やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第4版への監訳者の序
 本書の初版が発行されたのは1999年11月(原著は1995年),第2版は2004年6月(同2001年),そして前版である第3版が出版されたのは2009年6月(同2007年)であった.第3版の序において書いたが,翻訳をしていて感じるのはなんといっても原著者のパワーである.著者と直接お会いしたことはないし,まして近くにいたわけではないが,原著を読んでいると著者2人のパワーを感じるのである.
 そのパワーまで翻訳できれば,読者の皆さんに対する責任を訳者として100%果たしたことになるが,それは望むべくもない.しかし,そのパワーの一端が読者の目に直接触れる1つは引用文献の数であろう.研究者にとっては,極端な書き方をすると,この引用文献だけでも教科書としての価値があるとさえいえるのではないだろうか.もちろんこれは“パワー”の表面的な一部に過ぎないことではあるが.
 これまでの版の副題について触れてみたい.今回,第4版の原著序文を訳していて気がついたことであるが,初版から第4版に至るまでに副題が微妙に変わってきている.初版と第2版では“Theory and Practical Applications”(日本語版“運動制御の理論と臨床応用”),第3版では“Translating Research into Clinical Practice”(日本語版“運動制御の理論から臨床実践へ”),そして第4版は第3版と同じで“Translating Researchinto Clinical Practice”となった.つまり,第2版から第3版への移行に伴って副題に変更があり,Theory→Translating Researchに,Practical Application→ Clinical Practiceに変わっている.いまから考えると,これらの副題の変化は,それぞれの版の内容を反映する重要なものであったのに,翻訳ではそれを十分に意識してこなかった.これについてはお詫びするが,今回は議論をした結果“研究室から臨床実践へ”となった.この副題なら,第4版(および第3版)の内容を十分に反映しているものと考えている.
 原著第4版の特徴はなんといってもDVDが付いたことである.その日本語版への対応については出版社および監訳者の間で議論がもたれ,その結果,日本語の字幕を付けることとなった.字幕については,科学的な映像ゆえに,内容を表現している映像と字幕と一致することが重要となる.そのことを重視しつつ,日本語としての不自然さを生じないようにするという困難な仕事となった.結果は必ずしも目標を達成しているとはいいがたいが,合格点は取れたと考えている.今後の改訂時には,さらにこの対応関係を中心に良いものにしていく所存である.
 今回の日本語版では新たな試みとして“略語一覧”を掲載した.一例を示すと,本文では“日常生活活動(ADL)”と日本語と略語のみを記載しているが,“略語一覧”では“ADL:activities of daily living:日常生活活動”と“日常生活活動:activities of daily living:ADL”と2通りにしてフルスペルを掲載している.他の翻訳書を読む場合や英語論文を書く場合などにお役立ていただければ幸いである.
 最後に,この第4版および以前の版を購入いただいた皆様に感謝をしたい.これは著者(訳者)としては当然であるが,漏れ聞こえてくる皆様からの声が翻訳への力を与えてくれているからである.逆に皆様へお願いしたいこともある.それは,この翻訳を踏み台にして,ぜひ日本独自の新しい研究へと進んでほしいことである.「(『モーターコントロール』を基にして)運動制御についての新たな研究が出てきたそうだ」,そのような声の聞こえる日を待ち望んでいる.
 2013年7月
 田中 繁

 原著初版が上梓されたのは1995年.その日本語版が発刊されたのは1999年11月であった.そしてこのたび第4版がリリースされることになった.この間,この領域におけるさまざまな発展と進歩には目を見張るものがある.そしていま現在もさらにいっそう大きく華ひらこうとしている.
 これには,先人先達の築かれた厖大な遺産をベースにして,コンピュータとコンピュータ・サイエンスの発達に伴うCTやMRI,PET,三次元動作解析装置,光トポグラフィなど多彩な画期的検査機器の興隆が“ハードウェア”としてあるにしても,本書を通じて斯界の後輩を教導したという点で,つまり“ソフトウェア”として著者お2人の力は限りなく大きいと感じているのは私たち訳者だけではないと思う.
 わかりにくい事象をなんとか簡明に,それもその事象を解き明かした当のご本人たちの言質をドキュメンタルに引用し,援護論も反論も懐疑論も同様に,膨大な資料の山から的確に引用・例示して,おのおのの事項の概念の確立から整理までの時系列を科学的に,あたかもそのときどきの,その学会場に座って講演や討論に耳を傾けているかのように話を進めていくというお2人の先生の手法は,十余年経ったいまなお新鮮で,本書に独特の味わいを醸し出しているように思う.
 お2人はまた,読者の理解を深めるため,版を重ねるごとに工夫を加えてもこられた.論述を整え,内容を更新されるだけではなく,読者のより積極的な参加を促そうとするためであろうか,第2版からは実習のコラムを設けられた.これによって初版の放っていた壮大なレビューという香りに教科書としてのテイストが加わってきた.今回の第4版からはさらにDVDが付属するようになって,読者はより短時間で,各疾患や病態の特徴,患者さんに対応するうえでの勘所を把握しやすくなっている.
 2013年7月
 高橋 明

第3版への監訳者の序
 本書の原著初版本を手にしたときの衝撃から十余年が過ぎ,ここに第3版がリリースされることになった.原著者であるA.Shumway-Cook先生とM.Woollacott先生とが,本書を著すことによって試みようとしたものは初版以来の“序”に明確に記されている.神経科学と運動制御分野における諸研究の爆発的な広がりによって生じつつあった臨床的実践と研究とのギャップを,研究の成果を臨床的実践の場にフィードバックすることによって埋めようとする臨床家の努力になんとか応えようとするものであった.この試みは,本書が発売されて以来,わが国はもとより世界中で多くの読者を得たことからひとまず達成されたように思われる.
