やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 臨床実習を始めようとする学生に求められるのは,基本的な臨床技能の修得である.
 この評価法として岩手医科大学では平成11年度に実技試験(Objective Structured Clinical Examination:OSCE)が導入されることになり,従来,講座単位で行われていた臨床技能の教育内容を標準化する必要性が生じた.さらに,2週間という限られた臨床技能教育の期間内で有効に教授し,学習するためには,適当な教材の開発が必要となった.
 このような経緯から,本書は臨床実習を開始する前の学生を対象に,短期間で効率的な基本的臨床技能教育を行うことを目的に作成された実習教本である.このため,内容はできるだけ基本的なものとし,図表を数多く入れることに努めた.
 内容は基本的診察法と基本的検査・治療手技の2つに分けて記載したが,基本的といっても,本書はクリニカル・クラークシップにより学生が医療チームの一員として実際の診療に携わるような臨床実習に際しても,十分な内容を含んでいる.
 このたび,医歯薬出版のご厚意により,本書が臨床実習中でも使用できるようにコンパクトな形態で発刊されることになった.医歯薬出版の関係各位に深甚なる謝意を表する.
 また,本学医学部の教授各位にはご協力とご理解をいただき,厚く御礼申し上げる.
 今後,本書に対し諸家のご批判やご叱正を願う次第である.
 2001年 2月 編者主幹代表 千田勝一
はじめに
編集者・執筆者一覧

◆基本的診察法

診察の基本……寺島雅典
 身体診察法
 診察に際して考慮すべきこと
  1.診察に適した環境
  2.患者の心理状態
  3.系統的な診察
  4.患者の衣服
  5.所見の記録
  6.医師の心構え
 診察用具
 診察手順
  1.全身状態の観察
  2.バイタルサイン
  3.系統的診察の順序
 診察方法の要点
  1.視診
  2.打診
  3.聴診
  4.触診

小児の診察……嶋田泉司
 小児の診察に際して考慮すべきこと
 病歴聴取の注意点
  1.全身状態の観察
  2.患児が乳幼児の場合
 身体診察の注意点
  1.診察の進め方
  2.バイタルサイン
  3.各部位の診察法への追加留意事項

医療面接……鈴木一幸
 医療面接とは
 医療面接の進め方
  1.医療面接を始めるための適切な環境設定
  2.医療面接の実際
  3.医療面接で収集すべき情報

バイタルサインの見方……中村元行・市川 隆・荻生直徳
 脈拍
 呼吸
 体温
 血圧
  1.測定器具
  2.被検者側の測定条件
  3.測定方法
 意識レベル

頭頸部の診察……別府高明・寺島雅典・本庄省五・嶋田泉司・高橋洋司・鈴木健策
 頭部
  1.頭部奇形
  2.小児の頭部診察
 顔面
  1.顔面
  2.眼
  3.耳,鼻,口腔,咽頭
 頸部
  1.甲状腺の触診法
  2.頸部リンパ節の触診法
  3.その他の方法

胸部の診察……小林 仁・寺島雅典・佐藤俊樹
 呼吸器・循環器の診察
  1.診察手順
  2.視診
  3.触診
  4.打診
  5.聴診
 乳房の診察
  1.視診
  2.触診

腹部の診察……加藤章信・山崎 健
 診察の順序と診察前に行うこと
 腹部の診察
  1.視診
  2.聴診
  3.打診
  4.触診
 その他の診察
  1.腹水の診察
  2.圧痛の見方
  3.腹膜刺激症状の見方
  4.虫垂炎の診察

四肢・脊柱の診察……山崎 健
 基本的診察
 四肢の診察
  1.上肢の診察
  2.下肢の診察
 小児の四肢の診察
  1.四肢と体幹のバランス
  2.拘縮,関節弛緩の診察
  3.上下肢,手指の先天異常の診察
  4.先天性股関節脱臼,先天性内反足の診察
 脊柱の診察
  1.視診
  2.可動域
  3.症状誘発試験

神経学的診察……佐々木一裕・別府高明
 診察手技
  1.精神意識状態の診察
  2.脳神経機能の診察
  3.運動機能の診察
  4.腱反射と病的反射
  5.感覚系の診察
  6.協調運動の診察
  7.髄膜刺激症状などその他の神経徴候

生殖器の診察……井筒俊彦・丹治 進
 女性性器の診察法
  1.外性器の視診
  2.外性器の触診
  3.腟鏡診
  4.内診
 妊婦の診察法
  レオポルド触診法
 男性性器の診察法
  1.診察の前に
  2.外性器診察の要点
  3.直腸診

