やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社



 Holter(ホルター)博士によって開発されたホルター心電図法は,今日では不整脈,虚血性心臓病の診断,薬効の評価,あるいはペースメーカ不全の診断など広く用いられ,なくてはならない手法の一つとなっている.
 本書はホルター心電図法をやさしく解説する書として1989年5月に初版が出された.しかし,この数年の間に,心電図記録器の小型化,解析器のコンピュータによる自動解析の進歩,あるいはホルター心電図法を利用した自律神経機能の評価など,新しい側面が出てきた.そこで全面見直しし,特に基本事項のところを改訂し再び出版してはとの要望があり,ここに新たな版を出す運びとなった.
 Part 1はホルター心電図法の総論ともいうべき内容で基本的な事項の解説が主となっている.ここには,最近注目されているホルター心電図法を利用した心拍変動解析からの自律神経機能の評価の仕方も加えた.また,本法が安静時ではなく日常動作時の心電図記録が目的ということで,混入しやすいアーチファクトについての解説も行った.
 Part 2は日常診療で遭遇しやすい疾患のホルター心電図異常の実例を示し,心電図の読み方のポイントを解説した.この際,各実例ごとに「ワンポイント」という枠を設け,とくに重要な臨床事項をあげ解説した.さらに大きな特色は,各項目ともなるべく左頁には解説,右頁にはグラフや図を示し,見開き2頁で1項目が容易に理解できるように工夫したことである.
 本書は,第一線の医師,臨床検査技師,看護婦の方々に役立つよう配慮したつもりである.特に,後半の心電図実例はホルター心電図のテキストということだけでなく,不整脈やST変化の読み方の書としても役立つものと確信している.
 本書の初版は,ヒューマンティワイ ・山田 耕氏の御協力のもとに同社で出版された.今回,事情により医歯薬出版株式会社で出版される運びとなった.この出版にあたっては,山田氏と医歯薬出版編集スタッフの御協力があり,心から御礼を申し上げたい.
 1994年3月 田邉晃久

第2版の序

 ホルター心電図法は,不整脈や狭心症の診断,抗不整脈薬や抗狭心症薬の薬効評価,ペースメーカー不全の検出など循環器領域の検査法として汎用されている.
 本書はホルター心電図法をやさしく解説する書として1989年5月に初版を出版し,1994年3月に医歯薬出版株式会社より改訂版が出版された.幸いにも評判のよろしきを得たが,この数年,ホルター法における機器・解析の主流がアナログからデジタルに変わり結果の表示法なども大幅に変更されるところとなった.そこで,みたび見直し,大幅に改訂し新しい形で再出版してはとの要望があり,ここに新たな版を出す運びとなった.
 Part 1は,ホルター心電図法の総論ともいうべき内容で基本的な解説が主になっている.本改訂版はとくにデジタルホルター法につき説明を追加した.また,前版で解説したホルター心電図法を利用した心拍変動解析からの自律神経機能評価のほかに,遅延電位の検出,さらには最近注目されているQT間隔の自動解析についても加えた.
 Part 2は,日常診療で遭遇しやすい不整脈,虚血性ST変化のホルター心電図の実例を示し,よみかたのポイントを解説した.
 前版になかった点として,類似の実例を期外収縮,頻拍性不整脈,心房細胞・粗動,房室ブロック,QT延長症候群,ペースメーカー不全,虚血性ST変化のカテゴリーに分け,探索を容易とした.また,各例ごとに“ワンポイント”枠を設け,重要な事項をあげ解説した.
 さらに大きな特色は,各例ともできるだけ左頁には解説,右頁には心電図実例,グラフ,図を示し,見開き2頁で1項目が容易に理解できるようにした.
 本書は臨床第一線の医師,臨床検査技師,看護婦の方々に役立つように配慮したつもりである.とくに,心電図実例は不整脈のみかたやSTの変化のよみかたに必ずや役立つものと確信する.
 本書の改訂は医歯薬出版のスタッフ,そして東海大学病院心機能室の諸氏のご協力があって可能となったものである.心から感謝し御礼を申し上げたい.
 2001年初夏 田邉晃久
第2版の序
ワンポイント・目次