 実際,身体の不自由をなんとか少しでも克服したいと日夜努力している方々を支援しているわれわれ臨床の現場には,“ヒトはなぜ動くのか”というような根源的疑問から,“この異常運動はなぜ生じるのか”,また“この状況を克服するにはどうすればいいのか”という具体的ノウハウの希求にいたるまで,さまざまなレベルの多様な疑問や課題が,ときには巨大な壁となっていくつもそそり立っている.この広大な運動制御という暗黒大陸に先人たちはどう挑み,どのような経緯でどのようなルートを残してくださったのか.本書はまずこれを中心に数々の多様な切り口を理論という形で紹介し,論点とともに限界もまた提示する.そして解剖学的生理学的に解明されつつある運動制御機構を,諸研究を織り込みながらざっとレビューし,各論を解説していくことで中核の課題のみならず類似の臨床課題にも対応できるようにガイダンスを進めていく.
 本書を貫く最も大切なコンセプトは,第1章に記された『「科学が事実を用いて構築されているのは,家が石を用いて造られているようなものである.しかし,石の集積が家ではない以上に事実の集積は科学ではない」…青写真が石の積み重ねを家とするための構造を提供するように,理論は事実に意味を付与する(Miller,1988)』との,J.H.ポアンカレの言葉を引用したミラー先生の言葉ではないだろうか.1つ1つの研究が,運動制御という巨大な命題のどこに位置し,どのような意義をもつのか.そしてそれが日常臨床におけるどの事象の,どの課題を解決するカギとなっているのか.こうした意味で神経科学的運動制御の領域は初めて,本書といういわば歴史書,あるいは鳥瞰図を手にしたことになる.
 第3版では,本書を教科書や大事典,あるいは入門の書として用いている多くの読者に対して,より利便性を増強してある.最先端の研究領域の訳語については,極力斯界で流通している日本語を選ぶというのが訳出方針ではあったが,日進月歩の研究領域では学術用語がそのまま流通していることが多々ある.こうしたものについては無理をせず,そのまま用いたことをお許し願いたい.いずれ最新の知見や周辺諸技術をup to dateに盛り込んでいく両先生の学識の深さとエネルギーには,ただただ頭が下がるのみであるし,理論の臨床実践についても,ついつい試みてしまうように,よりいっそう工夫されていることに読者は驚かれることであろう.
 2009年5月
 高橋 明

 まず多くの読者の方々に謝らなければならないと考えている.それは,原著第3版が出版されてからこの翻訳書ができるまでたいへん長い時間がかかってしまったことである.翻訳第2版はすでに完売と聞いたので,おそらく少なからぬ購入希望者に「もう少しで第3版が出版されますのでお待ちください」などという説明があったのではないかと推測する.第2版のときにもそうであったが,今回の遅れも私の責任が大きい.読者のみならず,監訳の同志(?)である高橋明先生,そして他の訳者の方々,さらには出版社の皆様にも迷惑をかけてしまった.
 第3版の情報を得たのは2006年8月頃であった.まず驚いたのは,初版,第2版,第3版と速いスピードで改訂が進んでいることであった.初版を見たときには「これはすごい」と直感したが,その後の改訂を見ていると著者たちのパワーに驚かされる.改訂ごとに新たな引用文献が加わってきたことはもちろん,新たな試みも行われてきた.今回の改訂では“評価手段”と“実習の解答”が加えられ,第2版で“表”として扱われていたものが“評価手段”と“表”に分けられるなど,およそ四分の一が修正されたり加わったりした.この翻訳書を教科書として使っている教員の方々がいると聞いているが,“実習の解答”はそのような皆様にとって大いに役立つものであろう.
 翻訳するわれわれも原著の意欲的な態度に対応すべく努力してきた.第3版に対する基本姿勢は翻訳第2版を修正するのではなく“新たな訳”としたことである.とはいっても訳語などをまったく変えたわけではないが,原著の微妙なニュアンスに注意深く配慮し訳語に修正を加えるように努力した.注意深くチェックをした結果,ごく一部ではあったが第2版には原著との微妙な食い違いのあることもわかり,それらは積極的に修正した.訳語については,これまでもそうであったが,可能な限り1対1となるように心がけた.その結果は“索引”に現れていると思う.
 内容についても具体的に触れてみたいと考えていたのだが,現時点では難しいというのが結論である.私は訳者として自分の翻訳した章は10回近く,また監訳者として担当した章は数回,その他の章でも1,2回原文あるいは訳文に目を通した.それでも,内容について私の解釈を加えるには至っていない.内容を十分に理解し自分のものとするためには,初めてこの本を読む皆様と一緒になり“読者”として勉強を開始しなければならない.第2版に関しては地域的であったが一度,数回の勉強会を開いた.この第3版に関しては,勉強会をさらに進め地域を越えて展開できればと考えている.それだけ深い内容をもった本である.この本からモーターコントロールとその周辺に関する“知識”,“臨床の道筋”,“先行研究情報”,“研究テーマ”,“実験計画”などについて学ぼうではありませんか.
