やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

監訳者の日本語版第2版の序文
 本書は,“Fundamental Orthopedic Management for the Physical Therapist Assistant”原著第3版の全訳である.原著第2版の監訳者の序文でも述べたとおり,本書は米国のphysical therapist assistant(PTA)という専門家(およびその学生)のためのテキストである.PTAは,理学療法士(physical therapist:PT)によって評価され作成された治療プログラムのもとで,実際に現場で治療介入することを職務とする.PTが,詳細なクリニカルリーズニング,特異的な治療プログラムの作成,および高度な徒手的テクニックも含めた治療を展開するのに対し,PTAの業務は,PTの敷いた治療計画のレールに沿った比較的シンプルで平易な介入が中心となる.しかし,そのなかで,必要であれば検査も実施し,患者になんらかの変化があれば指導的立場のPTに報告・相談をする義務がある.
 私は,原著第2版を手に取ったときに,わが国の新人・若手PTが臨床に対処するうえで必要な内容が豊富に含まれていることに興味をもった.本書の特徴は,組織の正常な治癒過程について読者に徹底的な理解を求めてくることにある.それを踏まえたうえで,第V部以降,各身体部位の代表的な疾患の理学療法に関する解説が続く.本書第II部の組織治癒に関する記載は,決して平易とはいえない.外傷の治癒過程がいかに絶妙であるかということ,そして,われわれが日常業務で実施するROM訓練,ストレッチング,筋力増強,歩行練習といった基本的介入が実は身体の組織に非常に複雑な影響を及ぼしていることを思い知らされる.こういった内容は,新人・若手セラピストのときこそ,徹底的に学ぶことが必要なのではないか,と思う.今回,原著第3版の翻訳を終えて,その思いをいっそう強めた.第I部および第III,IV部の各章には,柔軟性,筋力,持久力,バランス,薬理,歩行,モビライゼーションおよび生体力学,といった整形外科的理学療法のキーワードとなる基本知識が網羅してある.さらに,第V部の各論は,臨床現場に直結した,より実践的内容である.読者には,ぜひ前半の総論的内容を把握しつつ,後半の各論(第V部以降)を臨床に活用していただきたい.
 原著第3版にも,原著第2版の基本的なポリシーは受け継がれている.しかし,原著者も序文や謝辞で述べているように大幅な内容の変化があり,一段とグレードアップしている.各章の内容の大胆な削除・追加に加え,新たに第VI部第24〜26章(リウマチ性疾患,疼痛,装具・義肢)が組み込まれた.これらの新しい章は,それぞれのテーマの入門的資料として,あるいは独立した読み物としても興味深く有用であろう.
 今回の翻訳陣も,勉強会・講習会などでともに学んだPT,および千葉メディカルセンター(旧川鉄千葉病院)リハビリテーション部のPTメンバーである.新設された章については,第24章は,リウマチ専門クリニックに勤務する山崎PTに,第25,26章は当部の石田PTにお願いした.
 PTはもちろんのこと,その他のセラピストやトレーナーの方々にも,基本書の1つとして本書を活用していだだくことを切に願う.この企画は,医歯薬出版編集部の方々の情熱と協力がなければ到底なしえなかった.この場を借りて深謝したい.
 2012年8月末
 監訳者 鈴木 勝

監訳者の日本語版第1版の序文
 冒頭から私ごとで恐縮であるが,整形外科疾患のリハビリテーションにかかわる機会が比較的多かったので,臨床に役立つ知識・情報を少しでも得ようと,この分野の海外のテキストや文献にも極力触れるようにしてきた.しかし,そのような私が,翻訳という形で1冊の整形外科的理学療法のテキストを紹介する機会に恵まれるなどとは夢にも思っていなかった.いま,分厚い翻訳原稿を前に,力を貸してくれた仲間たちのことや費やした日々を振り返ると感慨深いものがある.しかし同時に,どのような仕事の結果もそうであるように,それが自分の手から離れ,“独り立ち”していくのを見送ることにどこか不安な気持ちがあるのも否定できない.
 “整形外科的理学療法-基礎と実践-”は,その原著名である“Fundamental Orthopedic Management for the Physical Therapist Assistant second edition”から明確にわかるように,米国のphysical therapist assistant(PTA)という職種の学生,指導者および臨床家のために執著されたテキストである.本書の具体的な内容については,原著者のGary A.Shankmanによる本書の第1版および第2版の緒言に詳細かつ的確に述べられているので,翻訳に携った者の立場からは,まずPTAについて若干説明をし,次に,なぜ本書をわが国の理学療法士(PT)に紹介したいと考えたのかについて述べたいと思う.
