やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版の序
 医用放射線科学講座シリーズ第8巻「放射線画像技術学」(1997年4月発刊),新・医用放射線科学講座「放射線画像技術学」(2010年4月発刊)に引き続き,今回,あらたに新・医用放射線科学講座「放射線画像技術学 第2版」を改訂発刊します.本書は,診療放射線技師が放射線診断技術領域の放射線画像技術学,医用画像技術学,放射線写真学(画像学)分野において,X線撮影技術,CT,MRI,超音波,眼底カメラなどの画像技術学および画像学を中心に,臨床現場で必要な知識と技術を学ぶための教科書として編集しています.
 近年,臨床現場では,AIによるめざましい放射線技術革新や医師の働き方改革による業務拡大など診療放射線技師に,高度で幅広い放射線診療技術業務が要求されています.
 また,2021年4月の診療放射線技師学校養成所指定規則の一部改正では,総単位数を現行の95単位から102単位に引き上げています.専門分野を重点的に,実践臨床画像学(2)の新設,臨床画像学(1),放射線治療技術学(1),医療安全管理学(1),臨床実習(2)のように()内の単位が追加されています.臨床画像技術学の実践に役立つ診療放射線技師の教育が求められています.
 第2版の発刊では,これまでの初版の概要を踏襲しながら,より理解しやすい表現に努め,診療放射線技師養成の教科書および国家試験対策の参考書として,また,卒後教育の入門書として活用できるように改訂しました.
 執筆は,大学で画像診断技術学を講義しておられる教員,日々臨床現場で先端画像診断技術を実践・指導しておられる医師・診療放射線技師の方々にお願いいたしました.
 ぜひ教育現場,臨床現場でご活用していただき,ご意見をお寄せいただければ幸いに存じます.
 2022年3月
 森ノ宮医療大学
 小水 満



 放射線技術革新の進歩は目覚ましく,毎年開催されている学術大会や放射線機器展示では,臨床技術の新しい知見,新しいハードウェアやソフトウェアの開発などが,次々と発表されています.そのためもあって,診療放射線技師養成学校で放射線技術学を教育しておられる先生や,日々放射線診療業務に携わっておられる診療放射線技師は,高度な診療放射線技術学を支えるために,より専門に細分化された新しい技術への対応が求められています.
 しかし,診療放射線技術学は,医療上での独立した技術として成り立っている学問であり,時代の変遷によらず,臨床においては,基礎的で普遍的な技術を多くもっています.そのなかの一つに,放射線を使って画像を描出する撮像(画像)技術学があります.これは,画像診断学に対して有用な画像情報を提供するための基本的な学問です.そこで,放射線技術学として幅広く臨床に対応できるものとして出版されたのが,医用放射線科学講座シリーズの第8巻「放射線画像技術学」でした.
 当該書が発刊されてから11年が過ぎました.この間,診療放射線技師養成学校の教科書,診療放射線技師国家試験参考書として,また,放射線診断技術領域で必要な知識を得るための臨床現場での実践書として広く活用されてきました.それは,放射線画像診断領域における,画像診断技術のための基礎は,X線撮影に必要な臨床基礎と各種X線撮影法の基礎を,医用画像技術学では,CT,MRI,超音波,眼底カメラなどの基礎技術と撮像技術,放射線写真学では,X線写真学の基礎および応用として編集されており,放射線技術学の幅広い臨床技術に対応できる内容を網羅するものであるという本書のコンセプトであったからこそ,放射線診断技術教育および臨床現場で長く広く活用されてきたものと確信しています.しかしながら,新しい診断技術が確立されている今日において,それぞれの部門・分野では,ハードウェアの技術革新による新技術への対応,ソフトウェアによる新技術の応用,技術領域の拡充などによる新しい内容が要求されています.
 今回の改訂では,新・医用放射線科学講座「放射線画像技術学」として装いも新たにして,特に技術革新の目覚ましいX線検査において,最近の技術革新による装置や新しい臨床検査技術について加筆していただきました.デジタル化時代の今日,ややもすると従来のアナログ画像技術は軽視される傾向にありますが,画像を掲示するのは写真であり,その基礎的項目は十分理解しておく必要があります.