 2009年5月
 田中 繁


第2版への推薦の辞
 どのような事業(プロジェクト)でも,社会的貢献が歴史的に評価されうるものであれば,投資が有意義であったと断言できるであろう.美濃部都政のもと,わが国で初めて65歳以上の人口層を対象として設立発足した養育院付属病院(現在の老人医療センター),Half-Way-House,Day Care,Day Hospital,ナーシングホーム等は,現在全国的に展開されている老健施設,リハビリテーションを中心とした総合的医療を25年以上前に先取りしていたことが明白である.同時に,東洋で初めての東京都老人総合研究所も発足し,そのなかにリハビリテーション医学部が部として存在し,運動研究室,障害研究室,言語聴覚研究室をスタートさせたことは,日本で初めてリハビリテーション専門の研究費がつけられた研究施設が開設され,研究職としてAllied Medical職種に門戸が開かれるチャンスとなった.
 たまたま,日本人で初めて米国のリハビリテーション専門医の上級試験に合格し,専門医学術アカデミーの正式なFellowに推挙されていたので,都議会の特別承認を受けて,都政はじまって以来,最年少の主幹参事:部長として養育院付属病院のリハビリテーション部と研究所のリハビリテーション医学部の責任者としての責務を負わされることになった.特に研究所はいろいろな職種で熱意があり,将来性のある方に集まっていただきたいと願い,特に工学系でリハビリテーションに関心を示された田中 繁氏は第一候補者であった.ところが,在学中に学生運動に参加した人物は東京都では採用不可との冷たい反応で,ここは私なりに賭けに出る決心をした.すなわち,田中氏を研究員として採用するか,どなたか私の代わりに病院と研究所のリハビリテーションを担当される方を探すか,どちらかご判断下さいと美濃部知事に直訴をした.結局,都議会の文教厚生委員会の特別議題となり,役所らしく私がすべて責任を持ちますと一筆差し入れることで決着した.当時多忙であったため,研究所の方に親友のコペンハーゲン大学整形外科教授のBent Ebskov博士,PTの教師のためのパリ大学エミエンヌ大学院院長のEric Viel博士に顧問として来日していただき,研究所のスタッフの研究の方法論,研究の展開などについてご指導をいただけたのは幸せであった.ここで育った方々が,全国で臨床,研究,教育の分野で教授職でご活躍である.今回,この“Motor Control”の主監訳者として労をとられた田中 繁教授も,見事な成果をあげられて現在に至られたのは大慶で,これ以上の喜びはない.
 今般,“Motor Control..Theory and Practical Applications”の日本語版を分担で訳されて,医歯薬出版株式会社より世に問うことになったのは素晴らしい企画である.というのは,この本はリハビリテーションに関与する多くの医療職にとり必携と断言できるほど,内容が最高で豊富な情報を提供しているからである.
 リハビリテーション医学そのもののCoreになる学問が障害学といわれているが,現実には何を勉強すればよいのか具体的ではない.通常,何かまとまった勉強をしようとする場合,神経生理,機能解剖,運動制御,脳の病理,機能回復の過程などに関連のある本を山のように積み上げて,必要に応じて必要な項目をそれぞれの教本より取り出して目を通すことになる.
 この“Motor Control”は,理論的な枠組みより取りかかり,運動制御に関して現在までに受容されている説を議論し,運動学習,機能回復から臨床応用までを導入部としていろいろなヒントを提供している.
 第II部では,姿勢とバランスを広範囲にわたって取り上げ,特に加齢と姿勢バランスを議論しているのがユニークである.付録としてあげられている姿勢制御の評価表は,その着眼点といい治療につなげる分析のデータ採取としても大変臨床面で役に立つ.
 第III部では,移動および行動の機能を正常と異常の面より取り上げて,いろいろな研究が第三者として中立の立場より論議されている.
 第IV部では,ヒトがヒトであるのは独特の上肢機能を所有しているからであるということを前提にして,上肢の徒手的な巧緻性について,くまなく論議し,前の部で説明された機能の領域の運動機能不全を扱い,最近の文献の分析も加えられている.さらに,ヒトの生涯における変化,加齢現象まで踏み込んでいるのには驚かされる.
 本書は,訳者の努力もさることながら,臨床に従事する者が実践の場に理論を持ち込み理解しやすいように書き上げた本だけに,実にしっかりした内容であり,いままで山のように本を積み上げて勉強しなければ理解できなかった運動制御の正常と異常がこの本1冊でかなりの面までカバーされているので,臨床,教育,さらには研究の分野で応用できるヒントが数限りなく含まれている.リハビリテーション医学に関するあらゆる職種,特に医師,理学療法士,作業療法士には必携の書であり,推薦に大いに値する新刊書である.監訳の労をとられた高橋 明氏,田中 繁氏,および分担で訳を担当された諸氏に心から敬意を表する次第である.
 1999年10月
 米国リハビリテーション専門医
 米国専門医学術アカデミーFellow
 英国ケンブリッジCMMA正会員
 青葉会,大坪会リハビリテーション顧問 荻島 秀男(故人)


第2版への監訳者の序
 ある日,田中繁先生から分厚い1冊の洋書を手渡された.この本をどう思うかというのである.まず,目次を見て驚いた.そして,ページをめくっていくとそれは興奮に変わった.われわれが日常,なにげなく行い,職業として診ている「運動」をこれほど包括的あるいは学際的に,ここまで詳細に語る人達がいたのである.しかも膨大な文献を自在に綴り合わせてである.そして,本書を読まれた一人一人がここに紹介された知識をベースに,各自がもっている知識とスキルをさらに深めることができたなら,こんな素敵なことはない.著者はおそらくそう考えたに違いない,このようにも思えた.
