やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

推薦の辞

 どのような事業(プロジェクト)でも,社会的貢献が歴史的に評価されうるものであれば,投資が有意義であったと断言できるであろう.美濃部都政のもと,わが国で初めて65歳以上の人口層を対象として設立発足した養育院付属病院(現在の老人医療センター),Half-Way-House,Day Care,Day Hospital,ナーシングホーム等は,現在全国的に展開されている老健施設,リハビリテーションを中心とした総合的医療を25年以上前に先取りしていたことが明白である.同時に,東洋で初めての東京都老人総合研究所も発足し,そのなかにリハビリテーション医学部が部として存在し,運動研究室,障害研究室,言語聴覚研究室をスタートさせたことは,日本で初めてリハビリテーション専門の研究費がつけられた研究施設が開設され,研究職としてAllied Medical職種に門戸が開かれるチャンスとなった.
 たまたま,日本人で初めて米国のリハビリテーション専門医の上級試験に合格し,専門医学術アカデミーの正式なFellowに推挙されていたので,都議会の特別承認を受けて,都政はじまって以来,最年少の主幹参事:部長として養育院付属病院のリハビリテーション部と研究所のリハビリテーション医学部の責任者としての責務を負わされることになった.特に研究所はいろいろな職種で熱意があり,将来性のある方に集まっていただきたいと願い,特に工学系でリハビリテーションに関心を示された田中繁氏は第一候補者であった.ところが,在学中に学生運動に参加した人物は東京都では採用不可との冷たい反応で,ここは私なりに賭けに出る決心をした.すなわち,田中氏を研究員として採用するか,どなたか私の代わりに病院と研究所のリハビリテーションを担当される方を探すか,どちらかご判断下さいと美濃部知事に直訴をした.結局,都議会の文教厚生委員会の特別議題となり,役所らしく私がすべて責任を持ちますと一筆差し入れることで決着した.当時多忙であったため,研究所の方に親友のコペンハーゲン大学整形外科教授のBent Ebskov博士,PTの教師のためのパリ大学エミエンヌ大学院院長のEric Viel博士に顧問として来日していただき,研究所のスタッフの研究の方法論,研究の展開などについてご指導をいただけたのは幸せであった.ここで育った方々が,全国で臨床,研究,教育の分野で教授職でご活躍である.今回,この“Motor Control”の主監訳者として労をとられた田中繁教授も,見事な成果をあげられて現在に至られたのは大慶で,これ以上の喜びはない.
 今般,“Motor Control――Theory and Practical Applications”の日本語版を分担で訳されて,医歯薬出版株式会社より世に問うことになったのは素晴らしい企画である.というのは,この本はリハビリテーションに関与する多くの医療職にとり必携と断言できるほど,内容が最高で豊富な情報を提供しているからである.
 リハビリテーション医学そのもののCoreになる学問が障害学といわれているが,現実には何を勉強すればよいのか具体的ではない.通常,何かまとまった勉強をしようとする場合,神経生理,機能解剖,運動制御,脳の病理,機能回復の過程などに関連のある本を山のように積み上げて,必要に応じて必要な項目をそれぞれの教本より取り出して目を通すことになる.
 この“Motor Control”は,理論的な枠組みより取りかかり,運動制御に関して現在までに受容されている説を議論し,運動学習,機能回復から臨床応用までを導入部としていろいろなヒントを提供している.
 第II部では,姿勢とバランスを広範囲にわたって取り上げ,特に加齢と姿勢バランスを議論しているのがユニークである.付録としてあげられている姿勢制御の評価表は,その着眼点といい治療につなげる分析のデータ採取としても大変臨床面で役に立つ.
 第III部では,移動および行動の機能を正常と異常の面より取り上げて,いろいろな研究が第三者として中立の立場より論議されている.
 第IV部では,ヒトがヒトであるのは独特の上肢機能を所有しているからであるということを前提にして,上肢の徒手的な巧緻性について,くまなく論議し,前の部で説明された機能の領域の運動機能不全を扱い,最近の文献の分析も加えられている.さらに,ヒトの生涯における変化,加齢現象まで踏み込んでいるのには驚かされる.
 本書は,訳者の努力もさることながら,臨床に従事する者が実践の場に理論を持ち込み理解しやすいように書き上げた本だけに,実にしっかりした内容であり,いままで山のように本を積み上げて勉強しなければ理解できなかった運動制御の正常と異常がこの本1冊でかなりの面までカバーされているので,臨床,教育,さらには研究の分野で応用できるヒントが数限りなく含まれている.リハビリテーション医学に関するあらゆる職種,特に医師,理学療法士,作業療法士には必携の書であり,推薦に大いに値する新刊書である.監訳の労をとられた高橋明氏,田中繁氏,および分担で訳を担当された諸氏に心から敬意を表する次第である.
 1999年10月
 米国リハビリテーション専門医
 米国専門医学術アカデミーFellow
 英国ケンブリッジCMMA正会員
 青葉会,大坪会リハビリテーション顧問
 荻島秀男

