やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

医療現場における薬剤師の役割──序にかえて──
 1.薬剤師数と業務の動向
 平成18年12月31日現在における全国の届け出薬剤師数は,252,533人であり,そのうち男性98,802人(総数の39.1%),女性153,731人(60.9%)となっている.前回の調査に比べると11,164人(4.6%)増加している.施設・業務別にみると,薬局勤務が125,254人(総数の49.6%),病院・診療所勤務が48,964人(19.4%)である.また,大学の従事者は8,845人,医薬品関係企業の従事者45,415人,衛生行政機関または保健衛生施設の従事者は5,951人である.平成6年からは薬局勤務が病院・診療所勤務に比べ大きく増加している.これは医薬分業を推進しているためと思われるが,この差は年々ひらいていく傾向にあり,医療現場で患者と接し調剤・医薬品の供給・服薬指導に関与する薬剤師が今後ますます増えていくものと思われる.また,薬学部を6年制にした意義もそこにあるものと考えられる.
 2.薬剤師の任務と医療現場で果たすべき役割
 薬剤師法および薬剤師倫理規定(平成9年日本薬剤師会改訂)によれば,薬剤師の任務は「薬剤師は,個人の尊厳の保持と生命の尊重を旨とし,調剤をはじめ,医薬品の供給,その他の薬事衛生をつかさどることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって人々の健康な生活の確保に努める」とされている.薬が製薬企業で作られ医療機関や薬局等を経由して消費者(患者)の手に届くまでのすべての過程で,薬学を基礎とした専門的な立場から関与しているのが薬剤師の任務といえる.薬剤師の最も代表的な業務は,調剤であり,医師の処方箋どおりに薬を正確に,かつ迅速に調整することが重要である.しかし,現在ではそれだけでは十分ではない.薬の有効性や安全性を確保しつつ適正な服薬・使用を行なうために,処方された薬の作用機序や副作用,併用薬との相互作用などについて,患者の薬物アレルギー・体質や服薬状況を医師や看護師の記録や患者との面談結果をもとに把握することが重要である.疑問が生じた場合には,処方した医師に照会し納得したうえで調剤する必要がある.電話で問い合わせるなどして,決して遠慮してはならない.
 病院に勤務している薬剤師は,投与されている薬物の血中濃度の測定を行なうなど調剤以外の業務にも参加している.また,外来・入院患者と直接面談して,使用している薬の服薬指導や注射薬の管理といった臨床活動も積極的に行なっている.病院以外の薬局に勤務する薬剤師も,調剤業務のみならず寝たきり老人などの在宅患者を訪問し,服薬指導や薬剤管理指導を行なうなど在宅医療業務も増えている.
 3.疾患の理解
 医師は,一枚の処方箋に何を期待し何を求めているのかを理解することは,薬剤師にとって難しいことであるが大変重要なことである.特に,薬を併用する際に期待する効果を知ることは,大切なことである.その“一枚の処方箋の裏”に示された疾患を処方内容から察知し,その疾患の概念・症状・検査所見・治療法並びに代表的処方例をこれまで以上に正しく理解し,臨床現場での薬剤師業務に生かしていくことはこれからの薬剤師に課せられた大きな課題である.