 とにかく本書は数多くの魅力に満ちている.その一つは,「運動」を眺める視点の広さもさることながら,関連各領域における古今のキー・コンセプトを紹介し,それらが互いにどのような関連をもち,どのようないきさつで変遷して現在に至ったかに触れていることではないだろうか.これによってわれわれは,そのコンセプトが包含する真の意義と背景を間違いなく知ることができる.
 もう一つはケーススタディや「実技」を巧みに配置していることである.実態から理論,そして実践への論証というスパイラルを重ねることによって,森の奥深く分け入ったがゆえに山容を忘れる,という陥りがちなリスクを見事に回避しているように思う.
 運動に関する脳科学の最新のトピックスの紹介も魅力の一つであろう.これは,このsecond editionでいっそう充実している.最新の科学技術のもとに次々に解き明かされる新知見,読んでなお釈然としないというところがあったなら,そここそが未解決な謎であり,「運動制御研究」の新しいターゲットなのであろう.
 もちろん内容的に十分とはいえない部分もたくさんある.それは,著者らも述べているように,「運動制御」という山の山容を語る,という本書の目的から逸脱してしまうために割愛されている場合もあるし,実際の研究情報の方が本書よりもはるかに進んでしまっている,という場合もあるようである.そんな場合でも本書は,その部分をインターフェイスとしてそれら専門書や諸研究と補完しあい,いっそう読者の知識を深める“古典”として作用するように思われる.
 本書の特性は,ある研究情報の大局的位置を知るための“地図”としても意義がある.さらにまた,著者らが“事典”としても整備工夫していることを汲み,同様の意義をもてるよう訳出するうえで配慮したつもりである.
 最後に,本書に巡り合わせていただき貴重な体験をさせていただいた畏友・田中繁先生,また翻訳を分担していただいた多くの諸賢と諸先達,とくに運動学習領域の用語にお手を煩わせてしまった岩手大学保健体育学科教授の鎌田安久先生,そして同僚に衷心より感謝申し上げたい.内容の膨大な本書を翻訳するにあたって,結果的に多くの人手を必要とした.そのことによって生じる煩雑さを忍耐強く支えていただいた医歯薬出版の編集担当者にも感謝したい.
 2004年4月
 高橋 明

 いよいよ前書きを書くときがきた.というのは,この第2版の翻訳に取りかかったのは2001年6月であった.かれこれ3年近くの時がたってしまったことになる.その間に第3版が出てしまうのではないか,などと心配するような感じである(それほど2人の著者にはパワーを感じる).
 今回は初版では感じなかったプレッシャーがあった.それは,初版の評判がことのほか良く,第2版の翻訳を始めた頃から,「いつ出版されるのか」というような声が聞かれたからでもあった.実はそれ以上に,訳者自身,とくに監訳者,とくに私のなかには,ぜひ初版を超えたい,という意識があった.そして,方針を“内容を誤ることなく,より日本語らしくする”とした.しかし,最初から躓いてしまった.初版の翻訳で少しは翻訳というものに慣れたのだが,それをいかに超えるかを自問し空回りし,けっきょく1年近く手が着かないような状況になってしまった.翻訳者の皆さんはその間も翻訳を続けてくれたのであり,このように出版が遅れてしまったことについては申し訳ないと感じている.
 しかし,とにかく出版に漕ぎつけた.第1に感謝したいのは出版を待っていただいていた読者の皆さんである.今日に近づけば近づくほど,「出版はいつなのか?」という声が増えてきた.これはプレッシャーでもあったが,なんといっても励ましであった.第2には,ここまで遅れたのに一緒になって,より良い翻訳へと努力をしてくれた翻訳者の皆さんである.そして,第3には,故・荻島秀男先生を挙げなければならない.“故”と書かなければならないのは本当に悲しいことである.冥福を祈るとともに,個人として感謝する次第である.
 手前みそになるが,苦しんだ甲斐あって,満足できる翻訳書になったと感じている.“十分”満足できるとは書けなかったが,読者の皆さんからの批判や意見をいただき,機会があれば“十分満足できる”翻訳書にしていきたい.ぜひ,意見をお寄せいただきたい.
 2004年4月
 田中 繁


初版への監訳者の序
 やっと先が見えてきた,というのが本音である.“臨床動的立位分析研究会”というクローズドな研究会がある.私がこの本『Motor Control』を知ったのは,この研究会の一員で訳者の一人にもなってもらった新小田幸一氏による紹介であった.この研究会で,私は立位時の動揺に対する視覚の影響を調べるために,開眼,単純な閉眼,黒く塗りつぶしたゴーグル着用(真っ暗),ヤスリでこすったゴーグル着用(明るさのみがわかる),という条件で行った自分の研究を紹介した.そのとき同時に,ゴーグルを使う前には,頭がスッポリ入るくらいの大きさをもった曇りガラス製の球形の電球カバーを購入し,それで明るさのみがわかるような条件を作ろうとしたという話をした.これを聞いた新小田氏が,それと非常に似た実験を日本製の提灯を使ってアメリカの研究者がやっている,ということを教えてくれたのである.しかも,それを紹介している原著をもっているということであった.後日,その部分のコピーをいただき,書籍の名前を教えてもらった.