 PTAについては,現在,手元に十分な情報があるわけではなく,インターネットなどから得た職業に関する簡素な資料に頼るしかない.それらによれば,PTAは,PTを助け,患者の可動性の改善,痛みの軽減,身体的機能障害の改善や予防を目的とした治療を提供する.その治療はPTの管理指導の下で実施され,松葉杖など自助具の使用法やエクササイズの指導,さまざまな物理療法の施行などである.PTAがライセンス化している州では,臨床的な仕事やある程度の検査・評価を施行することもできる.PTAはPTのいわば補佐役として位置づけられているようである.以上からは,わが国でいえば,臨床経験年数がまだ浅く,上司や先輩の指導の下で仕事をしているPTがイメージできる.
 さらに付け加えると,PTAになるためには,米国の多くの州では,法律的に,少なくとも短大卒業以上の学歴を取得する必要がある.米国理学療法協会が公認した所定のプログラムをおよそ2年間で終了すると最終的に短大卒の資格を得る.プログラムの内容は,学科と実習に分かれており,卒業後の職場は,本書で対象としている整形外科の分野に限らず,さまざまなクリニック,病院,施設であるという.卒後教育を受けるPTAも多く,それを義務づけている州もある.そういえば,私が数年前,米国のある運動療法の講習会に参加した際,受講者にはPTもPTAも含まれており,「私はPTAだ」と堂々と自己紹介している場面が非常に印象的であった.さらに検索を進めれば,もっと詳細な情報を得ることも可能かもしれないが,以上がPTAの大雑把な紹介である.
 さて,本書を翻訳した当面の目的はPTAという職種を紹介することではない.たまたま本書の存在を知ったときに,わが国のPTの臨床現場に有益な情報をもたらす特長を備えていると確信したからである.その主な理由を以下に述べる.
 (1)本書には,第2章を中心として,臨床現場で留意すべき観察事項の解説とともに,筋骨格系障害のリハビリテーションにおけるPTAの役割,PTAとPTのあるべき連携について詳細に記載されている.その内容からは,われわれ現場の臨床家に必要と思われることが随所に見いだされる.とくに,現場で患者指導や観察を続けながら,治療的介入の際に,続行,修正,中止の判断をPTに相談しながら決定していくことが強調されており,2章以降にもしばしば繰り返されている.原著者がPTとPTAとの連携について述べている内容は,われわれの現場の指導的PT(上司,先輩など)と若手PT(あるいは部下)に置き換えたり,処方を出した医師とPTに置き換えたりしても違和感がない.また,一部の病院やクリニックで活躍しているトレーナーという職種との連携にも該当するかもしれない.原著者の意図の拡大解釈かもしれないが,われわれにとって本書においても本章の内容は大きな意味をもつと思う.
 (2)第II部の内容は,細胞学や分子生物学の専門家にとっては初歩的知識だろうが,(私も含めて)多くの読者にとっては手ごわいが新鮮ではないかと思う.わが国の運動療法のテキストには,ここまで詳細に外傷の治癒過程に立ち入った記載を見かけることは少ない.第II部に目を通すにつれて,「こういった知識が不十分なまま臨床をしてきた」という悔恨の念とともに,「こういった知識を現場に生かすことが専門職として大切なのではないか」と強く感じた.この気持ちは今回の翻訳企画の原動力であり続けた.本書の根幹部分は,確かに第VI部(第18〜24章)であると思うし,本書を手にした臨床家や学生の多くがまず参照するに違いない.しかし,原著者も第2版の緒言で,筋骨格系組織の治癒の性質についての理解の重要性について述べているが,臨床現場で真の意味で応用が利くようになるためには,まさにこういった知識・理解が必要なのだと思う.第VI部を読めばわかるが,常に基礎として第II部の内容が意識されている.
 (3)本書に設けられたユニークな章である第14章(薬理学)および第17章(生体力学)は,(私も含めて)文系出身のPTにとって,理学療法の臨床との関連性という観点から学び直す絶好の機会を与えてくれるものと思う.翻訳陣に物理系および化学系出身者がいたことはラッキーであった.
