やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第7版の序
 わが国では,社会保障改革大綱(平成13年)に従って,社会福祉基礎構造の改革および医療保険や介護保険などの社会保険制度の改革が進められている.それにつれて,リハビリテーション領域にかかわる諸制度に種々の変革が生まれている.その基本理念は,(1)障害者の自立と社会経済活動への参画の支援,主体性・選択性の尊重,(3)地域での支え合い,である.介護保険制度においても,基本理念である自立支援を徹底するために,利用者はリハビリテーションその他の保健医療サービスと福祉サービスにより,その有する能力の維持向上に努めることとされている.
 リハビリテーションは,患者あるいは障害者にとっては,一連の過程であって,それは複数の制度によるサービス体系によって構成され,多様な専門職による複数の療法や訓練が提供されているため,かなり複雑な過程となっている.リハビリテーション・サービスを提供する医療法に規定する医療機関,障害者自立支援法による障害者支援施設,学校教育法による特別支援学校,職業能力開発促進法に基づく障害者職業能力開発校,さらに介護保険法では訪問リハビリテーションあるいは通所リハビリテーション,施設に入所あるいは入居している者には機能訓練が提供されている.
 現在,リハビリテーション・サービス体系の変革は進行中である.しかし,リハビリテーションが掲げた理念,目的には変更はない.日々,患児・者あるいは障害児・者,要介護者に接している専門職は,それぞれの専門領域の学識・技術だけでなく,リハビリテーションを構成している諸領域や施設とその役割,それらを支えている制度を理解し,日々の業務に生かせるよう,本書には諸法規でリハビリテーションに直接関連する事項を原文に沿って掲げてある.法律,政令,施行令や通知などの違いにも慣れることが求められている.
 私事にわたるが,平成19年7月,今田 拓先生が逝去された.ここに,これまでに多くのご助言,ご協力を賜ったことを記し,ご冥福を祈り,併せて深甚の謝意を表したい.今回の改訂に当たっては,医療法人のぞみ会希望病院・天草万里院長の全面的な協力を得た.また,佐直信彦,千田富義,細川 徹,砂子田 篤の四教授にも,多忙の折にもかかわらず,いろいろと手を煩わせた.厚くお礼を申し上げる.
 2009年1月
 中村隆一
 
 
〔補訂について〕
 平成18(2006)年12月13日,「障害者の権利に関する条約(仮称)」が第61回国連総本会議において全会一致で採択された.わが国は,平成19(2007)年9月に同条約に署名していたが,締結には至っていなかった.その後,「障がい者制度改革推進本部」の設置,「障がい者制度改革推進会議」の開催を経て,政府は「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」閣議決定を行い,「障害者基本法の一部を改正する法律案」を国会に提出した.法案は,一部修正され,平成23(2011)年8月5日に成立している.本書では,これら一連の経緯を取り込み,一部に修正を加えて補訂版とした.
 なお,今回から佐直信彦教授にも,共同編者として尽力を頂くこととした.
 2012年3月
 中村隆一
 第7版の序
 第6版の序
 第6版増補に当たって
 第5版の序
 第4版の序
 第3版の序
 第2版の序
 第1版の序
第1章 リハビリテーションとは
 1 障害者と社会
  1.障害者への社会の対応:歴史的変遷
  2.保健医療の進歩と障害者
 2 リハビリテーションの定義と目的
  1.言葉の由来:歴史的にみた意味の多様性
  2.現代に連なる概念
  3.各種の定義をめぐって
  4.リハビリテーションの目的の変遷および社会制度の変革
  5.健康と生活の質
  6.ヘルスケアと生命医学倫理
  7.帰結に関する用語
第2章 病気と障害
 1 病気とは
  1.通俗モデル
  2.古代医学の発展
  3.医学モデルの誕生
  4.精神医学領域の諸モデル
 2 障害とは
  1.障害と構造─機能分析
  2.障害者とは
  3.障害のモデルをめぐって
  4.社会制度の改革
 3 患者と障害者
  1.患者と疾病行動
  2.病者と障害者の役割
  3.障害と偏見
 4 慢性疾患モデル
  1.医学モデルの限界
  2.根拠に基づいた医療へ
  3.慢性疾患の自然経過と予防医学
  4.障害予防のための手段
  5.保健医療における対応
  6.障害調整平均寿命
 5 機能志向的アプローチ
  1.機能的状態とは
  2.病理志向的アプローチと機能志向的アプローチ
 6 ヘルスケア・システムと包括的ケア
第3章 人間活動と発達,ハビリテーション
 1 発達とは
  1.発達の定義と発達分析
  2.発達研究の流れと発達理論
 2 人間活動
  1.運動行動の階層構造
  2.人間活動の階層構造
  3.ライフサイクルにおける発達の特色
  4.発達評価
 3 ハビリテーションとノーマライゼーション
  1.ハビリテーションとは
  2.障害児と法制度
  3.ライフサイクルとハビリテーション・サービス
  4.ノーマライゼーションの影響
  5.障害学からの問題提起
第4章 リハビリテーションと心理
 1 心理アセスメント
  1.面接と情報収集
  2.心理検査
 2 心理的機能とその障害
  1.意識
  2.注意
  3.記憶
  4.遂行機能
  5.認知
  6.言語
  7.行為
  8.知能