 私は早速その本を購入した.ぱらぱらとページを捲る.そのときのショックを私は忘れることはできない.“訳本を出そう”と即座に決心した.しかし本書は,原著のコピーに“Only book which is a bridge over theory and clinical practice”とあるように,基礎的生理学および医学的内容から運動学,そしてPT,OTの治療・訓練手技に至るまでを網羅した内容を含んでいた.私が責任をもてるのは運動学的な内容のみであった.幸いなことに,非常勤研究員となっていた“いわてリハビリテーションセンター”のセンター長であり脳外科出身である高橋 明氏に原著を見ていただいたところ,内容は大変優れていることを知らされ,また快く私と一緒に監訳者の責任を担ってくれるという回答をいただいた.高橋氏と検討の結果,訳者はリハビリテーションセンターのスタッフ,そして私が関係する施設のPT・OTに頼むこととなった.また,幸いなことに,眞野行生氏を中心とした北海道大学スタッフの協力もいただけることとなった.
 もう一つ,当初より決めていたことがある.それは,推薦の言葉をカリエのペインシリーズ翻訳でよく知られている,荻島秀男氏に書いていただきたいことだった.荻島氏は私が仕事に就いた最初の上司であり,この分野での私の立場を作っていただいた恩師である.1997年の暮れに先生のお宅を訪れた.先生とは年賀状のやりとりなどはあったものの,直接お会いするのは何年かぶりである.渋谷駅で降りて喧噪を通り抜けると,数分で信じられないほど静かな住宅地に出る.先生のお宅の前でやや緊張したのが思い出される.先生は,快く推薦の言葉の執筆を引き受けてくれた.すべての準備は整った.
 翻訳開始から1年半が経った今,なんとか著者の思想を汲み入れた翻訳ができたのではないかと考えている.
 少し,内容に触れたいと思う.私が“一目で惚れた”のには,次のようないくつかの理由がある.
 (1)著者が2名と少ないこと:この本は教科書として書かれた本である.論文集や辞典など以外は,1,2名の少人数で書くべきである.それにより,初めて全体が統一した流れのなかでテーマが展開される.つまり,本に思想が生まれる.日本においてPT・OT向けに作られる教科書もそうありたいと考える.
 (2)引用文献の量:本書の引用文献はのべ1,018論文である.これは2名の著者のパワフルさを如実に物語るものであり,この情報だけでも読者の役に立つであろう.
 (3)記述の客観性:基礎的生理学の研究結果についてはもちろんのこと,これまでに考案されてきた訓練手技や治療法についても特定の考えに傾倒することなく,非常に冷静に記述している.特にボバース法など,議論のある項目についてはぜひ関係者に読んでいただきたい.
 (4)教科書を意識した内容:教科書としては最終学年のため,および大学院や卒後教育のために最適であると考える.すべての章の最後には,章全体をまとめた“要旨”があり,それを一読すれば内容のおおよそがわかり,学ぶものにとっての重要な指針となっている.さらにところどころに“実習課題”および“技術ボックス”という囲み記事があり,座学としてだけでなく実習あるいは演習をも交えて講義を進められ,担当する教員にとって大いに役立つ内容である.
 (5)研究への指針:上記の豊富な引用文献とともに,その結果,何がいまだに研究されていないのかが明確に提示されている.すでに実務に就いている読者のなかには,日常の訓練などで自ら行っている手技やその結果に疑問を抱いている方も少なくないであろう.これは一種の研究疑問になりうるわけであるが,本書を読むことによりすでに解決されている問題であるのか,新たな研究テーマになりうるのかの指針が得られるであろう.
 翻訳の質については,可能なかぎり原文と訳本の単語の一対一対応を目指した.結果的に完全にこれを行うことはできなかったが,かなりの部分で一対一対応に近づけたことは,医歯薬出版編集部および関係スタッフの方々の協力の賜であり,深く感謝する.もちろん,英語と日本語の本質的な相違により一対一にできないところもあったことは言うまでもないが.
 最後に,国際医療福祉大学作業療法学科学生・家本典華,岩崎 隆,北村陽子,佐藤水保子,須田江利子,廣水眞奈美,西山織江,藤原祥貴,三浦慈子,同理学療法学科学生・並木尚雄,渡辺一美の各氏に翻訳の一部を担当していただいたことを付記し,感謝する.
 訳者一同,本書が読者にとって,真に“役に立つ”一冊となることを祈っている.
 1999年10月
 訳者代表 田中 繁


 われわれ著者が,専門家や患者の皆さんなど,多くの人々に本書を
 捧げることができるのは大きな愛と感謝の気持ちによるものです.
 皆さんあってこそ,本書にある考えが生み出されたのです.
 われわれはまた,強い興味と知,喜びの源を神から授かったことに
 深く感謝する次第です.
 インスピレーションと努力がうまくミックスし費やされたことにより
 本書を創造できたことは真に歓びとするところです.


原著第4版の序
 この数年,運動制御の分野における研究が急速に拡大してきており,臨床家のなかでその研究を臨床実践に移植することに大きな興味が沸いてきています.神経科学と運動制御の分野における新たな研究が爆発的に発展したため,研究と臨床実践の間にギャップが生まれてきているのです.『モーターコントロール―研究室から臨床実践へ―原著第4版』では,運動制御の領域における最近の研究をレビューし,その研究を最善の臨床実践に翻訳することを模索してきました.
