やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
難易度が高くても,合格は十分可能
 平成19年度,第43回作業療法士・理学療法士国家試験の受験者数は,作業療法士(以下OT)5,783名,理学療法士(以下PT)7,997名であり,昨年度と比較するとOTは約652名,PTは約961名増加しました.実際に合格した人数は,OTは4,257名,PTは6,924名で,OT・PTを合計した人数は,ついに10,000名/年を超えました.
 国家試験(以下,国試)の合格率は,OT73.6%,PT86.6%でした.第42回国試の合格率と比較すると,OTでは85.8%から12.2ポイント,PTでは93.2%から6.6ポイントと低下しています.これは明らかに「X(2)タイプ」(五肢二択)問題の大幅な増加と出題領域の拡大が原因と思われます.
 厚生労働省は「養成校認可の自由化により国家試験受験者は増加するであろうが,国家試験そのものにおいて作業療法士・理学療法士の質を問う」とはっきりと打ち出しています.また,「第42回国家試験から出題形式を変更する予定である」と全国の養成校に通達を出しました.過去の「X(2)タイプ」問題は,「第38,39回」で実地問題(問題1〜40番まで)に2問,「第40,41回」で4問出題されました.しかし今回の「第43回」では,「X(2)タイプ」問題は「作業療法 実地問題」に14問,「作業療法 一般問題」に27問,「理学療法 実地問題」に11問,「理学療法 一般問題」に31問,さらに「共通分野」に33問と大幅に増加し領域も拡大して,ますます難易度が上がってきています.
 このように,OT・PT国試問題は今後,徐々に難易度が高くなり,合格点数獲得が困難になる傾向にあります.しかし,本書を基本にして受験対策をしっかりと立てて,着実に一歩一歩学習を進めていけば,合格は十分可能になるでしょう.
合格を確実にするための本書の特徴
 本書は,国試に対してしっかりと対策を立て,また基礎から臨床まで十分に学習し,確実に合格を手にしたい受験生のために作成いたしました.
 (1)国試の過去問題(第29回〜第43回までの15年間分,1,500問)を分析し,「出題傾向と対策の要点」を円グラフや棒グラフで表示し,「付録」(投げ込み)にまとめました.
 (2)各科目をさらに小項目に細分類し,学習項目を絞り込みました.
 (3)分野ごとに過去15年間の「出題傾向分析表」を提示し,頻出問題に印を付けました.
 (4)専門分野における「実地問題=高得点(3点)」には(実)マークを提示しました.
 (5)最重要問題番号を赤色(1)で,重要番号をピンク色(2)で提示しました.
 (6)1分野1頁終了形式(「実地問題」,「図示問題」等はイラストが多いため2頁形式もある)を基本としました.
 (7)問題直下の「必修ポイント」欄には,最低限暗記しなければならない内容を表で提示しました.
 (8)同じく「必修ポイント」には,数多くの写真やイラストを掲載し,「視覚学習」「イメージ学習」方式を採用しました.
 (9)図表中の暗記項目は,赤字で提示しました.
 (10)問題の右側には「解答記入」欄を設定し,設問ごとに正(○),誤(×)を記入できるようにしました.
 (11)頁最下段に「解答」欄を示し,いつでも正解を確認できるようにしました.
 (12)参考資料として「かんたんチェックポイント」を設け,応用力の育成を図れるようにしました.
 (13)巻末に「自己評価テスト」100問,「X(2)対策実力テスト」を加え,実力養成を図れるようにしました.
 (14)「付録」には「第43回OT・PT国試問題の概要」「出題傾向と対策の要点(第29回〜第43回)」,「第41回〜第43回国試問題」,「国試合格率(第30回〜第43回)」などを加え,さらに実力養成を図れるようにしました.
全員(100%)合格を祈念!
