序文
本書はリハビリテーション医学を初めて学ぼうとする人々を対象としている.すなわち医学生,看護学生,理学療法士,作業療法士,あるいは言語聴覚士をめざしている人々,社会福祉を学んでいる人々,臨床心理士をめざしている人々などである.
リハビリテーション医学の教科書は,内科学や外科学と同様に膨大な分量に及んできている.しかも余りに専門的内容のために,臨床経験がないとその内容は無味乾燥で,通読することが難しくなっている.本書はリハビリテーション医学を系統的に理解できる基礎的な教科書をめざしたものである.
リハビリテーション医学・医療が対象としている障害者は,医学の発展にともなって,複数の併存疾患をもつ高齢者や,難病を抱える人々が多くなり,社会的に自立生活を営むことが一層困難になっている.これらの障害者に立ち向かうために求められる要素は,第1に障害者復権の哲学,第2に社会復帰をめざす目標,さらに第3に,その「目標」を実現するためのリハビリテーション技術である.また具体的にリハビリテーション医療者に求められる知識は,病気に対する集学的アプローチと障害者に対する評価や治療アプローチである.また広範な社会福祉に関する知識も必要になる.
本書の総論部分は,第1章「リハビリテーション医学の理念と3つの源流」,第2〜3章は「リハビリテーションの対象と障害者の実態,障害の階層とアプローチ」,第4〜5章では「評価学,治療学」などから構成されている.また第6章に「ライフステージにおける障害特性」を総論として加えた.総論に多くの紙面を割いた.各論は第7〜13章で,「脳損傷」「脊髄損傷」「神経筋疾患」「運動器疾患」「心肺疾患」「発達障害」「担がん患者のリハビリテーション」から構成されており,これらの記述は最小限にとどめた.また,医師国家試験に医学英語が出題されるようになったことから,できるだけリハビリテーション医学用語に英語併記を行った.
帝京大学医学部,看護学校,医療技術学部,早稲田大学第2文学部や文化構想学部,新潟医療福祉大学,国立障害者リハビリテーションセンター学院で,著者が実際に学生に講義した内容を教科書としてまとめたものである.また多くの内容は著者自身がリハビリテーション研修医,あるいは専門医初期(20〜30年前)に勉学したメモを基にしている.このために引用および参考文献を失念し,欠落が多い.これらの文献著者の先生に陳謝し,ここに引用させていただくことを深謝したいと思います.
本書がリハビリテーション医学の理念と技術,障害者の理解に少しでも役立てば著者の望外の喜びである.
本書執筆に際して労をとっていただいた医歯薬出版の齋藤和博氏に,この場を借りて感謝したい.
2011年3月 栢森良二
本書はリハビリテーション医学を初めて学ぼうとする人々を対象としている.すなわち医学生,看護学生,理学療法士,作業療法士,あるいは言語聴覚士をめざしている人々,社会福祉を学んでいる人々,臨床心理士をめざしている人々などである.
リハビリテーション医学の教科書は,内科学や外科学と同様に膨大な分量に及んできている.しかも余りに専門的内容のために,臨床経験がないとその内容は無味乾燥で,通読することが難しくなっている.本書はリハビリテーション医学を系統的に理解できる基礎的な教科書をめざしたものである.
リハビリテーション医学・医療が対象としている障害者は,医学の発展にともなって,複数の併存疾患をもつ高齢者や,難病を抱える人々が多くなり,社会的に自立生活を営むことが一層困難になっている.これらの障害者に立ち向かうために求められる要素は,第1に障害者復権の哲学,第2に社会復帰をめざす目標,さらに第3に,その「目標」を実現するためのリハビリテーション技術である.また具体的にリハビリテーション医療者に求められる知識は,病気に対する集学的アプローチと障害者に対する評価や治療アプローチである.また広範な社会福祉に関する知識も必要になる.
本書の総論部分は,第1章「リハビリテーション医学の理念と3つの源流」,第2〜3章は「リハビリテーションの対象と障害者の実態,障害の階層とアプローチ」,第4〜5章では「評価学,治療学」などから構成されている.また第6章に「ライフステージにおける障害特性」を総論として加えた.総論に多くの紙面を割いた.各論は第7〜13章で,「脳損傷」「脊髄損傷」「神経筋疾患」「運動器疾患」「心肺疾患」「発達障害」「担がん患者のリハビリテーション」から構成されており,これらの記述は最小限にとどめた.また,医師国家試験に医学英語が出題されるようになったことから,できるだけリハビリテーション医学用語に英語併記を行った.
帝京大学医学部,看護学校,医療技術学部,早稲田大学第2文学部や文化構想学部,新潟医療福祉大学,国立障害者リハビリテーションセンター学院で,著者が実際に学生に講義した内容を教科書としてまとめたものである.また多くの内容は著者自身がリハビリテーション研修医,あるいは専門医初期(20〜30年前)に勉学したメモを基にしている.このために引用および参考文献を失念し,欠落が多い.これらの文献著者の先生に陳謝し,ここに引用させていただくことを深謝したいと思います.
本書がリハビリテーション医学の理念と技術,障害者の理解に少しでも役立てば著者の望外の喜びである.