 その意味で放射線写真学の章は残しています.執筆陣は,大学の教員,日常病院業務を行っておられる臨床経験豊かな医師・診療放射線技師であり,指導的な立場に基づいて執筆していただいています.その努力によって改訂されました本書は,単に学生の教科書としてだけではなく,診療放射線技師として末長く活用されるものと確信しています.
 どうぞ,ご一読のうえ,ご批判,ご意見をお寄せいただければ幸いに存じます.
 2010年3月
 小水 満
 第2版の序(小水 満)
 序(小水 満)
第1編 放射線画像技術学
 第1章 X線撮影の総論
  1 専門職としての自覚(中西左登志)
   1)チーム医療のなかの診療放射線技師
   2)専門職としての診療放射線技師
   3)医療安全
  2 X線写真の成り立ち(中西左登志)
   1)画質の構成
   2)被写体コントラストと写真コントラスト
   3)被写体コントラスト
   4)散乱線の除去
   5)写真コントラスト
   6)被写体鮮鋭度と写真鮮鋭度
  3 撮影に必要な用語(中西左登志)
   1)解剖学的体位
   2)撮影方向に関する用語
   3)ポジショニングに関する用語
   4)頭部の基準線,基準面および基準点
   5)体表面触知可能部位と脊椎レベルとの関係
  4 造影剤(谷川基務)
   1)造影剤として備えるべき条件
   2)造影剤投与に関する注意事項
   3)造影剤の副作用
   4)造影剤の特徴
   5)造影撮影時の注意事項
   6)造影剤による重篤な副作用への対応法
  5 救急医療(東 丈雄)
   1)救急医療とは
   2)外傷初期診療の原則
   3)救急医療における業務
   4)災害医療とトリアージの概念
   5)救急患者や家族への接し方とペーシェントケア
   6)救急医療における放射線技師の役割
   7)救急部門におけるX線設備
   8)チーム医療
  6 感染防止(東 丈雄)
   1)感染とは
   2)感染症の分類
   3)個人防護具の取り扱い
   4)手指衛生
   5)感染の経路と感染対策
   6)医療器材・機器の洗浄と消毒
   7)放射線診療における感染防止
  7 医療事故防止(東 丈雄)
   1)インシデントとアクシデント
   2)医療事故の防止
   3)インシデントレポート
   4)放射線診療における医療安全
   5)組織としての取り組み
   6)医療被ばくにおける安全管理
 第2章 X線撮影の各論
  1 一般撮影法(中西左登志)
   1)全般的注意事項
   2)胸 部
   3)腹 部
   4)手・手関節
   5)前腕骨
   6)肘関節
   7)上腕骨
   8)肩
   9)鎖骨
   10)肩甲骨
   11)趾骨・足骨
   12)足関節
   13)下腿骨(脛骨,腓骨)
   14)膝関節・膝蓋骨
   15)大腿骨
   16)股関節
   17)骨盤
   18)腰椎
   19)胸椎
   20)頸椎
   21)胸骨・肋骨
   22)脳頭蓋
   23)顔面骨
   24)副鼻腔
   25)錐体乳突部
  2 特殊撮影法(中西左登志)
   1)拡大撮影(magnification radiography)
   2)断層撮影(tomography)
   3)間接撮影法
  3 小児撮影(中西左登志)
   1)撮影までの留意点
   2)撮影中の留意点
  4 乳房撮影法(西浦素子)
   1)乳房撮影装置
   2)撮影方法
   3)撮影前の準備
   4)標準のポジショニング
   5)撮影手技
   6)X線撮影手技のポイント
   7)デジタルマンモグラフィ
   8)乳管造影法(duct mammography,galactography)
   9)吸引式乳房組織生検(vacuum assisted breast biopsy:VAB,VAAB),マンモトーム(R)生検
  5 上部消化管造影検査法(中村信美)
   1)解剖
   2)胃の区分
   3)前処置
   4)造影剤
   5)各種撮影法
   6)病期分類
   7)撮影法および撮影順序,操作手順と読影のポイント
  6 低緊張性十二指腸造影検査法(谷川基務)
   1)ゾンデ法
   2)経口法(無管法)
  7 小腸造影検査法(谷川基務)
   1)経口法(無管法)
   2)ゾンデ法
  8 下部消化管造影検査法(注腸造影検査法)(中村信美)
   1)前処置
   2)造影剤
   3)大腸粘膜表面の構造(fine network pattern)
