はじめに
作業療法士を目指す学生も既に資格を取得している作業療法士もともに,根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine;EBM)の実践が重要だと認識しています.そして臨床では根拠に基づく実践(Evidence-based Practice;EBP)として展開されています.
学生も作業療法士も時間を経ながら根拠に裏打ちされた実践を修得していきます.そして日々の臨床で活用できるのは,実に多くの先輩作業療法士らによってなされてきた臨床研究と応用研究や実践研究の賜たま物ものなのです.研究の蓄積にはさまざまな種類の研究が用いられていますが,それらを十分に理解している者は少ないのが現状ではないでしょうか.例えば,作業療法対象疾患として多い脳血管障害を発症しやすい人の特徴は,症例対照研究やコホート研究によって明らかにされており,発症予防に向けた一次予防に活かされています.
本書は,作業療法士を目指す学生の作業療法研究法のための教科書にとどまらず,作業療法士が臨床で研究に取り組もうとする場合や研究の質を高めるための入門書としても活用していただけるように,以下の5つの特徴をもたせています.
第1に,研究に取り組むうえで欠くことがあってはならない研究倫理の順守について,関係省庁の研究倫理指針なども明示して説明しています.第2に,研究の種類を具体的に解説しており,さらに,近年注目されている混合型の研究を含めて紹介しています.第3に,研究の過程として研究計画から研究実施とそれを受けた報告の仕方について具体的に掲載しています.第4に,研究で用いられる統計解析について,基本解析に加えて今後作業療法士の報告において増えていくであろう解析をあげるとともに,解析を用いた論文の読み進め方にも言及しています.第5に,研究計画や論文精読と論文執筆の質を高めるうえで知っておくべき各種声明やエビデンスについて紹介しています.
近年は作業療法士国家試験においても研究法に関する問題が出題されるようになってきましたが,上記の特徴を備えた本書は,そのような国家試験問題も十分にカバーしています.
なお,本書の第3部「統計解析」は,藤本修平氏に執筆を依頼し,その監修は生物統計家の廣江貴則氏に担当していただきました.統計解析の方法にはそれぞれ数学的に裏付けされた高度な理論があります.本書では極力数式を用いずに説明するよう努めていますが,数理的な背景をより詳細に学びたい場合には,本書にあげた文献や数理統計学の教科書を参照にしていただきたいと考えます.
臨床実践を旨とする作業療法士が,その成果を,職務上チームを構成する同僚や多職種の職員にとどまらず,作業療法対象者と社会一般に向けて発信していくためには,自己研鑽のひとつとして研究について追究し,そして取り組むことが望まれます.その一助として本書が,多くの学生と作業療法士に活用されることを願っています.
最後に,本書の出版にあたりご尽力いただいた戸田健太郎さんと医歯薬出版編集部の皆さんに感謝申し上げます.
2017年10月
編者を代表して
竹田徳則
作業療法士を目指す学生も既に資格を取得している作業療法士もともに,根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine;EBM)の実践が重要だと認識しています.そして臨床では根拠に基づく実践(Evidence-based Practice;EBP)として展開されています.
学生も作業療法士も時間を経ながら根拠に裏打ちされた実践を修得していきます.そして日々の臨床で活用できるのは,実に多くの先輩作業療法士らによってなされてきた臨床研究と応用研究や実践研究の賜たま物ものなのです.研究の蓄積にはさまざまな種類の研究が用いられていますが,それらを十分に理解している者は少ないのが現状ではないでしょうか.例えば,作業療法対象疾患として多い脳血管障害を発症しやすい人の特徴は,症例対照研究やコホート研究によって明らかにされており,発症予防に向けた一次予防に活かされています.
本書は,作業療法士を目指す学生の作業療法研究法のための教科書にとどまらず,作業療法士が臨床で研究に取り組もうとする場合や研究の質を高めるための入門書としても活用していただけるように,以下の5つの特徴をもたせています.