訳者まえがき

 やっと先が見えてきた,というのが本音である.“臨床動的立位分析研究会”というクローズドな研究会がある.私がこの本『Motor Control』を知ったのは,この研究会の一員で訳者の一人にもなってもらった新小田幸一氏による紹介であった.この研究会で,私は立位時の動揺に対する視覚の影響を調べるために,開眼,単純な閉眼,黒く塗りつぶしたゴーグル着用(真っ暗),ヤスリでこすったゴーグル着用(明るさのみがわかる),という条件で行った自分の研究を紹介した.そのとき同時に,ゴーグルを使う前には,頭がスッポリ入るくらいの大きさをもった曇りガラス製の球形の電球カバーを購入し,それで明るさのみがわかるような条件を作ろうとしたという話をした.これを聞いた新小田氏が,それと非常に似た実験を日本製の提灯を使ってアメリカの研究者がやっている,ということを教えてくれたのである.しかも,それを紹介している原著をもっているということであった.後日,その部分のコピーをいただき,書籍の名前を教えてもらった.
 私は早速その本を購入した.ぱらぱらとページを捲る.そのときのショックを私は忘れることはできない.“訳本を出そう“と即座に決心した.しかし本書は,原著のコピーに“Only book which is a bridge over theory and clincal practice”とあるように,基礎的生理学および医学的内容から運動学,そしてPT,OTの治療・訓練手技に至るまでを網羅した内容を含んでいた.私が責任をもてるのは運動学的な内容のみであった.幸いなことに,非常勤研究員となっていた“いわてリハビリテーションセンター”のセンター長であり脳外科出身である高橋明氏に原著を見ていただいたところ,内容は大変優れていることを知らされ,また快く私と一緒に監訳者の責任を担ってくれるという回答をいただいた.高橋氏と検討の結果,訳者はリハビリテーションセンターのスタッフ,そして私が関係する施設のPT・OTに頼むこととなった.また,幸いなことに,眞野行生氏を中心とした北海道大学スタッフの協力もいただけることとなった.
 もう一つ,当初より決めていたことがある.それは,推薦の言葉をカリエのペインシリーズ翻訳でよく知られている,荻島秀男氏に書いていただきたいことだった.荻島氏は私が仕事に就いた最初の上司であり,この分野での私の立場を作っていただいた恩師である.1997年の暮れに先生のお宅を訪れた.先生とは年賀状のやりとりなどはあったものの,直接お会いするのは何年かぶりである.渋谷駅で降りて喧噪を通り抜けると,数分で信じられないほど静かな住宅地に出る.先生のお宅の前でやや緊張したのが思い出される.先生は,快く推薦の言葉の執筆を引き受けてくれた.すべての準備は整った.
 翻訳開始から1年半が経った今,なんとか著者の思想を汲み入れた翻訳ができたのではないかと考えている.少し,内容に触れたいと思う.私が“一目で惚れた”のには,次のようないくつかの理由がある.
 (1)著者が2名と少ないこと:この本は教科書として書かれた本である.論文集や辞典など以外は,1,2名の少人数で書くべきである.それにより,初めて全体が統一した流れのなかでテーマが展開される.つまり,本に思想が生まれる.日本においてPT・OT向けに作られる教科書もそうありたいと考える.
 (2)引用文献の量:本書の引用文献はのべ1,018論文である.これは2名の著者のパワフルさを如実に物語るものであり,この情報だけでも読者の役に立つであろう.
 (3)記述の客観性:基礎的生理学の研究結果についてはもちろんのこと,これまでに考案されてきた訓練手技や治療法についても特定の考えに傾倒することなく,非常に冷静に記述している.特にボバース法など,議論のある項目についてはぜひ関係者に読んでいただきたい.
 (4)教科書を意識した内容:教科書としては最終学年のため,および大学院や卒後教育のために最適であると考える.すべての章の最後には,章全体をまとめた“要旨“があり,それを一読すれば内容のおおよそがわかり,学ぶものにとっての重要な指針となっている.さらにところどころに“実習課題”および“技術ボックス”という囲み記事があり,座学としてだけでなく実習あるいは演習をも交えて講義を進められ,担当する教員にとって大いに役立つ内容である.
 (5)研究への指針:上記の豊富な引用文献とともに,その結果,何がいまだに研究されていないのかが明確に提示されている.すでに実務に就いている読者のなかには,日常の訓練などで自ら行っている手技やその結果に疑問を抱いている方も少なくないであろう.これは一種の研究疑問になりうるわけであるが,本書を読むことによりすでに解決されている問題であるのか,新たな研究テーマになりうるのかの指針が得られるであろう.
 翻訳の質については,可能なかぎり原文と訳本の単語の一対一対応を目指した.結果的に完全にこれを行うことはできなかったが,かなりの部分で一対一対応に近づけたことは,医歯薬出版編集部および関係スタッフの方々の協力の賜であり,深く感謝する.もちろん,英語と日本語の本質的な相違により一対一にできないところもあったことは言うまでもないが.
 最後に,国際医療福祉大学作業療法学科学生・家本典華,岩崎隆,北村陽子,佐藤水保子,須田江利子,廣水眞奈美,西山織江,藤原祥貴,三浦慈子,同理学療法学科学生・並木尚雄,渡辺一美の各氏に翻訳の一部を担当していただいたことを付記し,感謝する.
 訳者一同,本書が読者にとって,真に“役に立つ”一冊となることを祈っている.
 1999年10月 訳者代表 田中 繁

