やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 我が国の総人口は,平成29(2017)年10月1日現在,1億2,670万6千人である.そのうち,65歳以上の高齢者人口は3,515万2千人となり,昭和25(1950)年には総人口の5%に満たなかった高齢化率(総人口に占める割合)は,いまや27.7%に達した.
 今後も高齢化率は上昇を続ければ,2035年には33.4%となり,3人に1人が高齢者となる.2042年以降,高齢者人口は減少に転じるが,高齢化率は上昇を続け,2060年には39.9%に達し,国民の約2.5人に1人が65歳以上となる社会が到来すると推計されている.
 いっぽう介護保険制度のサービスを受給している65歳以上の被保険者は,平成27(2015)年1月審査分で約488万人である.その利用実態をみてみると,要介護1〜3の人は居宅サービスの利用が多い一方で,重度(要介護5)の人は施設サービス利用が約半数を占めている.
 また,介護が必要になった主な原因についてみると「脳血管疾患」が17.2%と最も多く,次いで「認知症」16.4%,「高齢による衰弱(フレイル)」13.9%,「関節疾患」11.0%となっている.
 「日常生活を送る上で介護が必要になった場合に,どこで介護を受けたいか」という統計では,60歳以上の男女とも「自宅で介護してほしい」が最も多く,男性は42.2%,女性は30.2%と,男性のほうが自宅での介護を希望している.そして,その要介護者に対する介護者は大半が家族(とくにパートナー)による老老介護が相当数を占めている.
 こうした時代背景のなかでリハビリテーション医療・福祉の専門家であるPTへの期待が大きいことはいうまでもない.もちろん,両資格者のかかわりは高齢者だけでなく,精神障害者や発達障害児などすべての障害児者へのかかわりもある.しかしながら現代日本の社会構造上,高齢者問題は避けては通れない重要課題なのである.
 人と人とが助け合う社会での最前線で働くことを決意し,資格取得を目指したからには,いろいろなかたちでハンディを抱える人びとのためにも,人間の心身に関するさまざまな知識を身につけ,国家試験に合格し,大いに活躍してもらいたいと願う.
 それでは,2018年2月25日(日)に行われた,第53回PT国家試験の概要を振り返りながら「第 54回国家試験(次年度)に向けてどのように学習をすすめていくのがよいか」考えてみよう.

減少する受験者数,低下する合格率
 PTの養成校数(表1参照)に対し,入学する学生数は減少している.その結果,図1,2に示すように,第45回以前まではコンスタントにほぼ90%以上の合格率を維持してきたが,ここ数年の合格率は,70〜80%台を上下している.その理由のひとつには,新卒者の合格率は80%台を維持しているにもかかわらず,一度不合格になった受験者(既卒生)がなかなか合格基準点に至らないことにある(表2).
 大学や専門学校を卒業したにもかかわらず,国家試験に合格ができず,それでも来年こそは合格したいという,いわゆる浪人生の方々にはぜひ本書を繰り返し学習し,合格基準点を目指してもらいたい.