第4版の概観
 本書は4つの部分に分かれています.「第I部 理論的枠組み」では,運動制御,運動学習,神経学的損傷後の機能回復について,最近の理論をレビューしています.運動制御の多様な理論を臨床に移植するための議論があり,それは運動制御と運動学習の生理学的基礎となるものです.第I部にはまた,臨床実践に関する概念的枠組みと,神経学的損傷を呈する患者における機能障害を理解し評価することに関する枠組みも提案されています.最初の部分は本書の要点であり基本となる部分で,そこには運動制御における課題が提示してあり,姿勢とバランス(第II部),移動性(第III部),上肢機能(第IV部)の各制御に関連しています.
 第I〜IV部までのすべての部において,章構成は基本的な形式に従っています.各部の最初の章では,正常な制御処理過程に関連する課題について議論しています.2番目の章(場合によっては3番目の章)では,年齢にかかわる課題について説明しています.3番目の章には異常機能に関する研究があり,最後の章では,最近の研究の臨床的応用について議論しており,これには,3つの機能的領域それぞれで運動制御ができない患者の検査法と治療法も含まれています.
 本書ではいくつかの利用方法が考えられます.第1に,学部学生と大学院生の教科書としての利用が想定されています.それぞれのコースに対する,正常な運動制御,一生にわたる運動発達,理学療法と作業療法におけるリハビリテーションの教科書としてであり,また運動学と運動訓練の科学としても利用可能です.また,本書により,臨床家が「根拠に基づく臨床実践」のための基礎となる研究との結びつきを保つ助けとなることも想定されています.本書がもつ力は,広範な研究論文の要約があることと,その研究を臨床実践に転移していることです.しかしながら,要約を読むことだけでは,原著の研究論文を徹底的に読むことにより得られる洞察に換えることはできません.書籍というものは,正にその本質として,その書籍が出版される前に入手した研究のみを要約しているのであり,したがって臨床家や学生たちにとっては,その後に発表される研究論文を引き続き読み続けることが肝要です.
第4版における変更点
 本書には,キーとなる3つの領域である,姿勢制御,移動性,上肢機能における最新の研究が掲載されています.「実習」は拡張されていて,第3版と同様に解答のキーは各章の末尾に掲載されています.5つの症例研究にはビデオが加えられ,読者が,特定の神経学的診断を下された患者の基礎にある機能障害を理解すること,そして姿勢制御,移動性,上肢機能の各側面を評価するための臨床的測定を選択し利用することを助けています.臨床に関する各章には,評価と治療過程の有効性に関する研究の,さらに進んだレビューについても掲載されています.
最後に
 本書では,運動制御に関する最新の理論と研究を,臨床家が臨床実践に組み込めるようにするための枠組みを提供すべく模索しています.さらに重要なことは,本書が,運動制御に問題をもつ患者の皆さんの検査と治療に対する,新しくより効果的なアプローチを開拓する跳躍板となることです.
 Anne Shumway-Cook
 Marjorie H.Woollacott
 訳者一覧
 第4版への監訳者の序
 第3版への監訳者の序
 第2版への推薦の辞
 第2版への監訳者の序
 初版への監訳者の序
 献辞
 原著第4版の序
 略語一覧
 日本語訳一覧

第I部 理論的枠組み
 第1章 運動制御:論点と理論(高橋 明)
  はじめに
   運動制御とは何か
   セラピストはなぜ運動制御について学ばなければならないか
  運動の本質を理解する
   個体に内在し運動を制約する因子など
   運動における運動課題の制約
   運動における環境の制約
  運動の制御:運動制御の理論
   実践に対する理論の価値
   反射理論
   階層理論
   運動プログラム理論
   システム理論
   生態学的理論
   どの運動制御理論が最良なのか
  診療と科学理論との並行した発展
   神経学的リハビリテーション:反射に基づく神経促通法
   課題指向型アプローチ
  要約
  実習の解答
 第2章 運動学習と機能回復(中谷敬明)
  運動学習へのまえがき
   運動学習とは何か
  運動学習の本質
   運動学習の初期の定義
   運動学習の定義の拡大
   遂行能力(パフォーマンス)と学習との関係
   学習の形式
   長期記憶の基本形式:非宣言的(暗示的)記憶と宣言的(明示的)記憶
   非宣言的(暗示的)学習
   宣言的あるいは明示的学習
  運動学習の理論
   Schmidtのスキーマ理論
   生態学的理論
   運動スキル学習の段階に関する理論
   運動プログラム形成の段階
  運動学習研究の実践適用
   練習水準
   フィードバック
   練習の条件
  機能回復
   機能回復に関係する概念
   機能回復に貢献する要因
  要約
  実習の解答
 第3章 運動制御の生理学(高橋 明)
  序論と概要
   運動制御理論と生理学
   脳機能の概観
   ニューロン─CNSの基本単位
  感覚系/知覚系
   体性感覚系
   視覚系
   前庭系
  活動系
   運動野(運動皮質)
   高次連合野
   小脳
   基底核
   中脳と脳幹
  要約
 第4章 運動学習と機能回復の生理学的基礎(渡部一郎)
  はじめに
   神経可塑性の定義
   学習と記憶
   学習と記憶の局在
  可塑性と学習
   可塑性と非宣言的(暗示的)学習
   手続き学習