 国試に合格するためには,幅広い出題範囲を深く学習しなければなりません.受験生は分野別にたくさんの参考書や問題集を揃え,できるだけ少ない時間で効率よく学習し,合格に到達しなければなりません.そのためには国試内容に的を絞った参考書および問題集が必要です.本書は限られた時間の中で,本気で学習したいと考えている受験生のために,参考書と問題集を一冊にまとめた受験対策の最適書として作成しました.受験生諸氏には,上述欄で分析した点を十分に把握して,過去問題をそのまま暗記するのではなく,設問中の1問1問に「〇×」を付けながら,「この問題(文章)は正しい」「この問題(文章)のここが誤っている」などを確認しながら学習を進めて頂きたい.来る3月の国家試験に向けて,受験生諸氏が本書をしっかりと活用して,有意義に学習されることを願っています.受験生諸氏の全員(100%)の合格を心より祈念しています!!
 はじめに
 得点力アップ(本書のページ構成)
 合格のための学習テクニック
第1章 内部障害
 1)心疾患
  (1)正常心電図
   かんたんチェックポイント
    異常心電図(1),(2)
  (2)病態別心電図(異常心電図)
  (3)心筋梗塞の作業療法
  (4)狭心症の作業療法
  (5)重症心不全
  (6)エネルギー消費(運動当量:METs)
 2)呼吸器疾患
  (1)慢性閉塞性肺疾患の作業療法
  (2)呼吸器疾患の症状・生活指導・作業療法
 3)糖尿病
  (1)糖尿病患者の作業療法
  (2)腎透析患者の作業療法
 4)閉塞性動脈硬化症に対するアプローチ
 5)作業療法士の対応
 6)作業療法中のリスク管理
  文献(引用文献,参考図書)
第2章 老年期障害
 1)生理的老化現象と高齢者の運動強度
 2)老年期疾患
  (1)障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準
  (2)廃用症候群とその対策
  (3)高齢者の感染症
  (4)高齢者の摂食・嚥下障害
  (5)高齢者の骨折・骨粗鬆症と作業療法
 3)高齢障害者の作業療法
 4)在宅高齢者
  (1)グループワーク・デイケア
  (2)在宅高齢者に対する初回評価と車椅子処方
  (3)在宅訪問指導
  文献(引用文献,参考図書)
第3章 脊髄損傷
   かんたんチェックポイント
    筋の髄節支配
    頸髄損傷(四肢麻痺)患者のADL
    脊髄損傷(対麻痺)患者のADL
    Zancolliの分類,Zancolliの分類における損傷レベルと最終獲得機能,呼吸筋の残存
    頸髄損傷(四肢麻痺)患者の移動動作の可能性,頸髄損傷・脊髄損傷の残存高位と可能な日常生活活動
 1)第5頸髄損傷
  残存筋・可能な動作・家屋改造
 2)第6頸髄損傷
  (1)感覚障害・合併症
  (2)可能な動作
  (3)除圧の方法
  (4)症例問題
 3)第7頸髄損傷
  (1)可能な動作
  (2)症例問題
 4)第1胸髄損傷の症例問題
 5)脊髄損傷の合併症
  排尿障害(神経因性膀胱),自律神経過反射,対応
 6)脊髄部分損傷・外傷性脊髄損傷
 7)脊髄損傷の機能残存レベル(残存筋・可能な動作)
  文献(引用文献,参考図書)
第4章 上肢切断
 1)上腕切断の評価・作業療法
 2)前腕切断の評価
  文献(引用文献)
第5章 整形外科系障害
   かんたんチェックポイント
    スタインブロッカーのステージ分類,クラス分類,ランズバリー指数
 1)関節リウマチ
  (1)変形と装具
  (2)症例問題(実地問題)
  (3)関節リウマチの評価と作業療法と生活指導
   かんたんチェックポイント
    末梢神経障害の分類