第1に,研究に取り組むうえで欠くことがあってはならない研究倫理の順守について,関係省庁の研究倫理指針なども明示して説明しています.第2に,研究の種類を具体的に解説しており,さらに,近年注目されている混合型の研究を含めて紹介しています.第3に,研究の過程として研究計画から研究実施とそれを受けた報告の仕方について具体的に掲載しています.第4に,研究で用いられる統計解析について,基本解析に加えて今後作業療法士の報告において増えていくであろう解析をあげるとともに,解析を用いた論文の読み進め方にも言及しています.第5に,研究計画や論文精読と論文執筆の質を高めるうえで知っておくべき各種声明やエビデンスについて紹介しています.
近年は作業療法士国家試験においても研究法に関する問題が出題されるようになってきましたが,上記の特徴を備えた本書は,そのような国家試験問題も十分にカバーしています.
なお,本書の第3部「統計解析」は,藤本修平氏に執筆を依頼し,その監修は生物統計家の廣江貴則氏に担当していただきました.統計解析の方法にはそれぞれ数学的に裏付けされた高度な理論があります.本書では極力数式を用いずに説明するよう努めていますが,数理的な背景をより詳細に学びたい場合には,本書にあげた文献や数理統計学の教科書を参照にしていただきたいと考えます.
臨床実践を旨とする作業療法士が,その成果を,職務上チームを構成する同僚や多職種の職員にとどまらず,作業療法対象者と社会一般に向けて発信していくためには,自己研鑽のひとつとして研究について追究し,そして取り組むことが望まれます.その一助として本書が,多くの学生と作業療法士に活用されることを願っています.
最後に,本書の出版にあたりご尽力いただいた戸田健太郎さんと医歯薬出版編集部の皆さんに感謝申し上げます.
2017年10月
編者を代表して
竹田徳則
はじめに
序章 用語の紹介
第1部 研究を始めるにあたって
I 研究とは(竹田徳則)
1 研究とは
2 研究の展開
3 研究の展開例
4 研究に取り組むには
II 臨床倫理と研究倫理(竹田徳則)
1 臨床倫理とは
2 研究倫理とは
3 研究倫理の背景
4(研究)倫理審査委員会
5 人を対象とした場合の研究倫理
6 インフォームド・コンセント
7 データ保存・管理
8 研究活動における不正行為
9 研究倫理教育
10 利益相反
III 臨床疑問と研究の種類(竹田徳則)
1 研究疑問に応じた研究の種類
2 研究種類の方法に応じた研究倫理
IV 研究対象者の選定(大浦智子,木村大介)
1 母集団と研究対象集団
2 包含基準と除外基準
3 サンプリングの種類
4 サンプルサイズ
5 研究対象者のリクルート
6 研究対象者の選定およびデータ収集時に生じる主なバイアス
V アウトカム(大浦智子,木村大介)
1 アウトカム指標の種類と選択
VI 研究計画の立案(竹田徳則)
1 研究計画書
2 研究計画書の構成
3 良い研究計画書とは
第2部 研究の種類とデザイン
I 量的研究(大浦智子)
A観察研究
1 生態学的研究
2 横断研究
3 症例対照研究(ケースコントロール研究)
4 コホート研究
B 介入研究
1 群内前後比較試験
2 群間比較試験
3 ランダム化比較試験
4 クロスオーバー試験
5 クラスターランダム化比較試験
II 調査票の設計(竹田徳則)
1 調査票の表紙(調査協力説明)
2 調査票の設計
3 予備調査(プリテスト)
4 調査票の調整
5 調査のおもな実施方法
6 調査回収率
7 調査回収率を高める工夫
III 質的研究(大浦智子)
1 質的研究の目的と方法
2 対象の選択方法とサンプルサイズ
3 データの種類
4 分析の方法
5 質的研究の妥当性
IV 混合法(mixed methods approach)(大浦智子)
1 混合型の研究とは何か
2 混合型の研究の種類と適応
3 混合型の研究を用いる研究の例
V 事例を通した研究(木村大介)
A ケースレポートとケーススタディ
1 ケースレポート
2 ケーススタディ
3 研究目的
4 記録のとり方
5 作成手順
6 構成
B ケースシリーズデザイン
C シングルシステムデザイン
