やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
『集中治療における早期リハビリテーション〜根拠に基づくエキスパートコンセンサス〜』作成にあたって
 近年,集中治療領域での早期リハビリテーションが注目されている.特に早期リハビリテーションの中心的プログラムのひとつである早期離床や早期からの運動(early mobility and exercise,early mobilization)は,集中治療領域で定着しつつある.
 2009 年,Lancetに掲載された重症患者に対する鎮静の中断と併せた早期からの理学療法や作業療法が,身体機能のアウトカムやintensive care unitacquireddelirium(ICU-AD)などの神経心理機能のアウトカムに及ぼす影響を検証したSchweickertら1)の報告は,American College of Critical CareMedicine(ACCM)のせん妄予防のガイドライン2)にも,early mobilizationはdelirium preventionに対して1Bのエビデンスレベルで採用されている.現在では新しい人工呼吸患者管理指針としてABCDEバンドル(awakeningand breathing coordination of daily sedation and ventilatior removaltrials,choice of sedative or analgesic exposure,delirium monitoring andmanagement,early mobility and exercise)へと進化し3),その導入や検証が進んでいる.
 一方で,わが国の集中治療領域で行われている早期リハビテーションは,経験的に行われていることが多く,その内容や体制は施設により大きな違いがある.今後,より高度急性期の病床機能の明確化が進むなかで,集中治療領域での早期リハビテーションの確立や標準化は喫緊の課題である.
 平成26 年度より,日本集中治療医学会では,集中治療領域における早期リハビリテーションの内容や体制の標準化を進めることを目的に,「早期リハビリテーション検討委員会」が組織され,早期リハビリテーションの手順を示す手引きとして『早期リハビリテーション〜根拠に基づいたエキスパートコンセンサス〜』を作成することになった.
 このエキスパートコンセンサスはあくまでも最も標準的な治療指針であり,実際の診療行為を強制するものではない.また,リハビリテーションの内容は最終的には施設の状況や個々の患者の状況に応じて決定されていくべきであるが,経験の浅い医療スタッフが多い施設や,集中治療室で早期リハビリテーションを積極的に実施していない施設において,大いに参考になるマニュアルとなることが期待される.

 ※本書はエキスパートコンセンサスのエッセンスを凝縮させたものであり,クリニカルクエスチョンを各ページに見やすく配置したダイジェスト版である.ダイジェスト版の発刊にあたり,本文の読みやすさを考慮して文献を巻末にまとめて掲載している.
I.はじめに
II.方法
III.早期リハビリテーションの定義について
IV.早期リハビリテーションの効果について
V.早期リハビリテーションの禁忌,開始基準・中止基準について
VI.早期リハビリテーションの体制について
VII.おわりに
VIII.略語
IX.利益相反の開示
X.著作権
 文献