 2)末梢神経障害
  (1)腕神経叢損傷
  (2)第6頸髄神経根損傷
  (3)正中神経麻痺
  (4)手根管症候群
  (5)橈骨神経麻痺
  (6)尺骨神経麻痺
  (7)末梢神経麻痺の総合問題
 3)手指屈筋腱断裂(術後)
 4)肩腱板損傷
 5)人工肩関節置換術後の作業療法
 6)上肢の骨折
 7)乳癌(術後)
 8)頸髄症
 9)熱傷・手指の拘縮
  文献(引用文献,参考図書)
第6章 脳卒中片麻痺
   かんたんチェックポイント
    頭部CT所見
 1)頭部CT所見
 2)摂食・嚥下障害
 3)早期(急性期)作業療法プログラム(発症後2〜5日経過)
 4)亜急性期作業療法
  (1)発症後1〜2週経過
  (2)発症後3週経過
 5)回復期作業療法
  (1)発症後1か月経過
  (2)発症後2か月経過
  (3)発症後3か月経過
  (4)発症後4か月経過
 6)慢性期作業療法(発症後6,8,11か月経過)
 7)麻痺側上肢に対する作業療法(実地問題)
 8)麻痺側上肢に対する作業療法(一般問題)
 9)ADL訓練
 10)基本動作訓練
 11)生活関連動作訓練・現職復帰指導
 12)肩の障害(肩関節亜脱臼,肩手症候群)
  文献(引用文献,参考図書)
第7章 高次脳機能障害
   かんたんチェックポイント
    高次脳機能障害の定義・概要・症状
 1)高次脳機能障害の症状
 2)高次脳機能障害に対する生活指導
 3)前頭葉障害による高次脳機能障害(前頭葉症候群)
 4)後頭葉損傷による高次脳機能障害(相貌失認)
 5)右大脳半球損傷(左片麻痺)の高次脳機能障害
  (1)半側空間失認・構成失行・身体失認
  (2)症例問題
 6)左大脳半球損傷(右片麻痺)の高次脳機能障害
  (1)失語症の症状,指導法,対応
  (2)失語症の症例問題
 7)高次脳機能障害に対する作業療法評価
  (1)病巣部位と評価法との組合せ
  (2)各種検査方法
 8)外傷性脳損傷(びまん性軸索損傷)
  (1)特徴・症状
  (2)作業療法(評価・目標・指導)
  (3)作業療法(症例総合問題)
 9)髄膜脳炎(記銘力障害)
  文献(引用文献,参考図書)
第8章 神経筋系障害
   かんたんチェックポイント
    神経筋疾患の分類
    パーキンソン病のヤール(Yahr)重症度分類と注意事項
 1)パーキンソン病
  (1)症状
  (2)作業療法
  (3)ヤールの重症度分類ステージIII〜IV
 2)脊髄小脳変性症
  症状
 3)小脳性運動失調症
  機能評価・検査の目的
 4)小脳障害
  小脳性運動失調症患者に対する作業療法
 5)多発性硬化症(MS)
  症状・作業療法評価・作業療法
 6)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  (1)症状・ADL指導
  (2)症例問題
 7)ギラン・バレー症候群
 8)多発性神経炎
  作業療法
 9)多発性筋炎・皮膚筋炎
  作業療法
 10)筋ジストロフィー
  (1)進行性筋ジストロフィーの分類と特徴
  (2)特徴と機能障害(可能なADL)
  (3)ステージ別(ステージ4〜7)作業療法および生活指導
 11)神経筋疾患総合
  (1)嚥下障害
  (2)疾患と作業療法の組合せ
  文献(引用文献,参考図書)

 自己評価テスト(チェックシート,解答シート)
 X(2)対策実力テスト(チェックシート,解答シート)
 索引

 付録
  「第43回OT国試問題」の概要
  「出題傾向と対策の要点」(第43回)
  「第43回OT国家試験問題」(作業療法障害別編I)
  「国家試験合格率」(第30回〜第43回)