 以上のような理由で,本書の各章に目を通すにつれて本書を翻訳・紹介したいという思いは強くなり,幸い医歯薬出版社の理解と協力を得て2006年の秋から翻訳がスタートする運びとなった.本書の翻訳陣は,大半が当院PTスタッフもしくは近隣病院のPTである.臨床経験3〜10年前後のメンバーであり,日々,目の前の患者さんと向き合う一方で,英文とパソコンにも立ち向かうのはたいへんであったと思う.また,勉強会・講習会等でともに学んだというこちらの勝手な理由からではあったが,翻訳を快く引き受けてくれた九州の両氏にも感謝する.非力ながら監訳を担当したが,手際の悪い校正によって医歯薬出版の方々には多大なご苦労をおかけしたに違いない.それにもかかわらず,迅速な対応や粘り強く原稿を待ってもらったことに,この場を借りして感謝の意を表す.
 本書は米国のPTA教育を目的としたものだが,その内容のほとんどはPTが理解・習得しておく必要のある知識である.しかし,本書は,原著者自身も述べているように包括的なテキストではなく,運動学,解剖学,検査・治療テクニックなどについてはそれぞれの専門書で補強する必要があるだろう.また,本書のなかには,若干説明不足の箇所や訂正が必要と思われる記載がなかったわけではない.そのような部分には,翻訳者や監訳者が可能な範囲で訳注を付けた.冒頭部分で,本書の“独り立ち”に触れたが,実際には到底,独立できるものではないと思う.読者のご指導,ご意見を受けてより良いものに育てていきたいと考えている.本書が,PTを初め整形外科的理学療法にかかわるすべての方々にとって,そして患者さんにとってなんらかの役に立てば監訳者としてこのうえない喜びである.
 2008年8月
 監訳者 鈴木 勝

序文
 “Fundamental Orthopedic Management for the Physical Therapist Assistant”第2版(『整形外科的理学療法』医歯薬出版)が出版されて8年が経過するが,われわれは,この第3版を待った価値があると感じてもらうことを期待している.最大のアップデートと改訂のもとに,本書は発展を遂げた.その発展の大部分は,1人の著者から共同編者に移行したことによって,それぞれの専門分野をもつ多数の著者を統括できるようになったことにある.Robert Manskesが,編著者としてこの改訂版においてGaryと共同作業をすることになった.Robertは,整形外科およびスポーツ理学療法の分野において非常に尊敬されており,テキストの執筆・編纂,本の共同執筆および科学論文の執筆も手がけている.彼は,Wichita州立大学理学療法博士号のプログラムを担当する准教授でもあり,彼は整形外科のコースを13年間にわたって教えている.また,Robertは,整形外科の患者の治療を週1回,16年間続けてきた.
 整形外科と身体的リハビリテーションの分野が変化し続けるにつれて(ときにそれは週単位のようにも思えるが),このFundamental Orthopedic Management for the Physical Therapist Assistantの改訂版は,physical therapist assistant(PTA)の教育に対して,基本的整形外科的マネジメントの変化をもたらすように委ねられている.本書は,全般的な整形外科的理学療法を目的とするよりも,むしろPTAに焦点をおいているという点は確かである.この第3版の焦点は,大部分が,理学療法検査,治療計画の進展およびPTAが臨床実践できる介入についての批判的考察(critical thinking)と適用(application)に関する内容である.整形外科患者を十分に評価する能力はPTAの実践の焦点には含まれないが,われわれはPTAが基本的評価の要素や(評価や鑑別診断過程で使用する)検査測定方法について理解しておくことは必須であると感じている.これらの方法について基本的な理解をもったうえで,鑑別診断やさまざまな疾患および病理的進行についての理解が加われば,PTAは疾患の初期における些細な変化でさえも気づくようになるであろう.第3版の各章は実践パターンの変化を反映して,大幅に更新している.このなかには,実践可能な範囲でエビデンスに基づく治療法の処方や使用も含まれている.このように,本書は,あらゆる整形外科的事柄の“ワンステップ(one-step)”訳注であり続けるであろうし,PTA学生とPTA臨床家のいずれにも使用されるべきだろう.
