やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 我が国の高齢化の状況について少し考えてみたい.
 我が国の総人口は平成28(2016)年10 月1 日現在,1 億2,693 万人,65 歳以上の高齢者人口は,3,459 万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)は過去最高の27.3%となった.
 65 歳以上の高齢者人口を男女別にみると,男性は1,499 万人,女性は1,959 万人で,性比(女性人口100 人に対する男性人口)は76.5 であり,男性対女性の比は約3 対4 となっている.
 そのうち,「65〜 74 歳人口」は1,767 万人(男性842 万人,女性925 万人,性比91.0)で総人口に占める割合は13.9%,「75 歳以上人口」は1,690 万人(男性657 万人,女性1,033 万人,性比63.6)で総人口に占める割合は13.3%であり,今後もさらに増加することは確実である.
 総人口が減少するなかで高齢者が増加することにより,高齢化率は上昇を続け,2035 年に33.4%で3 人に1 人となる.2042 年以降は高齢者人口が減少に転じるものの,65 歳到達者数が出生数を上回ることから高齢化率だけは上昇し続け,2060 年には39.9%に達し,国民の約2.5 人に1 人が65 歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されている.
 そうした時代背景のなかでリハビリテーション医療・福祉の専門家であるPT(理学療法士)への期待が大きいことはいうまでもない.もちろん,PTがかかわる対象者は高齢者だけではないが,人と人とが助け合う社会の最前線で働くことを決意し,資格取得を目指したからには,いろいろなかたちでハンディを抱える人びとのためにも,人間の心身に関するさまざまな知識を身につけ,国家試験に合格し,大いに活躍してもらいたいと願う.
 それでは,2017 年2 月26 日(日)に行われた,第52 回PT国家試験の概要を振り返りながら「第53 回国家試験に向けてどのように学習をすすめていくのがよいか」考えてみよう.

低下傾向にある合格率
 現在,増加するPTの養成校の数に反し,その養成校へ入学する学生の数は減少している.その結果,PTは第47 回以降,受験者数は1 万1〜 2 千人で推移し,また国家試験の合格率も減少傾向にあった.それが第52 回では受験者数,合格者数ともに過去最高で,合格率も7 年ぶりに90%台となった(図3,4).
 第45 回以前は90% 以上の合格率を維持してきたが,第46〜 51 回の合格率は,70〜 80%台と低迷していた.その理由のひとつには,新卒者の合格率は90%を維持していることからも明らかであるように,一度不合格になった受験者(既卒生)がなかなか合格水準に至らないことにある(表1).大学や専門学校を卒業したにもかかわらず,国家試験に合格ができず,それでも来年こそは合格したいという,いわゆる浪人生の方々にはぜひ本書を繰り返し学習し,合格基準点を目指してもらいたい.
 その合格基準点とはなにか.
 出題の構成は午前・午後各20 問,計40 問の実地問題(配点は3 点,120 点満点)と,午前・午後各80 問,計160 問の一般問題(配点1 点160 点満点)で,その総得点は280 点が満点である.そのうち,168 点以上で,しかも実地問題の得点が43 点以上である者だけが合格となる.つまり168 点とれても,実地問題が42 点であれば不合格なのだ.ただし年度によっては「採点除外・複数正解問題」といって,何らかの理由により合格基準点が変更になることがある.ちなみに,厚生労働省発表による第52 回の採点除外等の問題は表3 のとおり採点除外はなかったので,とくに影響はなかった.
 はじめに
 第52 回 PT国試問題の傾向と分析
 第52 回 PT/OT国試問題 理学療法分野(障害別PT治療学)出題傾向と対策の要点
 第52 回 PT/OT国試問題 理学療法分野
  問題分類表
  問題・解答・解説
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 骨関節系障害領域
 1)関節リウマチ
  (1)評価
   Lansbury指数とSteinbrockerの分類
  (2)拘縮,変形
  (3)生活指導
  (4)薬物療法,理学療法
 2)肩関節疾患
  (1)肩関節周囲炎,肩腱板断裂
 3)膝関節・股関節疾患
  (1)変形性膝関節症
   運動療法,人工膝関節置換術,術後理学療法
  (2)膝関節損傷
   a.前・後十字靱帯損傷
   b.種々の膝関節障害
  (3)股関節疾患
   大腿骨頭すべり症,変形性股関節症
 4)骨折
  (1)大腿骨頸部骨折
   人工骨頭置換術,骨接合術,術後理学療法
  (2)大腿骨骨幹部骨折
  (3)下腿骨折
   変形,拘縮,装具療法,物理療法
  (4)上肢の骨折
