やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2 版の序
 2008(平成20)年に『エビデンスに基づく理学療法─ 活用と臨床思考過程』を発行したところ,幸いにも多くの支持を得ることができた.初版では,疾患・病態別15,症状別7の合計22 領域を取り上げた.基本構成は,関連するシステマティックレビュー,診療ガイドライン,(連携)パスに続き,エビデンスの適用として事例紹介を通した解説を加えていただいた.また,エビデンスに基づく医療,理学療法における代表的な臨床思考過程,エビデンスの作成に関する章を設け,その活用と臨床思考過程を強調した.
 初版の発行から7 年の間に,理学療法に関連するリサーチエビデンスは着実に増え,各医学会の診療ガイドラインにおいても理学療法・リハビリテーションに関する記述が充実してきた.あわせて,日本理学療法士協会から『理学療法診療ガイドライン第1 版(2011)』が発行された.一方で,臨床実践におけるエビデンスに基づく理学療法の実行については,必ずしも定着しているとは言えない状況にある.
 そこで,このたび本書の改訂版として,『実践的なQ & Aによるエビデンスに基づく理学療法第2 版─評価と治療指標を総まとめ─』を発行することとした.初版からの大きな変更点として,(1)臨床実践に使いやすい生きたエビデンスを提示すること,(2)明快なクリニカルクエスチョンから検索と検証が可能な構成にすること,(3)各領域の目次立てと記載方法をさらに統一すること,(4)基礎となる解説は最小限にとどめること,とした.その結果,掲載した領域は初版の22 から29 領域へと増やす一方で,総頁数は初版の611 頁から480 頁と130 頁ほど減らしてコンパクトにできた.
 Questionは,これが解決できれば臨床に有益であると思われる内容を編者が読者の代表としてリストアップし,各執筆者が専門的な立場からさらに項目を加えたものである.全体を合わせると193のQuestionに対するAnswerが掲載されている.Answerは,診療ガイドラインと最新のリサーチエビデンスを基本としながらも,臨床実践的・経験的な適用の実際も加味していただき,現実的な臨床での実行性の高い内容を心がけた.Questionの一部は,執筆者にとって解説が容易でない項目が含まれていたが,度重なる修正・加筆の依頼に対しても真摯に取り組んでいただいた先生方に,あらためて御礼を申し上げたい.
 折しも,わが国の理学療法が50 年を迎える節目となる年にこのような書籍を発行することができ,執筆者の先生方および編集に携わられた医歯薬出版編集部に感謝する.
 本書が,明日からの臨床や勉学が少しでも豊かになる一助となり,理学療法を受けておられる対象者や関係者の皆さんに希望や可能性を感じていただけるならば,編者にとってこれ以上の喜びはない.
 2015 年2 月
 内山 靖


 人々の関心が健康寿命の延伸におかれ,全人的な視点から生活の場に応じた医療が安心かつ安全に提供されることが期待されている.同時に,わかりやすい医療行為の説明と対象者のニーズに応じた効果的な実践活動が求められている.
 エビデンスに基づく医療(evidence based medicine:EBM)は,世界中で大きな期待をもって受け容れられ,その概念は急速に拡がっていった.EBMとは,エビデンスを用いた意思決定を行う際の情報処理の過程を指し,対象者と医療者とのコミュニケーションの媒体でもある.エビデンスとして,臨床疫学に基づくリサーチエビデンスの重要性が指摘されているが,これは医療者の経験や病態生理学による理論的な根拠を否定するものではなく,むしろ,リサーチエビデンスを付加することによって,一層透明で明快な臨床判断を行おうとするものである.したがって,よりよいEBMを実践するためには,質の高いリサーチエビデンスを集積することは重要であるが,それ以上に,エビデンスをいかに活用するかが大切となる.また,医療の現場でEBMを一層活用することによって,対象者が安心して主体的な役割を果たすことで,真の意味での対象者中心の医療が実現することが期待される.
 EBMとは,本来,ヘルスケアにおける意思決定を表し,医師の意思決定のみを示したものではない.専門領域をつけたEB ◯◯という表現は,介入の手段や帰結指標としての代用ポイントが異なる点を意図したものかもしれない.ここで重要な点は,対象者に共通した介入目標のなかで,各専門職がいかなる独自性をもった臨床思考過程に基づいた意思決定を行い,その際に重要なエビデンスがどのようなものであるかを明らかにすることにある.
 そこで,本書においては『エビデンスに基づく理学療法─活用と臨床思考過程の実際─』と題し,理学療法の臨床思考過程を明らかにしつつ,その思考過程のなかで重要なエビデンスを整理することを狙いとした.その目標は,エビデンスの活用,EBMの活用によって,対象者の勇気と自信をもった行動の変容と維持を支援することにある.理学療法におけるEBMを確立することは,理学療法の独自性を明確にし,理学療法学を確立するための重要な要素になると考えられる.また,質の高い標準化を促し,養成課程を含めた生涯学習のツールになることが期待される.
 編集にあたっては,実に多くの注文をつけたが,すべての執筆者には最後まで真摯に対応いただいた.労を惜しまれなかった各位に改めて厚く御礼申し上げる.
