やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
本書を上手に利用すれば国家試験合格は十分可能!
 平成23年度(第47回)の理学療法士・作業療法士国家試験(平成24年2月26日実施)について解説する.受験者数は,作業療法士(以下OT)5,821名,理学療法士(以下PT)11,956名で,前年度(第46回)と比較するとOTは3名減少,PTは1,483名増加した.また実際の合格者数はOT4,637名,PT9,850名であった.この合格者数について第46回と比較すると,今回はOTが499名増加し,PTが2,064名増加した.その結果,合格率はOT79.7%,PT82.4%,であり,前回と比較すると合格率はOTが8.7%上昇,PTも8.1%上昇.PT・OTともに合格率は上昇した.
 過去を振り返ってみると,第42回(平成18年度)以前の国家試験合格率はOT・PTともに常に90%台を維持していた.ところが突然,第43回(平成19年度)の国家試験でOTが73.6%,PTが80.6%にまで劇的に低下し,OT・PT共に第43回の合格率は過去20年間で最低の合格率になった.そこで厚生労働省は第43回合格発表に際し,『「受験者レベルには難しすぎる」ので問題の採否を調整した』という注釈をつけた.第43回では『X(2)タイプ(2つ選べ):五者択二』が前年度に比較して激増,質問内容も臨床経験を要する問題が多数出題.この合格率の低さを見て厚生労働省は次年度の出題内容を吟味することになった.また全国のOT養成校では「今までのような国試対策では100%合格は無理だ」と考え,それまで以上に国試対策に力を入れるようになった.受験者は「難度の高い問題でも解ける」ことを目指し,厚生労働省は「受験生レベルに適切な問題」を吟味することを目指した結果,第44回の「合格率の上昇,合格者数の増加」につながった.第44回には「不適切問題,削除問題」の指摘は1問もなかった.また第44回の『X(2)タイプ』は第43回より減少し,OTは59問/200問,PTは57問/200問,になった.また第45回に関しても第44回の傾向を踏襲しており,『X(2)タイプ』はOT50問/200問,PT56問/200問であり,また設問文が『誤っているのはどれか』型が減少して『正しいのはどれか』型が増加した.OTは約90%,PTは約82.5%がこの『正しいのはどれか』型の設問であった.この型の設問文では解答するときに答えを導きやすい.つまり第43回での国家試験の合格率の低さが,その後の国家試験の設問内容や形式を受験者にとって解きやすい方向へと変化させた.その結果,第44回および第45回の設問の難易度が第43回よりやや低下し,国家試験合格率をOTは80%台,PTは90%台へと回復させた.この傾向はその後も続くものと思われたが,第46回の国家試験の結果は衝撃的な合格率の低さであった.
 政府(厚生労働省)は自由化政策により養成校の設立を止めどなく許可してきた.平成23年4月の時点でOT養成校171校(大学63校,短期大学3校,4年制専門学校53校,3年制専門学校55校),定員数計6,984名,PT養成校248校(大学86校,短期大学5校,4年制専門学校77校,3年制専門学校79校),定員数計13,175名の入学が可能となった.ところが定員数の増加とは裏腹に少子化現象により,受験する学生数が減少して入学希望者は誰でもどこかの養成校に入学できる,または入学希望者数が少なく定員割れが起こるようになった.こうして養成校への入学は誰でも可能になったが,現実は免許取得のための国家試験のレベルを高くして,OT・PTをある一定のレベルに保っているのである.こうした情況を踏まえた上で第47回を分析してみると,第46回と比較して明らかに難易度が低下している.まず『X(2)タイプ(2つ選べ):五者二択』の問題数が激減した(OTは37問/200問,PTは36問/200問).しかも実地問題(3点問題)の『X(2)タイプ』の減少が目立つ.OTに至っては1問のみ,PTでは午前午後あわせた実地問題で6問であった.つまり実地問題で点数をとることが第46回と比較すると容易であったことがわかる.これは第46回国家試験の合格率がそれまでと比較してあまりにも低くなりすぎたことに起因していると思われる.また設問文も『誤っているのはどれか』型が減少し,『正しいのはどれか』型が増加した.OTは約89.0%,PTは約77.0%がこの『正しいのはどれか』型の設問である.また,第45回から出題形式が変化(午前100問中,問題1.50:専門問題,問題51.100:共通問題であり,午後100問も午前と同じパターン)し,今年度もその形式は踏襲された.
 4〜5年前位から「患者動作の実写真(動作分析など)」「X線画像」「MRI画像」「CT画像(頭部,腹部など)」「実測異常心電図」「フローボリューム曲線」の読み取りなど臨床で経験・体験するような項目を対象とした問題が数多く出題されるようになり,単純な机上学習だけでは正解できないようになった.また今回も第46回同様に「統計学や研究法」に関係する用語も出題された.今までの専門学校の教授内容には,このような学習はほとんど含まれていなかったが,今後は必ず教育内容に盛り込んだ学習が必要である.