   上腕骨外顆骨折,上腕骨顆上骨折,橈骨遠位端骨折
  (5)合併症
   偽関節,神経麻痺
 5)スポーツ傷害(外傷)
  (1)特徴,症状,理学療法,物理療法
 6)脊椎疾患
  (1)腰痛症,椎間板ヘルニア,脊椎椎体圧迫骨折
  (2)側弯症
  (3)その他の脊椎疾患
   黄色靱帯骨化症
 7)小児整形外科疾患
  (1)発育性股関節形成不全,二分脊椎,Perthes病
 8)種々の整形外科疾患
  (1)症状,徴候
  (2)理学療法
 参考図書
第2章 中枢神経系障害領域
 1)脳血管障害
   かんたんチェックポイント
   Brunnstrom法ステージ
   CT所見
   MRI所見
   高次脳機能障害
  (1)脳卒中片麻痺の評価
  (2)基本介入手段
   a.運動療法
   b.ADL指導と補装具療法
  (3)症例問題
  (4)合併症
   a.摂食嚥下障害と誤嚥
   b.肩手症候群,肩の障害
   c.高次脳機能障害(失語,注意障害,失行,失認)
   d.高次脳機能障害(半側空間無視)
   e.高次脳機能障害(責任病巣別)
   f.その他の合併症
  (5)外傷性脳損傷,びまん性軸索損傷,髄膜脳炎
 2)Parkinson病
  (1)評価,症状
  (2)理学療法,歩行訓練
  (3)Hoehn & Yahrの重症度分類,ステージ別の運動療法
  (4)退院前指導,退院後外来指導
 3)脊髄小脳変性症(運動失調症)
 4)多発性硬化症
 5)筋萎縮性側索硬化症
 6)脊髄損傷
   かんたんチェックポイント
   体幹筋・上肢筋・下肢筋の髄節支配
   ASIAの機能障害評価
  (1)第5 頸髄損傷
   可能な動作,理学療法
  (2)第6 頸髄損傷
   残存レベル,可能な動作,理学療法,ADL動作
  (3)第7 頸髄損傷
   可能な動作,理学療法,ADL訓練,住宅改修
  (4)頸髄損傷
   機能残存レベルと可能な動作,拘縮
  (5)胸髄損傷
   残存能力と家屋改造
  (6)腰髄損傷
   理学療法,装具
  (7)脊髄損傷の評価
   Zancolli分類,ASIA(機能障害評価),Frankel分類
  (8)脊髄損傷合併症
   a.自律神経過反射
   b.異所性骨化
   c.褥瘡
   d.排尿障害
   e.その他の合併症
   f.合併症に対する理学療法
  (9)車椅子のタイプと工夫
  (10)ADL動作
   脊髄損傷レベル(頸髄損傷〜仙髄損傷)と可能な動作の組合せ
  (11)脊髄部分損傷
 文献・参考図書
第3章 神経筋系障害領域
 1)Guillain-Barre症候群
 2)Charcot-Marie-Tooth病
 3)末梢神経障害
  (1)種々の末梢神経障害
   症状,評価,理学療法
  (2)正中神経障害
 4)Duchenne型筋ジストロフィー
  (1)ステージ分類
  (2)特徴,症状,歩行,短縮筋・拘縮筋
  (3)機能障害度分類ステージに対応する理学療法
 5)多発性筋炎
 6)その他の神経筋疾患
 参考図書
第4章 内部障害領域
 1)呼吸障害
  (1)呼吸機能検査
   X線所見,肺気量分画,肺音聴診,フローボリューム曲線,呼吸機能評価
  (2)肺理学療法(呼吸リハビリテーション)
  (3)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
   症状,理学療法
  (4)体位排痰法(体位ドレナージ)
  (5)種々の呼吸障害
   呼吸理学療法,生活指導
  (6)在宅酸素療法患者
   生活指導
  (7)開胸・開腹の術前・術後リハビリテーション
 2)循環障害
   かんたんチェックポイント
   異常心電図
  (1)異常心電図
  (2)運動負荷強度(METs)
  (3)虚血性心疾患の運動処方
  (4)心筋梗塞
   症状,危険因子,リハビリテーション
  (5)心不全
 3)代謝障害
  (1)糖尿病
  症状,合併症,運動療法
 4)高齢障害
 5)その他の内部障害
 参考図書
第5章 運動発達障害領域
 1)正常発達
   かんたんチェックポイント
   遠城寺式乳幼児分析的発達検査表
   デンバー式発達スクリーニング検査(DDST)
  (1)正常運動発達
   a.検査(遠城寺式乳幼児分析的発達検査表,改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査)
   b.正常運動発達月齢
   かんたんチェックポイント
   小児の反射・反応(1)
   小児の反射・反応(2)
   小児の反射・反応(3)
   小児の反射・反応(4)
   小児の反射・反応(5)
  (2)乳幼児の反射・反応
   原始反射
 2)脳性麻痺
  (1)発達段階の異常
   評価(PEDI,GMFCS),発達障害
  (2)痙直型両麻痺
   理学療法
  (3)四肢麻痺,片麻痺
  (4)脳性麻痺に関する総合問題
 3)Down症候群
 文献,参考図書

 自己評価テスト
 チェック項目リスト(索引)