やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 世界全体でパーキンソン病患者は急増しており,パーキンソンパンデミックとよばれ警鐘が鳴らされている.わが国でもアルツハイマー病に次いで2番目に多い神経変性疾患であり,約29万人が罹患している.有病率は65歳以上人口の約1%といわれており,高齢化が進行する中,今後の急増は免れない.
 パーキンソン病は運動症状の他,自律神経障害,睡眠障害,認知機能障害等,さまざまな非運動症状が出現する.中脳黒質のドパミン細胞の進行性の脱落が特徴であり,ドパミン補充療法が代表的な薬物療法である.罹患期間は一般的に20年間といわれ,診断後治療開始となり,薬物療法の効果が良好なハネムーン期を経て,進行期では運動合併症の出現とともに薬剤抵抗性の臨床症状が徐々に進行していく.
 日本神経学会による『パーキンソン病診療ガイドライン2018』には「リハビリテーションは,内科的かつ外科的な治療に加えて行うことで,症状のさらなる改善やQOLの向上が期待できる治療法である」と明記され,早期から進行期までどのステージにも有効とされている.多彩な症状と障害の進行に対し,各種治療とリハビリテーション治療を適切に組み合わせる.つまり多科・多職種による,医療・介護・福祉を跨いだチームアプローチが極めて重要である.経過中,加齢やその他の疾患の合併により問題がさらに複雑化し,対応に苦慮することが少なくない.対患者だけでなく,長年にわたる介護者の介護負担にも十分な配慮が必要である.
 今回,臨床のcommon diseaseであるパーキンソン病の診断から治療まで,豊富な臨床経験をもつ6名の先生方に,病態,薬物療法,外科的治療,リハビリテーション治療のポイント等についてご執筆いただいた.植木美乃先生には病態と診断,重症度に応じた治療方針について,乙宗宏範先生には各種薬物療法の特徴と注意点,服薬アドヒアランス向上について,下 泰司先生には外科的治療の実際と最近のトピックスについてご解説いただいた.さらに市川 忠先生には歩行障害の評価,歩行練習・訓練の実際と効果について,中馬孝容先生には患者アンケート調査を交え,ADL・IADL障害の特徴とリハビリテーション治療について,巨島文子先生には嚥下障害の特徴,評価・治療・対応について幅広くご解説いただいた.
 通読いただければパーキンソン病の全般的な知識がupdateされることだろう.本特集が他科・他職種とのコミュニケーションのきっかけとなり,長きにわたるチームアプローチの一助となることを願っている.
 (編集委員会 企画担当:小口和代)
特集 パーキンソン病のリハビリテーション診療update
 特集にあたって(小口和代)
 パーキンソン病の診断とリハビリテーション診療(植木美乃)
 パーキンソン病の薬物療法(乙宗宏範 服部憲明)
 パーキンソン病の外科的治療(下 泰司)
 歩行障害に対するリハビリテーション治療(市川 忠)
 パーキンソン病のADL障害に対するリハビリテーション治療(中馬孝容)
 嚥下障害に対するリハビリテーション治療(巨島文子)

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連載
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 (知野俊文)

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 13.Penetration-Aspiration Scale(PAS)(谷口裕重)

障害福祉サービスとリハビリテーション
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