本書執筆に際して労をとっていただいた医歯薬出版の齋藤和博氏に,この場を借りて感謝したい.
2011年3月 栢森良二
序文
第1章 リハビリテーションの理念
1 リハビリテーションという言葉
2 リハビリテーションの定義
3 リハビリテーションの成立過程
4 障害者の復権とその源泉
5 ノーマライゼーション
6 自立生活運動
7 ユニバーサル・デザイン
第2章 リハビリテーションの対象と障害者の実態
1 医学的リハビリテーションの対象
2 リハビリテーション医学の対象
3 リハビリテーション医学と生物学的医学
4 障害者の実態
5 身体障害者の内訳
第3章 障害の階層とアプローチ
1 ICDとICIDH
2 ICIDHからICFへ
3 ICFの分類項目
4 障害へのアプローチ
5 病気と障害の相違
第4章 リハビリテーション評価学
1 障害の評価
2 身体計測
3 運動学
4 身体所見
5 運動機能
6 感覚障害
7 小児の運動発達
8 高次脳機能障害
9 ADLの評価
10 認知症の評価
11 電気生理学検査
12 機能予後学
第5章 リハビリテーション治療学
1 心理的アプローチ
2 廃用症候群
3 関節拘縮
4 筋力強化
5 全身運動
6 歩行練習
7 リスク管理
8 リハビリテーションの流れと目標
第6章 ライフステージにおける障害特性
1 ライフサイクル
2 障害児の特性
3 青年期
4 成人期
5 老年期
6 ライフステージにおける障害アプローチ
第7章 脳損傷のリハビリテーション脳卒中,脳外傷,低酸素脳症との比較
1 脳血管障害
2 脳外傷
3 低酸素脳症
第8章 脊髄損傷のリハビリテーション
1 外傷性脊髄損傷の発生頻度
2 脊髄損傷の原因
3 脊髄の機能解剖
4 損傷タイプと病態
5 機能障害
6 能力低下
7 アプローチ
第9章 神経筋疾患のリハビリテーション
1 パーキンソン病
2 脊髄小脳変性症
3 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosi:ALS)
4 末梢神経障害
第10章 運動器疾患のリハビリテーション
1 骨粗鬆症
2 変形性関節症
3 関節リウマチ
4 血友病性関節症
第11章 心肺疾患のリハビリテーション
1 虚血性心疾患
2 慢性閉塞性肺疾患
第12章 発達障害のリハビリテーション
1 脳性麻痺
2 筋ジストロフィ
3 二分脊椎
第13章 担がん患者のリハビリテーション
1 がんの部位別罹患数
2 リハビリテーションの特徴
3 がん治療の把握と障害評価
4 問題点とアプローチ
索引
第1章 リハビリテーションの理念
1 リハビリテーションという言葉
2 リハビリテーションの定義
3 リハビリテーションの成立過程
4 障害者の復権とその源泉
5 ノーマライゼーション
6 自立生活運動
7 ユニバーサル・デザイン
第2章 リハビリテーションの対象と障害者の実態
1 医学的リハビリテーションの対象
2 リハビリテーション医学の対象
3 リハビリテーション医学と生物学的医学
4 障害者の実態
5 身体障害者の内訳
第3章 障害の階層とアプローチ
1 ICDとICIDH
2 ICIDHからICFへ
3 ICFの分類項目
4 障害へのアプローチ
5 病気と障害の相違
第4章 リハビリテーション評価学
1 障害の評価
2 身体計測
3 運動学
4 身体所見
5 運動機能
6 感覚障害
7 小児の運動発達
8 高次脳機能障害
9 ADLの評価
10 認知症の評価
11 電気生理学検査
12 機能予後学
第5章 リハビリテーション治療学
1 心理的アプローチ
2 廃用症候群
3 関節拘縮
4 筋力強化
5 全身運動
6 歩行練習
7 リスク管理
8 リハビリテーションの流れと目標
第6章 ライフステージにおける障害特性
1 ライフサイクル
2 障害児の特性
3 青年期
4 成人期
5 老年期
6 ライフステージにおける障害アプローチ
第7章 脳損傷のリハビリテーション脳卒中,脳外傷,低酸素脳症との比較
1 脳血管障害
2 脳外傷
3 低酸素脳症
第8章 脊髄損傷のリハビリテーション
1 外傷性脊髄損傷の発生頻度
2 脊髄損傷の原因
3 脊髄の機能解剖
4 損傷タイプと病態
5 機能障害
6 能力低下
7 アプローチ
第9章 神経筋疾患のリハビリテーション
1 パーキンソン病
2 脊髄小脳変性症
3 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosi:ALS)
4 末梢神経障害
第10章 運動器疾患のリハビリテーション
1 骨粗鬆症
2 変形性関節症
3 関節リウマチ
4 血友病性関節症
第11章 心肺疾患のリハビリテーション
1 虚血性心疾患
2 慢性閉塞性肺疾患
第12章 発達障害のリハビリテーション
1 脳性麻痺
2 筋ジストロフィ
3 二分脊椎
第13章 担がん患者のリハビリテーション
1 がんの部位別罹患数
2 リハビリテーションの特徴
3 がん治療の把握と障害評価
4 問題点とアプローチ
索引