 本書の出版前の時期に,合衆国で公認されたPTAプログラムのメンバーによって,数回にわたる内容の検討が行われた.これらの検討のあと,第2版にあった物理療法の章は削除された.それは,非常に多数のプログラムが,物理療法に関するさまざまな形態や用途についてのより詳細で深い内容を提供する別のテキストを利用しているという情報を基にしたことである.しかしながら,失うものがあれば得るものもある.物理療法の章の削除は,われわれに3つの新しい章をもたらしてくれた.第24章はSteven Elliottによる“リウマチ性疾患”(Rheumatic Disorders)であり,リウマチ性疾患の過程などについて記載されている.第25章はMichelle H.Cameronによる“疼痛”であり,彼女は疼痛のタイプ,疼痛のメカニズム,測定法,そしてマネジメントについて記載するという素晴らしい仕事をした.第26章は装具と義肢の紹介である.この章では,Leslie K.Kingが装具,固定具および義肢の器具と使用法について記載している.
 さらに地域の専門家たちの参加が,第3版を非常に強力に補強してくれた.第1〜2版では,Garyがたいへんな努力をしてくれたが,身体的リハビリテーションのあらゆる分野において1人の人間が専門家であることは不可能である.各章を担当したさまざまな対象領域の専門家たちに従うことで,われわれが本書全体の幅と深さを評価できたことは意義深い.多くの方々の貢献によってわれわれはこの目標に到達したのだが,ここではわずかな方たちを紹介させていただく.近年,Harvery W.Wallmannは,柔軟性にかかわる問題点についての多数の研究論文,文書,および自宅学習コースを発表している.第3章の“柔軟性とストレッチング”において,彼は運動範囲(range of motion),柔軟性(flexibility)およびストレッチング(stretching)の違いについて議論している.また,彼は,バリスティックストレッチングとスタティックストレッチングの比較および身体パフォーマンスについての最近の研究も強調している.Bryan Remannは,バランスと協調性についてすでに多数の執筆をしている学者である.第6章の“バランスと協調性”において彼は,整形領域のバランス課題についての原理について簡潔に述べたあと,上下肢のバランスや協調性を強調するさらに詳しい方法について記載している.薬学者のLaDonna S.Haleは,第13章を完全に改訂して“整形外科領域の薬理学”として,むずかしい考え方をわかりやすくするために読みやすいアプローチ法で統一してくれた.もはや関連のないディスカッション部分は削除して,不足している部分に詳解を加えた.これらによって,素晴らしい章となり,PTAは基本的な薬学をもっと十分に理解することができるだろう.このことは,期待しながら第3版を待っていてくれた読者のための1つの見本といえる.
 読者がその基本的整形外科的マネジメントの必要から前冊を所持したのと同様に,読者は第3版を信頼し続けるはずである.読者が本書に対してなんらかのフィードバックをしていただければありがたい.建設的な批判は,われわれが教育的ニードに適した真のテキストブックを作り上げる糧となる.第4版では考慮すべきであると読者が考える点があれば,推奨するものあるいは追加すべきものについてEメールで伝えてほしい.メールアドレスは,Robert.manske@wichita.edu.である.すべてのご意見を受け入れ尊重するつもりである.
 Gary A.Shankman
 Robert C.Manske

謝辞
 本書(Fundamental Orthopedic Management for the Physical Therapist Assistant)を通じて,ある欲求が広がったのは何年も前のことである.この思いは実にシンプルであり,整形マネジメントに関する基本的な基盤となる情報を扱うphysical therapist assistant(PTA)の必要性に取り組む特別なテキストを執筆しようというものであった.これに先立ち,さまざまな整形的病態についての情報を調査した自分自身のテキスト(第1版)を見直すのに多くの時間を費やした.私は,理学療法士(physical therapist:PT)のためにPTが執筆した,あるいは,医師のために医師が執筆したテキストから情報を“探し出し”,精選しようとした.明白なのは,入門レベルのPTAの学生が身につけるべき,凝縮され,なおかつ簡潔なテキストであるためには,PTAたちのためのPTAの視点,養成および経験をもとに執筆された整形領域に関する必須かつ実践的な情報を含んでいる必要があることである.
 数年が経ち,第2版は新しい情報,新しい章の追加,そして多くの前置き部分の拡大であった.この第3版は,絶対に第1版を刷新する内容でなければならない.実際にこのことを貫くために,この企画は私だけでは乗り越えられない大きなものに成長した.そのようなわけで,私はRobert Manskeに非常に感謝している.私の友人であり共同編著者である彼からは多くの恩恵を受けた.整形的知識が割り当てられた膨大かついまだ変化の止まない領域を扱うことに関して,非常に敬意を表され,絶大な権限をもち,無限の能力をもっている点で,私は彼にはとても及ばない.Robは本書を初期の粗末な段階から,多くの著者によるさまざまな整形的テーマを含む統一体にまで進展させた.彼は,学生も臨床家も同様に立ち向かわなければならない幅広い問題や病態をかなり奥深く扱ったのである.Robの有能な指導のもとで,厳しい講義スケジュール,臨床活動そして家庭生活を維持しつつも,理学療法分野の“だれがだれである(Who's Who)”というように読める共著者のリストを作ってくれた.それぞれの共著者たちには,費やしていただいた時間,専門性,そしてそれぞれの知識と手腕と才能を快く分かち合ってくれたことに対して感謝の意を表したい.
