やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

序文
 この本は,「辞典」という形式で刊行します.時々意味のわからない用語を引くために役立つように,様々な工夫をして造りました.しかし,できれば全文を読み通す,という積極的な読者の姿勢をもっと期待したいと思います.そうすれば,高次脳機能障害の症候の全貌が理解できるようにも考慮してあります.
 私たちはこの本を,医師,リハスタッフ,看護師,薬剤師,など様々な分野や立場の医療者のために書きました.特に重視したのは,高次脳機能障害の患者さんに直接関わる神経内科医とリハビリテーション分野の専門家です.
 今でこそ「高次脳機能障害」という用語は,たびたび新聞紙上に現れるようになり,一般的になりつつあります.しかし,私たちがこの領域に最初に関わったおよそ25年前には医師のなかでも正確にこの用語の意味を述べることのできる人はほとんどいなかったと思います.最も大きな理由は,高次脳機能障害の症候を理解することの難しさにあったのです.たとえば,「観念運動性失行」という用語を初めて聞いた人の誰が,上肢のパントマイム動作や模倣障害を示す症候の患者さんを思い浮かべることができたでしょうか.
 困ったことにその状況は,現在でも相変わらず続いています.そのような状況で,高次脳機能障害の患者さんに関わる医療スタッフにとっては,わかりやすく,簡便で,白衣のポケットにも入れることができて,いつでも引くことの可能な辞書が必要なのです.
 発行までには多くの方々の協力を得ましたが,特に医歯薬出版の関係者にはお世話になりました.この場を借りて感謝の意を示したいと思います.
 本書が,いつでも多くの方々の身近にあって,大いに活用されることを強く願っています.
 2009年(平成21年)4月
 河村 満
 高橋伸佳