訳語について

 翻訳にあたっては,(1)原則として原本の単語と訳本の単語は一対一とする,(2)訳語の確立している用語についてはそれを尊重する,という2点に留意した.また,全体を通して重要な単語となっているmotorとsynergyについては,特に以下のような解釈に従い訳語を決定した.
 motorという用語は,筋を中心とした運動を実現する身体機構部分の全体を示している.したがって,厳密な訳語としては“運動機構“のような単語となる.しかし,日本語としての自然さや慣例も考慮に入れ,“運動”とした.一方で,日本語の運動に対応する英語はmovementとなる.そのために,motorとmovementの混在した部分では,2つの単語を区別するために,motorには“運動機構“を,movementには“運動”を対応させた.
 synergyは日本語で一般に“共同運動“と訳され,異常な運動を意味している.しかし,本書におけるsynergyはこれと異なる概念であり,正常および異常な運動を包括している.そのために,“協同収縮系”や“協同収縮運動“という訳語を当てはめた.しかし,すでに一般に出回っている評価表の中では,混乱を避けるために“共同運動”を使った.しかし,われわれはsynergyが異常な“共同運動”のみを示すとする考えは誤りと考えている.

まえがき

 ここ数年,臨床家の間に,臨床的実践を導く運動制御の新たな理論と,その役割に大きな関心が集まってきている.神経科学と運動制御の領域における新たな研究の爆発的な広がりにより,運動制御を再獲得しようとする患者の援助にかかわる研究・理論と臨床的実践とのギャップは拡大しつつある.理論と実践との間にあるそのようなギャップの架け橋になろうというのが,本書の目指すところである.本書では,新しい運動制御理論における科学的かつ実験的な基礎と,その科学性がいかにして臨床的実践に応用されるかに重きをおいている.多くの運動制御理論について議論を展開するが,本書の主要な討議対象は,運動制御のシステム理論と,システムモデルを基礎として運動制御問題を評価し治療する臨床的アプローチについて紹介することにある.筆者らはこのアプローチを“運動課題指向型アプローチ”と名づける.
 本書は4部に分かれている.“理論的枠組み”と名づけた第I部では,運動制御,運動学習,神経学的損傷後の機能回復に関する最近の理論を再検討している.運動制御に関する種々の理論の臨床適応についても検討する.さらに,運動制御と運動学習の生理学的な基礎についても再検討する.最後に,ここでは診療について考えられる概念的枠組みを提示する章を含めている.
 この第I部では本書の主な討議対象である運動制御に内在する問題が提起され,それらの問題は姿勢とバランスの制御(第II煤j,移動性(第III部),マニピュレーション機能(第IV部)へと続く.各部にある章は,一定の型式をとっている.最初の章では,正常な制御の処理過程にある問題を扱っている.第二の章(部によっては第三の章)では,年齢が関与する問題について解説している.第三の章では,機能の異常についての研究を紹介する.そして最後の章では,姿勢とバランス,移動性,マニピュレーションの3つの機能領域における運動の制御障害を扱い,その評価と治療に関する最近の研究の応用について議論している.
 筆者らは,この教科書が正常な運動制御,ヒトの一生にまたがる運動発達,理学療法学・作業療法学・運動学の分野におけるリハビリテーション,これらを学ぶための大学教育課程と卒後教育課程の両方で使われるとの思いをいだいている.
 本書は,臨床家が理論を実践に組み込むための枠組みを提供しようと模索した教科書である.筆者らが重要と考えさらに願っていることは,本書がバネとなり,運動の制御障害をもつ患者の評価と治療にとっていっそう効果的な新しいアプローチが創成されることである.
 本書に記された薬品の適応症,副作用,使用法などは正確なものであるが,しかしこれらは変更されることもありうる.読者には,各薬品の包装内に示された情報・データなどをよく読むことをすすめる.
推薦の辞
訳者まえがき
まえがき