   4)大腸の区分と撮影体位
   5)解剖
   6)大腸・肛門腫瘍および腫瘍様病変の病理組織学的分類
   7)大腸炎症性疾患の鑑別診断
  9 胆道造影検査法(廣瀬慎一郎)
   1)肝胆膵領域の解剖・生理
   2)検査方法
  10 血管造影検査法(日高国幸・永吉 誠)
   1)血管造影法
   2)血管造影の実際
   3)脳血管造影法
   4)心臓カテーテル
   5)腹腔動脈造影法(celiac arteriography)
   6)上・下腸間膜動脈造影法〔superior mesenteric artery(SMA),inferior mesenteric artery(IMA)arteriography〕
   7)気管支動脈造影法(bronchial arteriography)
   8)腎・副腎(腎上体)動脈造影法(renal arteriography)
   9)骨盤部動脈造影法(arteriography of pelvis)
   10)四肢動脈造影法(arteriography of extremities)
  11 泌尿器系造影検査法(廣瀬慎一郎)
   1)泌尿器系の解剖・生理
   2)泌尿器系造影検査法
   3)泌尿器系検査の前処置,準備,注意事項
   4)検査方法
   5)排泄性腎盂造影法
   6)順行性腎盂造影法(antegrade pyelography:AP)
   7)逆行性腎盂造影法(retrograde pyelography:RP)
   8)膀胱造影法(cystography:CG)
   9)尿道膀胱造影法(urethrocystography:UCG)
   10)排尿時膀胱造影法(voiding cystography:VCG)
   11)チェインCG(chain CG)
  12 その他の造影検査法(廣瀬慎一郎)
   1)婦人科系造影検査法
   2)関節腔造影検査法
   3)脊髄腔造影検査法
   4)神経根造影検査法
  13 画像下治療(interventional radiology:IVR)(日高国幸・永吉 誠)
   1)概論
   2)血管系IVR
   3)非血管系IVR
  14 その他の撮影法(新井正一)
   1)病室におけるX線撮影
   2)ICU(集中治療室)における撮影
   3)小児の病室における撮影
   4)手術室おけるX線撮影法
  15 歯科撮影法(近藤淳史)
   1)撮影対象部位による選択とその呼称
   2)X線装置と撮影機材
   3)口内法X線フィルム
   4)口内法
   5)口外法
   6)その他の検査法
  16 骨塩定量法(松澤博明)
   1)骨塩定量装置
   2)測定原理
   3)腰椎正面定量法
   4)大腿骨近位測定
   5)撓骨遠位部測定
   6)全身骨測定
   7)骨密度の評価
   8)品質管理
第2編 医用画像技術学
 第1章 X線CT(佐藤和彦)
  1 X線CTとは
  2 システムの構成
   1)X線高電圧発生装置
   2)X線管球
   3)X線検出器
   4)データ収集システム
   5)コンピュータシステム
   6)周辺機器
  3 画像再構成
   1)データサンプリング
   2)投影データ
   3)投影データの前処理
   4)画像再構成法
  4 CT値とウィンドウ機能
   1)CT値
   2)ウィンドウ幅とウィンドウレベル
  5 ヘリカルCT
   1)ヘリカルスキャン
   2)展開図
   3)補間計算
   4)ピッチファクタ
  6 マルチスライスCT
   1)検出器
   2)画像再構成
   3)コーン角補正を考慮した画像再構成
   4)三次元画像再構成のZ軸フィルタ
   5)アーチファクト
  7 CTの被ばく線量
   1)CT被ばくにおける線量指標
   2)CT検査における被ばく線量
   3)CT検査の診断参考レベル
   4)マルチスライスCTの被ばく線量低減技術と被ばく低減に必要な知識
  8 CT検査の実際
   1)頭部・頭頸部CT
   2)胸部CT
   3)腹部CT
   4)心臓CT
 第2章 MRI
  1 MRIの特徴(田中 壽)
  2 MRIの原理(田中 壽)
   1)水素原子核は小さな磁石とみなせる
   2)高磁場に置かれると水素原子核の磁石(以下磁気モーメント)には2つのことが同時に起こる
   3)共鳴周波数の電磁波(ラジオ波)が当てられると巨視的磁化ベクトルは回転する