 新設の3つの章の著者に対しては,私は個人的に深謝する.Steven ElliottとLeslie Kingには,この長い終わりのないような旅路における,その忍耐力,辛抱強さ,親切心そして友情に感謝する.Michelle Cameronに対しては,専門性を分かち合ってくれたことに感謝する.もちろん,Elsevier社には,実現するにはとても大きい企画を可能にした大勢の人たちがいる.それぞれの方々に感謝する.この企画を統率するチームのメンバーであるMegan FennellとLaura Loveallは,その労力に対して,必ずや当然のように,評価と賞賛を受け続けるだろう.彼らは,私の制作上の支配をある程度を維持しようという道理をわきまえない,そしてしばしば不適切,支離滅裂,かつ理解しにくい試みに,耐え忍んでくれたのである.Rob,MeganそしてLauraの優しさと技能を通して,私は自己評価において,“低姿勢になる”ことを教えられた.そうしている際に,本書はあらゆる領域においてより良くなった.
 ここで,第2版の謝辞に注意を向けてほしい.そこに私が記した人たち,部局および組織の名前を今,再び私は繰り返す.彼らは気づいていないかもしれないが,すべてが私の今日の生活に影響を与えている.大いなる喜びと感謝の念をもって,ありがとうと言いたい.
 さらに,私にとっては,私の人生における新たな方向づけにも感謝したい.前進する前に,私に学ぶ特典を与えてくれた患者,セラピスト,医師,そして教員のすべてを讃える.この学びと分かち合いの特筆すべき旅に,大きな喜び,謙虚さ,そして深い感謝をもってお礼を述べる.
 最後に,本書が賞賛されたり評価されたりした場合は,それらのすべてはRobert Manskeとその他の共著者のおかげであり,誤りや漏れや不足があれば,それらのすべては私によるものである.
 Gary A.Shankman
 訳者一覧
 監訳者の日本語版第2版の序文
 監訳者の日本語版第1版の序文
 執筆者
 序文
 謝辞
第I部 整形外科的マネジメントの基本的考え方
 1 治療場面における患者管理と観察
  治療中の患者管理
   患者管理の構成要素
   リハビリテーションチームによる患者管理
   基本的な患者管理技術
  治療中の修正
  セラピスト特有な考え方の理解
  用語
  復習問題
 2 身体評価におけるphysical therapist assistantの役割
  米国理学療法協会の手引き書
   理学療法士のための実践ガイド
   PTAのための倫理的行為の基準
   理学療法における専門性:基本的価値観
   臨床実践の手段
   PTA教育の標準的モデル,年版
  炎症
   炎症とは何か?