◆基本的検査・治療手法

採血法と静・動脈路確保法……徳永英夫
 採血
  1.目的
  2.静脈穿刺の方法
  3.合併症
 末梢静脈確保
  1.目的
  2.方法
 静脈切開
  1.目的
  2.方法
 中心静脈確保
  1.目的
  2.方法
  3.穿刺手技の合併症と対策
 動脈穿刺
  1.目的
  2.方法(カテーテル留置法)

気管内挿管……岡田 弘・秋山潤根
 気管内挿管とは
  1.目的
  2.適応
  3.注意すべき病態
  4.気管内挿管に必要な解剖学的知識
  5.挿管時の合併症
 方法

気管切開術……鈴木健策
 気管切開術とは
  1.目的および適応
  2.禁忌
  3.方法
 手技
  1.体位
  2.麻酔
  3.皮膚切開
  4.軟部組織剥離
  5.甲状腺峡部の処理
  6.甲状腺峡部の剥離
  7.気管前壁の処理
  8.気管カjューレの挿入

心肺蘇生の基本
 人工呼吸と心臓マッサージ……中村元行
 心肺蘇生のABC
  1.緊急連絡
  2.気道確保
  3.人工呼吸
  4.心臓マッサージ
  5.気道異物

消毒と滅菌……本庄省五・小林 仁・遠藤 薫
 消毒薬の一般的性質と適用部位
  1.消毒薬の一般的性質
  2.消毒薬の適用部位
 MRSAの性質と感染防止対策
  1.MRSAとは
  2.MRSAの対策の実際
  3.MRSA腸炎
 結核菌・真菌・芽胞菌・ウイルス対策
  1.結核菌
  2.真菌(カンジダ,アスペルギルス)
  3.芽胞を形成する菌
  4.ウイルス
 手術手洗い法
  1.手指に付着している細菌叢
  2.手洗いの手順
 皮膚消毒
  1.手術部位
  2.注射針穿刺部位
  3.血管カテーテル挿入部位
  4.剃毛

創傷の治療と処置……寺島雅典
 止血
  1.一時的止血法
  2.永久的止血法
 創の清浄サ
  1.Debridementとは
  2.適応
  3.方法
 局所麻酔法
  1.局所麻酔法の分類
  2.局所麻酔薬の種類
  3.局所麻酔薬の効果
  4.方法
  5.局所麻酔薬中毒

注射法……別府高明
 皮下注射
  1.注射組織
  2.注射部位
  3.方法
  4.留意点
 筋肉内注射
  1.注射組織
  2.注射部位
  3.方法
  4.留意点
 皮内注射
  1.注射組織
  2.注射部位
  3.方法
  4.留意点
 静脈内注射
  1.注射組織
  2.注射部位
  3.方法
  4.留意点

穿刺,ドレナージ法……小林 仁・中村元行・寺島雅典・山崎 健・佐々木一裕・荻生直徳
 胸腔穿刺法
  1.目的
  2.方法
  3.合併症
 胸腔ドレーン挿入法(胸腔ドレナージ)
  1.目的
  2.方法
  3.合併症
  4.ドレーンチューブの抜去
 心膜腔(心嚢)穿刺法
  1.適応
  2.心嚢穿刺の必要条件
  3.準備
  4.方法
  5.禁忌
  6.合併症
 腹腔穿刺法と腹腔ドレナージ
  1.適応
  2.方法
  3.合併症
  4.禁忌
 脊髄腔穿刺法
  1.髄液の解剖生理
  2.髄液検査所見
  3.腰椎穿刺
  4.後頭下穿刺
 関節穿刺法
  1.目的
  2.方法
  3.膝関節穿刺
  4.関節液の特徴

輸液・輸血……嶋田泉司
 輸液
  1.目的
  2.電解質輸液剤の種類と特性
  3.輸液器具と手技
  4.脱水症の治療
 輸血
  1.目的
  2.開始準備
  3.血液製剤の投与法
  4.主な血液製剤の使用指針
  6.輸血の副作用

胃洗浄……徳永英夫
 胃洗浄
  1.目的と適応
  2.方法
  3.合併症

浣腸・注腸……加藤章信
 浣腸
  1.目的
  2.禁忌
  3.方法
  4.薬液の種類
  5.合併症
 注腸
  1.目的
  2.方法(腸重積の診断と治療)

導尿……丹治 進
 導尿
  1.目的
  2.注意点
  3.方法