やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
難度が高くても,本書を上手に利用すれば,合格は十分可能!
 第46回理学療法士・作業療法士国家試験の受験者は,理学療法士(以下PT)10,473名,作業療法士(以下OT)5,824名で,第45回と比較するとPTは638名増加したが,OTは645名減少した.また実際の合格者数はPT7,786名,OT4,138名であった.この合格者数について第45回と比較すると,今回の合格者数はPTで1,326名減少し,OTで1,179名減少した.その合格率は,PT74.3%,OT71.1%であり,前回と比較すると合格率はPTが18.4%,OTが11.2%も低下した.PT・OTともに始まって以来の合格率の低さであった.
 過去を振り返ってみると,平成18年度以前の国家試験合格率はPT・OTともに常に90%台を維持していた.ところが突然,第43回(平成19年度)の国家試験でPTが86.6%,OTが73.6%にまで劇的に低下し,PT・OTともに第43回の合格率は過去20年間で最低の合格率になった.第43回合格発表時に際し,厚生労働省は『「受験者レベルには難しすぎる」ので調整した』という注釈をつけた.第43回では『X(2)タイプ(2つ選べ):五者択二』が前年度に比較して激増し,質問内容も臨床経験を要する問題のほうが多数出題された.この合格率の低さをみて厚生労働省は次年度の出題内容を吟味することになった.
 全国のPT・OT養成校では「今までのような国試対策では100%は無理だ」と考え,今まで以上に国試対策を行う結果になった.受験者は「難度の高い問題でも解ける」ことを目指し,厚生労働省は「受験生レベルに適切な問題」を吟味することを目指した結果,第44回の「合格率の上昇,合格者数の増加」につながった.第44回の厚生労働省の出題問題には「不適切問題,採点除外問題」の指摘は1問もなかった.また第44回の『X(2)タイプ(2つ選べ):五者択二』は第43回より減少し,PTは57問/200問,OTは59問/200問になった.第45回に関しても第44回の傾向を踏襲しており,『X(2)タイプ(2つ選べ):五者択二』はPT56問/200問,OT50問/200問であり,また設問文が『誤っているのはどれか』型が減少して『正しいのはどれか』型が増加した.PTは約82.5%,OTは約90%がこの『正しいのはどれか』型の設問であった.この型の設問文では解答するときに答えを導きやすい.つまり第43回での国家試験の合格率の低さが,その後の国家試験の設問内容や形式を受験者にとって解きやすい方向へと変化させた.その結果,第44回および第45回の設問の難度が第43回よりやや低下し,国家試験合格率をPTは90%台,OTは80%台へと回復させた.
 この傾向はその後も続くものだろうと思っていたが,第46回の国家試験が終了し,その結果をみてみると,その衝撃的な合格率の低さに驚かされた.政府(厚生労働省)は自由化政策によりPT・OT養成校の設立を止めどなく許可してきた.平成23年2月の時点でPT養成校244校(大学82校,短期大学5校,4年制専門学校82校,3年制専門学校75校)定員数計13,274名,OT養成校171校(大学63校,短期大学3校,4年制専門学校54校,3年制専門学校51校)定員数計7,004名の入学が可能となった.ところが定員数の増加とは裏腹に年々少子化が進んでいるため受験する学生数が減少して入学希望者は誰でもどこかの養成校に入学できる,または入学希望者数が少なく定員割れが起こるようになった.政府(厚生労働省)の自由化政策により養成校への入学は誰でも可能になったが,国家資格取得のための試験のレベルを高くして,PT・OTをある一定のレベルに保つことを保証するようになったのである.
 それを踏まえたうえで第46回を分析してみると,設問形式はほとんど変化していないが,内容的に難度が高くなっている.まず『X(2)タイプ(2つ選べ):五者二択』の問題数は第45回とあまり変わらず,PTは50問/200問,OTは57問/200問であった.PTに関しては第45回より減少しているが,OTに関しては増加している.また設問文が『誤っているのはどれか』型が減少し,『正しいのはどれか』型が増加した.PTは約79%,OTは約89%がこの『正しいのはどれか』型の設問である.また,第45回から問題内容構成の出題形式が変化したが今回もその形式は踏襲された.以上3項目に関しては第45回と変わらない設問方法であったが,第46回に関して過去の国家試験に比べて大きく変化した部分をあげると,設問内容そのものの変化である.設問内容が昨年一昨年と比較して格段に難しくなっている.
 4〜5年前位から「患者動作の実写真(動作分析など)」「X線画像」「MRI画像」「CT画像(頭部,腹部など)」「実測異常心電図」「フローボリューム曲線」の読み取りなど臨床で経験・体験するような項目を対象とした問題が数多く出題されるようになり,単純な机上学習では解答できないようになった.それに加え,今回は「統計学や研究法」に関係する用語がかなり出題された.このような内容は専門学校の教授内容にはほとんど含まれておらず,受験生のみならず養成校の教員たちもかなりとまどったのではないか,と思われる.