第I部 理論的枠組み
 1 運動制御理論
  はじめに
   運動制御とは
   臨床家はなぜ運動制御について学ぶのか
  運動制御の理論とは何か
   理論と実践とはどういう関係にあるか
   運動制御の理論
  どの運動制御理論が最良か
  要約
 2 運動学習と機能回復
  運動学習への導入と治療
   運動学習とは何か
   遂行能力と学習を関係づける
  学習の形式
   非連合形式の学習
   連合形式の学習
  スキル学習に関連する理論
   Adamsの閉ループ理論
   Schmidtのスキーマ理論
   FittsとPosner:運動学習の諸段階
   Newellの探索学習理論
  運動学習に寄与する要素
   フィードバック
   練習条件
  機能回復
   機能回復に関係する概念
   機能回復に寄与する要素
  臨床の概要
  要約
 3 運動制御の生理学
  序論と概要
   運動制御理論と生理学
   脳機能の概要
   ニューロン:中枢神経系の基本単位
  感覚・知覚系
   体性感覚系
   視覚系
   前庭系
  活動系
   運動野
   高次連合野
   小脳
   基底核
  要約
 4 運動学習と機能回復の生理学的機構
  はじめに
   神経可塑性の定義
   学習と記憶
   学習と記憶の局在
  学習はどのようにして脳におけるニューロンの構造と機能を変化させるのか
   学習における非連合形式の生理学的機構
   神経の可塑性と連合学習
  機能の可塑性と回復
   損傷に対する細胞の反応
   可塑性の全貌
  要約
 5 診療のための概念的枠組み
  はじめに
  治療への概念的枠組み
   臨床的意志決定過程
   仮説指向型治療
   障害モデル
   運動制御理論
  神経学的リハビリテーション:反射に基づく神経促通法
   基礎となる仮説
   臨床的意義
   限界
   変化する治療
  システム理論依拠型の課題指向型アプローチ
   基礎となる仮説
  治療のための課題指向型の概念的枠組み
   評価
   評価から治療への移行
   臨床的意義――治療
  要約

第II部 姿勢とバランス
 6 姿勢とバランスの制御
  はじめに
   姿勢制御における運動課題の定義
   姿勢制御システムの定義
   機能的運動課題に依存する姿勢要求
  立位姿勢制御
   姿勢制御のための運動機構
   姿勢に関連した感覚機構
   予測姿勢制御
  座位での姿勢制御
  要約
 7 姿勢制御の発達
  はじめに
   姿勢制御と発達
   運動の一里塚と姿勢制御の出現
  姿勢制御発達の理論
   姿勢制御の反射階層理論
   発達の新しいモデル
  姿勢制御の発達:システムの視点
   頭部制御の出現
   自立座位の出現
   自立立位への移行
   立位制御の改善
   予測姿勢活動の発達
  要約
 8 加齢と姿勢制御
  はじめに
   老化のモデル
   1次的および2次的要因と老化
   老化の多様性
   不安定性の行動指標
  姿勢制御のシステム分析
   筋骨格系
   神経筋系
   感覚系
  予測姿勢能力
  認知問題と姿勢制御
  バランス再訓練
  要約
 9 姿勢制御の異常
  はじめに
   姿勢制御不全:システム的観点
  筋骨格系の障害
  神経筋系の障害
   筋力低下
   筋緊張の異常
   運動戦略での協調不全
   予測姿勢制御の消失
   診断による運動問題の要約
  感覚障害
   安定性限界の誤った表象
   感覚の適応不能
   感覚運動系の適応
  要約
 10 姿勢障害の評価と治療
  はじめに
  評価
   安全第一の考慮
   機能評価
   戦略評価
   システム評価:障害の同定
  評価の解釈
  治療
   機能障害レベルでの治療
   戦略レベルでの治療
   機能的課題レベルにおける治療
  要約

