やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

特集にあたって
 四肢切断はリハビリテーション医学における大きな分野のひとつであり,切断者のADL,QOLの改善,社会復帰は重要な課題である.切断者の疫学調査は系統的には行われていないが,職場や社会におけるさまざまな状況の改善により,労働災害や交通事故による切断は減少していると思われる.一方で,切断に至る外傷の減少に対して,糖尿病等足病変をきたす疾患は増加している.これに対し,足病変,フットケアの関心は高まってきており,治療法は進歩し,そのケアが広く行われるようになってきている.それでも,それらに起因する下肢切断は横ばいかあるいは増加傾向にあると推定されている.外傷性の切断に比べ,これらの切断者には高齢者が多く,残存機能や生命予後の問題から,義足装着に至らない例が多いと考えられる.
 わが国は欧米に比べ切断者は少なく,リハビリテーション科医や療法士が経験することは必ずしも多くない.とはいえ,意欲があり条件が整った切断者にとって,義肢を装着しての社会復帰は大変重要である.そして,その技術については長足の進歩を遂げている.そこで,現在の四肢切断と義肢の動向についてそれぞれの専門家に執筆いただいた.
 上肢切断については,柴田八衣子先生に義手処方の動向,能動義手,筋電義手のリハビリテーション治療,さらには最近日本義肢装具学会でまとめられている義手適合検査について執筆いただいた.濱田全紀先生には下肢切断と義足処方の動向,義足処方に至るために重要な切断後の断端ケア,義足処方とリハビリテーション治療のポイントについて,また,中村隆先生には義肢自体にスポットを当て,現在の開発動向,近年の進歩について執筆いただいた.藤原清香先生には,小児の四肢形成不全,切断についての義肢の処方ならびにリハビリテーション治療の状況について執筆いただいた.
 パラスポーツには多くの種目が存在し,障害者にとってはさまざまなレベルでスポーツを楽しむこと,あるいは競技を通じた自己表現の場としてその意義は大きい.しかし,切断者にはその身体特性があり,競技に参加する際に留意すべきことがあるとともに使用される義肢についても生活用とは異なる場合が多い.これらの点について牛尾会先生に執筆いただいた.そして最後に切断者で問題となる幻肢痛について大住倫弘先生にコラムとして執筆いただいた.
 義肢あるいはその適合技術は着実に進歩しており,切断者にその恩恵が届けられるためには,その知識や技術が広く行き渡ることが必要である.本特集が読者の診療に役立ち,切断者によいリハビリテーション医療が提供されることにつながれば幸いである.
 (編集委員会 企画担当:花山耕三)
特集 四肢切断のリハビリテーションupdate
 特集にあたって(花山耕三)
 上肢切断リハビリテーションupdate(柴田八衣子)
 下肢切断リハビリテーションupdate(濱田全紀 堅山佳美・他)
 義肢の進歩(中村 隆)
 小児の四肢形成不全・切断のupdate(藤原清香)
 切断者のパラスポーツ(牛尾 会 三上幸夫)
 コラム:幻肢痛について(大住倫弘)

連載
巻頭カラー デザインが拓くリハビリテーションの未来
 8.経肛門的洗腸療法(味村俊樹)

ニューカマー リハ科専門医
 (堀川 諭)

地域リハビリテーションの現状と今後
 3.都道府県支援センターにおける地域リハビリテーション(千葉県)(菊地尚久)

知っておきたい神経科学のキィワード
 22.拡散テンソル画像とトラクトグラフィー(小山哲男 道免和久)

知っていてほしい義肢装具とその実際
 2.上肢装具(治療用装具)(岡田充弘)

リハビリテーション医療における安全管理の一工夫
 II.回復期リハビリテーション病院における安全管理:4.離院・暴力等の事故対策(日浦裕子 和田恵美子)

認知症の基礎知識とリハビリテーション
 6.認知症に併発した身体疾患の理学療法(國枝洋太)

リハビリテーション医療におけるEvidence-Based Practice
 8.Evidence-Based Practiceと診療ガイドライン(湯浅秀道)

リハビリテーション医学・医療の歴史秘話“あの時なにが?”
 12.日本心臓リハビリテーション学会─わが国の心臓リハビリテーションの歴史─(牧田 茂)

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