 本書は,臨床実験に携わる多くの関係者に加えて,学内教育においても積極的に活用されるならば編集者にとってこれにまさる喜びはない.
 2008 年5 月
 内山 靖
 第2 版の序(内山 靖)
 序(内山 靖)
序章 理学療法におけるエビデンスの活用と臨床思考過程
 (内山 靖)
 臨床疫学によるエビデンスは特別な概念か/エビデンスに基づく理学療法/理学療法領域の現状と展望
第1章 エビデンスに基づく医療
 1 EBMの現状と課題(名郷直樹)
  EBMの活用と思考過程/EBMにおける医師と患者のギャップ
 2 臨床実践におけるEBMの適応(長谷川仁志)
  すべての医療者が共有できるパートナーシップをもったEBM実践ポイントの重要性/パートナーシップをもったEBM実践のための3 つのステップ/エビデンスレベ ルの高いメタ解析で各群の実数(および総数に対する%)・絶対リスク減少率(ARR) を確認する/EBMの真意を理解できればナラティブに展開できる/すべての医療者が参加してEBMを進化させる時代へむかって
 3 リハビリテーションにおけるEBM(山口智史,里宇明元)
  リハビリテーションにおけるEBMの現状/リハビリテーションにおけるリサーチエビデンス集積の困難性/リハビリテーションにおける臨床判断の特徴/脳卒中領域についての具体的なエビデンス
第2章 疾患・病態からみたエビデンスに基づく理学療法の実際
 1 脳卒中─急性期(小島 肇)
  脳卒中(急性期)はどのような疾患ですか 脳卒中(急性期)はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 2 脳卒中─回復期(原田和宏,井上 優)
  脳卒中(回復期)はどのような疾患ですか 脳卒中(回復期)はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 3 脳卒中─慢性期(石倉 隆)
  脳卒中(慢性期)はどのような疾患ですか 脳卒中(慢性期)はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 4 パーキンソン病(長澤 弘)
  パーキンソン病はどのような疾患ですか パーキンソン病はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか 病期の進行段階に応じた理学療法パス
 5 脳性麻痺(新田 收)
  脳性麻痺はどのような疾患ですか 脳性麻痺はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 6 大腿骨頸部骨折(藤田博曉)
  大腿骨頸部骨折はどのような疾患ですか 大腿骨頸部骨折はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 7 変形性膝関節症(坂本雅昭)
  変形性膝関節症はどのような疾患ですか 変形性膝関節症はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 8 膝・足部靱帯損傷(加賀谷善教)
  膝・足部靱帯損傷はどのような疾患ですか 膝・足部靱帯損傷はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 9 外傷性頸髄損傷(長谷川隆史)
  外傷性頸髄損傷はどのような疾患ですか 外傷性頸髄損傷はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 10 頸髄症(樋口大輔)
  頸髄症はどのような疾患ですか 頸髄症はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 11 関節リウマチ(阿部敏彦)
  関節リウマチはどのような疾患ですか 関節リウマチはどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 12 腰痛症(伊藤俊一)
  腰痛症はどのような疾患ですか 腰痛症はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 13 心筋梗塞(高橋哲也)
  心筋梗塞はどのような疾患ですか 心筋梗塞はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 14 慢性心不全(神谷健太郎,松永篤彦)
  慢性心不全はどのような疾患ですか 慢性心不全はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 15 大血管疾患(渡辺 敏)
  大血管疾患はどのような疾患ですか 大血管疾患はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 16 末梢血管疾患(近藤恵理子,林 久恵)
  末梢血管疾患はどのような疾患ですか 末梢血管疾患はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 17 急性呼吸不全(石川 朗,沖 侑大郎)
  急性呼吸不全はどのような疾患ですか 急性呼吸不全はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 18 慢性呼吸不全(角野 直,神津 玲)
  慢性呼吸不全はどのような疾患ですか 慢性呼吸不全はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 19 糖尿病(片田圭一)
  糖尿病はどのような疾患ですか 糖尿病はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 20 虚弱高齢者(河合 恒,大渕修一)
  虚弱高齢者はどのような対象ですか 虚弱高齢者にはどのような特徴がありますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
第3章 障害からみたエビデンスに基づく理学療法の実際
 1 関節可動障害(板場英行)
  関節可動障害はどのような障害ですか 関節可動障害はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 2 筋力低下(岡西哲夫)
  筋力低下はどのような状態ですか 筋力低下はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 3 持久性の低下(有薗信一)
  持久性の低下はどのような状態ですか 持久性の低下はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 4 バランス障害(望月 久)
  バランス障害はどのような障害ですか バランス障害はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 5 歩行障害(橋立博幸)
  歩行障害はどのような障害ですか 歩行障害はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 6 嚥下障害(吉田 剛)
  嚥下障害はどのような障害ですか 嚥下障害はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 7 疼痛(鈴木重行,松尾真吾)
  疼痛はどのような状態ですか 疼痛はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 8 痙縮・痙縮筋(臼田 滋)
  痙縮・痙縮筋はどのような状態ですか 痙縮・痙縮筋はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか
 9 認知機能障害(島田裕之)
  認知機能障害はどのような状態ですか 認知機能障害はどのような経過をたどりますか 標準的な評価指標には何がありますか 推奨される治療/介入の方法にはどのようなものがありますか