第III部 移動機能
 11 移動性の正常制御
  はじめに
  移動運動を成功させるための基本的条件
  ヒトの歩行周期
   歩行周期の各期
   時間-距離因子
   歩行の運動学的説明
   筋活動パターン
   関節運動力学
  歩行のための制御機構
   歩行のための運動パターン発生器
   下行路の作用
   感覚フィードバックと歩行の適応
   移動運動に対する神経以外の寄与
  歩行開始と速度の変更
  階段昇降
   階段を上る
   階段を下る
   感覚の手がかりの変化に対する階段昇降パターンの適応
  歩行以外の移動性
   移乗
   座位-立位運動課題
   仰臥位-立位運動課題
   ベッドからの起き上がり
   寝返り
  要約
 12 移動性の発達過程
  はじめに
  移動運動の発達
   出生前の発達
   早期の足踏み行動
   自立移動運動の成熟
   走行,スキップ,ホップ,疾走
   適応の発達
   歩行中の頭部安定
   他の移動性スキルの発達
  高齢者の移動運動
   移動性障害:加齢か疾病か
   時間-距離因子
   運動学的分析
   筋活動パターン
   運動力学的分析
   適応制御の変化
   転倒経験者と非転倒経験者の歩化
   高齢者の歩化における疾病の影響
   階段昇降
   他の移動性スキルにおける加齢による変化
  幼児と高齢者の歩行の特性比較:退化仮説の検証
  要約
 13 移動性の異常
  はじめに
  異常歩行
   筋骨格系の制限
   神経筋系の機能障害
   感覚障害
   疼痛
  歩行の各期における障害の影響
   立脚期
   遊脚期
  階段昇降
  異常歩行の疾病依拠型の解釈
   脳卒中
   パーキンソン病
   脳性麻痺
  歩行以外の移動性障害
   座位-立位
   ベッド上の移動性スキル
  要約
 14 移動性障害の評価と治療
  はじめに
  評価
   機能レベルでの評価
   移動性を評価する尺度
   戦略レベルでの評価
   機能障害レベルでの評価
  治療への移行
   目標設定
  歩行の治療
   機能障害レベルでの治療
   戦略レベルでの治療
   補助具
   機能的運動課題レベルでの治療
  階段昇降
  他の移動性スキルの再訓練
   座位-立位肢位
   ベッド上の移動性スキル
  要約

第IV部 上肢機能の制御
 15 マニピュレーションスキル
  はじめに
  目標点-眼-頭部協調による視覚捕捉
  リーチと把握
   運動の構成要素
   感覚系の役割
   リーチと把握の適応
   精密把握
  姿勢制御
  リーチ運動課題の基本特性
   Fittsの法則
   複雑なリーチ運動と両手運動課題
  リーチ運動制御に関する理論
   距離プログラムと位置プログラム
  要約
 16 マニピュレーションスキルの発達過程
  はじめに
   リーチ行動の発達における反射の役割
   リーチ行動:生来的にもっているのか,学習されるのか
  眼-手協調の初期の発達
   視覚起動型リーチと視覚誘導型リーチ
   手の定位の発現
   移動目標物の把握(目標物捕捉)のための学習
   つまみ把握の発達
   目標物探索行動の発現
  眼-手協調の発達における経験の役割
   眼-頭部-手協調の発達
   リーチ課題の反応時間
   Fittsの法則
   運動の精度
   リーチ運動の運動学
  高齢者における変化
   リーチ運動時間の加齢変化
   リーチ遂行能力の低下に対する代償と回復
  要約
 17 マニピュレーション制御の異常
  はじめに
  目標点の視覚捕捉の問題:眼-頭部協調
   視覚の欠損
  移送の問題
   運動の協調性障害
   感覚機能障害
   運動の問題
   感覚の問題
  姿勢の問題
  適応の問題
   視覚の欠損
   体性感覚の欠損
   予測の側面
  失行症
  要約
 18 マニピュレーション障害の評価と治療
  はじめに
  評価
   上肢制御の機能評価
   上肢機能制御の重要な構成要素の評価
   上肢機能に影響を与える機能障害の評価
  治療への移行
   短期目標
   長期目標
  治療
   手の機能再訓練にとって近位部の制御性は必要条件か
   機能障害レベルの治療
   上肢機能制御の重要な構成要素の再訓練
   学習された不使用
  要約

付録 姿勢制御評価票
用語解説
索引