 そこで本書を含む本年度の「必修ポイント」シリーズでは,第47回の国家試験の結果を踏まえて近年あまり出題されなくなった問題を削除し,直近5年間の問題を多く取り入れるように改訂した.これらを十分に活用し,受験対策をしっかりと立て,着実に一歩一歩学習し続ければ,必ず国家試験に合格することができる.なぜならば本書は過去約20年分の国試問題を細かく分析し,今後の出題傾向を探りながら学習できるように,参考書兼問題集として構成しているからだ.是非,本書を上手に活用し学習して頂きたい.

合格を確実にするための本書の特徴
 本書は,国家試験に対してしっかりと対策を立て,また基礎から臨床までを十分に学習し,確実に合格を手にしたい受験者のために作成した.
 本書の特徴を以下にあげると,
 (1)国試の過去問題(第37回から第47回までの11年分,1,100問)を分析し,「出題傾向と対策の要点」についてまとめた.
 (2)各科目をさらに小項目に細分類し,学習項目を絞り込んだ.
 (3)分野ごとに過去10年間の「出題傾向分析表」を提示し頻出問題に印を付けた.
 (4)専門分野における「実地問題=高得点(3点)」には実マークを提示した.
 (5)最重要問題番号を赤色1,重要問題番号をピンク色2で提示した.
 (6)1分野1ページ終了形式(実地問題,図示問題等は例外もある)を基本とした.
 (7)問題直下の「必修ポイント」欄には最低限暗記しなければならない内容を提示した.
 (8)同じく必修ポイントには数多くの「写真やイラスト」を掲載し,「視覚学習」「イメージ学習」方式を採用した.
 (9)図表中の「暗記すべき項目」は赤字で提示した.
 (10)問題の右側には解答欄を設け,正誤など内容についてコメントを付した.
 (11)参考資料として「かんたんチェックポイント」ページを設け,応用力の育成を目指した.
 (12)巻末に「自己評価テスト」を付け加え,実力養成を図るようにした.

読者全員の100%合格を祈念!
 国家試験に合格するためには膨大な出題範囲をできる限り深く学習しなければならない.そのため,受験生は分野別にたくさんの参考書や問題集を揃え,それをできるだけ短時間で効率よく,しかも国家試験の内容に沿った深さまで学習しなければならない.そのためには国家試験内容に的を絞った参考書および問題集が必要である.
 本書は限られた時間の中で本気で学習したいと考えている受験生のために,参考書と問題集を一冊にまとめた国家試験受験対策の最適書として作成された.受験生諸氏には,国家試験の最新情報を十分に把握し,過去問題をそのまま暗記するのではなく,設問中の1文1文に「○・×」を付けながら,「この文章は正しい」「この文章のここが誤っている」と確認しながら学習を進めていただきたい.
 来る本試験に向けて,受験生諸氏が本書をしっかりと活用して有意義に学習されることを願っている.
 書籍編集者一同,受験生諸氏全員(100%)の合格を心よりお祈り申し上げます!!
 はじめに
 第47回国試試験問題の概要
 第47回作業療法士国家試験の問題分類と配点
 第47回出題傾向と対策の要点
 合格のための学習テクニック
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 骨関節系障害領域
 1)関節リウマチ
   かんたんチェックポイント
   スタインブロッカーのステージ分類・クラス分類,ランスバリー指数
  (1)変形と装具
  (2)症例問題/実地問題
  (3)関節リウマチの評価と作業療法と生活指導
   かんたんチェックポイント
   末梢神経障害の分類
 2)変形性関節症と頸髄症
 3)上肢の骨折
 4)外傷,損傷,上肢関節障害
  (1)手指屈筋腱断裂
  (2)肩腱板損傷・肩関節周囲炎
  (3)人工肩関節置換術後の作業療法
  (4)熱傷と手指の拘縮
 5)上腕切断
  (1)上腕切断の評価・作業療法
  (2)前腕切断の評価と治療
   参考図書
第2章 中枢神経系障害領域
 1)脳血管障害
   かんたんチェックポイント
   頭部CT所見
  (1)頭部CT所見
  (2)摂食・嚥下障害
  (3)早期(急性期)作業療法(発症後2〜5日経過)プログラム
  (4)亜急性期作業療法
   発症後1〜2週経過
   発症後3週経過
  (5)回復期作業療法
   発症後1か月経過
   発症後2か月経過
   発症後3か月経過
   発症後4か月経過
  (6)慢性期作業療法
   発症後5〜11か月経過
  (7)麻痺側上肢に対する作業療法
   実地問題
   一般問題
  (8)ADL訓練
  (9)基本動作訓練
  (10)生活関連動作訓練・現職復帰指導
  (11)肩の障害(肩関節亜脱臼,肩手症候群)
 2)高次脳機能障害
   かんたんチェックポイント
   高次脳機能障害の定義・概要・症状
  (1)症状
  (2)治療法・生活指導