   炎症に対する一般的な禁忌と注意事項
   急性と慢性
  発熱
   熱と感染の抑制
   熱とエクササイズ
   熱とリンパ節
  発赤と皮膚色の変化
  浮腫
  痛み
   “赤旗”疼痛症候群
   間欠的跛行
   関連痛
   内臓痛
   トリガーポイント
   痛み:最終的に注意するべきこと
  バイタルサイン
   脈拍(心拍数)
   呼吸
   血圧
   パルスオキシメトリー
   バイタルサインと運動
   疲労
  筋骨格系構造体の評価
   エンドフィール
   骨格筋組織
   骨
   関節と靱帯
  歩行
  バランス
  記録
  まとめ
  用語
  復習問題
 3 柔軟性とストレッチング
  結合組織の特性
   ストレスとストレイン
   粘弾性
  柔軟性
   柔軟性の測定
   柔軟性に影響する因子
  ストレッチング
   ストレッチングの原理
   異なったストレッチングテクニックの比較
   提示されたストレッチングの利点
   いつ伸張するか
   軟部組織の拘縮に対するストレッチング
  まとめ
  用語
  復習問題
 4 筋力
  一般的な筋生物学
   筋線維の種類
  筋収縮の種類
   求心性
   遠心性
   等尺性
   等張性
   等速性
  筋力と仕事率の定義
  筋力測定
  筋収縮の比較
  エクササイズに対する筋の反応
  遅発性筋痛
  筋の収縮速度
  臨床に関連したエクササイズプログラム
   プライオメトリック
   閉鎖性運動連鎖エクササイズ
   筋力トレーニングプログラムのピリオダイゼーション
  筋力トレーニングに使用される治療エクササイズ用品
  用語
  復習問題
 5 持久力トレーニング
  心血管系トレーニング
   有酸素運動のエネルギー代謝
   心血管系持久力トレーニングの効果
  米国人のための有酸素運動ガイドライン
   成人のエクササイズガイドライン
   小児のエクササイズガイドライン
  運動強度を決定する方法
   目標心拍数と最大心拍数の見積り
   自覚的疲労を用いたボルグ評価
  有酸素的トレーニングの方法
  整形外科疾患患者に対する有酸素運動
  筋持久力トレーニング
  用語
  復習問題
 6 バランスと協調性
  整形外科疾患に対するエクササイズ
  バランス,固有受容性感覚,神経筋制御,協調性の定義
   メカノレセプター
  バランスと協調性のテスト
  整形外科疾患のバランストレーニング
   整形外科疾患のバランス機能に対する課題
   上肢のバランスと固有受容性トレーニング
  まとめ
  用語
  復習問題
第II部 組織の治癒に関するレビュー
 7 結合組織の構成と機能
  結合組織の特性
  組織治癒に関するレビュー
   炎症反応
   炎症
   線維増殖
   再造形と組織の成熟
  外傷の修復に関与する一般的な細胞
   細胞構造
   プロテオグリカンと糖蛋白
  炎症と修復の役割を担う細胞
   多形核白血球
   単核食細胞
   線維芽細胞
   プロテオグリカン,トロンボキナーゼおよびロイコトリエン
   サイトカイン
  一般的な細胞損傷と修復
  一般的な修復・再生過程
  用語
  復習問題
 8 靱帯の治癒
  靱帯の解剖学
  機械的性質
  損傷と修復
   非手術的修復と手術的修復
   修復か非修復か
   固定(不動化)の影響
   エクササイズ
  可動性再獲得とエクササイズの効果
   持続的他動運動
   実践的考察
  用語
  復習問題
 9 骨の治癒
  構造と機能
   骨の細胞
   骨のタイプ
   肉眼的な骨構造
   骨の血管供給
  骨粗鬆症
  骨折の分類
  骨治癒の要素
  骨の損傷と修復
   骨折修復の段階
   骨治癒のプロセス
   骨組織に対する固定の影響
   合併症
   骨折の固定:その生物学と生体力学
   骨治癒に影響する因子
   骨修復の刺激
   骨治癒期間中のリハビリテーション技術の臨床的適応
  用語
  復習問題
 10 軟骨の治癒
  関節軟骨
   構成
   機能
   固定と治癒に対する反応
   外傷
   治癒と修復
  線維軟骨
   構成
   機能
   外傷
   治癒
  用語
  復習問題
 11 筋と腱の治癒
  筋と腱の機能解剖
   筋と腱のマクロ構造
   筋のミクロ構造
   腱のミクロ構造
  筋と腱の損傷
   筋と腱の損傷メカニズム
   腱に対する加齢の影響
  損傷と治癒
   急性期(炎症期)
   亜急性期(修復と治癒)
   慢性期(成熟と再造形)
   固定の影響
   筋修復と異形骨形成