 第46回の国家試験の結果状況を踏まえて『必修ポイントシリーズ理学療法専門分野基礎編』を改訂した.過去10年以上出題されていないような問題を削除し,近5年間の問題を多く取り入れるようにした.これら必修ポイント全7冊(専門基礎・分野2冊,PT2冊,OT3冊)を十分に活用し,受験対策をしっかりと立てて,着実に一歩一歩学習し続ければ,必ず国家試験に合格することができる.なぜならば本書は過去約20年分の国試問題を細かく分析し,今後の出題傾向を探りながら学習できるように,参考書兼問題集として構成しているからだ.是非,本書を上手に活用し学習していただきたい.

合格を確実にするための本書の特徴
 本書は,国家試験に対してしっかりと対策を立て,また基礎から臨床まで十分に学習し,確実に合格を手にしたい受験者のために作成した.本書の特徴を以下にあげると,
 (1)国試の過去問題(第37回から第46回までの10年分(1,000問))を分析し,「出題傾向と対策の要点」を円グラフや棒グラフで表示した.
 (2)各科目をさらに小項目に細分類し,学習項目を絞り込んだ.
 (3)分野ごとに過去10年間の「出題傾向分析表」を提示し頻出問題に印を付けた.
 (4)専門分野における「実地問題=高得点(3点)」には実マークを提示した.
 (5)最重要問題番号を1,重要問題番号を2で提示した.
 (6)基本的に1分野1ページ終了形式(実地問題,図示問題等はイラストが多いため2ページ形式もある)を基本とした.
 (7)問題直下の「必修ポイント」欄には「学習表」を掲載し最低限記憶・理解しなければならない内容を提示した.
 (8)同じく必修ポイントには数多くの「写真やイラスト」を掲載し,「視覚学習」「イメージ学習」方式を採用し,学習内容の定着を図るようにした.
 (9)図表中の「学習項目」は赤字で提示した.
 (10)問題の右側には「解答記入」欄を設定し,設問文章ごとに正しい(○)や誤っている(×)を記入できるようにした.
 (11)ページ最下段に「解答」欄を提示し,いつでも正解を確認できるようにした.
 (12)参考資料として「かんたんチェックポイント」ページを設け,応用力の育成を目指した.
 (13)巻末に「自己評価テスト」100問を付け加え,実力養成を図れるようにした.
 (14)「付録」として「第44回〜第46回国試問題」「国試合格率(第30回〜第46回)」を加え,さらに実力養成を図れるようにした.

読者全員(100%)合格を祈念!
 国家試験に合格するためには,膨大な出題範囲をできる限り深く学習しなければならないため,受験生は,分野別にたくさんの参考書や問題集を揃えなければならないのが現状である.それをできるだけ少ない時間で効率よく,しかも国家試験の内容に沿った深さまで学習しなければならない.そのためには国家試験内容に的を絞った参考書および問題集が必要である.
 本書は,限られた時間のなかで本気で学習したいと考えている受験者のために,参考書と問題集を一冊にまとめた国家試験受験対策の最適書として作成した.受験生諸氏には,上述欄で分析した点を十分に把握して,過去問題をそのまま暗記するのではなく,設問中の1文1文に「○あるいは×」を付けながら,「この文章は正しい」「この文章のここが誤っている」を確認しながら学習を進めていただきたい.
 来る国家試験に向けて,受験生諸氏が本書をしっかりと活用して有意義に学習されることを願っている.
 書籍編集者一同,受験生諸氏全員(100%)の合格を心よりお祈り申し上げます!!
 はじめに
 第46回PT・OT国試問題の概要
 第46回国家試験専門基礎分野の問題分類と配点
 第46回出題傾向と対策の要点
 合格のための学習テクニック
 得点力アップのために(本書のページ構成)
第1章 解剖生理学1
   かんたんチェックポイント
    全身の動脈(1),(2)
    全身の静脈(1),(2)
 1)循環器系
  (1)動脈
  (2)静脈
  (3)リンパ循環
  (4)胎児循環
  (5)心臓
  (6)循環の生理
  (7)心臓の刺激伝導系
  (8)血圧調節
  (9)肺循環
  (10)血液と体液
  (11)血液細胞〔赤血球,白血球(顆粒球,単球,リンパ球),血小板〕
 2)消化器系
  (1)消化酵素(総合問題)
  (2)唾液と口腔内消化
  (3)咀嚼
  (4)嚥下
  (5)消化管の構造と消化機能
  (6)肝臓と胆嚢
  (7)膵臓の構造と生理機能
 3)泌尿器系
  (1)腎臓の解剖
  (2)腎臓の生理機能
  (3)膀胱の構造
  (4)膀胱内圧
  (5)排尿の生理
  (6)排便の生理
 4)呼吸器系
  (1)呼吸器系の構造
  (2)健常成人の呼吸量