  (3)前頭葉障害
   前頭葉症候群
  (4)後頭葉障害
   相貌失認
  (5)右大脳半球損傷
   半側空間失認・構成失行・身体失認
   症例問題
  (6)左大脳半球損傷
   失語症の症状,指導法,対応
   失語症の症例問題
  (7)作業療法評価
   病巣部位と評価法との組合せ
   各種検査方法
  (8)外傷性脳損傷
   びまん性軸索損傷の特徴・症状
   びまん性軸索損傷の作業療法と症例問題
  (9)脳炎・髄膜脳炎
   記銘力障害
 3)パーキンソン病
   かんたんチェックポイント
   パーキンソン病のヤール(Yahr)重症度分類と注意事項
  (1)症状
  (2)作業療法
  (3)ヤールの重症度分類ステージIII〜IV
 4)脊髄小脳変性症・小脳障害
  (1)症状
  (2)機能評価・検査の目的
  (3)小脳性運動失調患者に対する作業療法
 5)脊髄損傷
   かんたんチェックポイント
   筋の髄節支配
   頸髄損傷(四肢麻痺)患者のADL
   脊髄損傷(対麻痺)患者のADL
   Zancolli(ザンコリー)の分類
   Zancolliの分類における損傷レベルと最終獲得機能
   呼吸筋の残存
   頸髄損傷(四肢麻痺)患者の移動動作の可能性
   頸髄損傷・脊髄損傷の残存高位と可能な日常生活活動
  (1)第4・5頸髄損傷(残存筋・可能な動作・家屋改造)
  (2)第6頸髄損傷
   感覚障害・合併症
   可能な動作
   除圧の方法
   症例問題
  (3)第7頸髄損傷
   可能な動作
   症例問題
  (4)第1髄損傷の症例問題
  (5)脊髄損傷の合併症
   排尿障害(神経因性膀胱),自律神経過反射,対応
  (6)部分脊髄損傷・外傷性脊髄損傷
  (7)脊髄損傷の機能残存レベル
   残存筋・可能な動作
 6)神経筋疾患総合
  (1)疾患と作業療法の組合せ
   文献・参考図書
第3章 神経筋系障害領域
 1)多発性硬化症(MS)
  (1)症状・作業療法評価・作業療法
 2)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  (1)症状,ADL指導
  (2)症例問題
 3)ギラン・バレー症候群
 4)多発性神経炎
  (1)作業療法
 5)多発性筋炎・皮膚筋炎
  (1)作業療法
 6)筋ジストロフィー
  (1)進行性筋ジストロフィーの分類と特徴
  (2)デュシェンヌ型の特徴と機能障害(可能なADL)
  (3)ステージ別(ステージ4〜7)作業療法および生活指導
 7)末梢神経障害
  (1)腕神経叢損傷
  (2)第6頸髄神経根損傷
  (3)正中神経麻痺
  (4)手根管症候群
   正中神経低位損傷
  (5)橈骨神経麻痺
  (6)尺骨神経麻痺
  (7)末梢神経麻痺
   総合問題
   文献・参考図書
第4章 運動発達障害領域
 1)脳性麻痺
  (1)姿勢反射(緊張性迷路反射)
  (2)痙直型四肢麻痺
  (3)痙直型両麻痺
  (4)痙直型片麻痺
  (5)アテトーゼ型脳性麻痺
  (6)低緊張性脳性麻痺
  (7)総合問題
 2)ダウン症
  (1)作業療法
 3)小脳低形成症候群
  (1)症例問題
 4)重症心身障害児
  (1)ADL指導・作業療法
   参考図書
第5章 内部障害領域
 1)循環障害
   かんたんチェックポイント
   異常心電図(1)
   異常心電図(2)
  (1)正常心電図
  (2)病態別心電図(異常心電図)
  (3)心筋梗塞の作業療法
  (4)狭心症の作業療法
  (5)重症心不全
  (6)エネルギー消費(運動当量:METs)
  (7)閉塞性動脈硬化症に対するアプローチ
  (8)作業療法中のリスク管理
 2)呼吸系障害
  (1)慢性閉塞性肺疾患の作業療法
  (2)呼吸器疾患の症状・生活指導・作業療法
 3)代謝系障害
  (1)糖尿病患者の作業療法
  (2)腎透析患者の作業療法
 4)老年期障害
  (1)生理的老化現象と高齢者の運動強度
  (2)障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
  (3)高齢者の感染症
  (4)高齢者の骨折・骨粗鬆症と作業療法
  (5)高齢者の摂食嚥下障害
  (6)高齢障害者の作業療法
  (7)在宅高齢者のグループワーク・デイケア
  (8)在宅高齢者に対する初回評価と車椅子処方
  (9)在宅訪問指導
 5)廃用症候群・その他の内部障害
 6)乳癌
  (1)術後
   文献・参考図書

 自己評価テスト(チェックシート,解答シート)
 X(2)対策実力テスト(チェックシート,解答シート)
 索引
 付録
  「第45〜47回OT国家試験問題」(作業療法専門分野障害別OT治療学I)
  「国家試験合格率」(第30回〜第47回)