やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社


 1951年に診療X線技師法が成立し「診療エックス線技師」が国家資格となり,2年制の教育が開始された.その後,1968年に診療放射線技師法が制定され3年制教育の「診療放射線技師」が誕生した.このことで,教育期間が2年制の診療エックス線技師と並行して3年制の診療放射線技師教育が行われるようになった.1983年の法改正で診療エックス線技師は廃止され,現在の診療放射線技師に一本化されている.1987年に藤田学園保健衛生大学(現在の藤田医科大)が日本で初めて4年制での診療放射線技師養成教育を始め,現在は多くの養成校が4年制での教育を行っている.
 医療の高度化により診療エックス線技師から診療放射線技師へ国家資格が変わり,教育期間が延長され,教育科目も多岐に渡っている.養成校では診療放射線技師国家試験の受験資格を得るために,診療放射線技師法に基づき「診療放射線技師として必要な知識及び技能について」教育が行われ,毎年2月に診療放射線技師の国家試験が実施されている.
 2021年に診療放射線技師学校養成所指定規則が一部改正され,試験科目が従来の14科目から11科目に変更となった.2025年2月に実施される第77回診療放射線技師国家試験から試験科目の一部が変更されている.この試験から「診療画像機器学」が廃止され,X線やCTなどのX線を用いる検査機器を扱う「X線撮影機器学」が新設され,MRI・超音波・眼底などの検査機器は「診療画像検査学」に移行となっている.
 これらの理由から,本書は前版である「新・医用放射線科学講座 診療画像機器学」から大幅に内容および執筆者を変更している.さらに,各章の冒頭に「学習目標」を記載することで各章の内容を明確化し,さらに「章末問題」を掲載し,本書の該当箇所を明記している.全体のデザインも2段組みから1段組みにし,配色も視認性を高めるために全頁に渡り2色刷りにしている.さらにサイドメモ(傍注)を設けており,これらの変更により,学生自身が学ぶことにストレスを感じず,自分の力で学び進めることができる教科書としている.
 「X線撮影機器学」は古くからある学問であるが,今回の改正で,独立した科目として設置されたことから見ても,われわれ編者および著者一同も,診療放射線技師教育における「X線撮影機器学」の重要性を再認識している.
 今後も,皆様から本書に対して継続的にご指導・ご意見をいただくことで,時間をかけながら,新たな「X線撮影機器学」の書籍として広く利用されることを期待している.
 最後に,本書を発刊するにあたり,短期間に原稿をご執筆いただいた共同著者の皆様にお礼を申し上げるとともに,本書の立案から原稿確認まで最後まで粘り強く対応いただいた医歯薬出版の稲尾氏をはじめ関係各位の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます.
 2025年1月
 齋藤茂芳
 林 則夫
 石田隆行
第1章 総論
 (齋藤茂芳)
 1 X線の発見
 2 X線撮影装置の開発と放射線技師の誕生
 3 放射線防護に関する国際機関の設立と診療放射線技師の養成
 4 画像診断用X線装置の分類とX線装置の基本構成
 5 X線撮影機器学の内容
第2章 X線源装置
 (齋藤茂芳)
 1 X線管装置
  1)X線装置の構成
  2)X線管の基本構造
  3)X線の発生
  4)X線管装置
  5)防護形X線管容器
  6)X線管装置の性能と特性
  7)X線管の特性
  8)X線可動絞りとろ過
  9)高電圧ケーブル
 章末問題
第3章 X線高電圧装置
 1 X線高電圧装置(松原孝祐)
  1)X線高電圧装置の概要
  2)X線制御装置
  3)高電圧発生装置
  4)変圧器式X線高電圧装置
  5)コンデンサ式X線装置
  6)インバータ式X線装置
 2 自動露出制御装置(上田淳平)
  1)概要
  2)各形式における原理
  3)自動露出制御におけるセンサ
  4)自動露出制御における各種特性
  5)自動露出制御に関連するJIS規格について
  6)自動露出制御における注意点
 章末問題
第4章 X線機械装置
 (五月女康作)
 1 X線機械装置の分類
 2 X線透視撮影台
  1)一般透視撮影台
 3 X線撮影台
  1)直接撮影台
  2)間接撮影台
  3)断層撮影台
  4)X線CT撮影台
 4 保持装置
 5 規格
  1)性能
  2)構造
  3)安全
 章末問題
第5章 X線映像装置
 (杉森博行)
 1 X線映像装置の概要
 2 X線映像装置の種類
  1)X線イメージインテンシファイア(I.I.)
