序にかえて
『現代感染症事情(上)』と続巻である本書は,併せ読むことによってはじめて全体の展望が得られるように構成されているので,上巻に続いて本書をひもとかれる読者に対し,まず心から歓迎の意を表したいと思う.
上巻では疾患(病原体)単位の解説が主体であったが,下巻では少し違った趣向を加えてみた.その一つが「食」あるいは「性」といった人間の基本的な営みを通じて感染症を眺める試みである.また「狂牛病」によって一気に関心が高まったプリオン病についての第一人者による解説も特色といえよう.
上巻の序で述べたように,このところ勢いを盛り返している感染症であるが,それに対するわれわれの備えは決して十分ではない.医学の抱える課題は多方面にわたるが,私たちは感染性疾患に対する態勢の立て直しこそ,現在最も緊急度の高い課題だと考えている.AIDSや大腸菌 O157 が脚光を浴びているが,実は問題ははるかに広くかつ深いのである.的確に実態を把握することの重要性は,いくら強調してもしすぎることはない.
上巻と併せて,気軽に読める最新の感染症読本として広範囲の読者に利用されるならば,編者の幸いこれにすぎるものはない.
2003年3月
中山宏明・多田 功・南嶋洋一
『現代感染症事情(上)』と続巻である本書は,併せ読むことによってはじめて全体の展望が得られるように構成されているので,上巻に続いて本書をひもとかれる読者に対し,まず心から歓迎の意を表したいと思う.
上巻では疾患(病原体)単位の解説が主体であったが,下巻では少し違った趣向を加えてみた.その一つが「食」あるいは「性」といった人間の基本的な営みを通じて感染症を眺める試みである.また「狂牛病」によって一気に関心が高まったプリオン病についての第一人者による解説も特色といえよう.
上巻の序で述べたように,このところ勢いを盛り返している感染症であるが,それに対するわれわれの備えは決して十分ではない.医学の抱える課題は多方面にわたるが,私たちは感染性疾患に対する態勢の立て直しこそ,現在最も緊急度の高い課題だと考えている.AIDSや大腸菌 O157 が脚光を浴びているが,実は問題ははるかに広くかつ深いのである.的確に実態を把握することの重要性は,いくら強調してもしすぎることはない.
上巻と併せて,気軽に読める最新の感染症読本として広範囲の読者に利用されるならば,編者の幸いこれにすぎるものはない.
2003年3月
中山宏明・多田 功・南嶋洋一
序にかえて 中山宏明・多田功・南嶋洋一
第6章 危険な砂場
トキソプラズマ症とイヌ回虫症 多田 功
トキソプラズマ症/イヌ回虫症
セアカゴケグモの教訓 上村 清
セアカゴケグモ騒動/毒性は強く,日本で定着可能/セアカゴケグモの習性/帰化/咬まれたときの処置
第7章 グルメ時代の落とし穴
獣肉由来の感染症 多田 功・水口康雄
寄生虫感染/細菌感染
無農薬野菜・輸入野菜由来の感染症 藤田紘一郎
はじめに/帰ってきた回虫症/有機栽培野菜による回虫多数感染例/有機肥料としての人糞尿/輸入生鮮野菜による回虫症と鞭虫症/輸入キムチによる回虫症/おわりに
魚介類由来の感染症 多田 功・水口康雄
寄生虫感染/細菌感染/魚介類由来のウイルス感染症
第8章 新・ヰタ・セクスアリス
STDとその周辺 濱砂良一・南嶋洋一
はじめに/oral sex/淋菌,クラミジア感染症/梅毒/ヘルペス/その他のウイルス感染症/おわりに
AIDSとその周辺 栗村 敬