  筋と腱の損傷に対するエビデンスに基づいた治療的介入
   急性期:筋腱損傷に対する応急処置
   急性期:理学療法クリニックにおける治療
   亜急性期:理学療法クリニックにおける治療
   慢性期:理学療法クリニックにおける治療
   特別な考慮:腱修復と腱疾患
  まとめ
  用語
  復習問題
 12 神経血管系の治癒と血栓塞栓症
  末梢神経損傷
   血管供給
   神経の機械的性質
   神経損傷の原因と分類
   圧迫性および牽引性神経障害
   末梢神経の修復方法
   末梢神経損傷後の回復
   末梢神経の機能的回復の評価
  血管損傷
   構造と組成
   損傷に対する血管の反応
   損傷のメカニズム
   血管損傷の徴候と症状
   診断的研究
   血管修復の方法
  血栓塞栓症
   危険因子
   血栓塞栓症の病態生理学
   フィルヒョー(Virchow)の3徴候
   深部静脈血栓症の徴候と症状
   診断的研究
   肺塞栓症
   血栓塞栓症の治療
  用語
  復習問題
第III部 整形外科領域の一般的薬物
 13 整形外科領域の薬理学
  薬理学と安全な薬物療法の基本的原則
   薬物動態
   薬力学
   安全な薬物療法の原則
  整形外科領域での感染を治療・予防するための薬物療法
  疼痛と炎症を治療するための薬物療法
   疼痛の分類
   オピオイド鎮痛薬
   アセトアミノフェン
   非ステロイド性抗炎症薬
   シクロオキシゲナーゼ-2阻害薬
   コルチコイド
  まとめ
  用語
  復習問題
第IV部 モビライゼーションと生体力学
 14 歩行
  歩行周期と歩行相
  正常歩行の特徴
   足部,足関節,膝関節,股関節,骨盤の動き
   関節運動とエネルギー消費
   筋活動
  歩行異常
   疼痛回避歩行
   体幹の側屈
   反対側への骨盤落下
   体幹の後方傾斜
   体幹の前方傾斜
   過度の足関節底屈
   股関節の分回し
   膝関節屈曲の増加
  歩行パターンの教育
   荷重
   補助具を用いた段差昇降
   補助具の選択
  用語
  復習問題
 15 関節モビライゼーションの考え方
  モビライゼーションの基本的概念
  関節の適合と位置
  凹凸の法則
  モビライゼーションのグレード
  関節のエンドフィール
  関節包パターンと非関節包パターン
  モビライゼーションの適応と禁忌
  関節モビライゼーションの臨床的適用
  モビライゼーションに関するエビデンス
  用語
  復習問題
 16 運動の生体力学的基礎
  関連用語
  基本概念
  生体力学的原則
   静力学と動力学
   直線運動と角運動
   運動学と動力学
   ニュートンの運動の法則
  発展的な生体力学的概念
   反作用力
   てこと抵抗トルク
   運動連結の原則
   バランスと安定性
  損傷メカニズムの基礎的な生体力学的分析
   機械的荷重
   一般的な整形外科的損傷
  生体力学の進歩
  まとめ
  用語
  復習問題
第V部 部位別整形外科疾患のマネジメント
 17 足関節,足部,趾のマネジメント
  足関節の靱帯損傷
   外側靱帯損傷(足関節内反捻挫)
   三角靱帯捻挫(内側靱帯)
   重度の足関節捻挫あるいは足関節靱帯結合損傷
   陳旧性足関節靱帯不安定性
  腓骨筋腱亜脱臼
   介入
  アキレス腱障害
   介入
  アキレス腱断裂
   介入
  コンパートメント症候群
   介入
  足関節の骨折
   脛骨下端圧迫骨折(ピロン骨折)
   踵骨骨折
   距骨骨折
  足部と足関節の疲労骨折
  脛骨内側ストレス症候群
  足底筋膜炎(踵骨棘症候群)
   介入
  アーチの変形(扁平足と凹足)
  モートン神経腫(足底趾間神経腫)
   介入
  外反母趾
  趾の変形(ハンマー趾,マレット趾,鉤爪趾)
   介入
  足関節,足部,趾の一般的なモビライゼーションテクニック
   足関節モビライゼーション
   中足間関節モビライゼーション
   中足趾節関節モビライゼーション
  用語
  復習問題
 18 膝関節のマネジメント
  靱帯損傷
   膝前十字靱帯損傷
   膝後十字靱帯損傷
   内側側副靱帯損傷
  半月板損傷
   病因
   臨床的評価
   マネジメント
  関節軟骨損傷
   手術療法
  膝蓋大腿関節の病的状態
   病因
   身体的評価
   膝前面部痛に対する保存療法
   膝蓋大腿関節痛の術後マネジメント
  骨折
   膝蓋骨骨折
   大腿骨顆上骨折
   脛骨近位骨折(脛骨高原骨折)
   高位脛骨骨切り術