1 シングルシステムデザインの特徴
2 実施手順
3 実験デザインの種類
4 データ解析
VI 尺度開発(大浦智子)
1 尺度作成の手続き
2 信頼性
3 妥当性
VII 文献研究(大浦智子)
A システマティック・レビュー
B メタ・アナリシス
VIII データベース研究(大浦智子)
1 データベースの構築と研究への活用
2 データベースを活用した研究の利点と留意点
第3部 統計解析
I 統計的仮説検定の概要(藤本修平)
1 統計的仮説検定と帰無仮説・対立仮説
2 有意水準と帰無仮説の棄却
3 p値
4 第1種の過誤と第2種の過誤,検出力
5 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定
6 点推定と区間推定
7 尺度
II 2群間の比較(藤本修平)
1 2標本t検定
2 対応のあるt検定
3 χ2検定とFisherの直接確率検定
4 差の検定の読み方
III 分散分析(藤本修平)
1 分散分析(ANOVA;analysis of variance)とは
2 一元配置分散分析(one-way ANOVA)
3 二元配置分散分析(two-way factorial ANOVA)
4 反復測定分散分析(repeated measure ANOVA)
5 多重比較検定
IV 相関分析(藤本修平)
1 相関係数とは
2 さまざまな相関関係
3 共分散(Covariance;Cov)
4 相関係数
5 疑似相関
6 相関係数の読み方・示し方
V 重回帰分析(藤本修平)
1 回帰分析とは
2 重回帰分析とは
3 変数選択法
4 回帰式の適合度
5 多重共線性
6 論文の読み方と示し方
VI 多重ロジスティック回帰分析(藤本修平)
1 多重ロジスティック回帰分析とは
2 オッズ比とは
3 ROC曲線とは
4 変数選択法
5 回帰式の適合度
6 多重共線性
7 論文の読み方と示し方
VII 因子分析(藤本修平)
1 因子分析
2 確証的因子分析
3 因子分析の適合度指標
4 結果の読み方と示し方
VIII 共分散構造分析(構造方程式モデリング)(藤本修平)
1 共分散構造分析
2 モデルの適合性
3 直接効果と間接効果
第4部 研究の発表
I 学会発表(竹田徳則)
1 発表内容と題名
2 発表する学会の決定
3 抄録作成
4 登録
5 査読結果の通知
6 発表資料作成
7 予演会・発表の仕方
II 論文執筆(竹田徳則)
1 論文の基本構成
2 文章の留意点
III 研究の質の向上に向けて(竹田徳則)
第5部 EBMと診療ガイドライン
I 根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine;EBM)(大浦智子)
II エビデンスの質と階層(大浦智子)
1 疫学研究と臨床研究
2 エビデンスに対する誤解
3 EBMと研究デザイン
III 診療ガイドラインの作成と活用(大浦智子)
1 診療ガイドライン
2 診療ガイドラインの作成
3 診療ガイドラインの活用
巻末課題
索引
序章 用語の紹介
第1部 研究を始めるにあたって
I 研究とは(竹田徳則)
1 研究とは
2 研究の展開
3 研究の展開例
4 研究に取り組むには
II 臨床倫理と研究倫理(竹田徳則)
1 臨床倫理とは
2 研究倫理とは
3 研究倫理の背景
4(研究)倫理審査委員会
5 人を対象とした場合の研究倫理
6 インフォームド・コンセント
7 データ保存・管理
8 研究活動における不正行為
9 研究倫理教育
10 利益相反
III 臨床疑問と研究の種類(竹田徳則)
1 研究疑問に応じた研究の種類
2 研究種類の方法に応じた研究倫理
IV 研究対象者の選定(大浦智子,木村大介)
1 母集団と研究対象集団
2 包含基準と除外基準
3 サンプリングの種類
4 サンプルサイズ
5 研究対象者のリクルート
6 研究対象者の選定およびデータ収集時に生じる主なバイアス
V アウトカム(大浦智子,木村大介)
1 アウトカム指標の種類と選択
VI 研究計画の立案(竹田徳則)
1 研究計画書
2 研究計画書の構成
3 良い研究計画書とは
第2部 研究の種類とデザイン
I 量的研究(大浦智子)