合格基準点とはなにか
 試験は午前・午後各20問,計40問の実地問題(配点は3点,120点満点)と,午前・午後各80問,計160問の一般問題(配点1点160点満点)で構成されており,その総得点は280点が満点である.そのうち,168点以上で,しかも実地問題の得点が43点以上である者だけが合格となる.つまり168点とれても,実地問題が42点であれば不合格となる.ちなみに,厚生労働省発表による第53回の合格基準は,採点除外等の問題があったため(表3),表4(厚生労働省発表)のとおりであった.
 はじめに
 第53回 PT国試問題の傾向と分析
 第53回 PT/OT国試問題 理学療法分野(障害別PT治療学)出題傾向と対策の要点
 第53回 PT/OT国試問題 理学療法専門分野(障害別PT治療学)
  問題分類表
  問題・解答・解説
 第52回 PT/OT国試問題 理学療法専門分野(障害別PT治療学)
  問題分類表
  問題・解答・解説
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 骨関節系障害領域
 1)関節リウマチ
  (1)評価
   Lansbury指数とSteinbrockerの分類
  (2)拘縮,変形
  (3)生活指導
  (4)薬物療法,理学療法
 2)肩関節疾患
  (1)肩関節周囲炎,肩腱板断裂
 3)膝関節・股関節疾患
  (1)変形性膝関節症
   運動療法,人工膝関節置換術,術後理学療法
  (2)膝関節損傷
   a.前・後十字靱帯損傷
   b.種々の膝関節障害
  (3)股関節疾患
   大腿骨頭すべり症,変形性股関節症
 4)骨折
  (1)大腿骨頸部骨折
   人工骨頭置換術,骨接合術,術後理学療法
  (2)大腿骨骨幹部骨折
  (3)下腿骨折
   変形,拘縮,装具療法,物理療法
  (4)上肢の骨折
   上腕骨外顆骨折,上腕骨顆上骨折,橈骨遠位端骨折
  (5)合併症
   偽関節,神経麻痺
 5)スポーツ傷害(外傷)
  (1)特徴,症状,理学療法,物理療法
 6)脊椎疾患
  (1)腰痛症,椎間板ヘルニア,脊椎椎体圧迫骨折
  (2)側弯症
  (3)その他の脊椎疾患
   黄色靱帯骨化症
 7)小児整形外科疾患
  (1)発育性股関節形成不全,二分脊椎,Perthes病
 8)種々の整形外科疾患
  (1)症状,徴候
  (2)理学療法
   参考図書
第2章 中枢神経系障害領域
 1)脳血管障害
   ◆かんたんチェックポイント◆
   Brunnstrom法ステージ
   CT所見
   MRI所見
   高次脳機能障害
  (1)脳卒中片麻痺の評価
  (2)基本介入手段
   a.運動療法
   b.ADL指導と補装具療法
  (3)症例問題
  (4)合併症
   a.摂食嚥下障害と誤嚥
   b.肩手症候群,肩の障害
   c.高次脳機能障害(失語,注意障害,失行,失認)
   d.高次脳機能障害(半側空間無視)
   e.高次脳機能障害(責任病巣別)
   f.その他の合併症
  (5)外傷性脳損傷,びまん性軸索損傷,髄膜脳炎
 2)Parkinson病
  (1)評価,症状
  (2)理学療法,歩行訓練
  (3)Hoehn&Yahrの重症度分類,ステージ別の運動療法
  (4)退院前指導,退院後外来指導
 3)脊髄小脳変性症(運動失調症)
 4)多発性硬化症
 5)筋萎縮性側索硬化症
 6)脊髄損傷
   ◆かんたんチェックポイント◆
   体幹筋・上肢筋・下肢筋の髄節支配
   ASIAの機能障害評価
  (1)第5頸髄損傷
   可能な動作,理学療法
  (2)第6頸髄損傷
   残存レベル,可能な動作,理学療法,ADL動作
  (3)第7頸髄損傷
   可能な動作,理学療法,ADL訓練,住宅改修
  (4)頸髄損傷
   機能残存レベルと可能な動作,拘縮
  (5)胸髄損傷
   残存能力と家屋改造
  (6)腰髄損傷
   理学療法,装具
  (7)脊髄損傷の評価
   Zancolli分類,ASIA(機能障害評価),Frankel分類
  (8)脊髄損傷合併症
   a.自律神経過反射
   b.異所性骨化
   c.褥瘡
   d.排尿障害
   e.その他の合併症
   f.合併症に対する理学療法
  (9)車椅子のタイプと工夫
  (10)ADL動作
   脊髄損傷レベル(頸髄損傷〜仙髄損傷)と可能な動作の組合せ
  (11)脊髄部分損傷
   文献・参考図書
第3章 神経筋系障害領域
 1)Guillain-Barre症候群
 2)Charcot-Marie-Tooth病
 3)末梢神経障害
  (1)種々の末梢神経障害
   症状,評価,理学療法
  (2)正中神経障害
 4)Duchenne型筋ジストロフィー
  (1)ステージ分類
  (2)特徴,症状,歩行,短縮筋・拘縮筋
  (3)機能障害度分類ステージに対応する理学療法
 5)多発性筋炎
 6)その他の神経筋疾患
   参考図書
第4章 内部障害領域
 1)呼吸障害
  (1)呼吸機能検査
   X線所見,肺気量分画,肺音聴診,フローボリューム曲線,呼吸機能評価
  (2)肺理学療法(呼吸リハビリテーション)
  (3)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
   症状,理学療法
  (4)体位排痰法(体位ドレナージ)
  (5)種々の呼吸障害
   呼吸理学療法,生活指導
  (6)在宅酸素療法患者
   生活指導
  (7)開胸・開腹の術前・術後リハビリテーション
 2)循環障害
   ◆かんたんチェックポイント◆
   異常心電図
   (1)異常心電図
   (2)運動負荷強度(METs)
   (3)虚血性心疾患の運動処方
   (4)心筋梗塞
    症状,危険因子,リハビリテーション
   (5)心不全
 3)代謝障害
  (1)糖尿病
   症状,合併症,運動療法
 4)高齢障害
 5)その他の内部障害
   参考図書
第5章 運動発達障害領域
 1)正常発達
   ◆かんたんチェックポイント◆
   遠城寺式乳幼児分析的発達検査表
   デンバー式発達スクリーニング検査(DDST)
  (1)正常運動発達
   a.検査
   b.正常運動発達月齢
   ◆かんたんチェックポイント◆
   小児の反射・反応(1)
   小児の反射・反応(2)
   小児の反射・反応(3)
   小児の反射・反応(4)
   小児の反射・反応(5)
  (2)乳幼児の反射・反応
   原始反射
 2)脳性麻痺
  (1)発達段階の異常
   評価(PEDI,GMFCS),発達障害
  (2)痙直型両麻痺
   理学療法
  (3)四肢麻痺,片麻痺
  (4)脳性麻痺に関する総合問題
 3)Down症候群

 文献・参考図書
 自己評価テスト
 チェック項目リスト(索引)