はじめに/HIVの型と亜型/HIV感染より AIDSへ/HIVの感染経路と対策/治療/HIV感染と感受性/消毒/おわりに
第9章 熱帯の脅威
マラリア 大友弘士
はじめに/マラリアの疾病小史/過去の日本のマラリア/世界のマラリア流行動向/わが国の輸入マラリア概況/マラリアの診断と治療
赤痢アメーバ症 竹内 勤
はじめに/近年の赤痢アメーバ研究の進展/赤痢アメーバ症の病因,病態/おわりに
ウイルス性出血熱 倉田 毅
ウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fevers;VHF)とは何か/ラッサ熱(Lassa Fever)/エボラ出血熱(Ebola Hemorrhagic Fever)/クリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo Hemorrhagic Fever;CCHF)/マールブルグ病(Marburg Disease)/おわりに
アルボウイルス感染症 森田公一
アルボウイルス(Arbovirus)とは何か/デング熱・デング出血熱/日本脳炎/西ナイル熱(ウエストナイル熱)/黄熱病/おわりに
第10章 感染源は唾液
単純ヘルペス 坂岡 博
はじめに/ヘルペスウイルスとそのゲノム/HSVによる感染/HSVの DNA診断と分子疫学/HSV感染症の予防と治療/おわりに
サイトメガロウイルス感染症 南嶋洋一
はじめに/CMVとは/CMVの感染様式/CMV感染症/CMV感染症のウイルス学的診断/CMV感染症の発症因子/CMVの血中感染病態/抗ウイルス化学療法/おわりに
ヒトヘルペスウイルス 6・7 による感染症 森康子・山西弘一
はじめに/HHV-6 の歴史/HHV-6 のウイルス学的性状/HHV-6 の血清疫学/HHV-6 の感染経路/HHV-6 と関連疾患/HHV-7 の歴史/HHV-7 のウイルス学的性状/HHV-7 の血清学的疫学/HHV-7 の感染経路/HHV-7 と関連疾患/HHV-6,HHV-7 感染症の診断/治療/おわりに
EBウイルス感染症 水柿雄三・高田賢蔵
はじめに/EBVのウイルス学/伝染性単核球症(IM)/EBVとヒト癌/口腔毛状白板症と EBV/自己免疫疾患と EBV/おわりに
第11章 血液にご用心
ウイルス肝炎 飯野四郎
はじめに/B型肝炎ウイルス(HBV)感染/C型肝炎ウイルス(HCV)感染/D(デルタ)型肝炎ウイルス(HDV)感染
HTLV-1 感染症 日野茂男
HTLV-1 とは/地域内流行/ATL(成人 T細胞白血病)/HAM(HTLV-1 関連脊髄症)/その他の病気/HTLV-1 の感染経路/母乳回避による HTLV-1 感染予防法の評価
第12章 風変わりな感染症
プリオン病 立石 潤
はじめに/疾患分類/病因/症状と診断/医原性感染/感染防止と不活化法
第13章 情報化時代と感染症
インターネット時代の感染症情報 嶋田雅暁
はじめに/インターネットは張り子の虎?/インターネットでできること/WWWのパワーを侮ってはいけない/メーリングリストとよばれる“耳学問の世界”に参加しよう/Web pageには一体何がある/メーリングリストには何がある/おわりに―インターネット,寄生虫学会の経験
第14章 口は災いのもと?
歯科感染症の現状 川端重忠・浜田茂幸
はじめに/う蝕と歯周病の推移/歯科診療にしのびよる新興・再興感染症/おわりに
付章 稀用薬はどこに?