   人工膝関節全置換術
  まとめ
  用語
  復習問題
 19 股関節と骨盤のマネジメント
  股関節の骨折
   股関節骨折後のリハビリテーション
  大腿骨近位骨切り術
   大腿骨近位骨切り術後のリハビリテーション
  股関節の半関節形成術
  人工的な股関節部品の固定
  人工股関節全置換術
   THR後のリハビリテーション
  変形性股関節症
  ペルテス病
  鼡径部痛
  恥骨骨炎
  股関節の軟部組織損傷
   滑液包炎
   肉ばなれ
   筋挫傷
  骨盤と寛骨臼の骨折
  股関節の一般的なモビライゼーションテクニック
   牽引
   下方滑り(長軸方向への牽引)
   後方滑り
   屈曲,外転,外旋における前方滑り
  用語
  復習問題
 20 腰椎,胸椎,頸椎のマネジメント
  腰椎
   基礎力学
   腰椎椎間板の病理学
   腰椎骨折
   リフティング動作の基礎力学
   腰部機能障害の予防と教育:腰痛学校モデル
   人間工学と機能的能力評価
  胸椎
   胸椎の筋損傷
   胸椎椎間板障害
   脊柱後彎(症)
   脊柱側彎(症)
  頸椎
   むち打ちに関連した障害:急性期の捻挫と損傷
   分類に基づく治療:頸椎
   上肢のneurodynamic tension test A:正中神経優位
   腰椎,胸椎,頸椎のモビライゼーション
  用語
  復習問題
 21 肩関節のマネジメント
  肩峰下回旋腱板インピンジメント
   一次性または二次性の回旋腱板インピンジメントのリハビリテーション
   インピンジメントと回旋腱板損傷の外科的マネジメント
  肩甲上腕関節の不安定性と脱臼
   保存的マネジメント
   術後管理とリハビリテーション
  癒着性関節包炎
  肩鎖関節の捻挫と脱臼
  肩甲骨骨折
  鎖骨骨折
  上腕骨近位端骨折
   肩関節全置換術
  肩関節のモビライゼーション
   肩甲胸郭関節のモビライゼーション
   肩甲上腕関節のモビライゼーション
  用語
  復習問題
 22 肘関節のマネジメント
  肘の軟部組織損傷
   外側上顆炎
   内側上顆炎
   内側外反ストレス過負荷
   外側側副靱帯損傷
  肘の骨折
   上腕骨遠位端骨折(上腕骨顆上骨折)
   “T字型”または“Y字型”の顆間骨折
   橈骨頭骨折
   肘頭骨折
   脱臼骨折
  肘関節のモビライゼーション
  用語
  復習問題
 23 手関節と手のマネジメント
  手関節と手の骨損傷
   橈骨・尺骨遠位端骨折
   手根骨骨折
   舟状骨骨折
   中手骨骨折
   指節骨骨折
  手関節と手の軟部組織損傷
   手関節靱帯損傷
   腱損傷
  手関節と手指関節のモビライゼーション
   手関節のモビライゼーション
   手指関節のモビライゼーション
  用語
  復習問題
第VI部 マネジメントに苦慮する整形外科的コンディション
 24 リウマチ性疾患
  関節炎
   変形性関節症
   関節リウマチ
   反応性関節炎
   乾癬性関節炎
   若年性関節リウマチ
   化膿性関節炎
   脊柱の関節炎
  非関節炎性リウマチ疾患
   痛風
  線維筋痛症
   全身性エリテマトーデス
  骨粗鬆症
  リウマチ性疾患の治療
   リウマチ性疾患のリハビリテーションマネジメント
   リウマチ性疾患の薬物マネジメント
   リウマチ性疾患の外科的マネジメント
  用語
  復習問題
 25 疼痛
  疼痛の種類
   急性痛
   慢性痛
   関連痛
  疼痛の受容と伝達のメカニズム
   疼痛受容器
   末梢神経経路
   中枢の経路
   交感神経系の影響
   サブスタンスPの役割
  疼痛の調節と制御
   ゲートコントロール理論
   内因性オピオイド系
  疼痛の評価
   視覚的アナログ尺度と数値尺度
   意味微分法
   その他の測定方法
  疼痛の記述
  疼痛のマネジメントアプローチ
   薬理学的アプローチ
   物理療法
   学際的な疼痛の治療プログラム
  用語
  復習問題
 26 装具学と義肢学入門
  装具学
  義肢学
   装具や義肢の調整487
  デバイスの選択
   装具
   義肢
   その他の義肢(補綴)製品
  まとめ
  用語
  復習問題

 付録A 整形外科領域で一般に使用される薬物
 付録B 一般的検査の基準値
 付録C エクササイズやスポーツパフォーマンスの運動量を記述するための用語と測定値の単位
 付録D 人名などを名称の由来(eponym)とする骨折
 付録E 身体の主要な運動と運動が起きる関節に作用する筋群

 復習問題の解答

 索引