Part1
 ホルター心電図の基本
  I.ホルター心電図記録の適応
   1.どのようなときにホルター心電図を記録するか
    1.循環器症状,症候
     1) 動悸,脈のみだれ
     2) 失神発作,フラッとする感じ
     3) 胸痛,胸部圧迫感
    2.不整脈の発生回数,重症度の評価
    3.虚血ST下降の有無,頻度,持続時間の評価
    4.抗不整脈薬,抗狭心症薬の薬効評価
    5.ペースメーカ機能の評価
  II.電極,誘導法
   2.電極の選びかたとつけかたの手順
    1.電極の選びかた
    2.電極のつけかたの手順
   3.電極コードと誘導ケーブル
    1.電極コード
    2.誘導ケーブル
   4.電極をつけるときの注意点
    1.皮膚の処理
    2.電極の固定
   5.誘導法の種類
    1.左右方向(X軸方向)の誘導
    2.上下方向(Y軸方向)の誘導
    3.前後方向(Z軸方向)の誘導
   6.誘導法の選択
    1.不整脈検出のための誘導
    2.ST変化を検出するための誘導
   7.各誘導法の長所と短所
    1.左右方向誘導
    2.上下方向誘導
    3.前後方向誘導
  III.記録器の種類
   8.記録器の種類
    1.メモリーカード式(デジタルホルター記録器)
    2.カセットテープ式(カセットテープホルター記録器)
    3.実時間処理式
  IV.記録器のセッティングと行動日誌
   9.記録器のセッティングのときの注意点
    1.記録器のセッティング
    2.心電図波形のチェック
    3.体位変化による波形変化の確認
   10.日常行動日誌のつけかたと注意
    1.行動,症状日誌
    2.日誌のつけかた,注意点
  V.データ表示
   11.ホルター心電図のデータ表示
    1.オシロスコープにおける解析中の表示
     1) オシロスコープの観察
     2) オシロスコープにおける表示
    2.自動解析による表示
     1) 表による表示
     2) ヒストグラムによる表示
     3) トレンドグラムによる表示
    3.圧縮心電図による表示
     1) 圧縮心電図法とは
     2) 圧縮心電図の実例
  VI.不整脈のみかた
   12.心室性不整脈
    1.心室性期外収縮
    2.心室頻拍
   13.上室性不整脈
    1.上室性期外収縮
    2.上室頻拍
   14.発作性心房細動・粗動
    1.発作性心房細動
    2.発作性心房粗動
   15.洞停止,洞房ブロック
    1.洞不全症候群
    2.洞停止,洞房ブロック
   16.房室ブロック
    1.第1度房室ブロック
    2.第2度房室ブロック
    3.第3度房室ブロック(完全房室ブロック)
   17.WPW症候群
  VII.ST-T変化のみかた
   18.ST-T変化の自動解析の基準
    1.ST-T変化の自動解析の基準
   19.ST下降
    1.ST下降
   20.ST上昇,T波の変化
    1.ST上昇
    2.T波の変化
   21.真性ST変化と偽性ST変化
    1.真性ST変化
    2.偽性ST変化
   22.虚血ST変化診断のポイント
    1.虚血性心臓病がある場合
    2.虚血性心臓病が確認されていない場合
   23.波形のスーパーインポーズ(重ね書き)による虚血ST変化の読み方
    1.圧縮心電図とスーパーインポーズ波形の読み方
    2.スーパーインポーズ波形によるST変化
   24.体位ST変化の特徴
   25.無症候性ST変化
    1.無症候性心筋症虚血の分類(Cohnの分類)
    2.ホルター心電図法における無症候性ST変化
   26.日常動作と虚血ST変化
    1.日常動作における虚血ST変化
    2.日常動作による虚血ST変化出現の誘因
  VIII.ペースメーカ異常のみかた
   27.ペースメーカ異常のみかた
    1.ペースメーカ機能
    2.ペーシング異常とセンシング異常
  IX.薬効評価
   28.心室性期外収縮における評価
    1.心室性期外収縮の日内変動と日差変動
    2.薬効評価
   29.上室性期外収縮における評価
    1.上室性期外収縮の日内変動と日差変動
    2.薬効評価
   30.虚血ST変化における薬効評価
    1.ホルター心電図法による抗狭心症薬の薬効評価の適応
    2.薬効評価
  X.心拍変動解析による自律神経機能評価
   31.心拍変動解析
    1.時系列領域解析法
     1) 心拍変動解析とは
     2) 臨床応用
     3) 時系列領域解析の指標
    2.周波数領域解析(パワースペクトル解析)法
     1) 周波数領域解析の指標
     2) 周波数領域解析の実際
    3.各種心疾患と予後の評価
     1) 心筋梗塞
     2) 突然死
     3) 心不全
     4) 肥大型心筋症
    4.発作性心房細動
  XI.心室遅延電位
   32.遅延電位
    1.遅延電位とは
    2.遅延電位の判定基準
    3.ホルター心電図を利用した遅延電位検出
  XII.QT間隔解析
   33.QT間隔解析
    1.QT dispersion
    2.QT間隔解析
  XIII.検査結果報告
   34.検査結果報告
  XIV.アーチファクト
   35.アーチファクトの分類
   36.アーチファクトの実例
  XV.わが国で使用されている主な記録器,解析器
   37.わが国で使用されている主なホルター心電計
    1.グッドマン(GOODMAN)
    2.フクダ電子(1)
    3.フクダ電子(2)
    4.日本光電(1)
    5.日本光電(2)
    6.日本光電(3)
    7.スズケン
    8.TOKIBO(東機貿)