輸入感染症に対する薬剤の入手法 大友弘士
はじめに/輸入感染症の種類/輸入感染症の治療薬/稀用薬の確保/研究班が確保する稀用薬とその入手法
索引
第6章 危険な砂場
トキソプラズマ症とイヌ回虫症 多田 功
トキソプラズマ症/イヌ回虫症
セアカゴケグモの教訓 上村 清
セアカゴケグモ騒動/毒性は強く,日本で定着可能/セアカゴケグモの習性/帰化/咬まれたときの処置
第7章 グルメ時代の落とし穴
獣肉由来の感染症 多田 功・水口康雄
寄生虫感染/細菌感染
無農薬野菜・輸入野菜由来の感染症 藤田紘一郎
はじめに/帰ってきた回虫症/有機栽培野菜による回虫多数感染例/有機肥料としての人糞尿/輸入生鮮野菜による回虫症と鞭虫症/輸入キムチによる回虫症/おわりに
魚介類由来の感染症 多田 功・水口康雄
寄生虫感染/細菌感染/魚介類由来のウイルス感染症
第8章 新・ヰタ・セクスアリス
STDとその周辺 濱砂良一・南嶋洋一
はじめに/oral sex/淋菌,クラミジア感染症/梅毒/ヘルペス/その他のウイルス感染症/おわりに
AIDSとその周辺 栗村 敬
はじめに/HIVの型と亜型/HIV感染より AIDSへ/HIVの感染経路と対策/治療/HIV感染と感受性/消毒/おわりに
第9章 熱帯の脅威
マラリア 大友弘士
はじめに/マラリアの疾病小史/過去の日本のマラリア/世界のマラリア流行動向/わが国の輸入マラリア概況/マラリアの診断と治療
赤痢アメーバ症 竹内 勤
はじめに/近年の赤痢アメーバ研究の進展/赤痢アメーバ症の病因,病態/おわりに
ウイルス性出血熱 倉田 毅
ウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fevers;VHF)とは何か/ラッサ熱(Lassa Fever)/エボラ出血熱(Ebola Hemorrhagic Fever)/クリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo Hemorrhagic Fever;CCHF)/マールブルグ病(Marburg Disease)/おわりに
アルボウイルス感染症 森田公一
アルボウイルス(Arbovirus)とは何か/デング熱・デング出血熱/日本脳炎/西ナイル熱(ウエストナイル熱)/黄熱病/おわりに
第10章 感染源は唾液
単純ヘルペス 坂岡 博
はじめに/ヘルペスウイルスとそのゲノム/HSVによる感染/HSVの DNA診断と分子疫学/HSV感染症の予防と治療/おわりに
サイトメガロウイルス感染症 南嶋洋一
はじめに/CMVとは/CMVの感染様式/CMV感染症/CMV感染症のウイルス学的診断/CMV感染症の発症因子/CMVの血中感染病態/抗ウイルス化学療法/おわりに
ヒトヘルペスウイルス 6・7 による感染症 森康子・山西弘一
はじめに/HHV-6 の歴史/HHV-6 のウイルス学的性状/HHV-6 の血清疫学/HHV-6 の感染経路/HHV-6 と関連疾患/HHV-7 の歴史/HHV-7 のウイルス学的性状/HHV-7 の血清学的疫学/HHV-7 の感染経路/HHV-7 と関連疾患/HHV-6,HHV-7 感染症の診断/治療/おわりに
EBウイルス感染症 水柿雄三・高田賢蔵
はじめに/EBVのウイルス学/伝染性単核球症(IM)/EBVとヒト癌/口腔毛状白板症と EBV/自己免疫疾患と EBV/おわりに
第11章 血液にご用心
ウイルス肝炎 飯野四郎
はじめに/B型肝炎ウイルス(HBV)感染/C型肝炎ウイルス(HCV)感染/D(デルタ)型肝炎ウイルス(HDV)感染
HTLV-1 感染症 日野茂男
HTLV-1 とは/地域内流行/ATL(成人 T細胞白血病)/HAM(HTLV-1 関連脊髄症)/その他の病気/HTLV-1 の感染経路/母乳回避による HTLV-1 感染予防法の評価
第12章 風変わりな感染症
プリオン病 立石 潤
はじめに/疾患分類/病因/症状と診断/医原性感染/感染防止と不活化法
第13章 情報化時代と感染症
インターネット時代の感染症情報 嶋田雅暁
はじめに/インターネットは張り子の虎?/インターネットでできること/WWWのパワーを侮ってはいけない/メーリングリストとよばれる“耳学問の世界”に参加しよう/Web pageには一体何がある/メーリングリストには何がある/おわりに―インターネット,寄生虫学会の経験
第14章 口は災いのもと?
歯科感染症の現状 川端重忠・浜田茂幸
はじめに/う蝕と歯周病の推移/歯科診療にしのびよる新興・再興感染症/おわりに
付章 稀用薬はどこに?
輸入感染症に対する薬剤の入手法 大友弘士
はじめに/輸入感染症の種類/輸入感染症の治療薬/稀用薬の確保/研究班が確保する稀用薬とその入手法
索引