 2008年春 神田川のほとりにて
 富野康日己
 医療現場における薬剤師の役割──序にかえて
第1章 心臓・血管系の疾患
 1 不整脈
 2 心不全
 3 高血圧
 4 虚血性心疾患
 5 閉塞性動脈硬化症
 6 心原性ショック
第2章 血液・造血器系の疾患
 7 貧血
 8 白血病
 9 播種性血管内凝固(DIC)
 10 血友病
 11 悪性リンパ腫
 12 紫斑病
第3章 消化器系疾患
 13 胃・十二指腸潰瘍
 14 腸炎
 15 肝炎
 16 肝硬変
 17 膵炎
 18 食道癌
 19 胃癌
 20 肝癌
 21 大腸癌
 22 胃炎
 23 薬物性肝障害
 24 胆石症
 25 虫垂炎
 26 クローン病
第4章 腎臓・尿路の疾患
 27 腎不全
 28 ネフローゼ症候群
 29 糸球体腎炎
 30 糖尿病性腎症
 31 尿路感染症
 32 薬剤性腎症
 33 尿路結石
第5章 呼吸器・胸部の疾患
 34 気管支喘息
 35 上気道炎(かぜ症候群)
 36 インフルエンザ
 37 慢性閉塞性肺疾患
 38 肺炎
 39 肺結核
 40 肺癌
 41 乳癌
第6章 内分泌系疾患
 42 甲状腺機能異常症(亢進症,低下症)
 43 クッシング症候群
 44 尿崩症
 45 副甲状腺機能異常症(亢進症,低下症)
 46 原発性アルドステロン症
 47 アジソン病
第7章 代謝性疾患
 48 糖尿病
 49 高脂血症
 50 高尿酸血症・痛風
第8章 生殖器疾患
 51 前立腺肥大症
 52 前立腺癌
 53 妊娠悪阻
  サイドメモ さまざまな異常妊娠(妊娠高血圧症候群,子宮外妊娠,流産)
 54 切迫早産
  サイドメモ 異常分娩
 55 子宮内膜症
 56 不妊症
 57 子宮癌
第9章 神経・筋の疾患
 58 脳血管疾患
 59 てんかん
 60 パーキンソン病
 61 アルツハイマー病
 62 重症筋無力症
 63 脳炎・髄膜炎
 64 熱性けいれん
 65 脳腫瘍
 66 一過性脳虚血発作
 67 血管性認知症
第10章 精神疾患
 68 統合失調症
 69 うつ病
 70 躁うつ病
 71 神経症
 72 心身症
 73 薬物依存症
 74 アルコール依存症
第11章 耳鼻咽喉の疾患
 75 めまい
 76 メニエール病
 77 アレルギー性鼻炎
 78 花粉症
 79 慢性副鼻腔炎
 80 中耳炎
第12章 皮膚疾患
 81 アトピー性皮膚炎
 82 皮膚真菌症
 83 蕁麻疹
 84 薬疹
 85 水疱症
 86 乾癬
 87 接触皮膚炎
 88 光線過敏症
第13章 眼疾患
 89 緑内障
 90 白内障
 91 結膜炎
 92 網膜症
第14章 骨・関節の疾患
 93 骨粗鬆症
 94 関節リウマチ
 95 変形性関節症
 96 骨軟化症
 97 腰椎椎間板ヘルニア
第15章 アレルギー・免疫疾患ほか
 98 アナフィラキシーショック
 99 全身性エリテマトーデス
 100 HIV感染症
 101 シェーグレン症候群
付章 知っておきたい 症候・臨床検査値
 1 各種の症候
  発熱 頭痛 発疹 黄疸 チアノーゼ 脱水 浮腫 悪心・嘔吐 嚥下障害 腹痛・下痢 便秘 腹部膨満 貧血 出血傾向 胸痛 心悸亢進・動悸 高血圧 低血圧 ショック 呼吸困難 咳 口渇 月経異常 痛み 意識障害 運動障害 感覚障害 記憶障害 しびれ けいれん 血尿 頻尿 排尿障害 視力障害 聴力障害 めまい
 2 代表的な臨床検査
  肝機能検査 腎臓機能検査 呼吸機能検査 心臓機能検査 血液および凝固検査 内分泌・代謝疾患に関する検査 感染症時および炎症時に認められる臨床検査値の変動 悪性腫瘍に関する臨床検査値 尿および糞便を用いた臨床検査 動脈血ガス分析の検査項目 代表的なバイタルサイン
 3 臨床検査の基準値
 4 医学略語

 疾患関連用語和文索引
 疾患関連用語欧文索引
 薬剤名索引
 あとがき