
9.言語障害
 (小林健太郎 安保雅博)
10.注意障害
 (原 寛美)
11.半側空間無視と関連症状
 (石合純夫)
12.記憶障害
 (海老原 覚)
13.遂行機能障害
 (江口洋子 三村 將)
14.失行・失認
 (鈴木匡子)
15.心理─うつ・不安
 (先崎 章)
16.摂食嚥下障害
 (西村 立 藤島一郎)
17.排尿・排便障害
 (原 行弘)
18.疼痛
 (西川順治 岡島康友)
19.皮膚障害(褥瘡・リンパ浮腫)
 (川上途行 里宇明元)
20.基本動作・バランス
 (大高洋平)
21.ADL・IADL
 (徳永 誠 園田 茂)
22.参加制約(社会的不利)
 (高岡 徹)
23.QOL
 (高橋秀寿)
II章 疾患編
1.脳卒中
 (正門由久)
2.頭部外傷
 (渡邉 修)
3.脊髄損傷
 (八谷カナン 田中宏太佳)
4.認知症
 (下村辰雄)
5.パーキンソン病
 (中馬孝容)
6.脊髄小脳変性症・多発性硬化症
 (松尾雄一郎 生駒一憲)
7.筋萎縮性側索硬化症
 (小森哲夫)
8.ニューロパチー,ギラン・バレー症候群 等
 (豊倉 穣)
9.ポリオ後症候群
 (蜂須賀研二)
10.筋ジストロフィー
 (花山耕三)
11.外傷性・絞扼性末梢神経障害
 (児玉三彦)
12.脳性麻痺・重症心身障害
 (北原 佶)
13.二分脊椎
 (芳賀信彦)
14.脊椎・脊髄疾患
 (加藤真介)
15.腰痛症・腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症
 (橋本光宏 吉永勝訓)
16.肩および肩甲帯疾患
 (大串 幹)
17.股関節疾患
 (帖佐悦男)
18.膝関節疾患
 (小林龍生)
19.骨粗鬆症・骨折
 (松本浩実 萩野 浩)
20.切断
 (陳 隆明)
21.関節リウマチ・膠原病
 (水落和也)
22.呼吸器疾患
 (宮ア博子)
23.心疾患
 (牧田 茂)
24.糖尿病・メタボリックシンドローム
 (原田 卓)
25.末梢循環障害
 (石川まゆ子 安 隆則)
26.肝疾患・腎疾患
 (伊藤 修)
27.がん
 (辻 哲也)
28.熱傷
 (原 元彦 栢森良二)
29.サルコペニア
 (若林秀隆)

 付録―診断書記入のポイント(正門由久 吉永勝訓 鈴木文歌)
  身体障害者診断書・意見書
  精神障害者保健福祉手帳用診断書
  介護保険における主治医意見書
  労働者災害補償保険診断書
  障害年金診断書
  自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書

 索引