やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 第60回理学療法士・作業療法士国家試験は令和7年2月24日(月)に実施され,合格者は令和7年3月21日(金)に厚生労働省より発表されました.本年度の出願者数,受験者数,合格者数および合格率は以下の通りでした.
         出願者数 受験者数 合格者数 合格率
 理学療法士   13,305人 12,691人 11,373人 89.6%
 (うち新卒者) 12,131人 11,583人 11,027人 95.2%
 作業療法士   5,920人 5,693人 4,887人 85.8%
 (うち新卒者) 5,199人 5,000人 4,625人 92.5%

 受験者数は昨年に比べて,理学療法士は62人増(昨年:12,629人),作業療法士は43人減(昨年:5,736人)となりました.合格率は昨年と比べると,理学療法士が0.3ポイント増(昨年:89.3%),作業療法士が1.4ポイント増(昨年:84.4%)となりました.

 理学療法士の合格基準は,一般問題を1問1点(159点満点),実地問題を1問3点(114点満点)とし,次のすべてを満たしている者を合格としています.
 総得点 164点以上/273点
 実地問題 40点以上/114点

 作業療法士の合格基準は,一般問題を1問1点(159点満点),実地問題を1問3点(120点満点)とし,次のすべてを満たしている者を合格としています.
 総得点 168点以上/279点
 実地問題 43点以上/120点

 なお,今回の試験で採点除外等の取り扱いとなった問題は,
 [理学療法士]
 午前 問題3,17,20
 午後 問題31,46
 [作業療法士]
 午後 問題27
 [専門基礎(共通)]
 午後 問題53,98
 の8問でした.

 第60回の試験問題は,全体として基本的な問題が多く出題されました.過去問題が少し姿を変えて出題されているものが多いのも従来通りです.5〜10年分ほどの過去問題をチェックしておくことは必須といえます.また,相対的に難易度が高いとされるX2タイプの形式が,全体の約1割出題されています.「2つ選べ」の問題形式に十分に慣れておく必要があります.
 理学療法専門領域は,「気胸に対する理学療法」の問題(PT午前3)と「FIMの採点方法」の問題(PT午前20)が採点除外となり,その他3題が複数正答等の扱いとなりました.一部には「もやもや病」の画像問題(PT午後15)や「ケアプランの記載要領」を問う問題(PT午後22),「災害リハビリテーション」の問題(PT午後42)など,見慣れない問題もありましたが,89.6%という高い合格率が物語るように過去問題をしっかりと勉強していれば十分に合格圏内に入ることのできる問題構成でした.近年の傾向として,「令和6年版理学療法士作業療法士国家試験出題基準」の中で「理学療法管理学」が追加されたことにより,従来「基礎理学療法学」と「地域理学療法学」に分類されていた問題の総数が増えているように見受けられます.情報管理,カルテ管理,感染対策,救命処置などは毎年出題されるようになっているので,反復学習によりマスターしておきましょう.
 作業療法専門領域は,85.8%という高い合格率が示すように,比較的平易な問題が多くみられました.過去問題を中心にしっかりと対策を講じていれば,十分に合格圏内に入ることができたでしょう.一方で,OT午前7・8,OT午前14・15では,第51回以来となる連続問題が出題され,受験生にとっては想定外であったかもしれません.しかし,見慣れない出題形式であっても標準的な内容が中心であるため,冷静に対応することが求められます.また,OT午前16の「社交不安症〈社交不安障害〉」のように,精神障害領域では一部の問題でDSM-5-TRまたはICD-10に基づいた疾患名が記載されました.当面は,従来の疾患名が括弧書きで併記されると予想されますが,最新の国家試験における疾患名の表記を一通り確認しておくことが重要です.
 専門基礎領域は,全体として,シンプルに基礎的な知識を問う構成となっており,過去問題を中心に学習していれば十分に得点できたと考えられます.近年の傾向としては,疫学的知識を問う問題が満遍なく出されることが挙げられます.午後89,午後92のような疫学に特化した問題だけでなく,各疾患の問いの中でも疫学に関する選択肢が含まれています.疾患そのものの特徴はもちろん,発症の男女差や好発年齢なども学習しておく必要があります.また,横断的知識を求める問題が多いことも近年のトレンドといえます.専門基礎の要である解剖学,生理学,運動学で習得した知識を,他領域に結びつけ,広い視点をもって学びを深めることが肝要です.
 本書は第56回から第60回までの5年間の理学療法士・作業療法士国家試験全問題を掲載しております.本書の構成は,問題,解答,解説からなります.
 問題は,可能な限り原文に則して記載し,図や写真は縮小しています.
 解答は,基本的には厚生労働省が公表したものとしています.一部,厚生労働省の解答と見解が異なる問題については,その旨を明記しました.
 解説は,解答を導き出すのに参考となる事柄を限られたスペースの中にメモ程度に記載しました.
 本書の解答,解説などでお気づきの点,また本書の構成などについてご意見がございましたら,編集部宛にご教示くださいますようお願い申し上げます.
 来る第61回の理学療法士・作業療法士国家試験には,どうか本書を存分に活用されて,見事全員が合格されますよう,編集部一同,心からお祈り申し上げます.

 2025年5月
 医歯薬出版編集部
 はじめに
第56回 理学療法士 作業療法士 国家試験問題 解答と解説
 理学療法(午前)
 理学療法(午後)
 作業療法(午前)
 作業療法(午後)
 専門基礎(午前)
 専門基礎(午後)
第57回 理学療法士 作業療法士 国家試験問題 解答と解説
 理学療法(午前)
 理学療法(午後)
 作業療法(午前)
 作業療法(午後)
 専門基礎(午前)
 専門基礎(午後)
第58回 理学療法士 作業療法士 国家試験問題 解答と解説
 理学療法(午前)
 理学療法(午後)
 作業療法(午前)
 作業療法(午後)
 専門基礎(午前)
 専門基礎(午後)
第59回 理学療法士 作業療法士 国家試験問題 解答と解説
 理学療法(午前)
 理学療法(午後)
 作業療法(午前)
 作業療法(午後)
 専門基礎(午前)
 専門基礎(午後)
第60回 理学療法士 作業療法士 国家試験問題 解答と解説
 理学療法(午前)
 理学療法(午後)
 作業療法(午前)
 作業療法(午後)
 専門基礎(午前)
 専門基礎(午後)