A観察研究
1 生態学的研究
2 横断研究
3 症例対照研究(ケースコントロール研究)
4 コホート研究
B 介入研究
1 群内前後比較試験
2 群間比較試験
3 ランダム化比較試験
4 クロスオーバー試験
5 クラスターランダム化比較試験
II 調査票の設計(竹田徳則)
1 調査票の表紙(調査協力説明)
2 調査票の設計
3 予備調査(プリテスト)
4 調査票の調整
5 調査のおもな実施方法
6 調査回収率
7 調査回収率を高める工夫
III 質的研究(大浦智子)
1 質的研究の目的と方法
2 対象の選択方法とサンプルサイズ
3 データの種類
4 分析の方法
5 質的研究の妥当性
IV 混合法(mixed methods approach)(大浦智子)
1 混合型の研究とは何か
2 混合型の研究の種類と適応
3 混合型の研究を用いる研究の例
V 事例を通した研究(木村大介)
A ケースレポートとケーススタディ
1 ケースレポート
2 ケーススタディ
3 研究目的
4 記録のとり方
5 作成手順
6 構成
B ケースシリーズデザイン
C シングルシステムデザイン
1 シングルシステムデザインの特徴
2 実施手順
3 実験デザインの種類
4 データ解析
VI 尺度開発(大浦智子)
1 尺度作成の手続き
2 信頼性
3 妥当性
VII 文献研究(大浦智子)
A システマティック・レビュー
B メタ・アナリシス
VIII データベース研究(大浦智子)
1 データベースの構築と研究への活用
2 データベースを活用した研究の利点と留意点
第3部 統計解析
I 統計的仮説検定の概要(藤本修平)
1 統計的仮説検定と帰無仮説・対立仮説
2 有意水準と帰無仮説の棄却
3 p値
4 第1種の過誤と第2種の過誤,検出力
5 パラメトリック検定とノンパラメトリック検定
6 点推定と区間推定
7 尺度
II 2群間の比較(藤本修平)
1 2標本t検定
2 対応のあるt検定
3 χ2検定とFisherの直接確率検定
4 差の検定の読み方
III 分散分析(藤本修平)
1 分散分析(ANOVA;analysis of variance)とは
2 一元配置分散分析(one-way ANOVA)
3 二元配置分散分析(two-way factorial ANOVA)
4 反復測定分散分析(repeated measure ANOVA)
5 多重比較検定
IV 相関分析(藤本修平)
1 相関係数とは
2 さまざまな相関関係
3 共分散(Covariance;Cov)
4 相関係数
5 疑似相関
6 相関係数の読み方・示し方
V 重回帰分析(藤本修平)
1 回帰分析とは
2 重回帰分析とは
3 変数選択法
4 回帰式の適合度
5 多重共線性
6 論文の読み方と示し方
VI 多重ロジスティック回帰分析(藤本修平)
1 多重ロジスティック回帰分析とは
2 オッズ比とは
3 ROC曲線とは
4 変数選択法
5 回帰式の適合度
6 多重共線性
7 論文の読み方と示し方
VII 因子分析(藤本修平)
1 因子分析
2 確証的因子分析
3 因子分析の適合度指標
4 結果の読み方と示し方
VIII 共分散構造分析(構造方程式モデリング)(藤本修平)
1 共分散構造分析
2 モデルの適合性
3 直接効果と間接効果
第4部 研究の発表
I 学会発表(竹田徳則)
1 発表内容と題名
2 発表する学会の決定
3 抄録作成
4 登録
5 査読結果の通知
6 発表資料作成
7 予演会・発表の仕方
II 論文執筆(竹田徳則)
1 論文の基本構成
2 文章の留意点
III 研究の質の向上に向けて(竹田徳則)
第5部 EBMと診療ガイドライン
I 根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine;EBM)(大浦智子)
II エビデンスの質と階層(大浦智子)
1 疫学研究と臨床研究
2 エビデンスに対する誤解
3 EBMと研究デザイン
III 診療ガイドラインの作成と活用(大浦智子)
1 診療ガイドライン
2 診療ガイドラインの作成
3 診療ガイドラインの活用
巻末課題
索引

