   4)傾いた巨視的磁化ベクトルは時間とともに元の熱平衡状態に戻っていく
   5)緩和の過程はブロッホの方程式により記述される
   6)位置情報は傾斜磁場により与える
  3 MRIの装置および撮像法(小山佳寛)
   1)装置
   2)撮像法
   3)画像データの収集と再構成
   4)高速撮像法
   5)高速撮像法の用法
  4 安全性(小山佳寛)
   1)静磁場の安全性
   2)高周波電磁場の安全性
   3)時間的に変動する傾斜磁場の安全性
   4)騒音
  5 MRI検査の基本手順(小山佳寛)
   1)入室前確認
   2)検査準備
   3)撮像
   4)造影剤
   5)画像処理
   6)画像の表示と保管
  6 流れの画像化(小山佳寛)
   1)流れの影響
   2)タイムオブフライト効果
   3)位相コントラスト
  7 アーチファクト(田中 壽)
   1)磁性体によるアーチファクト
   2)体動や流れによるアーチファクト
   3)折り返しアーチファクト
   4)化学シフトアーチファクト
   5)RF遮蔽効果
   6)打ち切りアーチファクト
   7)マジックアングルアーチファクト
   8)エヌハーフ(N)アーチファクト
 第3章 超音波(鎌田佳宏・三善英知)
  1 超音波
  2 腹部
   1)腹部超音波検査の特徴
   2)アーチファクト
   3)肝臓の超音波エラストグラフィ,減衰エコー
   4)造影超音波検査
   5)各臓器別超音波検査の特徴
  3 循環器
   1)心臓超音波検査法の種類・装置・探触子
   2)正常心臓超音波検査(操作と記録方法,カラードプラ法,スペクトラムドプラ法)
   3)心機能の計測
   4)心臓疾患の超音波検査
   5)頸動脈エコー(正常像と動脈硬化像)
 第4章 眼底カメラ(辻川元一)
  1 眼底カメラが健康診断に使用される理由
   1)眼底写真撮影(眼底カメラ)
  2 眼底撮影のための基礎知識
   1)レンズに対応する部分(角膜・水晶体)とその付属器
   2)フィルムに対応する組織
   3)カメラとの対応がない部分
   4)眼底カメラ
   5)無散瞳カメラ
   6)撮影の実際
   7)無散瞳カメラの特徴・利点・欠点
   8)無散瞳カメラで診断される疾患
第3編 医用画像学
 第1章 医用画像の概要(遠地志太)
  1 医用画像
  2 アナログ画像
   1)X線写真
   2)オートラジオグラフィ
  3 デジタル画像
   1)コンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)
   2)フラットパネルディテクタ(FPD)
   3)デジタル・フルオログラフィ(DF)
   4)X線CT画像
   5)核医学画像
   6)MRI画像
   7)超音波画像
   8)内視鏡画像
   9)眼底画像
   10)サーモグラフィ画像
   11)デジタル化X線画像
 第2章 画像検出器と画像形成機構(遠地志太)
  1 増感紙/フィルム系
   1)蛍光増感紙
   2)蛍光増感紙の構造
   3)X線フィルム
   4)X線フィルムの構造と種類
   5)増感紙/フィルム系の感色性
   6)フィルムの現像処理
   7)自動現像機処理(ウェット処理方式)
  2 I.I.系
   1)イメージインテンシファイア(I.I.)
   2)I.I.による画像形成
  3 CR系
   1)イメージングプレート(IP)
   2)IPによる画像形成
  4 DR系
   1)フラットパネルディテクタ(FPD)
   2)FPDによる画像形成
   3)FPD画像の品質
 第3章 X線画像の形成と評価(小水 満)
  1 X線画像形成過程
   1)X線撮影条件系
   2)被写体系
   3)検出器系
   4)画像形成・処理系
   5)観察系
  2 X線画像のコントラスト
   1)被写体コントラスト(subject contrast)
   2)増感紙/フィルム系の特性曲線
  3 センシトメトリー(sensitometry)
   1)相対露光量(相対X線強度)
   2)X線センシトメトリーの測定法
   3)写真濃度測定
  4 写真効果
   1)感光材料に関する現象
   2)露光に関する現象
   3)現像に関する現象
   4)露光以外の写真現象
  5 デジタル検出器の伝達特性
   1)DRシステムの画像伝達特性
   2)DRシステム入出力特性

 あとがき(石田隆行)

 参考文献
 索引