   可塑性と宣言的(明示的)学習
   手続き学習に関する運動野の貢献と暗示的記憶から明示的知識への変化
   運動学習の複合形式
   スキルの獲得:自動運動へのシフト
  損傷後の可塑性と機能回復
   脳機能を損なう初期の一時的現象
   損傷後の細胞間反応
   損傷後,機能回復過程における皮質マップの変化
   皮質再構築と神経可塑性を増強する戦略
   臨床的意義
  要約
 第5章 運動制御における制約:神経学的機能障害の概要(高橋 明)
  はじめに:運動制御の病態生理学の徴候と症状
   中枢神経病変を伴う機能障害の分類
  活動系における機能障害
   運動野における機能脱落
   皮質下病変に関連した機能障害
   二次性筋骨格系機能障害
  感覚系/知覚系における機能障害
   体性感覚の欠損
   視野欠損
   前庭機能欠乏
   知覚機能障害
  前頭頭頂連合野の病変に関連した機能欠損
   認知機能障害
   認知機能障害の治療
  神経学的機能障害を理解するための症例検討
   ジーンさんの場合:脳血管障害に伴う機能障害
   マイクさん: パーキンソン病に関連する機能障害
   ジョンさん:小脳変性に関連する機能障害
   痙直型脳性両麻痺を負ったトーマス君
  要約
 第6章 診療のための概念的枠組み(田中 繁)
  はじめに
  臨床的実践のための概念的枠組みにおける要素
   診療実践モデル
   機能性と能力障害モデル
   仮説指向性診療
   運動制御と学習の理論
   根拠に基づく臨床実践
   概念的枠組みの診療への応用
  検査のための運動課題指向型アプローチ
   機能的活動と参加に関する検査
   戦略レベルにおける検査
   身体構造と機能障害の検査
  治療のための運動課題指向型アプローチ
   機能回復と機能代償
  要約
  実習の解答
第II部 姿勢制御
 第7章 正常な姿勢制御(田中 繁)
  はじめに
   姿勢制御の定義
   課題と環境により変化する姿勢制御要求
   姿勢制御に関するシステムの定義
  立位姿勢制御
   姿勢制御における活動システム
   姿勢制御における感覚システム
   予測的姿勢制御
   姿勢制御における認知系
  座位での姿勢制御
  要約
  実習の解答
 第8章 姿勢制御の発達(谷 浩明)
  はじめに
   姿勢制御と発達
   運動の一里塚と姿勢制御の出現
  姿勢制御発達の理論
   姿勢制御の反射.階層理論
   発達の新しいモデル
  姿勢制御の発達:システムの視点
   乳児の全体的運動
   頭部制御の出現
   自立座位の出現
   自立立位への移行
   立位制御の改善
   姿勢発達における認知系
  要約
  実習の解答
 第9章 加齢と姿勢制御(新小田幸一)
  はじめに
   老化を招く要因
   一次的要因と二次的要因の相互作用
   老化の多様性
  不安定性の行動指標
  転倒の定義
   転倒の危険要因
  姿勢制御システムにおける年齢関与の変化
   筋骨格系
   神経筋系
   感覚系
   予測的姿勢能力
   認知問題と姿勢制御
  年齢関与の姿勢障害を理解するための症例研究アプローチ
  要約
  実習の解答
 第10章 姿勢制御の異常(田中 繁)
  はじめに
   神経学的病変に続く転倒
  活動系にある問題
   安静立位における問題
   外乱動揺下での立位における運動戦略の障害
  感覚系/知覚系における障害
   感覚組織化に関する問題
  予測姿勢制御の消失
  認知機能にある問題
   二重課題下での姿勢安定性の障害
   認知症を呈する人の姿勢制御
  座位姿勢制御の障害
   神経学的病変を呈する成人
   小児集団について
  症例研究アプローチによる姿勢制御不能の理解
   ジーンさん:脳血管障害後の姿勢問題
   マイクさん:パーキンソン病の姿勢問題
   ジョンさん:小脳障害における姿勢問題
   トーマス君:脳性麻痺児の姿勢問題
  要約
 第11章 姿勢制御障害を有する患者の臨床的対処法(新小田幸一)
  はじめに
   バランスリハビリテーションの概念的枠組
  検査
   安全─最優先事項
   参加に対するバランスの影響の検査
   機能的活動に及ぶバランスの影響の検査
   バランス戦略の評価
   基礎となっている機能障害の検査
  評価:検査結果の解釈
  課題指向型バランスリハビリテーション
   機能障害レベルでの介入
   姿勢制御に必要な戦略を改善するための活動
   機能的課題レベルでの介入
   参加の改善―根拠に基づく転倒予防
   まとめると次のようになる
  要約
  実習の解答
第III部 移動性機能
 第12章 正常な移動性における制御(田中 繁)
  はじめに
  移動運動を成功させるための基本的要件
  人間の歩行周期に関する記述
   歩行周期中の各期
   時間−距離因子
   歩行の運動学的記述
   筋活動パターン
   関節運動力学
  歩行のための制御機構
   歩行のための運動パターン発生器
   下行路の作用
   歩行中の機能的神経画像
   感覚性フィードバックと歩行の適応
   移動運動にかかわる認知系
   移動運動に対する神経以外の寄与
  歩行開始と速度の変更
   回転戦略
   歩行−走行遷移
  階段昇降
   階段の昇り
   階段の降り
   感覚経路の変化に対する階段昇降パターンの適応
  歩行以外の移動性
   移乗
   座位−立位運動課題
   仰臥位−立位運動
   ベッドからの起き上がり