  9.認知リハビリテーション
 3 心理的適応の過程
  1.障害の衝撃
  2.うつ状態と不安
  3.障害受容とは
  4.ストレス対処モデル
第5章 リハビリテーションの諸段階
 1 発症から社会生活へ
  1.リハビリテーションの目的と目標
  2.医療施設と障害者支援施設等
  3.再統合の準備と地域の援助
  4.地域社会とコミュニティ
  5.ケア・システムの連続性
 2 リハビリテーションの諸領域
  1.医学的リハビリテーションと障害福祉サービス
  2.障害者支援施設
  3.障害児教育
  4.職業リハビリテーション
  5.社会的リハビリテーションと地域リハビリテーション
  6.高齢者サービス
  7.健康寿命と終焉
第6章 リハビリテーションの過程
 1 評価とプログラム
  1.評価とは
  2.リハビリテーションの諸相における評価
  3.リハビリテーション計画とプログラム
 2 チーム・アプローチと専門職
  1.チーム・アプローチ
  2.チームの構造とケース・カンファレンス,プログラムの進行
  3.医学的リハビリテーションにおける諸アプローチ
 3 わが国における各種専門職
 4 リハビリテーションの手段
  1.理学療法
  2.作業療法
  3.言語訓練と嚥下訓練
  4.聴能訓練
  5.視覚障害者の生活訓練
  6.リハビリテーション・スポーツ
  7.リハビリテーション看護
  8.心理療法
  9.カウンセリング
  10.ソーシャルワーク
  11.補装具および日常生活上の便宜を図るための用具とその支給体系
  12.リハビリテーション工学と福祉機器
  13.身体障害者補助犬法
第7章 機能障害をもたらす主な疾病と外傷,先天異常および精神障害
 1 機能障害の諸相
 2 身体障害
  1.視覚障害
  2.聴覚障害
  3.平衡機能障害
  4.音声機能,言語機能又はそしゃく機能の障害
  5.肢体不自由
  6.内臓の機能障害
 3 精神障害
  1.統合失調症
  2.躁うつ病
  3.てんかん
  4.アルコールおよび薬物による精神障害
 4 知的障害
 5 発達障害
 6 遺伝相談
第8章 リハビリテーションを支える社会保障制度
 1 社会保障とは
  1.わが国における社会保障制度
  2.社会保障の水準
  3.社会福祉基礎構造改革と障害保健福祉施策の動向
 2 保健・医療制度
  1.公衆衛生対策
  2.地域保健法と保健所の役割
  3.母子保健法
  4.健康日本21と健康増進法
  5.医療の体系(医療法)
  6.精神障害者対策の経緯と精神保健制度
 3 社会保険制度
  1.わが国の社会保険制度の経緯
  2.社会保険の構成
  3.医療保険制度
  4.年金保険制度
  5.災害補償と雇用保険制度
 4 社会福祉と公的扶助制度
  1.社会福祉と公的扶助の相違
  2.公的扶助制度
  3.社会福祉事業と社会福祉の展開
  4.社会福祉法
  5.障害者総合支援と障害福祉サービス
  6.身体障害者福祉法と関連制度
  7.児童福祉法と関連制度
  8.知的障害者福祉法と関連制度
  9.発達障害者支援法
 5 高齢者対策と介護保険制度
  1.わが国の高齢者施策
  2.高齢社会対策基本法
  3.老人福祉法
  4.高齢者の保健医療制度
  5.介護保険法
付表
 付表1 ヒポクラテス宣誓
 付表2 世界人権宣言(1948年,国際連合)
 付表3 知的障害者の権利宣言(1971年,国際連合)
 付表4 障害者の権利宣言(1975年,国際連合)
 付表5 障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約(第159号)(平成4年批准・公布)
 付表6 身体障害者の職業更生に関する勧告(ILO第99号勧告)
 付表7 障害者基本法
 付表8 日本医師会の「医の倫理綱領(および注釈)」
 付表9a 身体障害者福祉法による身体障害者
 付表9b 身体障害者障害程度等級表
 付表10 厚生事務次官通知:療育手帳制度について(昭和48年)による知的障害児(者)の療育手帳の障害程度
 付表11 学校教育法による視覚障害者等の心身の故障の程度
 付表12 精神障害者保健福祉手帳の障害等級
 付表13 ICD-10(疾病および関連保健問題の国際統計分類)の発達障害に該当する疾病および関連保健問題(要旨)
 付表14 国民年金法に定める障害基礎年金にかかわる障害等級
 付表15 障害者の雇用の促進等に関する法律における障害者の定義
 付表16 特定疾病
 付表17 特定疾患治療研究対象疾患
 付表18 障害者総合支援法において定められている特殊の疾病一覧 130疾病
 付表19 障害に関する分類(Nagiの分類,Woodの分類)
 付表20 国際生活機能分類(ICF),国際障害分類改訂版
 付表21a 補装具
 付表21b 補装具新規交付に係る判定事務の簡素化
 付表22 日常生活上の便宜を図るための用具
 付表23 身体障害者(18歳以上)及び身体障害児(18歳未満)の実態調査
 付表24 要介護認定の認定調査票(基本調査)
 付表25 社会保険診療における在宅医療
 付表26 診療報酬算定にかかわるリハビリテーション事項(抄)
 付表27 障害者基本計画
 付表28 障害者の権利に関する条約(一部抜粋)
 付表29 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準

 文献
 和文索引
 欧文索引