はじめに
以前の私は,PT・OT・STを行っている患者さんの栄養状態は良好で,臨床栄養管理は適切だと思い込んでいました.機能評価と予後予測の際にも,栄養のことは全く考えていませんでした.しかし,不適切な臨床栄養管理などのために餓死した患者さんを何人もみてきました.餓死寸前の患者さんに必要なものは,訓練ではなく栄養です.この経験からリハビリテーション(以下リハ)科医師とPT・OT・STは,栄養状態を含めて全人的に評価して,それに見合った訓練を実施しなければいけないと痛感しました.
私は前医で栄養サポートチーム(NST)を立ち上げました.NSTで回診する患者さんの多くはすでにPT・OT・STを行っていて,リハとNSTが協働して初めて,ADLやQOLが改善する患者さんを経験しました.自分が考えていた予後予測以上に改善していく患者さんをみて,栄養ケアなくしてリハなし,リハなくして栄養ケアなしと確信しています.
現在,NSTのメンバーにPT・OT・STがいることは少ないです.経口摂取にかかわる摂食・嚥下リハを除くと,リハとNSTの連携が良好ともいえません.低栄養状態で不適切な臨床栄養管理が行われている患者さんに,安易にレジスタンストレーニングを行うPT・OT・STがいます.そんな状況に思い悩んでいたときに,PT・OT・ST向けの栄養の本がないのでつくってくださいとSTに頼まれました.そこで医歯薬出版に相談したところ,制作していただけることになりました.
栄養ケアプランの立案は比較的難しいですが,栄養状態の基本的な評価は難しくありません.PT・OT・STなら誰でも習得できます.栄養評価を自分で行えるようになると,栄養障害の患者さんの多さを実感できます.栄養状態によって訓練内容を変更する必要があるため,栄養状態はバイタルサインの1つです.より多くのPT・OT・STが栄養状態を評価できるようになり,NSTに参画して成果を出してほしいと思います.本書がその一助になれば幸いです.
本書の主な対象はPT・OT・STですが,管理栄養士,薬剤師,看護師,臨床検査技師などリハ関連職種以外の方々は,リハ栄養の基本を学習できます.臨床栄養管理の目標の1つは,蛋白異化を少なくして蛋白同化を促すことです.筋蛋白の増加には,レジスタンストレーニングの併用が必要です.体重が増えても筋肉ではなく脂肪が増えてしまっては,ADLやQOLはあまり改善しません.NSTとリハの適切な連携で,ADLやQOLがより向上することを理解していただければ幸いです.
振り返ってみるとNSTを通じて多くの医療人と患者さんに出会い,多くのことを学ばせていただきました.皆様との出会いがなければ,私は今でも栄養を知らずに不適切な訓練を処方するリハ科医師だったはずです.本当にありがとうございました.今後もともに学び成長したいと考えています.
最後に医歯薬出版株式会社の担当の方には,執筆や編集で大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
若林秀隆
以前の私は,PT・OT・STを行っている患者さんの栄養状態は良好で,臨床栄養管理は適切だと思い込んでいました.機能評価と予後予測の際にも,栄養のことは全く考えていませんでした.しかし,不適切な臨床栄養管理などのために餓死した患者さんを何人もみてきました.餓死寸前の患者さんに必要なものは,訓練ではなく栄養です.この経験からリハビリテーション(以下リハ)科医師とPT・OT・STは,栄養状態を含めて全人的に評価して,それに見合った訓練を実施しなければいけないと痛感しました.
私は前医で栄養サポートチーム(NST)を立ち上げました.NSTで回診する患者さんの多くはすでにPT・OT・STを行っていて,リハとNSTが協働して初めて,ADLやQOLが改善する患者さんを経験しました.自分が考えていた予後予測以上に改善していく患者さんをみて,栄養ケアなくしてリハなし,リハなくして栄養ケアなしと確信しています.
現在,NSTのメンバーにPT・OT・STがいることは少ないです.経口摂取にかかわる摂食・嚥下リハを除くと,リハとNSTの連携が良好ともいえません.低栄養状態で不適切な臨床栄養管理が行われている患者さんに,安易にレジスタンストレーニングを行うPT・OT・STがいます.そんな状況に思い悩んでいたときに,PT・OT・ST向けの栄養の本がないのでつくってくださいとSTに頼まれました.そこで医歯薬出版に相談したところ,制作していただけることになりました.
栄養ケアプランの立案は比較的難しいですが,栄養状態の基本的な評価は難しくありません.PT・OT・STなら誰でも習得できます.栄養評価を自分で行えるようになると,栄養障害の患者さんの多さを実感できます.栄養状態によって訓練内容を変更する必要があるため,栄養状態はバイタルサインの1つです.より多くのPT・OT・STが栄養状態を評価できるようになり,NSTに参画して成果を出してほしいと思います.本書がその一助になれば幸いです.
本書の主な対象はPT・OT・STですが,管理栄養士,薬剤師,看護師,臨床検査技師などリハ関連職種以外の方々は,リハ栄養の基本を学習できます.臨床栄養管理の目標の1つは,蛋白異化を少なくして蛋白同化を促すことです.筋蛋白の増加には,レジスタンストレーニングの併用が必要です.体重が増えても筋肉ではなく脂肪が増えてしまっては,ADLやQOLはあまり改善しません.NSTとリハの適切な連携で,ADLやQOLがより向上することを理解していただければ幸いです.
