やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに

 多くの治療用医薬品は種々の要因によって影響されることはいうまでもない.すなわち,それには薬物側における影響要因と,さらに応用される生体側における影響要因がある.その生体側要因には種々あるものの,年齢差の要因は極めて大きい.とくに小児患者における薬物治療においては,薬の選択ならびに投与量の調整には留意すべき点が多い.年齢による吸収・分布・代謝・排泄機能の差,また血液脳関門等の透過性の差,加えて薬物代謝酵素の遺伝多型等が関与すれば,その影響はさらに倍加する.
 近年,薬剤師が病棟において服薬指導等活躍する場面が多くなってきた.特に小児領域担当薬剤師においては,薬物作用・副作用・コンプライアンス等を含む服薬指導において種々苦労されているところである.小児特有の疾患・病態の複雑性,治療薬物ならびに剤形の特殊性,また治療薬コンプライアンスの不確実性,さらには患者本人・保護者への服薬指導等において留意すべき事項が多々ある.しかしながら,現実的には担当薬剤師の今までの小児疾患の知識・経験,服薬指導内容・方法等については,独自でなされているのが現状ではないかと思われる.かといって参考となる成書がほとんどない.
 そこで,本書では実際に服薬指導管理業務に携わる薬剤師が小児領域での留意点を取り上げ,それをもとに小児の代表的各種疾患と特徴を,またそれに対する薬物療法について具体的処方例をあげ,実際の服薬指導時の留意点等について解説した.さらに患者(保護者)側が一番関心のある治療効果・副作用についての服薬説明のポイントについて具体的に記載した.
 小児領域の薬学的な観点からのケアーのあり方については,その疾患が複雑であること,年齢によって留意点が異なること等注意しなければならない要因が種々あるものと思われるが,本書が小児領域を担当している薬剤師の患者への服薬指導を含むファーマシューティカルケアーの実践上の一助,ならびにさらなる展開のきっかけとなれば幸いである.
 2000年10月 五味田 裕
総論
 1.小児における服薬指導の問題点
 2.重篤な副作用の初期症状

服薬指導(各論)
 1.発熱
   1.発熱とは
   2.発熱に関する留意点
   3.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   4.服薬指導の実際
 2.痛み
   1.痛みとは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
 3.感染症
   1.感染症とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
 4.喘息
   1.喘息とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.発作時の服薬指導
   4.吸入剤の使用法指導
   5.服薬指導の実際
 5.アトピー性皮膚炎
   1.アトピー性皮膚炎とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
 6.眼疾患
   1.結膜炎とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
   4.検査・手術のある患者の場合
   5.点眼薬・眼軟膏の使用法指導
 7.てんかん
   1.小児てんかんとは
   2.てんかんの薬物療法
   3.抗てんかん薬の作用機序
   4.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   5.服薬指導の実際
   6.服薬指導のQ&A
 8.若年性糖尿病
   1.糖尿病とは
   2.糖尿病の治療と管理
   3.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   4.シックデイ時の対応
   5.小児糖尿病の管理とその問題点
 9.心不全
   1.心不全とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
 10.生体部分肝移植
   1.生体肝移植適応疾患
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
 11.悪性腫瘍
   1.悪性腫瘍とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   3.服薬指導の実際
 12.腎疾患
   1.ネフローゼ症候群とは
   2.ネフローゼ症候群の治療法
   3.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
   4.食事指導
   5.生活指導
   6.服薬指導の実際
 13.脳損傷
   1.脳損傷とは
   2.主な薬物と副作用および服薬指導のポイント
 14.中毒
   1.小児の中毒の特徴
   2.治療法の適応と手技
   3.解毒・拮抗薬

索引