やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 「患者さんの視線にあわせた医療の実践」について,現在ほど取り上げられる機会が多いことはありません.私たち医師はいつもそういう立場で診療にあたってきたつもりでしたが,医師・患者関係が十分に成熟していないことも一因で,医療訴訟裁判が増加しています.もちろん,その原因は医療ミスにあります.医療ミスでは,診療体制そのものの不備や医療スタッフのささやかなミスの積み重ねが大きな事故につながっていきます.医療スタッフ間の連携が十分にとれるようにするなど,診療体制の不備を修正することは可能です.
 一方,医療スタッフ,特に医師においては,医療上決して行ってはならない絶対的禁忌と,やむなく行ってしまった医療行為がどうにか致死的にならずにすむ相対的禁忌があります.数年前私が総編集を担当し,医療禁忌事項について,専門の方々に「〜してはならない」という注意事項をあげていただき,その理由を簡潔に解説していただく医療禁忌のマニュアルを刊行しましたところ,多くの皆さんに愛読され,第3版を発行するにいたっています.医療と教育の現場で大いに活用されていることをたいへん嬉しく思っています.
 今回,この『医療禁忌マニュアル』の姉妹本として『医療禁忌診療科別マニュアル』を上梓いたしました.
 本書の特徴は,各診療科別に検査,治療,配合禁忌の区分に従って各禁忌項目をまとめ,より使いやすいマニュアル書を目指し,判型を大きくしたことと,それらの「〜してはならない」という禁忌事項に対する代替法がある場合はその代替法を,また万が一そのような医行為が行われた場合の対処法について,可能な限り記載したということです.
 本書も『医療禁忌マニュアル』と同様に多くの医療スタッフに活用していただきたいと願っています.特に,医学生や臨床研修医にご一読いただければ望外の喜びです.しかし,不十分な点も多々あろうかと思われますので,読者の皆さんの忌憚のないご意見をお待ちしています.
 本書の刊行にあたり,終始ご尽力いただいた医歯薬出版の関係各位に厚く御礼申し上げます.
 2006年早春 神田川のほとりにて
 富野康日己
 はじめに
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