やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 本特集では,現役世代の患者にとって極めて切実でありながら,これまで体系的に語られる機会の少なかった「復職」を真正面から取り上げた.身体機能や認知機能が一定程度回復し,自宅生活が可能となったとしても,就労者にとっての主要な生活の場は職場であり,そこで求められる能力や配慮は自宅退院とは異なる部分が多い.しかしながら,入院リハビリテーション治療における目標設定では自宅退院が優先されやすく,かつ退院後の外来リハビリテーション治療は量や質的な課題が多い傾向にあるため,希望する復職との間に乖離が生じやすい.このギャップをいかに埋めるかは,個々の臨床判断に委ねられてきた部分が大きい.
 復職は疾患・障害の種類や程度,職種,雇用形態,社会制度,さらには国や地域の文化的背景によっても条件が大きく異なり,標準化された介入や強固なエビデンスを構築することは容易ではない.一方で,復職に向けた考え方の整理,進め方の手順,医療と職場をつなぐ枠組み,法制度や社会資源の活用といった「方法論」を共有することは十分に可能であり,近年は厚生労働省による仕事と治療の両立支援ガイドラインの整備や,リモートワークを含む働き方の多様化によって,その選択肢は着実に広がりつつある.
 本特集では,脊髄損傷,高次脳機能障害,精神疾患,神経難病,がんといった,比較的若年層が罹患しやすく,就労との関係が特に重要となる疾患・病態を取り上げ,さらに仕事と治療の両立支援における制度やサービスの具体的な利用法について,それぞれの分野で豊富な臨床経験と実践知を有する6 名の先生方にご執筆いただいた.復職を阻む現実的な困難,医療者が陥りやすい盲点,職場との調整における工夫,そして患者本人の思いや葛藤にまで踏み込み,明日からの診療に直結する示唆に富んだ内容となっている.疾患ごとの違いを超えて,「復職とは何か」「リハビリテーション医療はどこまで関与できるのか」という共通の問いが,読後には立体的に浮かび上がってくるはずである.
 多忙な臨床・研究・教育の合間を縫って,貴重な知見と経験を惜しみなく本特集に寄せてくださった執筆者の先生方に,心より敬意と感謝を表したい.本特集が,読者にとって復職支援を再考する契機となり,個々の患者の人生の選択肢を広げる一助となると同時に,わが国全体として取り組むべき課題を可視化する礎となることを切に願う.
 (編集委員会 企画担当:佐々木信幸)
特集 復職に向けたリハビリテーション治療
 特集にあたって(佐々木信幸)
 脊髄損傷患者の復職(古澤一成 難波孝礼・他)
 高次脳機能障害患者の復職(寺嶋咲稀 青木重陽)
 精神疾患患者の職場復帰支援(江口 尚)
 神経難病患者の復職支援(山徳雅人)
 がん患者の復職(土方奈奈子)
 仕事と治療の両立支援にかかわる制度やサービス(永田昌子)

TOPICS 先天性下肢疾患の幼児期からの運動参加への取り組み
 (落合達宏)

連載
巻頭カラー デジタルフロンティア:次世代技術の展望
 9.地域医療を支える遠隔診療技術と今後のオンライン診療の展開(福島直央)

神経・筋疾患治療の最前線
 3.リハビリテーション医に必要な脊髄小脳変性症の診断・治療の知識と近年の進歩(藤本宏明 平松佑一・他)

最新版! 摂食嚥下機能評価―スクリーニングから臨床研究まで
 21.GLIM基準(前田圭介)

Muscle Health―多職種連携で拓く包括的介入の最前線
 5.サルコペニア肥満:JWGSO 2023基準の臨床応用(松本彩加)

AIと医療DX
 2.医療ビッグデータの生成と活用(中島直樹)

ニューカマー リハ科専門医
 (川畑有紗)

支援機器の現在と未来-普及に向けた取り組み
 7.セルフケア支援(更衣・整容等)の機器の導入と活用(長尾美幸)

医療機関における運転指導
 2.名古屋市総合リハビリテーションセンターにおける脳損傷者に対する運転と地域移動支援(吉原理美)

リハビリテーション関連学会に行ってみよう!
 9.日本再生医療とリハビリテーション学会(田中英一郎 下堂薗 恵・他)

学会報告
 第12回 日本サルコペニア・フレイル学会大会(米田巧基)

臨床経験
 等尺性筋収縮失調抑制法と併用促通反復療法,課題指向型訓練で上肢失調とADLが改善した小脳性運動失調の1例(荻 由梨香 豊栄 峻・他)

 NEWS速報(加賀谷 斉)
 CLOSE UP!!
 開催案内
 バックナンバー
 投稿規定