   寝返り
  要約
  実習の解答
 第13章 一生の間の移動性の変化(田中 繁)
  はじめに
  移動運動の発達
   出生前の発達
   早期の足踏み行動
   自立移動運動の成熟
   走行,スキップ,跳躍,疾走
   適応性の発達
   歩行中の頭部と体幹の安定
   歩行の開始
   他の移動性スキルの発達
  高齢者の移動運動
   移動障害:加齢か疾病か
   時間−距離因子
   運動学的分析
   筋活動パターン
   運動力学的分析
   適応制御の変化
   バランス機能に障害を呈する高齢者の歩行変化
   高齢者の歩行変化における疾病の影響
   歩行機能における訓練プログラムの効果
   歩行開始と後ろ歩き
   階段昇降
   他の移動性スキルにおける年齢関連の変化
  幼児と高齢者の歩行の特性比較:退化仮説の検証
  移動性における年齢関連変化を理解するための症例研究アプローチ
  要約
  実習の解答
 第14章 移動性の異常(星 文彦)
  はじめに
  異常歩行
   分類体系
   運動系機能障害の歩行への影響
   歩行における感覚障害の影響
   歩行における認知および知覚障害の影響
  歩行の改善:移動領域における参加を制限する要因は何か
  歩行以外の移動性障害
   階段昇降
   移乗動作とベッド上での移動性
  移動性障害を理解するための症例研究
   ジーンさん:脳卒中後の片麻痺
   マイクさん:パーキンソン病
   ジョンさん:変性性小脳損傷
   トーマス君:脳性麻痺による痙性両麻痺
  要約
 第15章 移動性障害を有する患者の臨床管理(甲斐 悟)
  はじめに
  検査に関する課題指向型アプローチ
   機能レベルでの検査
   戦略レベルでの検査
   機能障害レベルでの評価
   移動性の測定:本当にこれらすべての検査や測定が必要か
  治療への移行
   目標設定
  移動性訓練の「課題指向型」アプローチ
   機能障害レベルでの介入
   戦略レベルでの介入
   機能的移動運動機構スキルを改善するための介入
   研究による証拠
   移動性領域での参加の改善
  階段昇降およびその他の移動性スキルの再訓練
   階段昇降
   課題と環境の要求を変化させることの重要性
  要約
  実習の解答
第IV部 リーチ,把握,物品操作
 第16章 正常なリーチ,把握,物品操作(田中麻子)
  はじめに
  運動制御の原則
   フィードフォワードによる運動制御対フィードバックによる運動制御
  標的物の視覚捕捉
   目−頭−体幹協調
   目の運動と手の運動の相互作用
  リーチと把握の行動特性(運動学)
  リーチと把握に関与する系
   感覚系
   運動系
  把握
   把握パターンの分類
   把握パターンの予測制御:精密握り形成
   把握と挙上課題
  リーチと把握の協調
  リーチと把握の神経制御の一般原則
   運動の不変的特性:運動プログラム
   リーチと把握の反応時間
   フィッツの法則
   神経系はいかにして運動の計画を立てるのか:筋座標戦略,関節角座標戦略,終点座標戦略
   距離プログラミング理論対位置プログラミング理論
  要約
  実習の解答
 第17章 リーチ,把握,物品操作:生涯での変化(田中 繁)
  はじめに
   リーチの発達における反射の役割
   リーチ行動:生来的にもっているものか学習により得たものか
  目標点位置の特定:目.頭協調
   注視点の移動
   目標物追尾運動
   リーチに関する視覚経路の発達
   目−頭−手協調の発達
  リーチと把握
   運動要素
   感覚要素
   把握の発達
   子どもは対象物の把握持ち上げにいつから予測制御を使い始めるのか
   握り力の適応
   移動物体を把握するための学習(捕捉)
   認知の要素:物体探索行動の発現
  目−手協調の発達における経験の役割
  リーチ課題の反応時間
   フィッツの法則
  高齢者における変化
   リーチ:加齢に伴う変化
   把握:加齢に伴う変化
   リーチ−把握の適応:加齢に伴う変化
   リーチ遂行能力の低下における代償と可逆性
   リーチ−把握と物品操作における年齢−関連変化を理解するための症例研究
  要約
  実習の解答
 第18章 リーチ,把握,物品操作の異常(小林 毅)
  はじめに
  標的の視覚的捕捉の問題
   視覚の欠損と対象物の視覚捕捉
  目−頭−手の協調性の問題
  リーチと把握に伴う問題
   リーチの機能障害
   把握に伴う問題
   掌中物品操作に伴う問題
   手放しに伴う問題
  失行症
  上肢障害を理解するための症例研究アプローチ
   ジーンさん:脳血管障害に伴うリーチと把握の問題
   マイクさん:パーキンソン病に伴うリーチと把握の問題
   ジョンさん:外傷性小脳損傷に伴うリーチと把握の問題
   トーマス君:脳性麻痺に伴うリーチと把握の問題
  要約
 第19章 リーチ,把握,物品操作の障害を有する患者の臨床的管理(下田信明)
  はじめに
  検査のための課題指向型アプローチ
   参加(遂行能力)の評価
   機能的活動(能力)の標準化された測定
   戦略的レベルの検査
   機能障害レベルにおける検査
  治療への移行
   長期目標
   短期目標
   患者−同定目標
  課題指向型アプローチによる介入
   機能障害レベルにおける介入
   戦略レベルでの介入
   機能的レベルでの介入
  要約
  実習の解答

 文献
 索引