  (3)呼吸運動と強制呼息
  (4)呼吸中枢と呼吸生理
  (5)換気と酸塩基平衡
  (6)運動時による呼吸の変化
 5)代謝
  (1)基礎代謝
  (2)エネルギー代謝
  (3)体温
  (4)体温調節
  (5)糖代謝
  (6)骨代謝,カルシウム代謝
  (7)ビタミンとビタミン欠乏症
 6)内分泌系
  (1)分泌器官とホルモン
  (2)ホルモンの作用
 7)発生と組織
  (1)細胞の基本構造
  (2)細胞膜電位
  (3)発生
  (4)染色体
第2章 解剖生理学2
 1)中枢神経
  (1)中枢神経系の解剖と系統発生
  (2)大脳皮質の機能局在
  (3)大脳基底核
  (4)大脳辺縁系
  (5)大脳皮質の血管支配
  (6)脳波
  (7)脳膜・脳室・脳脊髄液
  (8)視床下部
  (9)中脳
  (10)延髄
  (11)小脳
  (12)生理機能中枢とその部位
  (13)脊髄の構造
   かんたんチェックポイント
    伝導路
  (14)上行伝導路
  (15)下行伝導路
  (16)上行路と下行路(総合)
  (17)反射中枢
  (18)神経伝達物質
 2)末梢神経
  (1)神経線維の構造
  (2)神経線維の種類(直径・伝導速度・伝達情報)
  (3)脳神経とその働き
  (4)(副交感神経を含んだ)脳神経
  (5)自律神経(交感神経)
  (6)自律神経(副交感神経)
  (7)表在感覚の神経支配
  (8)腕神経叢
  (9)腰神経叢と仙骨神経叢
 3)骨格筋
  (1)筋原線維の構造
  (2)骨格筋の特徴
  (3)運動単位と神経支配比
  (4)筋収縮の生理
  (5)筋紡錘
  (6)ゴルジ腱器官とIb線維
  (7)単シナプス反射と2シナプス(ダイシナプティック)反射
 4)感覚
  (1)皮膚の構造と爪
  (2)(表在・深部・特殊)感覚受容器
  (3)視覚器の構造と機能
  (4)視覚路と視覚中継核
  (5)聴覚器・聴覚平衡覚器官の構造と機能
  (6)感覚と大脳機能局在
第3章 運動機能学
 1)骨
  (1)骨の構造と解剖
  (2)頸椎の構造と運動
  (3)骨盤の構造
  (4)骨盤の前傾
  (5)手の骨
 2)関節
  (1)関節の形状分類
  (2)関節包と関節液
  (3)靭帯
  (4)顎関節
 3)上肢
  (1)肩関節
  (2)肘関節と肘部の触知
  (3)手根管
  (4)手の機能肢位と休息肢位
  (5)手の動きの特徴
 4)下肢
  (1)足部の関節(ショパール関節とリスフラン関節)
  (2)膝関節
  (3)膝関節(半月板)
  (4)股関節
  (5)大腿部の体表解剖,触知
 5)脊柱
  (1)頸椎の回旋運動
  (2)脊柱の靭帯
 6)筋
  筋の形状
 7)上肢の筋
  (1)肩甲骨に付着する筋
  (2)肩甲骨の運動
  (3)上肢骨(肩甲骨,鎖骨,靭帯,関節)の運動
  (4)肩関節の水平屈曲と内転に作用する筋
  (5)肩関節の外旋・内旋に作用する筋
  (6)上腕骨に付着する筋
  (7)前腕骨及び,前腕骨間膜に起始する筋
  (8)肘関節に作用する筋
  (9)手部の骨に付着する筋
  (10)手関節に作用する筋
  (11)手指の運動に作用する筋,手内在筋
 8)下肢の筋
  (1)骨盤に付着する筋
  (2)大腿骨に付着する筋
  (3)股関節運動の制限因子
  (4)股関節に作用する筋
  (5)膝関節屈曲位の下腿への作用筋
  (6)足のアーチに関与する筋
  (7)足部骨に付着する筋
  (8)足根管を通る筋・神経
  (9)足関節運動に作用する筋
 9)頭部の筋
  (1)咀嚼筋
  (2)表情筋
 10)頸部の筋
  頸椎に作用する筋
 11)体幹の筋
  (1)脊椎に付着する筋
  (2)体幹に作用する筋
 12)神経支配
  (1)二重神経支配の筋
  (2)上肢の筋の支配神経
  (3)上肢の神経障害と手の変形
  (4)腰神経叢と仙骨神経叢
  (5)下肢の筋の神経支配
  (6)呼吸筋
  (7)顔面筋
 13)正常歩行
  (1)歩行時のモーメント
  (2)歩行周期,歩行率
  (3)重心移動と関節角度
  (4)歩行時(遊脚相)の活動筋
  (5)小児の歩行と老人の歩行
 14)バイオメカニクス
  (1)てこ
  (2)遠心性収縮,リバースアクション
  (3)運動時の現象
  (4)仕事と力学的エネルギーの定義
 15)姿勢
  立位姿勢
 16)動作分析
  (1)立ち上がり動作と座る動作
  (2)さまざまな動作
 17)運動学習

 引用文献・参考文献
 自己評価テスト
 X(2)対策実力テスト
 索引