Part2
 臨床例
  I.期外収縮,副収縮
   1.P′波のある期外収縮
   2.P′波のある期外収縮の連発
   3.右脚ブロック型と左脚ブロック型の期外収縮
   4.心拍数増加と右脚ブロック
   5.QRS幅の広い期外収縮,連発
   6.先行心拍のT波上に生じた期外収縮
   7.連結期の変動する幅広いQRS波
  II.頻拍性不整脈
   1.洞性心拍と同じ形状のP波,QRS波の頻拍
   2.P波が先行心拍T波内にかくれた頻拍
   3.正常QRS幅でRR間隔の等しい頻拍
   4.一過性の右脚ブロック型頻拍
   5.洞性心拍と似た形状のQRS波の頻拍
   6.同一症例に幅の広いQRS波と幅の正常なQRS波の頻拍
   7.幅の広いQRS波の頻拍
   8.QRS幅が広く心室レートの速い頻拍
   9.右側胸部誘導のR′-ST上昇と不規則で幅の広いQRS波の頻拍
   10.右室S1-S2刺激法により記録された幅広いQRS波の頻拍
  III.心房細動,心房粗動
   1.基線の微細なゆれ,一過性に出現するRR間隔延長
   2.基線の粗大なゆれ,一過性に出現するRR間隔延長
   3.細動波と粗動波の混在する心電図
   4.基線に規則正しいゆれのある心電図
   5.等電位線のない,正常QRS幅の速い頻拍
   6.幅広いQRS波の頻拍で不規則なRR間隔
   7.心拍数200拍/分の等電位線のない右脚ブロック型頻拍
  IV.洞不全症候群
   1.P波は正常,PP間隔の延長
   2.突然のRR間隔延長
   3.PP間隔の一過性の延長
   4.頻拍停止直後の心停止
  V.房室ブロック
   1.PQ間隔が順次延長,P波の後のQRS波の欠如
   2.P波とQRS波が連結せず,QRS波の直後にP波がある
   3.P波に続くQRS波の欠如
   4.PQ間隔一定で,P波に続くQRS波の突然の欠如
   5.P波とQRS波の連結性の欠如,RR間隔の延長
  VI.QT延長症候群
   1.聾唖を伴わない例のQT延長
   2.聾唖を伴う例のQT延長
  VII.ペースメーカ不全
   1.小さなスパイクがあり,QRS波は欠如
   2.小さなスパイクの突然の欠如
  VIII.虚血性ST変化
   1.階段を昇る際のST下降
   2.夜間睡眠時のST下降と早朝の頻拍
   3.一過性ST上昇
   4.飲酒後の午後9時ごろきまって起こる胸痛とST上昇
   5.入浴時における虚血ST下降
   6.運転,食後,性行為でのST下降
   7.排便,排尿時のST下降

薬剤一覧
索引

ワンポイント・目次

心房性期外収縮の心室内変行伝導の心電図
心房性期外収縮の連発
代償性心室性期外収縮と間入性心室性期外収縮
左脚の心室変行伝導
心拍依存性脚ブロック
融合収縮
副収縮の心電図所見
連結期
洞性頻拍の心電図
洞性頻拍の臨床的意義
心房頻拍の心電図
心房頻拍の臨床的意義
Ashman現象
発作性上室頻拍
発作性上室頻拍の心電図
心室頻拍の心電図の特徴
心室頻拍と鑑別が必要な不整脈
不整脈源性右室異形成症
Brugada症候群
植え込み型除細動器について
心房細動における長い心休止
心室内変行伝導
非伝導性心房性期外収縮
心房細動の臨床的意義
心房粗動の心電図
心房粗動の臨床的意義
1 対1伝導心房粗動の臨床的意義
WPW症候群の心電図
WPW症候群の臨床的意義
電気生理学的検査時の心腔内心電図
心房粗動とカテーテル・アブレーション
心房粗動の心電図とリエントリー回路
洞性徐拍
洞不全症候群の心電図(Rubensteinらの診断基準)
徐脈頻脈症候群の心電図
Overdrive suppression
房室ブロックの心電図
房室解離
高度房室ブロック
第2度房室ブロックMobitzII型の心電図
第3度房室ブロックの心電図
torsades de pointes型心室頻拍
QT延長症候群
ペースメーカ不全
ペースメーカ感知異常
冠動脈再建術
安静狭心症
異形狭心症
陰性U波
無症候性虚血性ST変化
狭心症
不安定狭心症