 3 X線映像装置の構成要素
  1)入力系
  2)変換系
  3)出力系
 4 X線受像部の構造と原理
  1)I.I.の構造
  2)I.I.の原理
  3)FPDの構造
  4)FPDの原理
 5 X線映像装置の構成と特徴
  1)X線テレビ装置と血管撮影装置の構成
  2)X線テレビ装置と血管撮影装置の特徴
 6 X線デジタル画像システムの構成と特徴
  1)X線デジタル画像システムの構成
  2)X線デジタル画像システムの特徴
 章末問題
第6章 診断用X線画像処理装置
 1 コンピューテッドラジオグラフィ(CR)(板垣孝治)
  1)画像のデジタル化
  2)CR装置の原理と構成
  3)CR装置の画質特性
 2 フラットパネルディテクタ(FPD)(田中利恵)
  1)FPDの原理と特徴
  2)FPDの仕様
  3)FPD方式のデジタル一般X線撮影装置
  4)FPDの物理的画像特性と線量指標
  5)画像処理技術
  6)画像処理と応用技術
  7)将来展望
 章末問題
第7章 関連機器
 (山崎明日美)
 1 カセッテ・グリッド・X線写真観察機器
  1)カセッテ
  2)グリッド
  3)X線写真観察機器
 章末問題
第8章 診断用X線装置システム
 1 一般撮影装置(原 秀剛)
  1)汎用型一般撮影装置
  2)一般撮影装置の撮影諸条件
  3)その他の一般撮影装置
 2 X線透視撮影装置・インジェクタ(渡部晴之)
  1)X線透視撮影装置
  2)インジェクタ
 3 循環器用・外科用・手術室用X線診断装置(荻原良太)
  1)循環器用X線診断装置
  2)外科用X線診断装置
  3)手術室用X線診断装置
  4)今後の展望
 4 乳房用X線診断装置・トモシンセシス(西出裕子)
  1)乳房用X線診断装置
  2)トモシンセシス
 5 施設検診用X線装置(番浦夏生)
  1)胸部X線装置
  2)胃部X線装置
 6 集団検診用X線装置(齋藤茂芳)
  1)胸部集検用X線装置
  2)胃部集検用X線装置
 7 可搬型X線撮影装置(田辺悦章)
  1)概要
  2)構造
  3)X線管装置とX線管球保持機構
  4)走行機構およびシステム機能
  5)画像処理と画像解析
  6)可搬型X線撮影装置の管理
  7)在宅,災害時の可搬型X線撮影装置
 8 骨密度測定装置(三阪知史)
  1)DXAの原理
  2)構成
  3)スキャン方式
  4)ファントムによるQC
 9 歯科用装置(財家俊幸)
  1)デンタルX線撮影装置(口内法X線撮影装置)
  2)パノラマX線撮影装置(口外法X線撮影装置)
  3)頭部X線規格撮影装置(セファロ撮影装置)
  4)歯科用コーンビームCT(歯科用CBCT)
 章末問題
第9章 診断用X線装置の管理
 (上田康之)
 1 診断用X線装置の保守点検
  1)仕業点検
  2)定期点検
 2 診断用X線装置の性能試験
  1)受入試験
  2)現状試験
  3)不変性試験
 章末問題
第10章 医用X線CT装置
 1 基礎
  1)X線CT装置の基本構成(山口 功)
  2)X線CT画像の撮影原理(山口 功)
  3)CTスキャン(山口 功)
  4)X線CT画像のアーチファクト(山口 功)
  5)X線CT装置の性能評価(渡邊翔太)
  6)X線CTの線量評価(渡邊翔太)
  7)X線CT装置の品質管理(星野貴志)
 2 応用(星野貴志)
  1)コーンビームCT(cone beam CT:CBCT)
  2)デュアルエナジーCT(dual energy CT:DECT)
  3)フォトンカウンティングCT(photon counting CT:PCCT)
  4)造影剤自動注入装置(インジェクタ)
 章末問題

 参考文献
 索引