振り返ってみるとNSTを通じて多くの医療人と患者さんに出会い,多くのことを学ばせていただきました.皆様との出会いがなければ,私は今でも栄養を知らずに不適切な訓練を処方するリハ科医師だったはずです.本当にありがとうございました.今後もともに学び成長したいと考えています.
最後に医歯薬出版株式会社の担当の方には,執筆や編集で大変お世話になりました.心よりお礼申し上げます.
若林秀隆
CHAPTER1 リハビリテーションと栄養
1 リハビリテーションと栄養
なぜリハビリテーションに栄養が必要か
ICFと栄養
訓練効果を高める栄養
2 栄養不良時の代謝
同化と異化
5大栄養素の基本
飢餓時の代謝
侵襲時の代謝
3 運動栄養学とリハビリテーション
筋萎縮の原因と対応
栄養と運動のタイミング
筋力を高める栄養
持久力を高める栄養
訓練効果を高めるスケジュール
4 栄養不良時のリハビリテーション
機能改善か機能維持か
栄養指標の目安
栄養不良時の訓練
コラム
Prehabilitation
サプリメントとリハビリテーション
Sarcopenic obesity
機能訓練室に栄養剤を
CHAPTER2 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
1 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
マネジメントとは
セルフマネジメント
リハビリテーション栄養ケアマネジメントとは
2 リハビリテーション栄養スクリーニング
SGA
MNA
疾患・障害名で行うリハビリテーション栄養スクリーニング
初期評価時に行うリハビリテーション栄養スクリーニング
検査値で行うリハビリテーション栄養スクリーニング
3 リハビリテーション栄養アセスメント
身体計測
検査値
筋萎縮の原因と程度
摂食・嚥下機能評価
リハビリテーションの種類・内容・時間
エネルギー消費量
エネルギー摂取量
4 リハビリテーション栄養ケアプラン
リハビリテーション栄養のゴール設定
投与ルート
推定エネルギー必要量
リハビリテーションの種類・内容・時間
コラム
リハビリテーション栄養とEBCP
リハビリテーション栄養と臨床研究
あなたの栄養足りていますか
Refeeding症候群
CHAPTER3 NST
1 NST
NSTとは
NSTとリハビリテーションの関連
チーム形態の種類
PT・OT・STの役割
2 地域一体型NST
地域一体型NSTとは
地域連携パス
コラム
NST専門療法士
スポーツ栄養士
CHAPTER4 主な疾患のリハビリテーション栄養
1─廃用症候群
2─脳卒中
3─パーキンソン病
4─がん
5─誤嚥性肺炎
6─褥瘡
7─大腿骨頸部骨折
8─関節リウマチ
9─慢性閉塞性肺疾患
10─慢性心不全
コラム
筋萎縮による摂食・嚥下障害
脳性麻痺とリハビリテーション栄養
在宅リハビリテーション栄養
半固形化栄養とリハビリテーション
ERAS
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
神経性食思不振症とリハビリテーション栄養
自己学習したいPT・OT・STのための推奨サイトと推奨図書
索引
1 リハビリテーションと栄養
なぜリハビリテーションに栄養が必要か
ICFと栄養
訓練効果を高める栄養
2 栄養不良時の代謝
同化と異化
5大栄養素の基本
飢餓時の代謝
侵襲時の代謝
3 運動栄養学とリハビリテーション
筋萎縮の原因と対応
栄養と運動のタイミング
筋力を高める栄養
持久力を高める栄養
訓練効果を高めるスケジュール
4 栄養不良時のリハビリテーション
機能改善か機能維持か
栄養指標の目安
栄養不良時の訓練
コラム
Prehabilitation
サプリメントとリハビリテーション
Sarcopenic obesity
機能訓練室に栄養剤を
CHAPTER2 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
1 リハビリテーション栄養ケアマネジメント
マネジメントとは
セルフマネジメント
リハビリテーション栄養ケアマネジメントとは
2 リハビリテーション栄養スクリーニング
SGA
MNA
疾患・障害名で行うリハビリテーション栄養スクリーニング
初期評価時に行うリハビリテーション栄養スクリーニング
検査値で行うリハビリテーション栄養スクリーニング
3 リハビリテーション栄養アセスメント
身体計測
検査値
筋萎縮の原因と程度
摂食・嚥下機能評価
リハビリテーションの種類・内容・時間
エネルギー消費量
エネルギー摂取量
4 リハビリテーション栄養ケアプラン
リハビリテーション栄養のゴール設定
投与ルート
推定エネルギー必要量
リハビリテーションの種類・内容・時間
コラム
リハビリテーション栄養とEBCP
リハビリテーション栄養と臨床研究
あなたの栄養足りていますか
Refeeding症候群
CHAPTER3 NST
1 NST
NSTとは
NSTとリハビリテーションの関連
チーム形態の種類
PT・OT・STの役割
2 地域一体型NST
地域一体型NSTとは
地域連携パス
コラム
NST専門療法士
スポーツ栄養士
CHAPTER4 主な疾患のリハビリテーション栄養
1─廃用症候群
2─脳卒中
3─パーキンソン病
4─がん
5─誤嚥性肺炎
6─褥瘡
7─大腿骨頸部骨折
8─関節リウマチ
9─慢性閉塞性肺疾患
10─慢性心不全
コラム
筋萎縮による摂食・嚥下障害
脳性麻痺とリハビリテーション栄養
在宅リハビリテーション栄養
半固形化栄養とリハビリテーション
ERAS
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
神経性食思不振症とリハビリテーション栄養
自己学習したいPT・OT・STのための推奨サイトと推奨図書
索引








