やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 厚生労働省では,団塊の世代が75歳以上となる2025年(平成37年)を目途として,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています.この地域包括ケアシステムの一つとして「介護予防」への取り組みが重要視されています.
 介護予防とは,元気な高齢者の生活機能の維持または向上,そして高齢者が要介護状態になるのを防ぐことはもちろんですが,要介護状態にいる人の生活機能が悪化するのを防ぎ,その機能を維持・向上させることでもあります.いずれの段階であっても介護予防の考え方としては,自立した生活が送れるように支援する「自立支援」の考え方が基本となり,生涯にわたって生活の質(QOL)を維持・向上させることが重要となります.
 本書は,患者さんが一人で行える自主トレーニングについて,身体の動かし方や運動の方法を指導しやすいように,実際に行っている写真を撮影し収載したものです.現場ですぐに活用できる資料というスタンスで,患者さんや対象者への指導に使用していただく場合には,第2章をコピーすることやCD-ROMの写真データを利用することを許可しております.介護予防はもちろん,退院時リハビリテーション指導などにおいても手軽に活用していただければと思います.患者さんの状態が合致していれば,第2章のエクササイズの指導例をそのままコピーして患者さんにお渡しすることや,CD-ROMから適切な写真データを選択して,患者さんの身体状況に見合ったオリジナルの運動プログラムを作成することが可能です.
 介護予防においては,要介護状態になることの予防や要介護状態の改善・悪化の防止を目的に運動指導が行われます.この目的を達成するには,単に運動機能面の維持や改善だけに着目するのでは十分なアプローチにはなりません.環境調整も含め,運動プログラムの作成やエクササイズの指導などによって,対象者に前向きに運動に取り組んでもらえれば,高齢者一人ひとりの日常生活での居場所と出番づくりのきっかけとなり,生活機能(活動レベル)や参加(役割レベル)の向上にも繋がっていくでしょう.
 本書を利用したエクササイズの取り組みが,一人ひとりの生きがいや自己実現の取り組みのために少しでも役立ち,さらにQOLの向上に寄与できるのであれば,筆者らの望外な喜びとすることころであります.
 最後になりますが,本書の刊行に際しまして,多大なるご尽力を賜りました医歯薬出版編集部の戸田健太郎氏に心より感謝いたします.
 平成26年8月
 高橋仁美 金子奈央
 はじめに
 本書の使い方

第1章 総論
 1 エクササイズの必要性
 2 トレーニングやエクササイズの方法
 3 トレーニングやエクササイズを行う際の注意
第2章 エクササイズの指導例
 1 介護予防
 2 腰痛体操
 3 肩こり体操
 4 肩関節疾患(五十肩など)
 5 肩関節疾患(上腕骨近位端骨折術後など)
 6 肘関節の疾患(肘関節周辺の骨折など)
 7 手関節の疾患(橈骨遠位端骨折など)
 8 股関節の疾患(1)(変形性股関節症,人工股関節置換術後など)
 9 股関節の疾患(2)(変形性股関節症,人工股関節置換術後など)
 10 膝関節部の疾患(1)(変形性膝関節症,人工膝関節置換術後など)
 11 膝関節部の疾患(2)(変形性膝関節症,人工膝関節置換術後など)
 12 足膝関節部の疾患(足関節の骨折など)
 13 骨粗鬆症体操
 14 リウマチ体操(上肢の運動)
 15 リウマチ体操(下肢の運動)
 16 脳卒中体操(1)
 17 脳卒中体操(2)
 18 パーキンソン体操(1)
 19 パーキンソン体操(2)
第3章 付録データの写真一覧
 バランス・動作練習
 股関節トレーニング
 膝関節トレーニング
 足関節トレーニング
 肩関節トレーニング
 肘関節トレーニング
 手・指関節トレーニング
 体幹トレーニング
 その他のトレーニング